妹がいなくなった

アズやっこ

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 馬車は王宮に付き、王妃様付きの侍女に案内されサロンで待つ事になった。

 暫くして国王陛下と王妃様がサロンへ入って来た。私とディーナは頭を下げ、カーテシーをした状態で待っている。


「面を上げろ」


私とディーナは顔を上げた。


「お主は!」


私とディーナは発言を許されるまで待っている。


「お主はサフェムの娘か?」

「国王陛下、王妃殿下、ご機嫌麗しゅう存じます。発言を申してよろしいでしょうか」

「ああ、許す。この場は正式な場では無い。楽に申せ」

「ありがとうございます。私はグーレイド元公爵の娘エディーナと申します。今は平民ですのでエディーナですが」

「やはりそうか。だがお主、修道院に入ったはずだが」

「はい。修道院に入っておりました。今は隣におりますエミリーヌ様の庇護下におります」

「そうか。エミリーヌ嬢はキャメル侯爵の娘だな」

「国王陛下、王妃殿下、ご機嫌麗しゅう存じます。私も発言よろしいでしょうか」

「ああ、許す」

「ありがとうございます。キャメル侯爵家長女エミリーヌと申します」

「エミリーヌ嬢、そなたは何故エディーナ嬢を庇護下においた」

「お答えする前に国王陛下にお願いが御座います。よろしいでしょうか」

「申せ」

「はい。先程、この場は正式な場では無い為、楽に申せと仰られましたが、私共か楽に申しても不敬には問わないと言う事でよろしいでしょうか」

「勿論だ」

「ありがとうございます。では、私がエディーナ様の身元保証人になったからですわ」

「そうか。それは何故だ」

「エディーナ様の刺繍の腕を、修道院だけで眠らせて置くのは勿体無いと思ったからですわ」

「だがお主も侯爵令嬢ではないか」

「はい。私も侯爵令嬢です。ですが、侯爵家とは関係なく私個人の商会の為ですわ」

「そうだ。私は本日、ミリー商会の代表と聞いている」

「はい。私がミリー商会の経営者です。そしてエディーナ嬢はミリー商会の代表ですわ」

「何!?」

「ミリー商会はあくまで私個人の商会。侯爵家とは今後も係るつもりはありませんし、侯爵家の元に入るつもりもありません」

「そうか」

「ですから、あくまで代表はエディーナ嬢です。本日は経営者として参上したまででございます」

「分かった。ところでエディーナ嬢、父上とは連絡を取れているのか?」

「はい。父もエミリーヌ様の庇護下におります」

「何?エミリーヌ嬢よ、そなたサムもか」

「はい。サフェム様は鉱山から身請け致しました」

「そうか。サムは元気しておるか?」

「はい。今は侯爵領の片隅で家庭教師をしておりますわ」

「家庭教師とな」

「はい。サフェム様は貴族学園で優秀な成績だったとお聞きしました。今、侯爵領で医師を目指す平民の子達に勉強を教えて貰っていますわ。どれだけ頭が賢くても平民に学園へ通うお金はありません。侯爵家次期当主として身元保証人になり、全ての費用を出し、いずれは侯爵家所属の医師に致しますの」

「そうか。だが、サフェムは罪を犯した」

「はい。奥様の病を治す為とはいえ、国庫に手を出しました」

「そうだ」

「ですが、奥様亡き後、サフェム様も自分の犯した罪を償い続けております。今も罪を償っておいでですわよ。元公爵が平民の子達相手にです。医師を志す若者に勉学を教えて、寝食を共にする。元貴族といえ出来る事ではありません。 ですが、サフェム様の後悔は奥様の病を治す技術がこの国に無かった事です。 ですから自分の犯した罪と奥様を救えなかった罪を今も償っておいでです」

「だが、鉱山送りにした者だ」

「はい。陛下の仰る事は分かります。ですが、私はサフェム様の頭の賢さに投資しただけですわ。 鉱山の引受人に支払った額は確かに高額です。ですが、サフェム様が教えた教え子達がいずれこの国でも他国でも重宝するでしょう。 それに比べたら安い投資ですわ」

「確かにサムは賢い男だ。奥方の事が無ければ今でも私の右腕として力を借りていただろうな。私も友を失い残念だった。だが、侯爵領におるのだな」

「陛下、来ないで下さいましね」

「駄目か?サムは私にとって幼馴染であり、友なのだ」

「でしたら私が侯爵を継いだ暁には陛下を侯爵領へ御招待致しますわ」

「分かった。それまで待つとするか」

「はい。そう遠くない話だと思いますので」

「今でもお主が当主の様なものではないか」

「ですが、まだ当主ではございませんもの。それと、いずれ分かると思いますので先にお伝えしますわ。宰相様の元息子のチャーリー様も私の庇護下におりますの」

「何?真の話か」

「はい」

「宰相を此処へ呼べ」


陛下がお付きの侍従に指示を出した。


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