妹がいなくなった

アズやっこ

文字の大きさ
上 下
7 / 187

しおりを挟む
マルボール伯爵家当主のジークリード様が侯爵邸にいらした。


「エミリーヌ嬢、この度は愚弟が申し訳ありませんでした。エミリーヌ嬢に度重なる迷惑もお掛けし、その上罵倒など。本当に申し訳ありませんでした」


マルボール伯爵は深々と頭を下げられました。


「マルボール伯爵、頭を上げて下さい。伯爵が頭を下げる必要はありませんわ」


マルボール伯爵は頭を上げ、


「いえ、愚弟はまだ伯爵令息です。当主の私が頭を下げるのが道理。エミリーヌ嬢に対して婚約者として蔑ろにした愚弟の代わりです」

「ジェフ様とはご縁が無かっただけの事ですわ」

「本当に申し訳ありません。それで妹君はご無事で?」

「サラですか…。まだ見つかりませんの」

「では心配ですね」

「ええ。王宮の騎士団の結論では家出だと」

「家出ですか。確か妹君はもう成人してますよね?」

「ええ。今年成人しましたの」

「なら家出も個人の意志。自己責任ですね」

「ええ。何があっても自己責任ですわ」

「誘拐とかで無くて良かったです」

「私もそう思いますわ」

「妹君の事は解決したので、本題に移りましょうか」

「そうですわね」

「今回は愚弟からの婚約破棄です。エミリーヌ嬢を罵倒し、令嬢を危険に晒そうとした。おまけに度重なる無礼。婚約者が居ながら妹君に心を移し蔑ろにした。で合ってますか?」

「そうですわね。ですが、私は解消で良いと申し上げましたが、ジェフ様が破棄で良いと」

「愚弟はエミリーヌ嬢の情けも分からなかった様です。愚弟の有責による婚約破棄ですので、ご要望は全て聞き入れます」

「ありがとうございます。まぁ一般的には慰謝料請求とかですが…、マルボール伯爵家の財上もお有りでしょうから、どう致しましょう」

「いえ、私共としましては成人した一個人ですので、当主として一切協力はしないと本人に伝えて有ります」

「ではジェフ様ご自身で返すと言う事ですの?」

「はい。マルボール家は一切協力はしません。慰謝料を立て替える事は致しません」

「ちなみにジェフ様は投資や商売などしておりませんの?」

「何もしておりません。次男ですが、学園に入る前にそちらの侯爵家に婿入りすると決まりましたから」

「そうでしたわね。では慰謝料は請求致しませんわ」

「良いのですか?」

「はい。ですが何も無しと言う訳には参りません。マルボール伯爵家にとってはお辛いとは思いますが…、それでもよろしいでしょうか」

「はい。どの様な事でも受け入れます」

「では、思う存分妹のサラフィスをお探しになって下さいとお伝え下さいませ」

「それでよろしいのですか?」

「ええ。後はマルボール伯爵にお任せしますわ」

「分かりました。お情けを頂きありがとうございます」

「お情けではありませんが、両親も今、サラフィスを見つける為に国中回っていますの。全部捨ててまで探したい大事な娘らしくて。ですからジェフ様も可愛いサラを存分にお探しになれば良いかと。お兄様に止められて探せないと申しておりましたもの。マルボール伯爵が良いと言えばジェフ様も探せますでしょ?」

「そうですね。思う存分探して見つけてくれる事でしょう。今度お会いする時はお互い当主として意見交換をしたいですね」

「あら、今でも私の事を当主として接しておいでですわよ」

「エミリーヌ嬢の噂は耳に入りますので。当主代理の器で収まりきらないと」

「まあ。良い噂だと良いのですが。ふふっ」

「では、愚弟の事は決まり次第ご連絡致します」

「ご連絡お待ちしておりますわ」


 ジークリード様がお帰りになった。あんな素敵なお兄様でお若いのに当主としても立派なのに、弟のジェフ様はどうしてあんな風になったのかしら。


 後日、ジークリード様から連絡が来て、ジェフ様は貴族籍を抜かれ平民としてサラを探し出すまで戻らないと約束させたと。これで思う存分可愛いサラを探せますわね。 貴族籍を抜いてあれば例え誘拐されても伯爵家は関係なくなるし、後は自己責任ですわね。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】2愛されない伯爵令嬢が、愛される公爵令嬢へ

華蓮
恋愛
ルーセント伯爵家のシャーロットは、幼い頃に母に先立たれ、すぐに再婚した義母に嫌われ、父にも冷たくされ、義妹に全てのものを奪われていく、、、 R18は、後半になります!! ☆私が初めて書いた作品です。

【完結】8私だけ本当の家族じゃないと、妹の身代わりで、辺境伯に嫁ぐことになった

華蓮
恋愛
次期辺境伯は、妹アリーサに求婚した。 でも、アリーサは、辺境伯に嫁ぎたいと父に頼み込んで、代わりに姉サマリーを、嫁がせた。  辺境伯に行くと、、、、、

「僕は病弱なので面倒な政務は全部やってね」と言う婚約者にビンタくらわした私が聖女です

リオール
恋愛
これは聖女が阿呆な婚約者(王太子)との婚約を解消して、惚れた大魔法使い(見た目若いイケメン…年齢は桁が違う)と結ばれるために奮闘する話。 でも周囲は認めてくれないし、婚約者はどこまでも阿呆だし、好きな人は塩対応だし、婚約者はやっぱり阿呆だし(二度言う) はたして聖女は自身の望みを叶えられるのだろうか? それとも聖女として辛い道を選ぶのか? ※筆者注※ 基本、コメディな雰囲気なので、苦手な方はご注意ください。 (たまにシリアスが入ります) 勢いで書き始めて、駆け足で終わってます(汗

従姉と結婚するとおっしゃるけれど、彼女にも婚約者はいるんですよ? まあ、いいですけど。

チカフジ ユキ
恋愛
ヴィオレッタはとある理由で、侯爵令息のフランツと婚約した。 しかし、そのフランツは従姉である子爵令嬢アメリアの事ばかり優遇し優先する。 アメリアもまたフランツがまるで自分の婚約者のように振る舞っていた。 目的のために婚約だったので、特別ヴィオレッタは気にしていなかったが、アメリアにも婚約者がいるので、そちらに睨まれないために窘めると、それから関係が悪化。 フランツは、アメリアとの関係について口をだすヴィオレッタを疎ましく思い、アメリアは気に食わない婚約者の事を口に出すヴィオレッタを嫌い、ことあるごとにフランツとの関係にマウントをとって来る。 そんな二人に辟易としながら過ごした一年後、そこで二人は盛大にやらかしてくれた。

没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしてきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!

日之影ソラ
ファンタジー
 かつては騎士の名門と呼ばれたブレイブ公爵家は、代々王族の専属護衛を任されていた。 しかし数世代前から優秀な騎士が生まれず、ついに専属護衛の任を解かれてしまう。それ以降も目立った活躍はなく、貴族としての地位や立場は薄れて行く。  ブレイブ家の長女として生まれたミスティアは、才能がないながらも剣士として研鑽をつみ、騎士となった父の背中を見て育った。彼女は父を尊敬していたが、周囲の目は冷ややかであり、落ちぶれた騎士の一族と馬鹿にされてしまう。  そんなある日、父が戦場で命を落としてしまった。残されたのは母も病に倒れ、ついにはミスティア一人になってしまう。土地、お金、人、多くを失ってしまったミスティアは、亡き両親の想いを受け継ぎ、再びブレイブ家を最高の騎士の名家にするため、第一王子の護衛騎士になることを決意する。 こちらの作品の連載版です。 https://ncode.syosetu.com/n8177jc/

義理パパと美少年のエッチ

リリーブルー
BL
さびしい少年が、義理パパにエッチなことをせがんでしまう。パパは社長さん!? ライバルは秘書!

傍若無人な姉の代わりに働かされていた妹、辺境領地に左遷されたと思ったら待っていたのは王子様でした!? ~無自覚天才錬金術師の辺境街づくり~

日之影ソラ
恋愛
【新作連載スタート!!】 https://ncode.syosetu.com/n1741iq/ https://www.alphapolis.co.jp/novel/516811515/430858199 【小説家になろうで先行公開中】 https://ncode.syosetu.com/n0091ip/ 働かずパーティーに参加したり、男と遊んでばかりいる姉の代わりに宮廷で錬金術師として働き続けていた妹のルミナ。両親も、姉も、婚約者すら頼れない。一人で孤独に耐えながら、日夜働いていた彼女に対して、婚約者から突然の婚約破棄と、辺境への転属を告げられる。 地位も婚約者も失ってさぞ悲しむと期待した彼らが見たのは、あっさりと受け入れて荷造りを始めるルミナの姿で……?

虐げられた落ちこぼれ令嬢は、若き天才王子様に溺愛される~才能ある姉と比べられ無能扱いされていた私ですが、前世の記憶を思い出して覚醒しました~

日之影ソラ
恋愛
異能の強さで人間としての価値が決まる世界。国内でも有数の貴族に生まれた双子は、姉は才能あふれる天才で、妹は無能力者の役立たずだった。幼いころから比べられ、虐げられてきた妹リアリスは、いつしか何にも期待しないようになった。 十五歳の誕生日に突然強大な力に目覚めたリアリスだったが、前世の記憶とこれまでの経験を経て、力を隠して平穏に生きることにする。 さらに時がたち、十七歳になったリアリスは、変わらず両親や姉からは罵倒され惨めな扱いを受けていた。それでも平穏に暮らせるならと、気にしないでいた彼女だったが、とあるパーティーで運命の出会いを果たす。 異能の大天才、第六王子に力がばれてしまったリアリス。彼女の人生はどうなってしまうのか。

処理中です...