妹がいなくなった

アズやっこ

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 ジムと書類を片付けていると、突然大きな音を立てて扉が開いた。


バタン!


「おい!エミリーヌ!お前は何をしているんだ!」

「見て分かりませんか?それよりも突然部屋に入るのはやめて下さいませ」

「おまっ!お前は!なんて奴だ!」

「ジェフ様こそ連絡も無しに急に来られてどうされたのですか?」

「なっ!お前は妹が居なくなって心配ではないのか!」

「心配してるから騎士隊に捜索をさせていますわ。今は連絡待ちですわ」

「お前は自分で探し回る事もしないのか!」

「では、私が数人の護衛を付けながら探し回れと?」

「妹が心配ならそうするべきだ!」

「私が数人護衛を使うより、護衛が探し回った方が早く見つかると思いますが」

「ならお前は護衛無しで探せば良いだけの話だろ!」

「サラが家出か誘拐か分からないこの状況で、侯爵家の娘である私が一人で街まで探しに行けと仰るのですね?」

「お前など誰が誘拐なんかするか!笑わせるな!」

「あら?私は次期侯爵家当主ですわよ?もし誘拐ならサラを人質に取るか、私を人質に取るか、どちらが人質になると思いますの?」

「ハッ、サラに決まってるだろ!あんなに可愛いいんだからな」

「可愛いだけでお金が出せますか?」

「出せる!それに父君も出すだろう」

「まぁお父様なら出しますわね。ですがお祖父様が許さない限りお父様ではお金の用意は出来ませんわよ?」

「は?何を言ってる!父君は侯爵当主だぞ!」

「では、貴方は毎回私を訪ねにこの執務室に来てますけど、この執務室は当主が当主の仕事をする部屋と言う事はご存知ですわよね?」

「あっ!そ、そうだな…」

「では、お父様とこの部屋で会った事はございます?」

「無い、が…」

「では、貴方がいつもこの部屋に来る時、私は何をしてる時です?」

「それは…」

「当主の仕事をしてます。そして今もですわ。サラが心配だけなら帰って下さいまし」

「こんな時に仕事か!」

「はぁぁ。では、貴方のお兄様は現伯爵当主ですわよね?お兄様はどんな事があろうと当主の仕事をなさってませんの?」

「兄上は兄上だろ!家族が誘拐されたら兄上とて探し回るに決まってる!」

「そうですか。ですが、お兄様は当主として騎士隊に指示を出し、毎日上がってくる書類に目を通し、騎士隊の報告を伯爵家の邸でお聞きすると思いますが?」

「兄上は当主だ!お前は次期当主で当主ではない!」

「そうですわね。当主が当主の仕事をしなければどうなります?」

「そんなの没落するだけだ」

「そうですわ。没落して領民はどうなります?貴族として、又、領主として領民を護るのが我々の使命ですわ。当主が仕事をしないから次期当主として私が代わりに仕事をしているのです。それぐらい貴方もお分かりになりますでしょ?」

「お前という奴は!妹よりも仕事がそんなに大事か!」

「だから、騎士隊に捜索させていますと申しました。報告を待つ間仕事をしているだけですわ」

「お前という奴は優しさの欠片もないのだな!心配してないのか!」

「私も心配しておりますわ。ですから騎士隊が捜索しておりますわ」

「騎士隊、騎士隊と!自分は探さず人任せか!なんと薄情な!サラが心配なら探しに行くはずだ!それを騎士隊任せにして! お前は冷たい女だ! 俺は兄上に止められて探しに行けない。だからお前が俺の代わりに探しに行け!」

「そんなに心配ならご自分で探しに行けば良いでしょう。 お兄様に止められてる?それは当たり前ですわ。当主としての判断ですわ。 貴方が危険にさらされるからですわ。第二の被害を出さない為に当主としての義務ですわ。私が探しに出て第二の被害にあったら貴方は責任が取れますの?」

「どうして俺が責任を取らされる!」

「貴方の代わりに探しに行くからですわ」

「お前は自分の意思で探しに行けんのか!」

「第二の被害を出さない為にも邸の中で待機するのが私の意志です」

「お前って奴は!本当に冷たい女だ。こんな冷たい女が婚約者とはな!こんな婚約、やめても良いのだぞ!」

「では、やめますか?良いですよ。解消します?」

「解消?こんなの破棄だ!破棄!こんな冷たい女などこちらから破棄してやる!」

「では破棄でよろしいのですね?」

「当たり前だ!」


 ジムが婚約破棄の書類を出して、ジェフ様がサインをして出て行かれました。私もサインをして、伯爵家にも婚約破棄の書類を送ります。ジムか速やかに手続きをしに役所に行ってくれました。


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