私と貴方の宿命

アズやっこ

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「ミア、休憩中に買い出し頼む」

「何を買ってくるの?」

「ジャガイモとタマネギ、それとレモンを買って来てくれ」

「分かった~、じゃあお父さん行ってくるね~」

「寄り道するなよ?帰ってきたら昼飯だからな」

「分かってるわよ。行ってきま~す」


私はミア、お父さんの食堂を手伝っているの。18歳なのに恋人はいないわ。好きになった人もいないの。

ずっと誰かを待ってる。

でもその誰かは分からないし、このまま出会わなくても良いかなって思ってる。そしたらずっとお父さんの手伝いができるでしょ?



ジャガイモとタマネギとレモンを買って食堂に戻ろうとした時、何となく呼ばれた気がしたの。


「寄り道するなって言われたけど、ちょっとだけなら良いわよね!」


私は街の中に入って行った。

露天商が並んでいて、

なぜか、

そこに導かれた…。


「おじさん、少し見せてね」

「ゆっくり見ていきな」

「ふふっ、ありがとう」


銀細工が並べて置いてあった。


「綺麗…」


月桂樹が彫られた銀細工の腕輪に手を伸ばし、






◆◇◆◇◆



「おい、ランベン」

「何だよ親父」

「ちょっと街まで行ってきてくれないか」

「はぁぁ、俺だって暇じゃないんだけど」

「頼んであるから直ぐにすむ」

「で、何を貰ってくるんだよ」

「肥料と花の種だ」

「花の種?また母さん?」

「頼むぞ」


俺は街の花屋へ行き、肥料と花の種を受け取った。ぶらぶらと街を見る。

親父は街の騎士団で働いていて、俺も騎士団に入った。平民にしては高い給料が貰えるし、職を失う事はない。まぁ、何かしなければだけどな。


俺はランベン、20歳にもなって好きになった女はいない。俺は恋人、そういった類いに興味がない。

でも、幼い頃から誰かを探している。

誰かは分からない。それでもとても大切で大事な人だ。一度会ったら、手を取ったら、絶対に離せない、とても大切な人だ。



ぶらぶら歩いていると呼ばれた気がした。

導かれるように露天商の前に来た。


「兄ちゃん、見ていきな」

「なら少し見ようかな」


銀細工が並べてあり、何となく目に止まった腕輪に手を伸ばした。





同時に手に取り、見つめ合う。


一目見た時に感じた。貴方とは何かあると。一目惚れ、運命、そう呼ぶのかも知れない。


一目見た時に感じた。お前とは何かあると。一目惚れ、運命、そう呼ぶのかも知れない。



待ってた人にやっと会えた、そう思ったわ。


探してる奴をやっと見つけだした、そう思った。





涙が溢れてきた。


「ははっ、何で泣いてるんだろ」

「そんなにこれが欲しかったのか?」

「ち、違うわよ」

「なあ」

「なに」

「一目惚れって信じるか?」

「まあ」

「俺はランベン。お前は?」

「私はミア」

「ミア、愛してる」

「うん」

「ようやく会えた」

「うん」

「ようやく、ようやく会えた」

「うん、私も」

「泣くな」

「嬉し泣きよ」


抱きしめ合い、


「結婚しよう」

「うん」

「もう絶対に離さない」

「私も、もう絶対に離れない」

「なあ、これ俺が買ってやるよ」

「ううん、これは何となく買っちゃ駄目な気がするの。とてもとても大事なもののような気がするの」

「そうか。なら違うやつにするか?」

「ううん、とても綺麗だけど、何でだろう、見てると胸が痛くなるの。だからやめとく」

「そうか。おじさん悪いな」

「いいさ」





銀細工を並べた露天商がリュートを手に弾き語りを始めた。


「昔、昔、ずっと昔、遥か遠く、今はなきマーメイル国に産まれし仲の良い兄と妹、愛しい女性が宿した己の子でない命を護り、愛しい女性と落胤となる腹の子を隠し、兄は己の首を差し出した、己の首だけで済むと、あちらの王が、手籠めした好色王が、止めてくれると信じて、すまない妹よ、すまない父よ、すまない母よ、すまない民よ、

マーメイルの地に眠る兄上が、妹の幸せを願っている、共に見たあの素晴らしい風景、光り輝く銀細工、自然豊かな今はなき国マーメイル、

何度生まれ変わっても愛する人はただ一人、今度は今度こそは幸せになってほしい、俺の大事な妹よ、



昔、昔、宿命に囚われし男と女、果たせぬものを果たしあい、明かせぬ思いを明かしあう、絡まる糸を引き寄せて、前世の因果か、同じ道へと辿り着く、神に願うはただ一つ、愛し合いたいと願うのみ、宿命あがらい向かう先、全ての糸を断ち切って、廻る縁を断ち切った、神が導くその先に、出会う運命断ち切れず、神に願うはただ一つ、幸せになろうと願うのみ、

何度生まれ変わっても愛する人はただ一人、今度は今度こそは幸せになってほしい、俺の大事な妹よ、」





             完


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