私と貴方の宿命

アズやっこ

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明日は学園も休み、明日はリアと街でデートだ。

夜父上に呼ばれた。


コンコン


「入れ」


俺は部屋に入り、


「ランフェル、最近一人の女性と仲が良いと聞いたが」

「はい、父上にも紹介しようと思います」

「まさか婚約するなどと言わないよな」

「婚約します」

「相手はだれだ」

「スミス男爵家の令嬢です」

「男爵だぞ!」

「ええ。それでも今後彼女しか婚約も婚姻もしません」

「フッ、骨抜きにされたか。もう寝たのか?」

「父上!」

「男爵令嬢ごときが公爵家に粉をかけるとはな」

「彼女を侮辱する事は父上でも許しません!」

「ランフェル、現実を見ろ。男爵令嬢が公爵夫人になれると思うか?なれて愛人だ」

「愛人にするつもりはありません」

「お前に侯爵家との婚約を進めようと思っている」

「俺は彼女以外と婚約はしません。断って下さい」

「勘当すると言ってもか」

「なら勘当して下さい」

「お前はエドワード王子の片腕になるのだぞ。それにシャーロットの兄だ。それを分かってて言っているのか!」

「分かってて言っています。父上がもし勝手に婚約を進めるなら勘当して下さい。俺は彼女以外嫁にする気はありません」

「ランフェル!」

「父上に何を言われようとようやく手に出来た愛しい女性です。彼女を諦めるくらいなら勘当される方を選びます」

「その彼女とて公爵令息でなくなったお前では見向きもせんぞ」

「彼女はそんな女性ではありません。公爵令息の俺ではなくて俺自身を好いてくれているのです」

「話にならんな」

「そうですか。ですが勝手に婚約を進めようとするなら俺は公爵家を出ます。縁を切って頂いて結構です。話は以上ですか?」

「婚約の件は保留にしておく。だからお前も冷静になってよく考えろ」

「俺はいつだって冷静ですよ」

「本気なのだな」

「はい。では」


俺は父上の部屋から出て行った。



次の日、俺は街でリアを待つ。


「ラフェ様」


リアの呼ぶ声に、リアが向ける微笑みに、


「リア」


俺も微笑みを返す。

愛しいリア、もう手放せない。

リアの手を繋ぎ、街外れにある公園へ行った。

ベンチに座り、

俺は愛しいとリアを見つめる。

頬を染め、俺を見上げるリアが愛おしく、

俺はリアの頭を撫でる。


リアから、


「貴方を愛してる」


そんな思いが伝わってくる笑顔を向けられた。

その笑顔を見た瞬間

俺の奥底にある内が騒いだ。


俺はリアを抱きしめ、


「ようやくその笑顔を見れた。ようやくその笑顔を俺にも見せてくれた。リア、愛してる」


リアも俺を抱きしめ返してくれ、


「私もラフェ様を愛しています」

「リア、リア」


リアから離れ、

リアの唇へ視線を送った。

リアが目を閉じ、

リアの唇に俺は唇を重ねた。

リアは頬を染めた顔を俺の胸の中に隠し、俺はリアを優しく抱きしめる。

とても幸せな時間。

愛しいリアと過ごすとても幸せな時間。

俺達は時間が許すまで公園で幸せな時間を過ごした。

手を繋ぎ隣に座る。

時々見つめ合い口付けをする。

リアが微笑めば俺も微笑み、

リアの左指にある揃いの指輪に口付けする。

俺はリアの肩を抱き寄せ、

リアは俺の肩に頭を乗せる。

ただ花を見つめ、

ただ空飛ぶ鳥を見つめ、

二人だけの幸せな時間を共に過ごす。

とても穏やかで、

とても幸せで、

愛しい人と過ごす時間が、

俺を満たす。

俺の肩に乗るリアの顔が俺を見つめる、

俺はリアの顔を上から覗く。

唇を重ね、

お互いが微笑む。

帰る時、お互いに手を離せず、公園をあと一周と、これで最後と言い何周もする。

リアの家まで送ると手を繋ぎゆっくりゆっくりと家まで歩き、

リアの家の前…

俺はリアを抱きしめ、口付けをした。


「ラフェ様!誰かに見られたら、」

「誰に見られても構わない」


本当に誰に見られても構わないんだ。

俺にはリアだけだ。

リアが側にいてくれるなら、

リアが俺を愛してくれるなら、

リアが俺に笑いかけてくれるなら、

俺はそれだけで充分だ。


リアを送り俺は家へ帰る。何度も振り返りリアに手をふる。リアも振り返してくれる。





最初で最後…

穏やかで

幸せな時間を過ごした

この日が

最初で最後だった…




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