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番外編 19

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 フェスも5歳になり、


「かあさま」

「なあに、フェス」

「すきなひとができました」

「あら、良かったわね。それで誰なの?」

「エンスにいさま」

「エンス?あらあら」

「エンスにいさま、フェスにえほんよんでくれるの。それにやさしいの」

「そうね、エンスはフェスに優しいものね」

「うん。エンスにいさまはフェスのとくべつなの」

「特別?」

「アークにいさまがいってた」


 アークはマーク兄様の息子、っていう事は特別の意味も知ってるわね。


「エンスはフェスの特別なのね。母様にも特別の人がいたのよ?」

「かあさまにも?」

「父様が母様の特別なの。だから父様にだけ特別の呼び名を教えたのよ?」

「とくべつなよびな?」

「そうよ。自分にとって特別な人にだけ呼んでもらう名前よ」

「フェス?」

「フェスは皆が呼んでいるでしょ?母様もフェスって呼んでいるわ」

「わかりました」


 フェスも初恋か…。

 ルトが怒りそうだから、これは内緒ね!


 今日はワンスとエンスが剣の稽古に来る日。フィルとワンスは二人で打ち合いをしているわ。

 ワンスも強くなったわね。フィルも流石にルトとレイに鍛えられているだけはあるけど、それでも互角になってきたわ。

 エンスは剣よりも本を読んだりするのが好きみたいね。それでもこうして剣の稽古に来ているのよね。

 休憩をはさみ、フィルとワンスは各々素振りをしたり、ニックと打ち合いしたりしていた。

 エンスは、

 ん?そわそわしてる?


「エンスにいさま~」

「アニー」


 フェスが絵本を持って外に出て来て、


「アニー走ったら危ないだろ?」

「だってはやくあいたくて」

「今度からは歩いて来るんだよ?」

「わかったわ」

「今日はこの絵本?」

「うん。よんでくれる?」

「良いよ。なら座って読もう」

「うん!」


 エンスが座り、フェスは…あらあら…

 フェスはエンスと絵本の間、エンスの膝の上に座っている。まるでエンスが後ろから…、ふふっ、可愛らしい二人だわ。


 なんか視線を感じるわ…。


 視線の先、ルトがもの凄い目でこっちを見てる。

 うん、見てるわね、

 可愛らしい二人を…。


 ルトがこっちに向かって歩いて来て、


「アニー、今度は何を読む?」

「アニー!?」


 あー、


「エンス!今フェスをアニーと呼んだのか!」

「はい。アニーがそう呼んでほしいと。駄目でしたか?」

「だ、駄目に」

「とうさま!エンスにいさまはフェスのとくべつなの!」

「だ、駄目じゃ、な、い、ぞ」

「良かった」

「にいさま、はやくつぎのえほんよんで?」

「良いよ。どれにする?」

「エンス、絵本を読むのは良い。だがな、そんなくっついて読む必要はないと思うぞ!」

「そう、ですね、すみません」

「とうさま!フェスがこのほうがみやすいの」

「だがな…」


 私はルトの肩を叩いた。


「リー、これは…」

「ルト、エンスはフェスの特別なの」

「それは分かる、分かるが…」

「特別なの」

「ッ!」

「私にもあったでしょ?」

「ああ」

「今もよ?」

「ああ、俺もだ」

「懐かしいわね」

「リーも5歳だったな」

「ええ」

「俺もこうして膝の上に乗せてたな」

「ふふっ、ええ」


 ルトは私を抱きしめ、


「フェスを見ているとあの時のリーを思い出す」

「そうね」

「そうか…フェスの特別か……」

「寂しい?」

「ああ」


 私はルトの背中を撫で、


「私の特別はずっと変わらないわ。記憶を失くしても、それに思い出しても、ずっと変わらずルトだけ」

「ああ、俺もだ。ずっとリーだけだ。愛してる、俺の愛しいお姫様」

「私も愛してるわ、私の愛しい旦那様」



 私達は可愛らしい二人を見つめた。




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