58 / 61
番外編 19
しおりを挟むフェスも5歳になり、
「かあさま」
「なあに、フェス」
「すきなひとができました」
「あら、良かったわね。それで誰なの?」
「エンスにいさま」
「エンス?あらあら」
「エンスにいさま、フェスにえほんよんでくれるの。それにやさしいの」
「そうね、エンスはフェスに優しいものね」
「うん。エンスにいさまはフェスのとくべつなの」
「特別?」
「アークにいさまがいってた」
アークはマーク兄様の息子、っていう事は特別の意味も知ってるわね。
「エンスはフェスの特別なのね。母様にも特別の人がいたのよ?」
「かあさまにも?」
「父様が母様の特別なの。だから父様にだけ特別の呼び名を教えたのよ?」
「とくべつなよびな?」
「そうよ。自分にとって特別な人にだけ呼んでもらう名前よ」
「フェス?」
「フェスは皆が呼んでいるでしょ?母様もフェスって呼んでいるわ」
「わかりました」
フェスも初恋か…。
ルトが怒りそうだから、これは内緒ね!
今日はワンスとエンスが剣の稽古に来る日。フィルとワンスは二人で打ち合いをしているわ。
ワンスも強くなったわね。フィルも流石にルトとレイに鍛えられているだけはあるけど、それでも互角になってきたわ。
エンスは剣よりも本を読んだりするのが好きみたいね。それでもこうして剣の稽古に来ているのよね。
休憩をはさみ、フィルとワンスは各々素振りをしたり、ニックと打ち合いしたりしていた。
エンスは、
ん?そわそわしてる?
「エンスにいさま~」
「アニー」
フェスが絵本を持って外に出て来て、
「アニー走ったら危ないだろ?」
「だってはやくあいたくて」
「今度からは歩いて来るんだよ?」
「わかったわ」
「今日はこの絵本?」
「うん。よんでくれる?」
「良いよ。なら座って読もう」
「うん!」
エンスが座り、フェスは…あらあら…
フェスはエンスと絵本の間、エンスの膝の上に座っている。まるでエンスが後ろから…、ふふっ、可愛らしい二人だわ。
なんか視線を感じるわ…。
視線の先、ルトがもの凄い目でこっちを見てる。
うん、見てるわね、
可愛らしい二人を…。
ルトがこっちに向かって歩いて来て、
「アニー、今度は何を読む?」
「アニー!?」
あー、
「エンス!今フェスをアニーと呼んだのか!」
「はい。アニーがそう呼んでほしいと。駄目でしたか?」
「だ、駄目に」
「とうさま!エンスにいさまはフェスのとくべつなの!」
「だ、駄目じゃ、な、い、ぞ」
「良かった」
「にいさま、はやくつぎのえほんよんで?」
「良いよ。どれにする?」
「エンス、絵本を読むのは良い。だがな、そんなくっついて読む必要はないと思うぞ!」
「そう、ですね、すみません」
「とうさま!フェスがこのほうがみやすいの」
「だがな…」
私はルトの肩を叩いた。
「リー、これは…」
「ルト、エンスはフェスの特別なの」
「それは分かる、分かるが…」
「特別なの」
「ッ!」
「私にもあったでしょ?」
「ああ」
「今もよ?」
「ああ、俺もだ」
「懐かしいわね」
「リーも5歳だったな」
「ええ」
「俺もこうして膝の上に乗せてたな」
「ふふっ、ええ」
ルトは私を抱きしめ、
「フェスを見ているとあの時のリーを思い出す」
「そうね」
「そうか…フェスの特別か……」
「寂しい?」
「ああ」
私はルトの背中を撫で、
「私の特別はずっと変わらないわ。記憶を失くしても、それに思い出しても、ずっと変わらずルトだけ」
「ああ、俺もだ。ずっとリーだけだ。愛してる、俺の愛しいお姫様」
「私も愛してるわ、私の愛しい旦那様」
私達は可愛らしい二人を見つめた。
12
お気に入りに追加
988
あなたにおすすめの小説
溺愛される妻が記憶喪失になるとこうなる
田尾風香
恋愛
***2022/6/21、書き換えました。
お茶会で紅茶を飲んだ途端に頭に痛みを感じて倒れて、次に目を覚ましたら、目の前にイケメンがいました。
「あの、どちら様でしょうか?」
「俺と君は小さい頃からずっと一緒で、幼い頃からの婚約者で、例え死んでも一緒にいようと誓い合って……!」
「旦那様、奥様に記憶がないのをいいことに、嘘を教えませんように」
溺愛される妻は、果たして記憶を取り戻すことができるのか。
ギャグを書いたことはありませんが、ギャグっぽいお話しです。会話が多め。R18ではありませんが、行為後の話がありますので、ご注意下さい。
夫に離縁が切り出せません
えんどう
恋愛
初めて会った時から無口で無愛想な上に、夫婦となってからもまともな会話は無く身体を重ねてもそれは変わらない。挙げ句の果てに外に女までいるらしい。
妊娠した日にお腹の子供が産まれたら離縁して好きなことをしようと思っていたのだが──。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています
オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。
◇◇◇◇◇◇◇
「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。
14回恋愛大賞奨励賞受賞しました!
これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。
ありがとうございました!
ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。
この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)
王太子殿下の執着が怖いので、とりあえず寝ます。【完結】
霙アルカ。
恋愛
王太子殿下がところ構わず愛を囁いてくるので困ってます。
辞めてと言っても辞めてくれないので、とりあえず寝ます。
王太子アスランは愛しいルディリアナに執着し、彼女を部屋に閉じ込めるが、アスランには他の女がいて、ルディリアナの心は壊れていく。
8月4日
完結しました。
【完結】記憶が戻ったら〜孤独な妻は英雄夫の変わらぬ溺愛に溶かされる〜
凛蓮月
恋愛
【完全完結しました。ご愛読頂きありがとうございます!】
公爵令嬢カトリーナ・オールディスは、王太子デーヴィドの婚約者であった。
だが、カトリーナを良く思っていなかったデーヴィドは真実の愛を見つけたと言って婚約破棄した上、カトリーナが最も嫌う醜悪伯爵──ディートリヒ・ランゲの元へ嫁げと命令した。
ディートリヒは『救国の英雄』として知られる王国騎士団副団長。だが、顔には数年前の戦で負った大きな傷があった為社交界では『醜悪伯爵』と侮蔑されていた。
嫌がったカトリーナは逃げる途中階段で足を踏み外し転げ落ちる。
──目覚めたカトリーナは、一切の記憶を失っていた。
王太子命令による望まぬ婚姻ではあったが仲良くするカトリーナとディートリヒ。
カトリーナに想いを寄せていた彼にとってこの婚姻は一生に一度の奇跡だったのだ。
(記憶を取り戻したい)
(どうかこのままで……)
だが、それも長くは続かず──。
【HOTランキング1位頂きました。ありがとうございます!】
※このお話は、以前投稿したものを大幅に加筆修正したものです。
※中編版、短編版はpixivに移動させています。
※小説家になろう、ベリーズカフェでも掲載しています。
※ 魔法等は出てきませんが、作者独自の異世界のお話です。現実世界とは異なります。(異世界語を翻訳しているような感覚です)
【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます
修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。
その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。
彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。
ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。
一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。
必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。
なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ──
そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。
これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。
※小説家になろうが先行公開です
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる