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番外編 11

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「ジークルト様、行ってらっしゃいませ」

「リー、その…」


 私は頭を下げてルトが行くのを待っている。


「ッ、行ってくる」

「お気をつけて」


 馬車に乗り込み走り出した馬車を見つめている。


「ふぅ」

「お嬢様、お腹を圧迫するお辞儀は止めて下さい」

「ごめんなさい」

「また喧嘩ですか?」

「まあ意見の相違?」


 もうすぐ産まれるであろうお腹を撫でて昨夜の事を思い出す。



 昨夜、子供達はレイとシアが寝かせる為に子供部屋に連れて行った後、夫婦二人になり、


「もうすぐ産まれそうだな」

「そうね」


 ルトは大きなお腹を優しく撫でる。


「この子も女の子だと良いんだが」

「どうして?フィルは男の子がいいらしいわよ?」

「男の子はフィルだけで良い」

「どうして?」

「最近フィルは口答えが多くなった」

「それはフィルが成長してるからでしょ?」

「確かにフィルの成長は嬉しい」

「でしょ?それに剣の稽古も頑張ってるし、お父様との約束を守る為に勉強だって頑張ってるわ」

「フィルが伯爵家の跡継ぎに文句を言う訳ではないが」

「何?ルトはフィルに騎士になって欲しいの?」

「フィルが騎士になろうが跡継ぎになろうがフィルが決めれば良いと思ってる。それにフェスが婿を娶って跡を継いでもいいと思ってる」

「私だってフィルが騎士になりたいって言うなら応援するわよ?それでも今は跡継ぎになる為に勉強を頑張ってるんだからそれを応援してあげたいの。それにフェスだってお嫁に行くかもしれないでしょ?」

「フェスは嫁にはやらん。フィルが跡を継いでもフェスにも婿を取ってここで一緒に暮らせば良いだろ?」

「ルト、それだと後継者争いになったらどうするの?フィルの子かフェスの子か、それにこのお腹の子の子もってなったら当主を継いだフィルが可愛そうよ。それにフェスだって愛しい人が跡継ぎの方だったらどうするの?」

「ならフェスが次男を好きになれば良いだろ」

「はぁぁ。ねえルト、私は一人娘よ?それでももしルトが跡継ぎだったなら私はルトのお嫁さんになる為にこの家を出るわ。たまたまルトが次男で婿に入れる立場だったけど、結局騎士を辞めさせてしまったのよ?」

「騎士を辞めた事に後悔はない。俺はリーを護る騎士になりたかっただけだ」

「そうだけど…」

「それに俺はもし跡継ぎだったとしても辞退してリーの婿になった」

「そうかもしれないけど…」

「リーは皆で暮らすのは反対なのか?」

「そうじゃないけど、フェスだって好きな人が出来ていずれお嫁さんになるって言いたいだけなの」

「そもそも好きな人を作らなければ良いだろ」

「ルト、貴方本気で言ってるの?」

「フェスを嫁に出したくないんだ。リーに似た可愛い娘を自分で護りたい。手元においておきたいんだ、仕方ないだろ」

「はぁぁ、もう好きにして」



 レイに昨夜の事を話し、


「ジークルト様はご自分が言えた義理ではないと思いますが。お嬢様を自室に閉じ込めた事をもうお忘れなのでしょうか」

「あの時は記憶が戻ったばかりだったから」

「それでもご自分は好きな女性を離さず結婚して、旦那様と奥様からお嬢様を奪ったではありませんか」

「奪うは言い過ぎだけど」

「いえ、お嬢様の記憶が戻った時から離さず、あまつさえご友人の王太子殿下はじめ殿下達を味方に付けて最短でお嬢様を手に入れたのはジークルト様です。旦那様達は待てとおっしゃいました。それを」

「確かにそうだけど」

「お嬢様は一人娘ですからジークルト様が婿に入るので旦那様も奥様も認めましたが、もしお嫁に出すとなっていたら旦那様や奥様から奪っていたのですよ?」

「そうだけど」

「ご自分は愛するお嬢様と結婚しておいて愛しい娘のアニフェス様には結婚させないなんて、何と狭量なのでしょう」

「レイ、そのくらいにしてくれ」


 突然後ろからルトの声が聞こえ、


「おかえりなさいませ、旦那様」

「リー、俺が悪かった。すまない」

「何が悪かったのでしょう」

「フェスに好きな人が出来て結婚するとなったら嫁に出す。だから許してくれないか」

「それは本心でしょうか」

「本心だ。俺にとって愛する人がリーの様にフェスにも愛する人がいずれ出来る。フェスを護り愛してくれる奴なら、その時は反対しない。約束する」

「本当ですか?」

「ああ」

「その気持ちをお忘れなく」

「分かってる。だからリーお願いだ、俺を許してくれないか」

「分かったわ。フェスにも必ず私にとってルトの様な愛する人が出来るわ。その時は見守りましょ?」

「ああ。愛してるリー」

「私も愛してるわ、ルト」

「レイの言う通りだ。俺は愛するリーと結婚したのにフェスには結婚させないなんて」

「仕方ないわよ、私達の可愛いお姫様だもの」

「義父上の気持ちが分かるよ。娘を嫁に出したくない、いつまでも自分で護りたい。それでも俺にリーを託してくれた」

「そうね。今度はルトがフェスの相手に託す番だわ」

「ああ。寂しいがその時はリーが慰めてくれるんだろ?」

「ふふっ、そうね。でもまだまだ先の話よ?」

「ああ。リー愛してるよ、俺の愛しいお姫様」

「私も愛してるわ、愛しい私の騎士様」


 私達はお互いの唇を重ね、何度も口付けした。レイの冷ややかな目を見ないふりして…。


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