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番外編 ⑦

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 明け方近くに陣痛が来て夕方近くに出産した。


「おぎゃーおぎゃー」

「お、お嬢…様、おめで…とう…ご…ざ…いま…す」

「レ、イ、泣か、ないで」


 レイはポロポロと涙を流している。


バタン


「男性はまだ入らないで下さい!」


 産婆さんが怒る。


「す、すまない。だけどリーが、妻が心配で、居ても立っても居られなくて、すまない」

「こちらからお呼びするまでお待ち頂くものです!」

「すまない…」

「ルト」

「リー」

「赤ちゃん、産まれたわ」

「ありがとう。リー、ありがとう」


 ルトは涙を流している。


「ルトまで泣かないでよ」

「心配だったんだ。俺は部屋の外で苦しむ声しか聞けなかった。俺は何も出来なかった。リーだけに大変な思いをさせて、すまない」

「出産は痛くて苦しかったし、もう絶対に赤ちゃん作らないって思ったし、もう嫌って何度も思ったわ。だけど不思議ね、産まれたら忘れちゃうの。また赤ちゃん作ってもいいって、作りたいって思ったわ」

「リー、俺の子供を産んでくれてありがとう。本当にありがとう。俺を子の親にしてくれて本当にありがとう」

「ルトもお父様よ?」

「ああ、ご苦労さま。ゆっくり休んでほしい」

「赤ちゃん見てくでしょ?」

「ああ」


 身体を綺麗にした私達の赤ちゃんを御包みに包んで産婆さんが渡してくれた。ルトは小さい我が子を愛しい瞳で見つめている。


「可愛いな」


 ボソっと呟いた声に愛おしさと優しさが含まれてる。


「男の子よ?」

「そうか」


 ルトの優しい瞳が我が子を見つめている。


「ルトと同じ空を持って産まれてきたわね」

「ああ」

「素敵な黒髪と綺麗な青」

「ああ」


 ルトの包みこむ優しい手の中で我が子は眠っている。我が子を見つめ瞳が愛しいと語っている。同じ髪色を持ち、同じ瞳の色を持ち、ルトによく似た男の子。


「幸せ」

「ん?」

「二人が愛しいわ」

「俺もだ」


 それからお父様やお母様も部屋に来て、我が子を抱き、私に労いの言葉をかけ部屋を出て行った。

 レイに我が子を預け、


「リー愛してる」

「私も愛してるわ」

「リーありがとう」

「さっきからそればっかよ」

「何度言っても言い足りないくらいだ」

「もう」

「ありがとう」

「うん」

「俺達の子供を産んでくれてありがとう」

「うん」

「俺を父親にしてくれてありがとう」

「うん」

「次はリーに似た女の子だな」

「もう、気が早いわよ」

「……フィル」

「なに?」

「マーフィルはどうだろうか」

「良い名前だわ」

「良かった」

「ずっと考えてたの?」

「嫌、男の子ならフィル、女の子ならフェスを付けたいとは思っていた」

「どうして?」

「フェルの産まれ代わりなんだろ?」

「え?」

「違ったか?」

「確かにそう言う夢は見たけど、フェルの産まれ代わりかは分からないわよ。ただ夢に出てきたルトに似た男の子はこの子だって確信したけど…」

「それでもフェルによく似た名前にしようと何となく思ってたんだ」

「そうだったのね。でもどうしてその話を知ってるの?」

「俺が留守の間のリーの体調をレイに聞いた時にフェス様のお陰ですって言われてな。聞き出した」

「無理矢理聞いたの?」

「嫌、勝ち取った」

「は?」

「俺は体術のみでレイは剣を使って先に10本先取した方が勝ちで、俺が勝った」

「嫌嫌、普通に聞いてくれて良いのよ?」

「レイが俺に教えると思うか?」

「確かに」

「だろ?」


 2人に少し呆れながら、それでもこの先もこういう事はありそうだなと思ったわ。




「フィル」

「あぅあぅ」


 今日も可愛い我が子との散歩を楽しみ、少し重くなった我が子を嬉しく思い、愛おしくなる我が子を今日も抱きしめる。


 フィルは我が家の天使。


 お父様はじじ馬鹿になり玩具を他国から取り寄せ、お母様も私の手助けをしてくれる。フィルはお母様に懐いていて私がいなくてもご機嫌さん。

 ルトは乳の出が悪く悩んでる私の為に他国から高額な赤ちゃん用のミルクを取り寄せ、率先してミルクをあげてる。夜中のミルクもルトが代わりにやってくれて助かってる。

 レイは体調不良で一度倒れてから私と一緒にフィルの面倒を見てくれていて、今はフィルの部屋でフィルと一緒に寝ている。


「ミルクがあれば私でもマーフィル様の面倒が見れます」


 と、笑顔で言っていた。

 ルトが気にしていた、男の子なら私を取り合い嫉妬するって言ってたけど…。私を取り合いどころかフィルの取り合いよ。

 それでも皆に助けて貰いながら子育てできる事を嬉しく思ってる。



「リー」

「ルト」

「俺達の王子様はご機嫌か?」

「ええ」


 レイに抱っこされ寝ているフィルを見て、


「それなら俺はリーを独り占めできるな」


 ルトは私を抱きしめ口付けする。手を繋ぎ一緒に庭を散歩する。


「リー愛してる。俺だけのお姫様」


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