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目覚めてから一週間ルトの部屋で過ごした。毎日医師に診察され、質問もされた。封じた記憶をどれだけ思い出したのか。全てを思い出し、拒絶反応もなく、後は体力を付けるだけだった。
コンコン
「お嬢様入ります」
「レイ」
「本日から固形物を召し上がってもよろしいそうです。ですが無理はなさらない様にとの事です」
「分かったわ、ありがとう。もうスープや離乳食みたいに柔らかい物ばかりで正直嫌だったの」
「お嬢様は一週間目覚めなかったのですから」
「分かってる」
レイは私が目覚めた次の日に王宮へ来て私の世話をしてくれてる。
「お嬢様…ううっ。ようやく目覚められて。ううっ」
「レイ、心配かけてごめんね」
「いえ…」
「レイ、悪いがリーを頼む。俺も側に付いて居たいんだがこれ以上休む訳にはいかないらしい」
「分かりました。お任せ下さい」
「ああ、頼む」
ルトは私の額に口付けして、
「リー、行ってくる。夜には戻るから。リー愛してる、俺の愛しいお姫様」
「行ってらっしゃい。ルト気を付けてね。大好きよルト」
ルトは部屋を出て行った。
「レイはルトと知り合いなの?」
「どうしてですか?」
「ルトがレイを信頼してるから」
「私はジークルト様のご実家の公爵家の騎士隊長の娘です。私は幼い頃から父に護身術から剣の稽古まで叩き込まれました。女は騎士にはなれませんが、令嬢を護る護衛件メイドにはなれます。騎士では入れない場所でもメイドなら一緒にお供出来ます。その為父に鍛えられてきました。 ジークルト様も幼い頃から父に鍛えられていたそうです。父との稽古を幼い私は見ていました。 お嬢様が記憶を失われた時、ジークルト様も背中に傷を負い、毎日とても苦しそうにしておられました。
傷が治り剣の稽古を始められた時、ジークルト様はご自分の限界を越える以上稽古をされました。ご自分を痛め付ける様な、傷付ける様なそんな稽古です。 父はその様な稽古の仕方ではいずれジークルト様は壊れてしまうと思ったのでしょう、父が付きっきりで指導をし、私の相手をさせる事で手加減をする事を体に教え込ませました。
私がメイドとして働ける年齢になった時、ジークルト様から頼まれました。お嬢様の側で自分の代わりに護ってほしいと。ジークルト様がお嬢様を慕う気持ちもお嬢様が記憶を失っている事も知っていました。私はジークルト様の代わりにお嬢様を護る護衛件メイドとしてお側に参りました」
「そう。私が記憶を封じたから皆に迷惑をかけてしまったのね。ルトはずっと待っててくれていたのに」
「お嬢様、初めはジークルト様に頼まれましたが今では私がお嬢様のお側に居たいのです」
「レイ、ありがとう。私もレイが側に居てくれると心強いわ」
「まだ目覚めたばかりです。少し眠られてはいかがです?」
「そうね。少し疲れちゃった」
寝て起きてを繰り返し、夢現のまどろみの中遠くで声が聞こえる。
「1日どうしてた?」
「寝たり起きたりを繰り返していました」
「そうか。俺の事は覚えていたか?」
「起きた時は水を少し飲まれまたお眠りに。なので分かりません」
「そうか。また俺の事を忘れていたらと思うと、何をしていても身が入らなくてな」
「しっかりして下さい。貴方は騎士でしょ」
「分かってる。だがな、気になるのは仕方ないだろ」
「その様ではお嬢様を護れませんよ」
「分かってる。今度こそリーを護る」
「お嬢様は私が護りますから大丈夫です」
「俺が護る」
「貴方は王女殿下をお護りしていて下さい」
「俺は王女よりリーを護りたい」
ふたりの会話を聞いていて、
「ふふっ」
「リー!」
ルトが私のベッドに腰掛けた。
「お帰りなさいルト。もうルトを忘れないわ」
「リー」
ルトは私の髪を撫でる。
「ルトは私を護る騎士様になってくれるんでしょ?」
「ああ、その為に今迄頑張ってきた」
「それでも今は王女様の近衛隊の騎士だわ。私の事を気にして怪我しても嫌よ?」
「分かってる。だけどリーにまた忘れられたらと思うと」
「もう忘れないわ。だから安心して?」
「分かった」
ルトは私の手を握り、
「体調はどうだ?」
「少し眠いくらいで大丈夫」
「そうか。少し眠るか?」
「ルトが帰ってきたのに?」
「今は体調を戻す事が優先だ」
「そうだけど、でも少しくらいお話しても良いでしょ?」
「少しだけな」
「ねえ、ルトの背中の傷、見せてって言ったら嫌?」
「見せてまた気を失ったら耐えられない」
「大丈夫。一度見てるし」
「その時はまだ記憶が戻ってない時だった」
「そうだけど」
「それに見て気持ちいい物でもない」
「どうして?私を護った証なのでしょ?」
「そうだけど」
「ルトお願い」
「分かった。けど無理だけはしないでくれ」
ルトは騎士の制服を脱ぎ、中のシャツを脱いだ。背中の右肩から左脇腹にまで残る傷。
私は起き上がり、
「痛くない?」
「痛みはもう無い」
「良かった」
私は傷を撫でた。ルトの体がビクッとなって強張るのが分かる。
「ありがとう、私を護ってくれて」
私は傷跡に口付けをした。
ルトが振り返り、
「リー」
「ありがとう。私を護ってくれて、生きていてくれて、ありがとうルト」
ルトに抱きしめられた。私もルトを抱きしめた。
ルトが微かに震えていて、私の肩に涙が湿る。私もルトの胸の中で涙を流した。
コンコン
「お嬢様入ります」
「レイ」
「本日から固形物を召し上がってもよろしいそうです。ですが無理はなさらない様にとの事です」
「分かったわ、ありがとう。もうスープや離乳食みたいに柔らかい物ばかりで正直嫌だったの」
「お嬢様は一週間目覚めなかったのですから」
「分かってる」
レイは私が目覚めた次の日に王宮へ来て私の世話をしてくれてる。
「お嬢様…ううっ。ようやく目覚められて。ううっ」
「レイ、心配かけてごめんね」
「いえ…」
「レイ、悪いがリーを頼む。俺も側に付いて居たいんだがこれ以上休む訳にはいかないらしい」
「分かりました。お任せ下さい」
「ああ、頼む」
ルトは私の額に口付けして、
「リー、行ってくる。夜には戻るから。リー愛してる、俺の愛しいお姫様」
「行ってらっしゃい。ルト気を付けてね。大好きよルト」
ルトは部屋を出て行った。
「レイはルトと知り合いなの?」
「どうしてですか?」
「ルトがレイを信頼してるから」
「私はジークルト様のご実家の公爵家の騎士隊長の娘です。私は幼い頃から父に護身術から剣の稽古まで叩き込まれました。女は騎士にはなれませんが、令嬢を護る護衛件メイドにはなれます。騎士では入れない場所でもメイドなら一緒にお供出来ます。その為父に鍛えられてきました。 ジークルト様も幼い頃から父に鍛えられていたそうです。父との稽古を幼い私は見ていました。 お嬢様が記憶を失われた時、ジークルト様も背中に傷を負い、毎日とても苦しそうにしておられました。
傷が治り剣の稽古を始められた時、ジークルト様はご自分の限界を越える以上稽古をされました。ご自分を痛め付ける様な、傷付ける様なそんな稽古です。 父はその様な稽古の仕方ではいずれジークルト様は壊れてしまうと思ったのでしょう、父が付きっきりで指導をし、私の相手をさせる事で手加減をする事を体に教え込ませました。
私がメイドとして働ける年齢になった時、ジークルト様から頼まれました。お嬢様の側で自分の代わりに護ってほしいと。ジークルト様がお嬢様を慕う気持ちもお嬢様が記憶を失っている事も知っていました。私はジークルト様の代わりにお嬢様を護る護衛件メイドとしてお側に参りました」
「そう。私が記憶を封じたから皆に迷惑をかけてしまったのね。ルトはずっと待っててくれていたのに」
「お嬢様、初めはジークルト様に頼まれましたが今では私がお嬢様のお側に居たいのです」
「レイ、ありがとう。私もレイが側に居てくれると心強いわ」
「まだ目覚めたばかりです。少し眠られてはいかがです?」
「そうね。少し疲れちゃった」
寝て起きてを繰り返し、夢現のまどろみの中遠くで声が聞こえる。
「1日どうしてた?」
「寝たり起きたりを繰り返していました」
「そうか。俺の事は覚えていたか?」
「起きた時は水を少し飲まれまたお眠りに。なので分かりません」
「そうか。また俺の事を忘れていたらと思うと、何をしていても身が入らなくてな」
「しっかりして下さい。貴方は騎士でしょ」
「分かってる。だがな、気になるのは仕方ないだろ」
「その様ではお嬢様を護れませんよ」
「分かってる。今度こそリーを護る」
「お嬢様は私が護りますから大丈夫です」
「俺が護る」
「貴方は王女殿下をお護りしていて下さい」
「俺は王女よりリーを護りたい」
ふたりの会話を聞いていて、
「ふふっ」
「リー!」
ルトが私のベッドに腰掛けた。
「お帰りなさいルト。もうルトを忘れないわ」
「リー」
ルトは私の髪を撫でる。
「ルトは私を護る騎士様になってくれるんでしょ?」
「ああ、その為に今迄頑張ってきた」
「それでも今は王女様の近衛隊の騎士だわ。私の事を気にして怪我しても嫌よ?」
「分かってる。だけどリーにまた忘れられたらと思うと」
「もう忘れないわ。だから安心して?」
「分かった」
ルトは私の手を握り、
「体調はどうだ?」
「少し眠いくらいで大丈夫」
「そうか。少し眠るか?」
「ルトが帰ってきたのに?」
「今は体調を戻す事が優先だ」
「そうだけど、でも少しくらいお話しても良いでしょ?」
「少しだけな」
「ねえ、ルトの背中の傷、見せてって言ったら嫌?」
「見せてまた気を失ったら耐えられない」
「大丈夫。一度見てるし」
「その時はまだ記憶が戻ってない時だった」
「そうだけど」
「それに見て気持ちいい物でもない」
「どうして?私を護った証なのでしょ?」
「そうだけど」
「ルトお願い」
「分かった。けど無理だけはしないでくれ」
ルトは騎士の制服を脱ぎ、中のシャツを脱いだ。背中の右肩から左脇腹にまで残る傷。
私は起き上がり、
「痛くない?」
「痛みはもう無い」
「良かった」
私は傷を撫でた。ルトの体がビクッとなって強張るのが分かる。
「ありがとう、私を護ってくれて」
私は傷跡に口付けをした。
ルトが振り返り、
「リー」
「ありがとう。私を護ってくれて、生きていてくれて、ありがとうルト」
ルトに抱きしめられた。私もルトを抱きしめた。
ルトが微かに震えていて、私の肩に涙が湿る。私もルトの胸の中で涙を流した。
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