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俺はケイザック・マーベン

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 俺はケイザック・マーベン、マーベン侯爵家の嫡男だ。父上は騎士隊を纏める騎士団長。俺はいずれ騎士団長になる。その為に日々鍛錬は欠かさない。

 見目は良い方だとはいえない。大柄で筋肉質だからか女性にもてた事がない。奥手で女性に話しかけるのも躊躇する。学院でも令嬢と話した事がない。

 そんな俺に天使が舞い降りた。

 始めて見て心が奪われた。


「すみません、騎士団長様のお部屋に参りたいのですが」


 天使だと思った。俺はどうしても彼女が欲しい。食事に誘ったが断られた。それから見かけては何度も話しかけ断わられる。それでも諦めない。諦めきれない、俺は彼女が好きなんだ。

 親睦会と名の交流会で隣に座り話をする。笑った顔が可愛い。男性が苦手だと言う彼女の為に仕事が終わったら宿舎まで毎日送った。ほんの数分が俺には何時間にも思えた。少しづつ距離を縮め、ついに彼女と付き合えた。

 順調に交際を重ねガネットと婚約し、一年後の結婚が待ち遠しい。早く結婚したい。俺はガネットの為に騎士隊長になれるように努力し、結婚する少し前に騎士隊長になった。


 結婚してから毎日家に帰るのが待ち遠しい。愛するガネットがいつも玄関で帰りを待っててくれる。ガネットを見るとすぐに抱きしめ、ガネットの温もりを感じる。夜も俺に付き合い明け方近くまでガネットを離せず無理をさせてる。それでもガネットを求めずにはいられないんだ。


 俺は騎士隊長になって色々な人から声がかかるようになった。男性が集まるサロンに誘われ行ってみればサロンには女性が男性にしなだれかかっていた。俺には愛する妻がいると言えば馬鹿にしたように俺を嘲笑った。

 その時帰れば良かったんだ。

 それなのに俺は嘲笑われた事が悔しくてその場に残った。俺の膝にも女性が乗ってきて、艶めかしい声で俺にしなだれかかる。女性に免疫がない俺は女性を退ける事も出来なかった。

 酒を勧められ飲んでからの記憶が曖昧だ。朝起きた時には女性と裸で抱き合い眠っていて、情事のあとが生生しく残っていた。俺が放ったであろう子種の後…。それも一回や二回じゃない。俺はガネットを愛している。ガネット以外抱きたくない。それなのに、これは何だ…。


 それからその女性、ローラが愛人にしてと言ってきた。俺は責任を取る形で愛人にした。

 髪留めが欲しいと言えばガネットの分も買った。ドレスが欲しいと言えばガネットの分も買った。宝石が欲しいと言えばガネットの分も買った。

 愛人にだけ買い与え、妻のガネットに買わないなんて選択は俺には無い。

 ローラは度々帰る俺を待ち伏せ、その夜は宿で泊まる。所謂連れ込み宿だ。そこでやる事なんて一つしかない。ローラはガネットに頼めない事もしてくれる。例えば口でしてほしいとか、上に乗ってほしいとか…。俺は後ろからガンガン激しく突くのが好きなんだが、ローラは嫌な顔をせず嬌声をあげて俺を昂ぶらせてくれる。

 愛してるのはガネットだけだ。でもローラの体にも嵌ってる。

 そんな時、ローラが旅行に行きたいと言い出した。旅行に連れて行ってくれないならガネットに全て言うと脅してきた。だから仕方なく旅行に連れて行った。

 ガネットには遠征で一週間家を空けると言った。家を出る時「怪我をしないでね、元気に帰って来て」と言われ居たたまれない気持ちになった。

 旅行先はローラが見たいと言った七色に輝く湖だ。近くのホテルに泊まり、数日過ごした。

 帰って来てもガネットは俺が遠征に行っていたと信じてる。申し訳ない気持ちでいっぱいになった俺はガネットに贈り物をした。


 ローラは他のもっと地位がある人の愛人になったらしく俺達は別れた。

 その時、俺は止めれば良かったんだ。

 ローラとの情事で営む事に嵌った俺は女性の体を求めた。地位に群がる女が次から次へと寄ってくる。今迄もてた事がなかった俺は女にもてだし、一夜の相手を苦労せずとも探せた。一夜共にし体の相性が良ければ愛人にした。


 俺は気付かずガネットが一番嫌う男になった。



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