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早急に受理してくださると言われた通り二日後に受理書が届きました。
『離縁を受理する』
ようやく離縁出来ました。
「お兄様、ご迷惑おかけしました。ジェームスも貸して頂きありがとうございました」
「ガネット、俺はここにずっと居て欲しい」
「お兄様」
「お前が侍女になる為に学院へ通っていたのは知ってる。だけど虐げる者は誰もいないんだぞ」
「分かってます。それでも友との約束を果たしたいのです」
「分かった。だけどたまには顔を見せる事、良いな」
「分かったわお兄様」
「後、父上が心配していたぞ」
「なら辺境へ行く前に領地へ寄ってから行くわ」
「そうしてやってくれ」
「お父様は今も一人なの?」
「ああ。あの頃が嘘みたいにな」
「そう」
「向こうに行くと驚くぞ」
「何?」
「行ってからのお楽しみだ」
「分かったわ」
「それでいつ立つ」
「明後日には」
「そうか」
「明日はお母様に会いに行きたいの。もうなかなか会いに来れないから」
「そうか。一応護衛を付けるからな」
「ありがとうお兄様」
次の日私はお母様のお墓へ来てお母様とお別れしました。今度はいつここに帰って来れるか分かりません。
次の日の早朝、お父様が住む領地へ向かいます。
「お兄様、もし」
「分かってる。お前の元旦那が来ても何も言うつもりはない。文句は言うがな」
「ふふっ、程々にして下さいね」
「程々になれば良いが」
「ふふっ。ではお兄様」
「行って来い」
「はい、行って参ります」
「いつでも帰って来いよ」
「はい」
「父上によろしくな」
「はい」
アンネと馬車に乗り込み領地へ向かいます。
二日後領地へ着き、
「お父様」
「ガネットか、よく来たな」
「お父様、出戻りました」
「俺が言えた義理じゃないが、あんな奴捨てて良かったんだ」
「ふふっ、お父様は言えませんよ」
「分かってる。だが俺はマーガレットしか愛してなかった。贈り物などやった事もないし旅行なんかに行かなかった」
「邸には連れ込んでましたけどね」
「まあ、そうなんだが」
「早く家に入れて下さい」
「さあ入れ」
お兄様が入って驚くぞと言った意味が分かりました。
「お母様…」
お父様はお母様の肖像画に囲まれていました。
「お父様、これは」
「俺が全て描いた」
「はあ…」
「出会った頃はこれだ」
「あ、はい」
「これが始めて手を繋いだ時に恥ずかしがった顔だ」
「あ、はい」
「これが始めて俺の色の髪留めを贈った時の顔だ」
「そうですか…」
お父様は愛おしそうに一枚一枚説明してくれました。お母様も幸せそうな顔、お父様を好きと言ってる顔、
「そしてこれがマーガレットが亡くなる前日の顔だ」
「………」
私は涙が出ました。確かにお母様の痩せ細った姿の絵もありました。幸せそうな絵ばかりではなく苦しそうな絵も辛そうな絵もありました。
それでも、
「お母様、幸せそうな顔をしてます」
「ああ。結果として最後の夜になったが、絵を描いてと言われて描いた絵だ」
「ならこの瞳の先にお父様がいると言う事ですか?」
「そりゃそうだろ。俺が描いてるんだから」
「そうですか。とても愛おしそうに見つめていますね」
「それからこれが亡くなってから描いた絵だ」
「いつの間に描いたのです?」
「お前達が色々準備をしていた時だ。俺は二人きりで最後の話をしたかった」
「そうでしたか。とても安らかな顔です」
「ああ」
お父様は涙を流し、お母様の絵を愛おしそうに撫でていました。
私の結婚式の時、「愛してるのはマーガレットだけだ」と言った言葉がこの何十枚とある絵から分かりました。どの絵もお父様の愛情が溢れています。二人にしか分からない愛情が溢れています。
お父様がお母様の死を認めたくないと言った言葉も信じられました。お母様を深く愛しているからこそ別れたくない。心で繋がっていても物理的に離されるのがきっとお父様は耐えられなかったのでしょう。
「お父様はお母様と離されるのが嫌だったのですね」
「ああ」
その「ああ」にお母様への愛情と苦しみ辛さが混じっていたように聞こえました。
『離縁を受理する』
ようやく離縁出来ました。
「お兄様、ご迷惑おかけしました。ジェームスも貸して頂きありがとうございました」
「ガネット、俺はここにずっと居て欲しい」
「お兄様」
「お前が侍女になる為に学院へ通っていたのは知ってる。だけど虐げる者は誰もいないんだぞ」
「分かってます。それでも友との約束を果たしたいのです」
「分かった。だけどたまには顔を見せる事、良いな」
「分かったわお兄様」
「後、父上が心配していたぞ」
「なら辺境へ行く前に領地へ寄ってから行くわ」
「そうしてやってくれ」
「お父様は今も一人なの?」
「ああ。あの頃が嘘みたいにな」
「そう」
「向こうに行くと驚くぞ」
「何?」
「行ってからのお楽しみだ」
「分かったわ」
「それでいつ立つ」
「明後日には」
「そうか」
「明日はお母様に会いに行きたいの。もうなかなか会いに来れないから」
「そうか。一応護衛を付けるからな」
「ありがとうお兄様」
次の日私はお母様のお墓へ来てお母様とお別れしました。今度はいつここに帰って来れるか分かりません。
次の日の早朝、お父様が住む領地へ向かいます。
「お兄様、もし」
「分かってる。お前の元旦那が来ても何も言うつもりはない。文句は言うがな」
「ふふっ、程々にして下さいね」
「程々になれば良いが」
「ふふっ。ではお兄様」
「行って来い」
「はい、行って参ります」
「いつでも帰って来いよ」
「はい」
「父上によろしくな」
「はい」
アンネと馬車に乗り込み領地へ向かいます。
二日後領地へ着き、
「お父様」
「ガネットか、よく来たな」
「お父様、出戻りました」
「俺が言えた義理じゃないが、あんな奴捨てて良かったんだ」
「ふふっ、お父様は言えませんよ」
「分かってる。だが俺はマーガレットしか愛してなかった。贈り物などやった事もないし旅行なんかに行かなかった」
「邸には連れ込んでましたけどね」
「まあ、そうなんだが」
「早く家に入れて下さい」
「さあ入れ」
お兄様が入って驚くぞと言った意味が分かりました。
「お母様…」
お父様はお母様の肖像画に囲まれていました。
「お父様、これは」
「俺が全て描いた」
「はあ…」
「出会った頃はこれだ」
「あ、はい」
「これが始めて手を繋いだ時に恥ずかしがった顔だ」
「あ、はい」
「これが始めて俺の色の髪留めを贈った時の顔だ」
「そうですか…」
お父様は愛おしそうに一枚一枚説明してくれました。お母様も幸せそうな顔、お父様を好きと言ってる顔、
「そしてこれがマーガレットが亡くなる前日の顔だ」
「………」
私は涙が出ました。確かにお母様の痩せ細った姿の絵もありました。幸せそうな絵ばかりではなく苦しそうな絵も辛そうな絵もありました。
それでも、
「お母様、幸せそうな顔をしてます」
「ああ。結果として最後の夜になったが、絵を描いてと言われて描いた絵だ」
「ならこの瞳の先にお父様がいると言う事ですか?」
「そりゃそうだろ。俺が描いてるんだから」
「そうですか。とても愛おしそうに見つめていますね」
「それからこれが亡くなってから描いた絵だ」
「いつの間に描いたのです?」
「お前達が色々準備をしていた時だ。俺は二人きりで最後の話をしたかった」
「そうでしたか。とても安らかな顔です」
「ああ」
お父様は涙を流し、お母様の絵を愛おしそうに撫でていました。
私の結婚式の時、「愛してるのはマーガレットだけだ」と言った言葉がこの何十枚とある絵から分かりました。どの絵もお父様の愛情が溢れています。二人にしか分からない愛情が溢れています。
お父様がお母様の死を認めたくないと言った言葉も信じられました。お母様を深く愛しているからこそ別れたくない。心で繋がっていても物理的に離されるのがきっとお父様は耐えられなかったのでしょう。
「お父様はお母様と離されるのが嫌だったのですね」
「ああ」
その「ああ」にお母様への愛情と苦しみ辛さが混じっていたように聞こえました。
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