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伯爵令息のケーニスと結婚して子爵令嬢だった私は伯爵夫人になった。

可愛い双子にも恵まれ、ケーニスとも毎日楽しく仲良く暮らしているわ。

ケーニスは子育てにも率先して協力してくれるの。

妊娠中も胎教に良いからって毎日絵本をお腹の中の赤ちゃんに聞かせていたわ。まだ子供達が小さい頃は夜寝る前の絵本もケーニスがいつも読んでいたわ。

とても助かるのよ?

でもね…。


「お母様、私、騎士と結婚するわ」

「そう」


娘のマーガレットはケーニスにそっくりなの。頭は賢いの。本も大好きで毎日読んでいるわ。

同じように育った息子のマークスはきちんと現実を見ているのに。なんだったら姉のマーガレットをいつも冷めた目で見ているくらいよ?

それにもう10歳よ?


「銀色の髪の騎士と私は結婚するわ」


この国に銀色の髪の人はいない。この国は良くも悪くも普通。ブロンドかブラウンの髪。銀色や紫の髪の人なんていない。


あれは5歳の時。


「おかあさま、わたしまほうをつかえるひととけっこんするわ。まほうがつかえるひとはむさらきいろのかみのけをしているの」


ちょうどその頃ケーニスが読んでいた絵本は魔法が使える世界の話だった。絵本の中の絵で魔術師が紫色の髪の毛をしていた。


「まほうってすごいのよ。ゆびをパチンってするだけでひをつかったりかぜをつかったりするの」


この頃からもうケーニスの片鱗は出ていたのに、私は5歳の子が言う事だからと、


「凄いわね。魔法が使える世界か…」


と私は魔法が使えたら、と想像しちゃったのよね。火と風を使えば洗濯物が直ぐに乾くわとか、水を使えば水やりが一気に終わるわとか…。

あの時が悔やまれるわ。

息子のマークスは本の中は本の中の世界と分かっていたから、てっきりマーガレットも分かっていると思っていたの。

マークスは木の棒を剣の代わりにして振り回していたけど、


「ぼくはあたまのなかでそうぞうしてたたかっているんだ。いまはドラゴンとたたかってぼくがかったからぼくとけいやくしたんだ。

かあさま、ぼくはきちんとわかってるよ?ほんのなかのせかいはつくりものだって。つくりものだからたのしいしわくわくするんだ。だってドラゴンがほんとうにいたらにんげんがかつわけないもん。たべられておわりだよ」


マークスも頭は賢い。それに本も大好きで毎日読んでいるわ。

同じ親から産まれ、同じ日に産まれ、双子だからってマーガレットとマークスは同じじゃないのは分かってるわ。

一人一人個性があって一人一人違う性格なのも分かってる。

私とケーニスが違うようにマーガレットとマークスも違う。

でもね…、


ケーニスの遺伝、どれだけ強いのよ!


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