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間章(6)
理の調整者
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思念の世界というものはなかなか便利なものね。
そう、聞きたいというのなら話してあげる。
それは、もう遠い遠い昔の話よ―。
かつて人間は魔族のように長命だった。
しかし繁殖力が強く爆発的に人口が増えたために、食糧問題が深刻化してしまった。
思えば最初に人間を生み出した時から、生命というものはもう私の手を離れていたのかもしれない。
だからといって放っておくわけにもいかない。
繁栄を保ったまま、人間の数を一定数に保てるように、人間の寿命を100年程度にまで短くした。
でも彼らは種の保存という本能のままに、彼らなりに努力した結果、その数を益々増やしていくこととなった。
自らの創造物を減らすことができなかった私は、助けを欲して神を探した。
―神を見つけられず、代わりにイシュタムを見つけたのか。
そう。
それがたまたまなのか、神の仕組んだことだったのかは今となってはわからない。
私自身も最初の神によって生み出された存在なのだから。
イシュタムは魔界に揺蕩う名もなきただの意識体だったけど、私が名前と思考を与えると魔族という優秀な種族を生み出してくれた。
そのおかげで一時的に人間の数は減ったのだけど、その遺恨は後々まで続くことになってしまった。
―自分の創り出した生命を虐殺させてしまうことに、罪の意識はなかったのか?
もちろん、あったわ。
テュポーンなんて馬鹿げた怪物を送り出したイシュタムと魔族を憎いと思ったこともある。
だけど、世界の調律のためには仕方のないことだった。
だから、今度は人間たちを正しく導かねばならないと考えた。
それで私は、人間たちに秩序と安寧を与えるため、国という集合体を作って人間を管理しようと試みた。
実験的に造った最初の国は、人間たちが争い合って数年で自滅した。
その次の国も同じように争いで滅んだ。
それらの国々には名などなく、おそらく歴史にも残らないだろう。
文明レベルが低すぎて、あれは国などと云うものですらなかったから。
今よりもずっと人間たちは愚かで稚拙だったから、彼らを導くのは大変だった。
だけど、身近に良い手本があったことに気付いた。
―魔族か。
そうよ。
魔族は素晴らしいわ。
魔族は魔王の絶対的な力によって、完璧に統治されていた。
人間にも同じように絶対的な王を据えれば、うまく統治できるかもしれないと考えた私は、1人の青年を見つけ、力を与えた。
その名をオーウェンと云った。
オーウェンは自身の努力で強靭な肉体と力を得た実直な男だった。
その努力を認めた私は、彼と主従関係を結び、今までの人間には与えなかった癒し以外の魔法と力を与えた。
人間としては異常なほどの強い力を持つようになったオーウェンを、私は近くで見守らねばならなかった。
オーウェンの周囲には彼を慕う人間が集まるようになり、集団が軍団になり、やがて国となった。
―始まりの国、オーウェン神聖王国、だな。
ええ。初めての人間の国よ。
オーウェンは、未開の地だった人間の版図を開拓し、初代の王となった。
私は彼に請われて、王妃となった。
広大な土地を治めるのは並大抵のことではなく、私は彼の協力者たちとも主従関係を結び、力を与えて彼の治世に協力させた。
あなたも知っての通り、オーウェン王国は、今の人間の国全土におよぶ大王国になった。
―なのに、なぜオーウェンを裏切った?
裏切ったわけじゃないわ。
私には、彼を愛することができなかっただけよ。
彼に対しては、自分の創造物という認識はあっても、それ以上の感情を持てなかったから、夫として受け入れることはできなかった。そもそも、私には愛などという感情すらなかった。
私の使命は王国を存続させ、人間たちに秩序を与えること。そのためには、彼に子孫を多く残してもらわねばならなかった。
王妃という立場にあったけど、私は人間との間に子供を作ることはできなかったから、国内から選りすぐった美女たちを彼に与え、多くの子供を作らせたわ。
それがオーウェンには気に入らなかったみたいで、彼は次第に私に対して高圧的な態度を取るようになっていったのよ。
―そんなことは最初からわかっていたことだろう。
…私には人間が理解できていなかったのよ。
人間は感情に左右され行動するということを、わかっていなかった。
私はオーウェンと距離を置くため、王城の外の離宮で気に入った人間だけを傍に置き、そこで過ごすことにしたの。
ある時、オーウェンが、突然離宮に乗り込んで来て、私の取り巻きの若い男たちを次々と殺害してしまった。それを境に、私はオーウェンを見限り、王城を出奔したのよ。
―それだけが理由か?
いいえ。
私は人間たちの冷たい目に耐えられなくなったの。
人間の中で生活していた私は失念していたのよ。
自分の身体が歳をとらないことを。
年月を重ねても私の姿はいつまでも変わらぬ少女のままだった。
オーウェンは私を女神だと崇め、狂信的なまでに私を独占しようとしたわ。
そう、晩年の彼は、狂っていた。
人間たちはようやく、私が人間ではないことに気付いた。
周囲の者たちは私を恐れ、近寄ることさえしなくなり、いつしか人間たちは私の名を呼ぶことすら恐れるようになった。
私が城を去ると、年老いたオーウェンは失意の中で亡くなった。
その子が後を継ぎ、またその子が後を継ぎ…いつしか長い時が経った。
―おまえは城を出て、何をしていた?
まだ見ぬ地方の土地を、旅していたわ。
正直なところ、私は王国を操ることに飽きていた。
それでも王家の者たちは私を探し当て、城に戻るように説得しにきた。
でも、戻ったところで彼らは私を恐れるだけ。彼らは単に国を守護する役目を私に押し付けたいだけだった。
―戻らなかったのか?
どこにいても守護はできると云ってやったのよ。
広大な領地を視察するという名目で、所在だけを伝えることにして旅を続けたの。
―旅の目的は何だ?
さあね。自由になりたかったのかもしれないわ。
長い年月、私は気ままな旅を続けていた。
様々な人間と交流し、気まぐれにスキルや魔法の力を与えたりした。やがてその能力を受け継いだ子孫が増え、いつしか魔法士と云われる職業が生まれた。
その間に王が何人も代替わりし、徐々に国内は乱れていったわ。
気が付けば人間の大陸に1つだけだった国が、いくつも乱立するようになっていた。
私が力を与えた者の子孫たちが、オーウェン王国を見限って独立し、各地で国を興したのよ。
―王国を守ろうとはしなかったのか。
そんなことに意味はないわ。
人間が秩序を保って繁栄するのならば、どの国が栄えようと滅びようと構わない。
オーウェンという国はそのきっかけになったに過ぎないのだから。
長く王国を見て来て、人間は滞留すると、精神が腐っていくのだとわかったのよ。
古く長く続くものは、常に新しい流れを取り入れねば内側から腐って瓦解する。
この国はそう長くはないと、私にはわかっていた。
―旅は楽しかったか?
ええ。
旅の最後に訪れた地で、彼に出会ったから。
その頃のオーウェン王国は台頭してきたアトルヘイムという新興国に圧され、小国の1つに成り下がっていた。
旅に疲れた私は、王都から遠く離れた片田舎の地方都市に、宮殿を建てて住みついていた。
そこで出会ったのがエルヴィンだった。
出会った時、彼はまだ16歳だった。
エルヴィン・シュトラッサーはこの地を治めるシュトラッサー伯の三男で、その美しい容姿から私の宮殿の近衛騎士団の1人に選ばれていた。
見かけが同じくらいの年齢だったこともあり、彼とはすぐに打ち解けた。
地方貴族の三男坊などという立場は、魔族との戦いに駆り出されて、名誉の戦死を遂げることくらいでしか家に貢献できない程度の軽いものだ。
その容姿のおかげで親からは愛されていたけど、周囲から何の期待もされていないことに忸怩たる思いを抱いていた。
私が近衛騎士に任じると、彼は一生懸命仕えてくれた。
少し頼りないけど、私の云うことなら何でも聞いてくれたし、叶えてくれた。
彼は、今まで私が見て来た王宮貴族とは全く違っていて、裏表のない清らかな心を持っていた。
彼がオーウェンと違うのは、私を押さえつけたり、束縛しないところだった。少しおっちょこちょいで頼りないけど、素直で欲のない彼を、どこへ行くにも連れていくほど私は気に入っていた。
―ずいぶんと饒舌だな。その人間に惚れていたのか。
俗な云い方をするとそういうことになるかしら。
彼は真面目な騎士だから、睦言を囁いたりはしないし、私に対しても指一本触れることすらしなかった。
彼が私に好意を寄せていたことは明らかだった。
それがとても心地よかった。
彼の心を独り占めすることは、私が初めて人間に見せた執着心だったかもね。
―なのに、なぜあのようなことをしでかした?
…彼が私を裏切ったからよ。
あれは、彼が30歳になった時のことだったわ。
ある時、エルヴィンが私の宮殿を訪れたの。
彼は凛々しい近衛隊の制服に身を包んでいた。
30歳になっても、出会った頃と同じ少女の姿のままの私に、当然違和感はあったでしょうが、彼は態度を変えなかった。他の者たちが畏怖する中、なによりもそれが嬉しかった。
彼が訪れた理由を私は知っていた。
エルヴィンは父であるシュトラッサー伯爵から、領地と爵位を受け継いだ。
彼は三男で、上にはよくできた2人の兄がいる。
普通に考えれば彼が後継者になることなどありえない。
10歳年上の長兄は極東の国境警備の任務中に大怪我をし、帰国の見通しが立たなくなった。
1つ上の秀才の兄は公金横領罪に問われて塔に幽閉された。
それで三男の彼に後継者という地位が巡ってきたの。
私が力を使って、エルヴィンが後継者になれるようにしたのだから、当然の結果よね。
エルヴィンこそが領主に相応しいと思ったからそうなった。それだけのことよ。
私は、伯爵になった彼の喜ぶ顔が見たかった。
そしてその日、その喜ぶ顔を私に見せにきたはずだった。
だけど彼は硬い表情のまま、伯爵家を継ぐことを報告した。
何か様子がおかしい、そう思った。
そして次に彼の口から思わぬ言葉が放たれた。
「それでこの度、妻を迎えることになりました」
私は耳を疑った。
彼は硬い口調で、淡々と語った。
「三男に生まれた私は、領地を継ぐつもりはなく、一生あなたにお仕えしようと心に決めていました。しかし事情が変わり、私は領地を継がねばならなくなりました。後継者を残すために、親の勧める相手と婚姻することになったのです」
彼は驚く私の前に跪き、私の手を取って口づけした。
「ずっと、あなたをお慕いしていました」
それは、私が欲しかった言葉だった。
彼は私から目を逸らして立ち上がった。
「ですが、私には過ぎた想いでした。殿下と私では身分が違います。このような想いを抱えたことをお許しください」
「それでも、傍にいてくれるんでしょう?」
彼は少し悲しそうな表情をしながら、首を横に振った。
「お許しを。…実は、妻との婚姻式を挙げた後、王都の屋敷で暮らすことになったのです。このお役目も今日までとなります。私の代わりには若い騎士がお仕えします」
「なんですって…?」
「殿下のことは父から聞かされていました。殿下はこの国を守る女神なのだと。そんな高貴なお方に想いを寄せることなど、本来は許されるべきことではないのだと、父からは釘を刺されていました」
「ダメよ、私の傍を離れることは許しません」
「申し訳ありません殿下、ご理解ください」
理解しろと云われても、無理だった。
彼のためにと思ってしたことなのに、なぜこうなってしまったのだろう?
「あなたがなぜ昔と変わらぬ姿なのか、不思議に思ったこともありました。ですが、そんなことはどうでもよいことでした。殿下が永遠を生きる神であること、私のようなしがない普通の男では、あなたと生きていくことはできないということもわかっていました」
「嫌よ、行かないで」
「殿下、私は自分の運命には抗えない、普通の人間なのです。ですが…許されるのならば、あなたと共に生きたかった…」
彼は私に一礼し、踵を返して背を向けた。
「さようなら、トワ様」
彼は初めて私の名を呼んだ。
彼が去ってしまう。
何度も呼び掛けたのに、その背は扉の向こうに消えてしまった。
その時、私は頬を伝うものを感じた。
涙、だった。
初めて、自分が悲しんでいることに気付いた。
―それが感情というものだ。
その感情が痛みだと初めて知ったわ。
彼のたった一言で、こんなにも胸がしめつけられるような苦しみを味わうなんて。
驚きと戸惑いが私を支配した。
私は彼と同じ刻を生きられないし、子孫を残すこともできない。
いくら願っても、彼の望みを何ひとつ、叶えてあげられない自分を恨んだ。
―理に反することは神の力も働かぬ。それくらいわかっていたはずだ。
だけど願わずにはいられなかった。
願いが叶わないことは苦しい。
人間とは、こんな苦しみを抱えて生きねばならない生き物なのかと初めて悟った。
私には耐えられなかった。
―お前を支配した感情は、欲望というものだ。
欲望…。
そうか。
私の心を支配したのは、彼を私だけのものにしたい、という独占欲だったのか。
―それはかつてオーウェン王がおまえに抱いた感情と同じだ。
因果は巡る、とでも云いたいの?
確かに、そうかもしれない。
私は誰か知らない他の女に、彼を奪われたくないと思った。
そして何よりこの苦しみを終わらせたかった。
―それで、理に背いたのか。
それしか方法がなかったからよ。
自分の理に背いてでも、私は願わずにはいられなかった。
彼を私だけのものにしたい、ずっと一緒にいたい、と。
だから、彼が王都へ発つ前日の夜、彼を訪ねて密かにお茶のポットに毒を入れ、部屋を後にした。
翌日、彼は死んだ。
―それで、おまえは苦しみから逃れることができたのか?
いいえ。
苦しみは増すばかりだったわ。
苦しみに加え、空虚さが私を支配した。
その後、理に背いた報いが私の身に訪れたことは、知っているわよね?
―おまえが使った毒は、テュポーンの毒だったのだな。まさかそれが自分を殺すとは思ってもみなかったようだが。
昔、テュポーンを追い返した時に手に入れたものよ。
なぜかずっと小瓶に入れて手元に持っていたの。
あの女は、エルヴィンを殺した毒をポットから回収して、私の食事に毒を盛ったのよ。
私はそれを食べてあっけなく死んだわ。
あの女、エルヴィンの婚約者が私の侍女として宮殿に入り込んでいたのよ。
あの女は、夫の敵を討ったのだと勝ち誇ったように叫んでいたわ。その後、どうなったのかは知らないけど、きっと王室反逆罪で死罪にでもなったのでしょうね。
―悔しいか?
まさか。
私は彼を独占したのよ。
あの女は、私に愛する男を奪われて、嫉妬のあまり私を殺したの。そんなの、ただの自己満足にすぎないわ。
勝ったのは私。
―ならば、なぜそんなに寂しそうなのだ?
寂しそうですって?
私が?
―そうだ。気付いていないのか?
何に気付くというの?
―おまえが願ったことは、人間の男を独占したいということではない。人間として生きたいということだったのだろう。
…私は、人間になりたかった…?
―旅に出たのも、人間という存在を身近に感じたかったからだ。違うか?
…。
そうかもしれない。
―そうして、旅の終わりにようやく人間の感情というものを理解したのだ。人間を愛することによって。
そうよ…。
その通りよ。
旅の終わりに出会った彼と恋に落ちて、子供をもうけて、歳をとって死んでいく。
そんな普通の人間になりたかった。
そんなたったひとつの願いは、叶わなかった。
愛しい人を手にかけてまで得たものは、虚しさだけだった。
そもそも、私が人間を創り出したのは、寂しかったからだ…。
私は、どうすればよかったの?
―肉体なぞ、ただの器にしか過ぎぬ。おまえはもっと早くにそれに気づくべきだった。理を破った罰を受け、ただ神の依り代を守るだけの存在となった今のおまえに、もはや掛ける言葉はない。
…それもそうね。
今の私は、神に見捨てられ、この体の奥底でじっとしているだけの存在。
ずっと、私が消失したと思っていたようだが、それは間違いだ。
私は、私の運命を変える者をずっと、ずっと待っていた。
人ならざる者を受け入れたこともあったけれど、その者は私の望む者ではなかった。
そうして現れたのが、私と同じ名を持つあの娘だった。
もう、二度と失うわけにはいかない。
―わかっている。おまえはおまえの使命を果たすがよい。
私はもう神ではない。
この娘を守るためには、聖櫃が必要になる。
―聖櫃とは何だ?それは何処にある?
聖櫃とはかつて私が王家の地下墳墓へと葬られた際に納められた棺のことよ。長い年月、私の体と心が閉じ込められて、私の魂の拠所となった愛する人への想いが行きつく場所。無くした心と繋がっているもの。
その中身を見たものは、その者にとってかけがえのないものが映し出される。そうすることで盗掘を免れ、外敵から守られて来たのよ。
―わかった。
我が聞きたかったことはこれですべてだ。
すべてはあなた次第よ、理の調整者。
そう、聞きたいというのなら話してあげる。
それは、もう遠い遠い昔の話よ―。
かつて人間は魔族のように長命だった。
しかし繁殖力が強く爆発的に人口が増えたために、食糧問題が深刻化してしまった。
思えば最初に人間を生み出した時から、生命というものはもう私の手を離れていたのかもしれない。
だからといって放っておくわけにもいかない。
繁栄を保ったまま、人間の数を一定数に保てるように、人間の寿命を100年程度にまで短くした。
でも彼らは種の保存という本能のままに、彼らなりに努力した結果、その数を益々増やしていくこととなった。
自らの創造物を減らすことができなかった私は、助けを欲して神を探した。
―神を見つけられず、代わりにイシュタムを見つけたのか。
そう。
それがたまたまなのか、神の仕組んだことだったのかは今となってはわからない。
私自身も最初の神によって生み出された存在なのだから。
イシュタムは魔界に揺蕩う名もなきただの意識体だったけど、私が名前と思考を与えると魔族という優秀な種族を生み出してくれた。
そのおかげで一時的に人間の数は減ったのだけど、その遺恨は後々まで続くことになってしまった。
―自分の創り出した生命を虐殺させてしまうことに、罪の意識はなかったのか?
もちろん、あったわ。
テュポーンなんて馬鹿げた怪物を送り出したイシュタムと魔族を憎いと思ったこともある。
だけど、世界の調律のためには仕方のないことだった。
だから、今度は人間たちを正しく導かねばならないと考えた。
それで私は、人間たちに秩序と安寧を与えるため、国という集合体を作って人間を管理しようと試みた。
実験的に造った最初の国は、人間たちが争い合って数年で自滅した。
その次の国も同じように争いで滅んだ。
それらの国々には名などなく、おそらく歴史にも残らないだろう。
文明レベルが低すぎて、あれは国などと云うものですらなかったから。
今よりもずっと人間たちは愚かで稚拙だったから、彼らを導くのは大変だった。
だけど、身近に良い手本があったことに気付いた。
―魔族か。
そうよ。
魔族は素晴らしいわ。
魔族は魔王の絶対的な力によって、完璧に統治されていた。
人間にも同じように絶対的な王を据えれば、うまく統治できるかもしれないと考えた私は、1人の青年を見つけ、力を与えた。
その名をオーウェンと云った。
オーウェンは自身の努力で強靭な肉体と力を得た実直な男だった。
その努力を認めた私は、彼と主従関係を結び、今までの人間には与えなかった癒し以外の魔法と力を与えた。
人間としては異常なほどの強い力を持つようになったオーウェンを、私は近くで見守らねばならなかった。
オーウェンの周囲には彼を慕う人間が集まるようになり、集団が軍団になり、やがて国となった。
―始まりの国、オーウェン神聖王国、だな。
ええ。初めての人間の国よ。
オーウェンは、未開の地だった人間の版図を開拓し、初代の王となった。
私は彼に請われて、王妃となった。
広大な土地を治めるのは並大抵のことではなく、私は彼の協力者たちとも主従関係を結び、力を与えて彼の治世に協力させた。
あなたも知っての通り、オーウェン王国は、今の人間の国全土におよぶ大王国になった。
―なのに、なぜオーウェンを裏切った?
裏切ったわけじゃないわ。
私には、彼を愛することができなかっただけよ。
彼に対しては、自分の創造物という認識はあっても、それ以上の感情を持てなかったから、夫として受け入れることはできなかった。そもそも、私には愛などという感情すらなかった。
私の使命は王国を存続させ、人間たちに秩序を与えること。そのためには、彼に子孫を多く残してもらわねばならなかった。
王妃という立場にあったけど、私は人間との間に子供を作ることはできなかったから、国内から選りすぐった美女たちを彼に与え、多くの子供を作らせたわ。
それがオーウェンには気に入らなかったみたいで、彼は次第に私に対して高圧的な態度を取るようになっていったのよ。
―そんなことは最初からわかっていたことだろう。
…私には人間が理解できていなかったのよ。
人間は感情に左右され行動するということを、わかっていなかった。
私はオーウェンと距離を置くため、王城の外の離宮で気に入った人間だけを傍に置き、そこで過ごすことにしたの。
ある時、オーウェンが、突然離宮に乗り込んで来て、私の取り巻きの若い男たちを次々と殺害してしまった。それを境に、私はオーウェンを見限り、王城を出奔したのよ。
―それだけが理由か?
いいえ。
私は人間たちの冷たい目に耐えられなくなったの。
人間の中で生活していた私は失念していたのよ。
自分の身体が歳をとらないことを。
年月を重ねても私の姿はいつまでも変わらぬ少女のままだった。
オーウェンは私を女神だと崇め、狂信的なまでに私を独占しようとしたわ。
そう、晩年の彼は、狂っていた。
人間たちはようやく、私が人間ではないことに気付いた。
周囲の者たちは私を恐れ、近寄ることさえしなくなり、いつしか人間たちは私の名を呼ぶことすら恐れるようになった。
私が城を去ると、年老いたオーウェンは失意の中で亡くなった。
その子が後を継ぎ、またその子が後を継ぎ…いつしか長い時が経った。
―おまえは城を出て、何をしていた?
まだ見ぬ地方の土地を、旅していたわ。
正直なところ、私は王国を操ることに飽きていた。
それでも王家の者たちは私を探し当て、城に戻るように説得しにきた。
でも、戻ったところで彼らは私を恐れるだけ。彼らは単に国を守護する役目を私に押し付けたいだけだった。
―戻らなかったのか?
どこにいても守護はできると云ってやったのよ。
広大な領地を視察するという名目で、所在だけを伝えることにして旅を続けたの。
―旅の目的は何だ?
さあね。自由になりたかったのかもしれないわ。
長い年月、私は気ままな旅を続けていた。
様々な人間と交流し、気まぐれにスキルや魔法の力を与えたりした。やがてその能力を受け継いだ子孫が増え、いつしか魔法士と云われる職業が生まれた。
その間に王が何人も代替わりし、徐々に国内は乱れていったわ。
気が付けば人間の大陸に1つだけだった国が、いくつも乱立するようになっていた。
私が力を与えた者の子孫たちが、オーウェン王国を見限って独立し、各地で国を興したのよ。
―王国を守ろうとはしなかったのか。
そんなことに意味はないわ。
人間が秩序を保って繁栄するのならば、どの国が栄えようと滅びようと構わない。
オーウェンという国はそのきっかけになったに過ぎないのだから。
長く王国を見て来て、人間は滞留すると、精神が腐っていくのだとわかったのよ。
古く長く続くものは、常に新しい流れを取り入れねば内側から腐って瓦解する。
この国はそう長くはないと、私にはわかっていた。
―旅は楽しかったか?
ええ。
旅の最後に訪れた地で、彼に出会ったから。
その頃のオーウェン王国は台頭してきたアトルヘイムという新興国に圧され、小国の1つに成り下がっていた。
旅に疲れた私は、王都から遠く離れた片田舎の地方都市に、宮殿を建てて住みついていた。
そこで出会ったのがエルヴィンだった。
出会った時、彼はまだ16歳だった。
エルヴィン・シュトラッサーはこの地を治めるシュトラッサー伯の三男で、その美しい容姿から私の宮殿の近衛騎士団の1人に選ばれていた。
見かけが同じくらいの年齢だったこともあり、彼とはすぐに打ち解けた。
地方貴族の三男坊などという立場は、魔族との戦いに駆り出されて、名誉の戦死を遂げることくらいでしか家に貢献できない程度の軽いものだ。
その容姿のおかげで親からは愛されていたけど、周囲から何の期待もされていないことに忸怩たる思いを抱いていた。
私が近衛騎士に任じると、彼は一生懸命仕えてくれた。
少し頼りないけど、私の云うことなら何でも聞いてくれたし、叶えてくれた。
彼は、今まで私が見て来た王宮貴族とは全く違っていて、裏表のない清らかな心を持っていた。
彼がオーウェンと違うのは、私を押さえつけたり、束縛しないところだった。少しおっちょこちょいで頼りないけど、素直で欲のない彼を、どこへ行くにも連れていくほど私は気に入っていた。
―ずいぶんと饒舌だな。その人間に惚れていたのか。
俗な云い方をするとそういうことになるかしら。
彼は真面目な騎士だから、睦言を囁いたりはしないし、私に対しても指一本触れることすらしなかった。
彼が私に好意を寄せていたことは明らかだった。
それがとても心地よかった。
彼の心を独り占めすることは、私が初めて人間に見せた執着心だったかもね。
―なのに、なぜあのようなことをしでかした?
…彼が私を裏切ったからよ。
あれは、彼が30歳になった時のことだったわ。
ある時、エルヴィンが私の宮殿を訪れたの。
彼は凛々しい近衛隊の制服に身を包んでいた。
30歳になっても、出会った頃と同じ少女の姿のままの私に、当然違和感はあったでしょうが、彼は態度を変えなかった。他の者たちが畏怖する中、なによりもそれが嬉しかった。
彼が訪れた理由を私は知っていた。
エルヴィンは父であるシュトラッサー伯爵から、領地と爵位を受け継いだ。
彼は三男で、上にはよくできた2人の兄がいる。
普通に考えれば彼が後継者になることなどありえない。
10歳年上の長兄は極東の国境警備の任務中に大怪我をし、帰国の見通しが立たなくなった。
1つ上の秀才の兄は公金横領罪に問われて塔に幽閉された。
それで三男の彼に後継者という地位が巡ってきたの。
私が力を使って、エルヴィンが後継者になれるようにしたのだから、当然の結果よね。
エルヴィンこそが領主に相応しいと思ったからそうなった。それだけのことよ。
私は、伯爵になった彼の喜ぶ顔が見たかった。
そしてその日、その喜ぶ顔を私に見せにきたはずだった。
だけど彼は硬い表情のまま、伯爵家を継ぐことを報告した。
何か様子がおかしい、そう思った。
そして次に彼の口から思わぬ言葉が放たれた。
「それでこの度、妻を迎えることになりました」
私は耳を疑った。
彼は硬い口調で、淡々と語った。
「三男に生まれた私は、領地を継ぐつもりはなく、一生あなたにお仕えしようと心に決めていました。しかし事情が変わり、私は領地を継がねばならなくなりました。後継者を残すために、親の勧める相手と婚姻することになったのです」
彼は驚く私の前に跪き、私の手を取って口づけした。
「ずっと、あなたをお慕いしていました」
それは、私が欲しかった言葉だった。
彼は私から目を逸らして立ち上がった。
「ですが、私には過ぎた想いでした。殿下と私では身分が違います。このような想いを抱えたことをお許しください」
「それでも、傍にいてくれるんでしょう?」
彼は少し悲しそうな表情をしながら、首を横に振った。
「お許しを。…実は、妻との婚姻式を挙げた後、王都の屋敷で暮らすことになったのです。このお役目も今日までとなります。私の代わりには若い騎士がお仕えします」
「なんですって…?」
「殿下のことは父から聞かされていました。殿下はこの国を守る女神なのだと。そんな高貴なお方に想いを寄せることなど、本来は許されるべきことではないのだと、父からは釘を刺されていました」
「ダメよ、私の傍を離れることは許しません」
「申し訳ありません殿下、ご理解ください」
理解しろと云われても、無理だった。
彼のためにと思ってしたことなのに、なぜこうなってしまったのだろう?
「あなたがなぜ昔と変わらぬ姿なのか、不思議に思ったこともありました。ですが、そんなことはどうでもよいことでした。殿下が永遠を生きる神であること、私のようなしがない普通の男では、あなたと生きていくことはできないということもわかっていました」
「嫌よ、行かないで」
「殿下、私は自分の運命には抗えない、普通の人間なのです。ですが…許されるのならば、あなたと共に生きたかった…」
彼は私に一礼し、踵を返して背を向けた。
「さようなら、トワ様」
彼は初めて私の名を呼んだ。
彼が去ってしまう。
何度も呼び掛けたのに、その背は扉の向こうに消えてしまった。
その時、私は頬を伝うものを感じた。
涙、だった。
初めて、自分が悲しんでいることに気付いた。
―それが感情というものだ。
その感情が痛みだと初めて知ったわ。
彼のたった一言で、こんなにも胸がしめつけられるような苦しみを味わうなんて。
驚きと戸惑いが私を支配した。
私は彼と同じ刻を生きられないし、子孫を残すこともできない。
いくら願っても、彼の望みを何ひとつ、叶えてあげられない自分を恨んだ。
―理に反することは神の力も働かぬ。それくらいわかっていたはずだ。
だけど願わずにはいられなかった。
願いが叶わないことは苦しい。
人間とは、こんな苦しみを抱えて生きねばならない生き物なのかと初めて悟った。
私には耐えられなかった。
―お前を支配した感情は、欲望というものだ。
欲望…。
そうか。
私の心を支配したのは、彼を私だけのものにしたい、という独占欲だったのか。
―それはかつてオーウェン王がおまえに抱いた感情と同じだ。
因果は巡る、とでも云いたいの?
確かに、そうかもしれない。
私は誰か知らない他の女に、彼を奪われたくないと思った。
そして何よりこの苦しみを終わらせたかった。
―それで、理に背いたのか。
それしか方法がなかったからよ。
自分の理に背いてでも、私は願わずにはいられなかった。
彼を私だけのものにしたい、ずっと一緒にいたい、と。
だから、彼が王都へ発つ前日の夜、彼を訪ねて密かにお茶のポットに毒を入れ、部屋を後にした。
翌日、彼は死んだ。
―それで、おまえは苦しみから逃れることができたのか?
いいえ。
苦しみは増すばかりだったわ。
苦しみに加え、空虚さが私を支配した。
その後、理に背いた報いが私の身に訪れたことは、知っているわよね?
―おまえが使った毒は、テュポーンの毒だったのだな。まさかそれが自分を殺すとは思ってもみなかったようだが。
昔、テュポーンを追い返した時に手に入れたものよ。
なぜかずっと小瓶に入れて手元に持っていたの。
あの女は、エルヴィンを殺した毒をポットから回収して、私の食事に毒を盛ったのよ。
私はそれを食べてあっけなく死んだわ。
あの女、エルヴィンの婚約者が私の侍女として宮殿に入り込んでいたのよ。
あの女は、夫の敵を討ったのだと勝ち誇ったように叫んでいたわ。その後、どうなったのかは知らないけど、きっと王室反逆罪で死罪にでもなったのでしょうね。
―悔しいか?
まさか。
私は彼を独占したのよ。
あの女は、私に愛する男を奪われて、嫉妬のあまり私を殺したの。そんなの、ただの自己満足にすぎないわ。
勝ったのは私。
―ならば、なぜそんなに寂しそうなのだ?
寂しそうですって?
私が?
―そうだ。気付いていないのか?
何に気付くというの?
―おまえが願ったことは、人間の男を独占したいということではない。人間として生きたいということだったのだろう。
…私は、人間になりたかった…?
―旅に出たのも、人間という存在を身近に感じたかったからだ。違うか?
…。
そうかもしれない。
―そうして、旅の終わりにようやく人間の感情というものを理解したのだ。人間を愛することによって。
そうよ…。
その通りよ。
旅の終わりに出会った彼と恋に落ちて、子供をもうけて、歳をとって死んでいく。
そんな普通の人間になりたかった。
そんなたったひとつの願いは、叶わなかった。
愛しい人を手にかけてまで得たものは、虚しさだけだった。
そもそも、私が人間を創り出したのは、寂しかったからだ…。
私は、どうすればよかったの?
―肉体なぞ、ただの器にしか過ぎぬ。おまえはもっと早くにそれに気づくべきだった。理を破った罰を受け、ただ神の依り代を守るだけの存在となった今のおまえに、もはや掛ける言葉はない。
…それもそうね。
今の私は、神に見捨てられ、この体の奥底でじっとしているだけの存在。
ずっと、私が消失したと思っていたようだが、それは間違いだ。
私は、私の運命を変える者をずっと、ずっと待っていた。
人ならざる者を受け入れたこともあったけれど、その者は私の望む者ではなかった。
そうして現れたのが、私と同じ名を持つあの娘だった。
もう、二度と失うわけにはいかない。
―わかっている。おまえはおまえの使命を果たすがよい。
私はもう神ではない。
この娘を守るためには、聖櫃が必要になる。
―聖櫃とは何だ?それは何処にある?
聖櫃とはかつて私が王家の地下墳墓へと葬られた際に納められた棺のことよ。長い年月、私の体と心が閉じ込められて、私の魂の拠所となった愛する人への想いが行きつく場所。無くした心と繋がっているもの。
その中身を見たものは、その者にとってかけがえのないものが映し出される。そうすることで盗掘を免れ、外敵から守られて来たのよ。
―わかった。
我が聞きたかったことはこれですべてだ。
すべてはあなた次第よ、理の調整者。
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