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(85)暴走
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「サヤカさん、サヤカさん、起きてください」
「う~ん…何…」
「サヤカさん!」
サヤカが目を覚ますと、目の前にウォルフがいた。
「あ…ウォルフ?」
体を起こすと、咳込んで、鳩尾が打撲したように痛かった。
「痛…っ」
サヤカはその痛みの理由を思い出した。
「そうだ、あの男…、私にパンチくらわしたんだ。あいつ~!いった…」
サヤカはウォルフに支えられてゆっくりと起き上がった。
辺りは血まみれで、四肢の損壊した遺体が転がっていた。
「ひぃっ!な、な…なにこれ…」
彼女の耳には風の音が聞こえていた。
「何この音…」
「あれを」
ウォルフの指差す方向には、黒髪を宙にたなびかせているサラが立っていた。
「サラ…?」
「彼女を中心に、目に見えない風の刃が舞っているんです。迂闊に近付けば斬られますよ」
「…あいつ、なんか変じゃない…?」
「先程から呼びかけているのですが、返事がない。意識がないみたいです」
「こっわ」
状況が呑み込めず、サヤカはウォルフに尋ねた。
「そだ…!あのオバサンは?」
「皇太后なら亡くなりましたよ。あなたの望み通りにね」
「え!マジ?あの人死んだんだ?誰がやったの?」
「その犯人ももう生きていません」
「…どういうこと?」
「あのお嬢さんの魔力が暴走したんですよ。もう誰にも止められない」
サヤカの隣にいた、黒衣を着た男が答えた。
その黒衣の男は笑っているような細い目をしていたが、やややつれた表情をしていた。
それは仮面を外したアイズマンだった。
「あんた誰?」
「…国際条約機構の調査員です」
「マジ?…ってか、これ、どういう状況なのか説明してよ」
「いいですよ」
サラを遠巻きに見ながら、アイズマンは語り出した。
「最初に異変に気付いたのは、部下のアゼルスが皇帝と刃を交えていた時でした。私はエカード様の命令で気を失っているあなたを運び出そうとしていたのです。すると、私の足元にアゼルスの頭部が転がってきたんです」
「ふえ…!?生首?」
「驚いて振り向くと、頭部のないアゼルスが立っていました。皇帝がやったのかとも思いましたが、彼は少し離れた所に呆然と立っているではありませんか。何事が起こったのかと、皇帝の視線の先を見ると、そこにはサラさんが立っていたんです」
ヒュン!
空を切る音がして、アイズマンは思わず身をかがめた。
そしてまた話を続けた。
「その時も、今の音がしたんです。すると立っていたアゼルスの体が、切り刻まれて肉片となり、バラバラと崩れて床に転がったんです」
それを見たアイズマンは、慌てて自分の前に障壁を張った。
すると、障壁に衝撃が走り、目には見えない風の刃がグルグルと回転していることがわかった。
アゼルスはその刃によって切り刻まれてしまったのだ。
その風の刃の中心にいたのはサラだった。
そして彼女の傍には彼が主と敬うエカードがいた。
「エカード様!お逃げください!」
エカードは、自らの魔法障壁で彼女の魔法を防ぎながら、後ずさりするように彼女から離れた。
風の刃を受けた彼は、顔や腕に切り傷が出来ていた。
「サラさん、やめなさい。魔法を使えとは命令していませんよ!」
エカードは強い口調で語り掛けた。
「命…令…」
サラは目を見開いたかと思うと、突然声を上げた。
「ああ…あああああ――」
サラの体の周辺に吹いていた風が急に威力を増し、渦を巻き始めた。
「うっ…バカな…。私の命令を拒絶しているのか…?」
それはサラを中心にしてグルグルと渦巻き、竜巻のように彼女の体を覆っていった。
竜巻は謁見の間の天井を破壊して、天まで昇って行った。
エカードは風に飛ばされぬよう踏ん張っていたが、その竜巻の渦の吸引力に体を持って行かれ、ついには宙を舞った。
「うあああ!」
「エカード様!!」
竜巻に巻き込まれたエカードを助けようとアイズマンは手を伸ばしたが、その強い吸引力に自分まで飛ばされそうになった。
その彼の手を掴んで引き戻してくれたのは皇帝だった。
「諦めろ。もう手遅れだ」
エカードは、渦に巻き込まれながら魔法を使おうとしたが、竜巻の遠心力の強さに身動きが取れずただグルグルと回されていた。
そして、バチッ!と電気が弾けるような音と共に、けたたましい悲鳴が聞こえた。
すると、竜巻を見上げていたアイズマンの頭上から、バラバラに千切れたエカードの四肢が降ってきた。
「あ…あ…!エカード様…!?いや、そんなはずはない、エカード様は誰より優れた魔法師だ。こんな簡単に死ぬはずが…」
アイズマンには、今起こっていることが信じられなかった。
その彼の目の前に、まるでボールのようにポーンと飛んできたのは、白髪の首だった。
「え…?」
アイズマンは思わずそれを手を伸ばしてキャッチした。
その手元を覗き込む。
それはカッと目を見開いたままの人の首だった。
「うわああああ!!エカード様―!!」
それは彼が主長と仰ぐエカードの生首だった。
アイズマンは、その首を胸に抱きしめた。
千年続く国際条約機構主長の、あまりにも呆気ない最期だった。
打ちひしがれるアイズマンを見下ろして、皇帝はそっと呟いた。
「サラが母上の仇を取ってくれたのか…」
その皇帝は、生き残っていた憲兵らに守られて、今は壁際にいる。
竜巻は勢いを落とすことなく謁見の間を我が物顔で暴れ回っている。こっそり逃げ出そうとする者がいると、見えない刃に切り刻まれてしまい、結局戻ることになってしまった。
竜巻の表面は、鋼鉄の扉ですら粉々に砕かれてしまうほどであり、指先が触れただけで腕ごと飛んでしまう。
アイズマンの話を聞いていたサヤカは身震いした。
「こっわ…。逃げられないんじゃん…」
「そのようです。我々を一人もここから逃がさないつもりらしい」
「なんで?」
「おそらく正気を失っていて、自分でもコントロールできない状態なんでしょう」
ウォルフは壁際の方へと視線を移した。
そこではウルリックがガイアの胸に包帯代わりの布を巻いて止血していた。
ウォルフと目が合うと、彼は首を横に振った。
ウォルフは唇を噛んだ。
「サヤカさんにお願いがあります。サラさんを魔法で攻撃してくれませんか」
「はあ?」
サヤカはウォルフを睨むように見た。
「彼女を押さえられるのは同じ異界人のあなただけです」
「…ちょっとさ、調子良すぎじゃない?私をあんな地下牢に閉じ込めといてさあ。都合のいい時だけそうやってお願いしてくんの?」
「わかっています。それを承知でお願いしています。もうあなたしか頼れる人がいないのです」
「ふーん?じゃあさ、土下座して私に謝ってよ。そしたら考えてあげる」
サヤカは顎をツンと上げてウォルフに命じた。
「それでサヤカさんの気が変わるのなら」
彼は迷うことなく彼女の前で膝をついた。
背後のアイズマンは驚いた表情で彼を見ていた。
「サヤカさん、申し訳ありませんでした。このとおり―」
ウォルフは両手を床について土下座をした。
アイズマンは見て見ぬふりをした。
サヤカは苦い顔をして、彼からプイと顔を背けた。
「あーあ、カッコ悪ーい!一気に冷めたわー」
ウォルフは顔を上げてサヤカを見た。
彼女は唇を尖らせていた。
「もういいよ。やってあげる。けど、そしたらあいつ死ぬよ?いいの?」
「仕方がありません。もし彼女がこのまま城の外に出たらこの都市は壊滅です。それに一刻も早く外に出て治療しなければならない怪我人がいるんです」
「へえ~、あっさりしてるんだね。それとさ、私の待遇良くしてよね。もうあんなきったないとこ嫌だからね?」
「約束します」
ウォルフが立ち上がると、その傍にアイズマンが来た。
「私も手伝いましょう」
「…あんたが?」
「ええ。こうなった責任の一端は我々にもありますしね。エカード様の引き起こした後始末をつけねばなりません。それに私の障壁はそこそこ役に立つと思いますよ」
笑っているような細い目で彼はウォルフを見つめた。
「わかった。手を貸してくれ」
ガイアの手当てをしていたウルリックは、息の荒い彼を難しい顔で見つめていた。
胸に巻かれた包帯代わりの布からは血が染み出していて痛々しかった。
ガイアは時々意識が戻ることもあったが、今は再び意識が混濁している。
「その者、容体はどうだ」
ウルリックに声を掛けたのは皇帝だった。
「出血が多すぎました。一刻も早くここを出てしかるべき方に診ていただかねば、お命にかかわります」
「…そうか。サラの魔力切れを待っている余裕はないか」
「サラさんの魔力は桁違いです。少なく見積もっても魔力が切れるまであと一週間から十日くらいはかかるでしょう」
「なんと…」
皇帝はサラを見つめた。
「先程サラは、余と敵対していた者の命を奪ったが、余には手を出さなかった。これは偶然か?」
「偶然ですよ。あの竜巻と風刃はサラさんの意志に関係なく、逃げようとしたり敵対行動を取ろうとする者を無差別に攻撃しているようですから」
「そうか…。ならばやはり、サラを倒さねばならんか」
ウルリックはため息をついてガイアを見下ろした。
「ええ…。主が知ったら許さないでしょうけどね…」
「他に方法はないのか?」
ウルリックは首を振った。
「サラさんを止められるのは、異界人しかいません。今なら皇太后の言ったことが正しいと思えます。やはり異界人にはもう一人ストッパーが必要だったんです」
ウルリックはウォルフとアイズマンがサヤカを伴ってサラに向って行くのを、不安気に見ていた。
「気がかりなのは、サラさんの魔力が以前とは比べものにならないほど増大していることです。上手くいくと良いのですが」
「…ああ」
その時皇帝は、ガイアの目が開いていることに気付いた。
アイズマンが一定の距離まで近づくと、竜巻が猛烈な勢いで回転し始めた。
強風と言うにはあまりにも強い風の中、彼は障壁を展開させた。
それを盾にして、サヤカは竜巻の正面に立ち、彼女が風に飛ばされぬようウォルフがその背を支えていた。
これほど近づかねばならないのは、周囲への被害を最低限に抑えるためにも、できるだけ近距離で魔法を撃つことが求められたからだ。
彼女は両手を前に出して印を組んだ。
「さあ、行っくよー!サラ、恨まないでよね!」
サヤカは竜巻の中心に向かって、爆裂魔法を放った。
アイズマンはサヤカが黒炎の塊を発射するその直前に障壁を消した。
巨大な黒炎の塊が竜巻にぶつかって、大爆発を起こした。
「…すまない、サラさん」
ウォルフは思わず呟いた。
アイズマンがすぐさま障壁を展開したおかげで、サヤカたちは爆風の被害を免れた。
「やったか…?」
アイズマンが呟いた。
爆発の煙が過ぎ去ると、竜巻は消えていた。
「嘘でしょ…」
思わずサヤカは呟いた。
サラは無傷でそこに立っていた。
その目は焦点が合っておらず、どこも見ていなかった。
「直撃しても無傷だなんて、ありえない…!」
サラはカッと目を見開いた。
その途端、サヤカたちは後ろの壁際まで弾き飛ばされた。
「きゃあ!」
「うおっ!」
アイズマンの障壁があったからその程度で済んだのだろうが、三人とも謁見の間の壁にしたたかに打ち付けられた。
「いった…」
「くっ…やはり異界人の力は桁違いですね…」
アイズマンは呟いた。
三人共、すぐに動くことができなかった。
サラはその彼らの元へ、ゆらゆらと揺れながら歩み寄ってくる。
風の刃がヒュンヒュンと音を立てて舞っている。
サヤカの頭上の壁が、風の刃によって削られて、石粒がバラバラと落ちて来た。
「きゃあ!ちょ、ちょっとサラ…!冗談はやめてよ!ねえ!」
サヤカが話しかけても、サラは動きを止めなかった。
風の刃は周囲の壁や瓦礫を破壊していく。
もうじき自分たちもあの刃で切り裂かれるのだろうか。
ウォルフはここまでか、と覚悟を決めた。
「よせ、サラ!」
その声がした時、一瞬サラは動きを止めた。
ウォルフは声のした方を見て、目を見開いた。
そこに立っていたのは彼の兄だったからだ。
「兄…上…」
血のにじむ胸の包帯が痛々しい彼の兄・ガイアは、皇帝とウルリックに両肩を担がれていた。
「ウルリック!なぜ兄上を起こした!?」
ウォルフは責めるように声を上げた。
彼の声に答えたのはガイア本人だった。
「好きな女の一人も守れんのかと、皇帝に責められてな」
ガイアは隣にいる皇帝に視線を送った。
「余は母を失い、この城すらも失おうとしている。せめて愛した女くらいは救ってやりたいのだ」
「フッ、キザなことを言うではないか」
「ガイウス。悔しいがサラは貴様のことを想っている。その想いに貴様が応えられるのならば、サラに届くやもしれぬ。余に貴様の本気を見せてみよ」
「ああ、見せてやるさ」
皇帝が思わぬ男気を見せたことに驚き、ウォルフは何も言えなくなった。
「フッ、こういう危機的状況時で人間の本質が試される。皇帝陛下、私はあなたを少し誤解していたようです」
アイズマンはそう言って微笑んだ。
「サラと一対一で話をしてみる」
ガイアはそう言って、ウルリックと皇帝の手を振り切った。
「主、危険です!切り刻まれますよ!」
「そうです兄上!今のサラさんは正気を失っています。とても話ができる状態ではありません」
「近づいただけで首が飛びますよ。やめた方が良い」
皆がガイアを止めた。
「大丈夫だ」
ガイアはそう言って彼らに微笑みを返した。
「サラは俺を殺したりはしない」
ガイアは自信を見せて、ゆっくりとサラに近づいて行った。
「サラ、俺がわかるか」
ヒュンヒュン、と風の刃が舞う音がする。
風刃が彼の髪を、腕を、肩を、頬を傷つける。
その都度、ガイアから血が飛び散った。
「俺を見ろ、サラ」
<血が…>
「サラ、おまえがいくら傷つけても痛くはない」
彼の体中に細かな傷はつくものの、首が落ちるような致命傷は一つもなかった。
<ガイアの…血>
「痛いのは俺じゃない。おまえだ」
サラの目は虚ろだったが、やがて光が宿り始めた。
<ガイアが血を流してる。…私の…私のせい…>
サラの操る風の刃は容赦なくガイアを傷つける。
それにも構わず、彼女の目の前まで来たところで、ガイアは両腕を広げた。
「おまえを迎えに来てやったんだ」
ガイアの腕も手も傷だらけになり、いつしか血まみれになっていた。
<いや…やめて…彼を傷つけたくない>
「俺の言う事を聞け!おまえは俺の奴隷だろう?」
ガイアが大声で叫ぶと、風がピタリと止まった。
宙にフワフワとなびいていたサラの髪が彼女の背中に落ちた。
ガイアは一歩踏み込むと、強引にサラをその胸に抱きしめた。
「サラ、もう大丈夫だ。俺はここにいる」
「あ…」
サラの目から涙が一筋流れた。
「サラ…。俺がわかるか?」
サラの目に徐々に光が戻ってきた。
「ガイ…ア…」
「ああ、そうだ。俺だ。おまえのご主人様だ」
彼女は顔をくしゃくしゃにして、彼の胸に顔を埋めた。
「ガイア…ガイア…」
泣きじゃくる彼女を、ガイアは痛む胸に抱きしめた。
そうして二人はしばらく抱き合っていた。
「はーっ!助かったぁ…」
サヤカが安堵の声を上げた。
ウォルフがサヤカに手を差し伸べて立ち上がらせた。
「ね、私役に立ったよね?」
「ええ、十分に」
アイズマンもズボンについた埃をパンパンとはたいて立ち上がった。
「殿下がいて下さって助かりましたね」
アイズマンの言葉を皇帝は少し複雑な表情で聞いていた。
崩れて空が見える謁見の間の天井から夕陽が差し込んだ。
夕焼けが彼らの頬を照らしていた。
サラはガイアの表情に苦痛が混じるのに気づき、慌ててその胸から離れようとした。
「ごめんなさい…ごめんなさい…私のせいでこんな怪我を…」
「いいんだ、もういい。おまえのせいじゃない」
「だって、人も殺しちゃった…」
「おまえの意思じゃない。おまえは悪くないんだ」
ガイアはサラを再び抱き寄せ、その髪を優しく撫でる。
「ああ…、綺麗だ。やっぱりおまえの黒い髪はいいな…」
ガイアはそれだけ言うと、ズルリとサラの腕の中に倒れ込んだ。
「ガイア…?ガイア!?しっかりして!ガイア!!」
しかし、いくら呼んでも彼は目を開けなかった。
「う~ん…何…」
「サヤカさん!」
サヤカが目を覚ますと、目の前にウォルフがいた。
「あ…ウォルフ?」
体を起こすと、咳込んで、鳩尾が打撲したように痛かった。
「痛…っ」
サヤカはその痛みの理由を思い出した。
「そうだ、あの男…、私にパンチくらわしたんだ。あいつ~!いった…」
サヤカはウォルフに支えられてゆっくりと起き上がった。
辺りは血まみれで、四肢の損壊した遺体が転がっていた。
「ひぃっ!な、な…なにこれ…」
彼女の耳には風の音が聞こえていた。
「何この音…」
「あれを」
ウォルフの指差す方向には、黒髪を宙にたなびかせているサラが立っていた。
「サラ…?」
「彼女を中心に、目に見えない風の刃が舞っているんです。迂闊に近付けば斬られますよ」
「…あいつ、なんか変じゃない…?」
「先程から呼びかけているのですが、返事がない。意識がないみたいです」
「こっわ」
状況が呑み込めず、サヤカはウォルフに尋ねた。
「そだ…!あのオバサンは?」
「皇太后なら亡くなりましたよ。あなたの望み通りにね」
「え!マジ?あの人死んだんだ?誰がやったの?」
「その犯人ももう生きていません」
「…どういうこと?」
「あのお嬢さんの魔力が暴走したんですよ。もう誰にも止められない」
サヤカの隣にいた、黒衣を着た男が答えた。
その黒衣の男は笑っているような細い目をしていたが、やややつれた表情をしていた。
それは仮面を外したアイズマンだった。
「あんた誰?」
「…国際条約機構の調査員です」
「マジ?…ってか、これ、どういう状況なのか説明してよ」
「いいですよ」
サラを遠巻きに見ながら、アイズマンは語り出した。
「最初に異変に気付いたのは、部下のアゼルスが皇帝と刃を交えていた時でした。私はエカード様の命令で気を失っているあなたを運び出そうとしていたのです。すると、私の足元にアゼルスの頭部が転がってきたんです」
「ふえ…!?生首?」
「驚いて振り向くと、頭部のないアゼルスが立っていました。皇帝がやったのかとも思いましたが、彼は少し離れた所に呆然と立っているではありませんか。何事が起こったのかと、皇帝の視線の先を見ると、そこにはサラさんが立っていたんです」
ヒュン!
空を切る音がして、アイズマンは思わず身をかがめた。
そしてまた話を続けた。
「その時も、今の音がしたんです。すると立っていたアゼルスの体が、切り刻まれて肉片となり、バラバラと崩れて床に転がったんです」
それを見たアイズマンは、慌てて自分の前に障壁を張った。
すると、障壁に衝撃が走り、目には見えない風の刃がグルグルと回転していることがわかった。
アゼルスはその刃によって切り刻まれてしまったのだ。
その風の刃の中心にいたのはサラだった。
そして彼女の傍には彼が主と敬うエカードがいた。
「エカード様!お逃げください!」
エカードは、自らの魔法障壁で彼女の魔法を防ぎながら、後ずさりするように彼女から離れた。
風の刃を受けた彼は、顔や腕に切り傷が出来ていた。
「サラさん、やめなさい。魔法を使えとは命令していませんよ!」
エカードは強い口調で語り掛けた。
「命…令…」
サラは目を見開いたかと思うと、突然声を上げた。
「ああ…あああああ――」
サラの体の周辺に吹いていた風が急に威力を増し、渦を巻き始めた。
「うっ…バカな…。私の命令を拒絶しているのか…?」
それはサラを中心にしてグルグルと渦巻き、竜巻のように彼女の体を覆っていった。
竜巻は謁見の間の天井を破壊して、天まで昇って行った。
エカードは風に飛ばされぬよう踏ん張っていたが、その竜巻の渦の吸引力に体を持って行かれ、ついには宙を舞った。
「うあああ!」
「エカード様!!」
竜巻に巻き込まれたエカードを助けようとアイズマンは手を伸ばしたが、その強い吸引力に自分まで飛ばされそうになった。
その彼の手を掴んで引き戻してくれたのは皇帝だった。
「諦めろ。もう手遅れだ」
エカードは、渦に巻き込まれながら魔法を使おうとしたが、竜巻の遠心力の強さに身動きが取れずただグルグルと回されていた。
そして、バチッ!と電気が弾けるような音と共に、けたたましい悲鳴が聞こえた。
すると、竜巻を見上げていたアイズマンの頭上から、バラバラに千切れたエカードの四肢が降ってきた。
「あ…あ…!エカード様…!?いや、そんなはずはない、エカード様は誰より優れた魔法師だ。こんな簡単に死ぬはずが…」
アイズマンには、今起こっていることが信じられなかった。
その彼の目の前に、まるでボールのようにポーンと飛んできたのは、白髪の首だった。
「え…?」
アイズマンは思わずそれを手を伸ばしてキャッチした。
その手元を覗き込む。
それはカッと目を見開いたままの人の首だった。
「うわああああ!!エカード様―!!」
それは彼が主長と仰ぐエカードの生首だった。
アイズマンは、その首を胸に抱きしめた。
千年続く国際条約機構主長の、あまりにも呆気ない最期だった。
打ちひしがれるアイズマンを見下ろして、皇帝はそっと呟いた。
「サラが母上の仇を取ってくれたのか…」
その皇帝は、生き残っていた憲兵らに守られて、今は壁際にいる。
竜巻は勢いを落とすことなく謁見の間を我が物顔で暴れ回っている。こっそり逃げ出そうとする者がいると、見えない刃に切り刻まれてしまい、結局戻ることになってしまった。
竜巻の表面は、鋼鉄の扉ですら粉々に砕かれてしまうほどであり、指先が触れただけで腕ごと飛んでしまう。
アイズマンの話を聞いていたサヤカは身震いした。
「こっわ…。逃げられないんじゃん…」
「そのようです。我々を一人もここから逃がさないつもりらしい」
「なんで?」
「おそらく正気を失っていて、自分でもコントロールできない状態なんでしょう」
ウォルフは壁際の方へと視線を移した。
そこではウルリックがガイアの胸に包帯代わりの布を巻いて止血していた。
ウォルフと目が合うと、彼は首を横に振った。
ウォルフは唇を噛んだ。
「サヤカさんにお願いがあります。サラさんを魔法で攻撃してくれませんか」
「はあ?」
サヤカはウォルフを睨むように見た。
「彼女を押さえられるのは同じ異界人のあなただけです」
「…ちょっとさ、調子良すぎじゃない?私をあんな地下牢に閉じ込めといてさあ。都合のいい時だけそうやってお願いしてくんの?」
「わかっています。それを承知でお願いしています。もうあなたしか頼れる人がいないのです」
「ふーん?じゃあさ、土下座して私に謝ってよ。そしたら考えてあげる」
サヤカは顎をツンと上げてウォルフに命じた。
「それでサヤカさんの気が変わるのなら」
彼は迷うことなく彼女の前で膝をついた。
背後のアイズマンは驚いた表情で彼を見ていた。
「サヤカさん、申し訳ありませんでした。このとおり―」
ウォルフは両手を床について土下座をした。
アイズマンは見て見ぬふりをした。
サヤカは苦い顔をして、彼からプイと顔を背けた。
「あーあ、カッコ悪ーい!一気に冷めたわー」
ウォルフは顔を上げてサヤカを見た。
彼女は唇を尖らせていた。
「もういいよ。やってあげる。けど、そしたらあいつ死ぬよ?いいの?」
「仕方がありません。もし彼女がこのまま城の外に出たらこの都市は壊滅です。それに一刻も早く外に出て治療しなければならない怪我人がいるんです」
「へえ~、あっさりしてるんだね。それとさ、私の待遇良くしてよね。もうあんなきったないとこ嫌だからね?」
「約束します」
ウォルフが立ち上がると、その傍にアイズマンが来た。
「私も手伝いましょう」
「…あんたが?」
「ええ。こうなった責任の一端は我々にもありますしね。エカード様の引き起こした後始末をつけねばなりません。それに私の障壁はそこそこ役に立つと思いますよ」
笑っているような細い目で彼はウォルフを見つめた。
「わかった。手を貸してくれ」
ガイアの手当てをしていたウルリックは、息の荒い彼を難しい顔で見つめていた。
胸に巻かれた包帯代わりの布からは血が染み出していて痛々しかった。
ガイアは時々意識が戻ることもあったが、今は再び意識が混濁している。
「その者、容体はどうだ」
ウルリックに声を掛けたのは皇帝だった。
「出血が多すぎました。一刻も早くここを出てしかるべき方に診ていただかねば、お命にかかわります」
「…そうか。サラの魔力切れを待っている余裕はないか」
「サラさんの魔力は桁違いです。少なく見積もっても魔力が切れるまであと一週間から十日くらいはかかるでしょう」
「なんと…」
皇帝はサラを見つめた。
「先程サラは、余と敵対していた者の命を奪ったが、余には手を出さなかった。これは偶然か?」
「偶然ですよ。あの竜巻と風刃はサラさんの意志に関係なく、逃げようとしたり敵対行動を取ろうとする者を無差別に攻撃しているようですから」
「そうか…。ならばやはり、サラを倒さねばならんか」
ウルリックはため息をついてガイアを見下ろした。
「ええ…。主が知ったら許さないでしょうけどね…」
「他に方法はないのか?」
ウルリックは首を振った。
「サラさんを止められるのは、異界人しかいません。今なら皇太后の言ったことが正しいと思えます。やはり異界人にはもう一人ストッパーが必要だったんです」
ウルリックはウォルフとアイズマンがサヤカを伴ってサラに向って行くのを、不安気に見ていた。
「気がかりなのは、サラさんの魔力が以前とは比べものにならないほど増大していることです。上手くいくと良いのですが」
「…ああ」
その時皇帝は、ガイアの目が開いていることに気付いた。
アイズマンが一定の距離まで近づくと、竜巻が猛烈な勢いで回転し始めた。
強風と言うにはあまりにも強い風の中、彼は障壁を展開させた。
それを盾にして、サヤカは竜巻の正面に立ち、彼女が風に飛ばされぬようウォルフがその背を支えていた。
これほど近づかねばならないのは、周囲への被害を最低限に抑えるためにも、できるだけ近距離で魔法を撃つことが求められたからだ。
彼女は両手を前に出して印を組んだ。
「さあ、行っくよー!サラ、恨まないでよね!」
サヤカは竜巻の中心に向かって、爆裂魔法を放った。
アイズマンはサヤカが黒炎の塊を発射するその直前に障壁を消した。
巨大な黒炎の塊が竜巻にぶつかって、大爆発を起こした。
「…すまない、サラさん」
ウォルフは思わず呟いた。
アイズマンがすぐさま障壁を展開したおかげで、サヤカたちは爆風の被害を免れた。
「やったか…?」
アイズマンが呟いた。
爆発の煙が過ぎ去ると、竜巻は消えていた。
「嘘でしょ…」
思わずサヤカは呟いた。
サラは無傷でそこに立っていた。
その目は焦点が合っておらず、どこも見ていなかった。
「直撃しても無傷だなんて、ありえない…!」
サラはカッと目を見開いた。
その途端、サヤカたちは後ろの壁際まで弾き飛ばされた。
「きゃあ!」
「うおっ!」
アイズマンの障壁があったからその程度で済んだのだろうが、三人とも謁見の間の壁にしたたかに打ち付けられた。
「いった…」
「くっ…やはり異界人の力は桁違いですね…」
アイズマンは呟いた。
三人共、すぐに動くことができなかった。
サラはその彼らの元へ、ゆらゆらと揺れながら歩み寄ってくる。
風の刃がヒュンヒュンと音を立てて舞っている。
サヤカの頭上の壁が、風の刃によって削られて、石粒がバラバラと落ちて来た。
「きゃあ!ちょ、ちょっとサラ…!冗談はやめてよ!ねえ!」
サヤカが話しかけても、サラは動きを止めなかった。
風の刃は周囲の壁や瓦礫を破壊していく。
もうじき自分たちもあの刃で切り裂かれるのだろうか。
ウォルフはここまでか、と覚悟を決めた。
「よせ、サラ!」
その声がした時、一瞬サラは動きを止めた。
ウォルフは声のした方を見て、目を見開いた。
そこに立っていたのは彼の兄だったからだ。
「兄…上…」
血のにじむ胸の包帯が痛々しい彼の兄・ガイアは、皇帝とウルリックに両肩を担がれていた。
「ウルリック!なぜ兄上を起こした!?」
ウォルフは責めるように声を上げた。
彼の声に答えたのはガイア本人だった。
「好きな女の一人も守れんのかと、皇帝に責められてな」
ガイアは隣にいる皇帝に視線を送った。
「余は母を失い、この城すらも失おうとしている。せめて愛した女くらいは救ってやりたいのだ」
「フッ、キザなことを言うではないか」
「ガイウス。悔しいがサラは貴様のことを想っている。その想いに貴様が応えられるのならば、サラに届くやもしれぬ。余に貴様の本気を見せてみよ」
「ああ、見せてやるさ」
皇帝が思わぬ男気を見せたことに驚き、ウォルフは何も言えなくなった。
「フッ、こういう危機的状況時で人間の本質が試される。皇帝陛下、私はあなたを少し誤解していたようです」
アイズマンはそう言って微笑んだ。
「サラと一対一で話をしてみる」
ガイアはそう言って、ウルリックと皇帝の手を振り切った。
「主、危険です!切り刻まれますよ!」
「そうです兄上!今のサラさんは正気を失っています。とても話ができる状態ではありません」
「近づいただけで首が飛びますよ。やめた方が良い」
皆がガイアを止めた。
「大丈夫だ」
ガイアはそう言って彼らに微笑みを返した。
「サラは俺を殺したりはしない」
ガイアは自信を見せて、ゆっくりとサラに近づいて行った。
「サラ、俺がわかるか」
ヒュンヒュン、と風の刃が舞う音がする。
風刃が彼の髪を、腕を、肩を、頬を傷つける。
その都度、ガイアから血が飛び散った。
「俺を見ろ、サラ」
<血が…>
「サラ、おまえがいくら傷つけても痛くはない」
彼の体中に細かな傷はつくものの、首が落ちるような致命傷は一つもなかった。
<ガイアの…血>
「痛いのは俺じゃない。おまえだ」
サラの目は虚ろだったが、やがて光が宿り始めた。
<ガイアが血を流してる。…私の…私のせい…>
サラの操る風の刃は容赦なくガイアを傷つける。
それにも構わず、彼女の目の前まで来たところで、ガイアは両腕を広げた。
「おまえを迎えに来てやったんだ」
ガイアの腕も手も傷だらけになり、いつしか血まみれになっていた。
<いや…やめて…彼を傷つけたくない>
「俺の言う事を聞け!おまえは俺の奴隷だろう?」
ガイアが大声で叫ぶと、風がピタリと止まった。
宙にフワフワとなびいていたサラの髪が彼女の背中に落ちた。
ガイアは一歩踏み込むと、強引にサラをその胸に抱きしめた。
「サラ、もう大丈夫だ。俺はここにいる」
「あ…」
サラの目から涙が一筋流れた。
「サラ…。俺がわかるか?」
サラの目に徐々に光が戻ってきた。
「ガイ…ア…」
「ああ、そうだ。俺だ。おまえのご主人様だ」
彼女は顔をくしゃくしゃにして、彼の胸に顔を埋めた。
「ガイア…ガイア…」
泣きじゃくる彼女を、ガイアは痛む胸に抱きしめた。
そうして二人はしばらく抱き合っていた。
「はーっ!助かったぁ…」
サヤカが安堵の声を上げた。
ウォルフがサヤカに手を差し伸べて立ち上がらせた。
「ね、私役に立ったよね?」
「ええ、十分に」
アイズマンもズボンについた埃をパンパンとはたいて立ち上がった。
「殿下がいて下さって助かりましたね」
アイズマンの言葉を皇帝は少し複雑な表情で聞いていた。
崩れて空が見える謁見の間の天井から夕陽が差し込んだ。
夕焼けが彼らの頬を照らしていた。
サラはガイアの表情に苦痛が混じるのに気づき、慌ててその胸から離れようとした。
「ごめんなさい…ごめんなさい…私のせいでこんな怪我を…」
「いいんだ、もういい。おまえのせいじゃない」
「だって、人も殺しちゃった…」
「おまえの意思じゃない。おまえは悪くないんだ」
ガイアはサラを再び抱き寄せ、その髪を優しく撫でる。
「ああ…、綺麗だ。やっぱりおまえの黒い髪はいいな…」
ガイアはそれだけ言うと、ズルリとサラの腕の中に倒れ込んだ。
「ガイア…?ガイア!?しっかりして!ガイア!!」
しかし、いくら呼んでも彼は目を開けなかった。
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