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(81)サヤカ8 ☆

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「う…ん」

 サヤカはベッドの上で目覚めた。
 ベッドと言っても木でできた粗末なもので、マットレスの代わりに藁のような草が敷き詰められ、その上にシーツが掛けられただけの簡素なものだった。
 壁に布団代わりの茶色いローブが掛かっている以外は、何もない殺風景な部屋だ。
 両腕を後ろで拘束されているため、起き上がるのにも苦労した。
 昨夜も遅くまでブールの相手をさせられていた。
 なんとか言いくるめて避妊香を焚いてもらってはいるけど、あの男はサヤカを孕ませる気満々だ。
 体がだるく、鉛のようだった。

 サヤカは助けに来てくれたサラを追い返してしまったことを後悔していた。
 あの時はカッとなってあんなことを言ってしまったけれど、正直ここの暮らしは辛い。
 意地を張らずに、素直に助けてって言えば良かった。

「だってあいつ、あんなイケメン連れてきてさ…ずるいじゃん…」

 ふと独り言が漏れる。
 サヤカはサラと一緒に居た男のことを思い出した。
 背が高くて綺麗な髪と目をしていた。
 騎士というより貴族っぽかった。
 あの奥手なサラが、あんな男とどこで知り合ったというのだろう。
 
 そういえばウォルフはどうしているのだろう。
 あれから一度も姿を見ていない。

 サヤカが彼にこだわるのは、もちろん見た目が好みということもあるが、見知らぬ場所でいけ好かない大人たちに囲まれて心細かった時、ウォルフだけが優しくしてくれたからだ。
 わがままも聞いてくれたし優しく抱いてくれた。セックスも上手かった。
 そんな彼に惹かれない理由はなかった。
 話をする相手と言えば、同じ世界から来た優等生のサラだけだった。だけど、得意の下ネタなんかを話すと、見下したような目で見た。彼女とはまったく噛み合わなかった。
 サヤカのこの世界での心の拠り所はウォルフの存在だけだった。
 だから彼を失うわけにはいかなかった。

「はー、さびしい。男なんてよりどりみどりだったのになあ…」

 サヤカは元の世界でのことを思い出していた。
 あの頃は毎日誰かしらと一緒にいて、一人になることなどまずなかった。
 一人になると、嫌なことばかり考えてしまうから、常に誰かと触れていたかった。
 こっちへ来る直前まで一緒に居た一個上の彼とは、つき合って半年くらいで半同棲状態だった。
 家は金持ちだけど子供はほったらかしという境遇も似ていて気が合った。
 彼は親に買ってもらった高級マンションで一人暮らししていて、そこにはいつも半グレみたいな連中が溜まっていた。
 サヤカもそこに入り浸っていて、夜毎開かれる乱交パーティーに参加して遊んでいた。
 クスリもそこで覚えた。
 快楽を求めるあまり、どんどん強いクスリをやるようになっていって、あの日も学校の屋上でセックスしていた。
 あの時、彼も同じクスリを飲んだのに、自分だけが死んで、彼は生きているなんて不公平だと思う。

「あ~あ、ツイてない。喉乾いた…、おなかすいた~」

 部屋の中を見ると、壁際にテーブルがひとつあり、その上にはカップに入った水と深皿が乗ったトレイが置かれていた。
 サヤカはよろよろと立ち上がり、テーブルの傍に歩み寄った。
 足には鎖が巻かれていて、歩くたびにガチャガチャと音を立てる。
 皿にはすっかり冷めた野菜のスープが入っていた。

「なによこれ…どーやって飲めって?しかも肉入ってねーし」

 いつもはブールに食事を食べさせてもらっていた。
 食事の時には必ずいたのに、なぜか今日は食事のトレイだけが置かれていた。

「あいつ、マジふざけんなよ」

 仕方なく、皿に直接口をつけてすするように飲んだ。
 おかげで髪の毛までスープの中に浸かってしまい、彼女は頭を振って雫を落とすことしかできなかった。

「あーあ、最悪。…ったくあのブサメン、どこ行ったんだか」

 そうしていると、背後で扉の鍵が開く音がして、誰かが入ってくる気配がした。
 彼女はブールが入ってきたと思って振り向いた。

「ちょっとぉー、どこ行って…」

 だがそれは別人だった。

「ここにいたんだな。探したぜ」
「…あんた、あの時の兵士…」
「グエンだ。覚えててくれたんだな、嬉しいぜ」

 それは地下牢に繋がれたサヤカを、最初に犯した二人組の男の片割れだった。
 初めてサヤカの尻を犯した男たちで、彼女にとっては忘れられない男だった。

「今日は一人なんだ?もう一人の奴はどうしたのよ?」
「フォボスなら部屋の外で見張ってるぜ。コイントスでどっちが見張るか決めたんだ」
「ふ~ん?で、そのグエンさんが何の用?」
「あんたのことが忘れらんなくてさ」
「あんた、よくも顔を出せたね。あんな酷いことしといてさ」
「何だよ、そっちだって良さそうだっただろ。奴隷のくせに文句言うなよ」
「私は奴隷じゃないってば!」

 サヤカは叫んだ。

「てか、あのデカ男、どこ行ったのさ?」
「なんか呼ばれて城の中に行ったみたいだぜ。その隙にあいつの部屋から密かに鍵を拝借してきたんだ」

 彼女は舌打ちした。

「ねえ、あんた何か食べ物持ってないの?」
「持ってねーよ。なんだ、腹減ってんのか?」
「スープしか飲ませてくれないんだもん。もうペッコペコだよ」
「…なあ、あんた、俺と逃げねえ?そしたら腹一杯うまいもん食わせてやるよ」
「マジ?ここから出してくれんの?」
「ああ。そのつもりで来たんだ。だからよ、その前に…いいか?」

 グエンはサヤカをぐるりと後ろ向きにして、尻の合間に指を沿わせた。

「ちょっと、するんなら避妊香つけてよ」
「んなもん、いらねーだろ」
「やだ、いるってば!つけないならしないでよ」
「クソ生意気な女だぜ。おら、文句言わずに脚開けよ」
「絶対嫌!!無理!!」
「無理じゃねーよ」

 彼は背後からサヤカの胸を揉みながら、尻を伝って蜜壺に指を侵入させた。
 指を動かすたびに股間からチュクチュクと濡れた音が響く。

「ちょっと、やめてよ!」
「何だよ、好きなくせに」

 グエンはサヤカの背中をドンと押して、ベッドに突き飛ばした。
 サヤカはうつ伏せでベッドに倒れ込んだ。

「きゃっ!何すんのよ!」

 グエンはズボンを脱いで、下半身を露出した状態でサヤカに背後から襲い掛かった。
 両手で彼女の腰を持ち上げ、その狭間に男根を当てがった。

「や…っ、やだってば!」
「やだとか言いながら濡れてんじゃねーかよ」

 サヤカは足をバタバタさせながら抵抗した。

「やだ、やめて、挿れないで!」
「つれないこというなよ」

 グエンは彼女の秘所にグッと腰を入れ、挿入した。

「やあ…ああっ」
「どうだ?いいだろ?」
「…フン、全然」
「そうかよ。そんじゃ遠慮はいらねえな」

 グエンは彼女の腰を掴んで激しく突いた。
 パンパン、と肌がぶつかる音が響く。

「あっ、あっ」
「くっ…イきそうだ」
「やっあーっ、やめて、中で出さないで!絶対ダメ!お願いだからやめて!」
「わかったよ。じゃあこっちならいいだろ」

 グエンは彼女の尻を掴んで左右に広げると、膣から愛液にまみれた男根を引き抜いて、尻穴に無理矢理ねじ込んだ。

「ああっ!いやあ…あ…あっ」
「なんだよ、すんなり入るじゃねーの。だいぶ開発されたみたいだな」
「やあっ…」
「ケツん中に思いきり出してやるからな」
「あっあーっ…」
「くーっ、締まる…」

 尻穴をめちゃくちゃに犯すと、グエンはたっぷりと内部に射精した。
 それを抜くと、白濁した液体が彼女の尻穴から大量に垂れ落ちた。

「ふーっ、気持ち良かった~…」
「もう~~!何よ、自分勝手にイっちゃってさ。こっちは全然だわよ」
「何だよ、気持ち良かっただろ?」
「はあ?何言ってんの?イってないっての!」

 サヤカはうつ伏せのまま文句を言った。

「しゃーねえな。んじゃ指でイかしてやんよ」

 グエンは彼女の体を仰向けにして脚を開かせた。
 左手で陰核をクリクリと擦りながら、右手指を二本、膣の中へ侵入させ、愛液を掻き出すように指を動かした。

「あっ、あんっ、それいい…!私、クリ派なの…!もっとコリコリしてぇ」
「ヘヘ、ここがいいのか?この淫乱め」

 サヤカの陰部を指で弄っているうち、グエンは再び興奮し、起ち上がってきた。
 グエンの指でようやくイったサヤカのそこに、彼は男根を当てがった。

「挿れるぜ」
「絶対中に出さないでよ!」
「さあ、どうかな」

 グエンはサヤカの中に挿入しようとした。

 その時サヤカは、グエンの背後にゆらりと立つ人物の姿を見た。
 彼女は思わず短く悲鳴を上げた。

「ひっ…!ちょ、ちょっと…」
「何だよ。ちょっと待ってろよ。今良い気持ちにさせてやんよ」

 サヤカはその人物が無言で、丸太のように逞しい両腕を振りかぶるのを見ていた。
 その両手には巨大なこん棒が握られていた。
 その人物はブールだった。

「ちょ…ヤバイって!」
「あぁ?何が?」

 ブールは思いきりこん棒をグエンの後頭部に振り下ろした。

「ぐあっ!!」

 グエンは悲鳴を上げた。
 サヤカの顔に血しぶきが飛んだ。

「ひっ…!血!?」

 グエンは頭に衝撃を受けて後頭部に手をやると、その手には血がベッタリとついていた。
 そしてようやく背後に立っているブールに気付いた。

「ひいっ!ブ、ブール…」
「何をしているんです」

 ブールは冷静に問い掛けた。
 グエンは驚いてサヤカの上から転がり落ちるようにベッドの下に尻もちをついた。

「勝手に入られては困りますね」
「み、見張りのフォボスはどうした?」
「外で転がっていますよ」
「…!こ、殺したのか?おまえ、フォボスを殺したのか?」
「この地下牢は私の城です。ここでは私が支配者だ。下っ端兵士の一人や二人、殺したってどうにでもできるんですよ」
「ひ…っ」

 グエンはブールが手にしているこん棒が既に血にまみれていることに気付き、彼の言ったことが真実であることを確信した。

「か、勝手に入って悪かった…!すぐ出て行くから、許してくれ」

 グエンは床を這いずりながら彼に懇願した。
 ブールは巨大なこん棒を手にしたまま、グエンににじり寄った。

「それは私の子を孕む大事な女なんですよ。避妊香も焚かずに犯そうとしましたね?この下っ端兵が」
「ま、待て!待て!謝るって!なあ!」
「身の程を知りなさい」

 ブールはこん棒を振りかぶり、グエンの脳天に振り下ろした。

「や、やめっ…ぐあああ!」

 鈍い音がして、サヤカは思わず目を瞑った。
 聞こえていた悲鳴は二撃目で聞こえなくなった。
 だがブールは何度も何度もこん棒を振り下ろし続けた。
 ぐちゃっぐちゃっ、と何かがつぶれるような音がしたが、構わずにブールは殴り続けた。

「ひっ…もうやめてよ…!」

 サヤカは顔を背けた。
 静かになったので、恐る恐る目を開けてグエンの方を見た。
 グエンだった者の頭は完全につぶれて、原形をとどめていなかった。

「きゃあ!!」

 サヤカの悲鳴にブールは、手にしていた血まみれのこん棒を床に落とした。

「ああ、怖がらせてしまいましたか?」
「な、何で殺したの!?ヤバイって、やりすぎだよ…!!こんなのホラーじゃん!」

 サヤカにとって、そこに立っているブールは返り血を浴びた殺人者だった。

「あなたも私に逆らえばこうなるんですよ」
「やめてよ、あんた怖いって!」

 ブールはサヤカの髪を掴んで、持ち上げた。

「痛っ!!」
「あなたという人は、どうしてそう節操がないんです」
「痛い、痛いってば!」
「おかしいですねえ。皇太后様の薬を使ったはずなのに、どうしてあなたには効かないんですかねえ…?」
「痛い、髪の毛、抜ける!抜けるってば!離してよ!」
「いいですか?あなたは私の子を産むんです。二度と他の男と寝たりしたらダメですよ」
「わ、わかった、わかったから!髪の毛痛い!」

 ようやくベッドに下ろされたサヤカは、痛さのあまり涙目になっていた。

「おや、泣いているのですか?」
「誰のせいよ…勘弁してよ」
「大人しく言う事を聞いていれば痛くしませんよ」
「痛くしてんじゃん!腕だってずっと縛られて、超痛いんだけど!」
「その拘束ですか?それは解くなと言われているので仕方ありません」
「何でよ?解いたって逃げないってば。足だって鎖ついてんじゃん」
「まあ、そうですが命令ですので」
「それじゃせめて前で縛り直してよ。後ろじゃご飯も食べられないし不便だもん。さっきなんかスープの中に髪の毛入ったんだよ?」
「そうですねえ。確かにそのままでは不便ですねえ」
「でしょ?ね、お願い。あとで口でしてやるからさ」
「わかりましたよ」

 ブールはサヤカの腕の拘束紐を腰帯に仕込んでいたナイフで切断した。

「ふー、痛かったぁ~。見てよこれ。すっかり痕がついちゃった。ひどくない?」

 ようやく自由になった両腕をさすりながら、サヤカは言った。

「文句が多いですよ。さ、両手を前に出してください」
「ちょっと待って」

 サヤカは両手指で小さな三角を作った。

「何の真似です?遊んでる場合じゃありませんよ?」

 その三角の中にブールの顔がちょうど入るように構えて、短い呪文を唱えた。
 するとサヤカの指の三角の中に飴玉ほどの小さな黒い塊が出現した。

「おや、それは何ですか?」

 それが彼の最期の言葉になった。

「バイバイ、クソ野郎」

 彼女はその小さな塊をフッと小さく息で吹いた。
 次の瞬間、サヤカの指で作った小さな三角の中から火の玉が勢いよく飛び出し、ブールの首を吹き飛ばした。
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