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第四章
第四章第57話 出発します
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あたしは公子さまにエスコートされ、宮殿のエントランスホールまでやってきました。するとそこにはお世話になった人たちがお見送りに来てくれていました。
「ローザ、また遊びに来てね!」
「はい、もちろんです。カーチャさん」
あたしはそうしてカーチャさんと抱き合います。すると今度は公太后さまが話しかけてきます。
「ローザ、今回は本当にありがとう。おかげですっかり元気になりましたわ」
「そんな……公太后さまがお元気になってくれてよかったです」
「ローザったら、本当に謙虚ですわね。うちのカーチャにも見習って欲しいですわね」
「えっ? おばあさま!?」
「ほら、そういうところですわ」
「あっ……」
カーチャさんの顔が真っ赤になり、それを見た公太后さまたちはクスクスと笑いました。
「ローザがわたくしの孫娘になってくれたらいいのに……」
「公太后さま……」
「あ、そうですわ。うちのレフなんかどうかしら? 二人は魔法学園で仲良しなんですのよね?」
「えっ!?」
あ、あたしが公子さまと……?
「祖母上、いきなりそのようなことは……」
「あら、レフ。でもローザのことが素敵だって思っているんでしょう?」
「それは……そうですが……」
「レフは普段、エスコートなんてしませんものねぇ」
「祖母上! それは!」
「ええ、分かっていますわ。でもピョートルにも婚約者がいるのだし、そろそろ考えてもいいんじゃないかしら?」
「……」
いつも冷静な公子さまが言葉に詰まっています。あたしもいきなり言われてすごくビックリしましたけど、公子さまがこんな風になるのは初めて見ました。
「ほら、レフ。ローザに渡すものがあるのではなかったかしら?」
「ああ、はい。そうです。ローザ嬢」
「は、はい」
突然話を振られ、またビックリしちゃいました。
「これをどうぞ」
公子さまはそう言って小さな箱に入った首飾りを差し出してきました。綺麗な水色の大きな宝石があしらわれています。
「えっと、これは?」
「氷の守りが付与された魔道具です。ぜひお守り代わりに身に着けていてください」
「えっ? いいんですか? そんなすごいものを……」
「もちろんです。お掛けしても?」
「は、はい。ありがとうございます」
公子さまはあたしに首飾りを掛けてくれました。
な、なんだか、すごくドキドキします。
「ローザ嬢、新学期にお会いできることを楽しみにしています」
「は、はい。あたしもです」
公子さまはあたしの手の甲にキスをして、下がっていきました。続いて公王さまと公妃さまが前に出てきます。
「ローザ嬢、公太后の治療をしてくれたこと、そして誤った医療を正してくれたこと、カルリア公国を代表して心から礼を言おう。ありがとう」
「こ、こちらこそ……お役に立てて嬉しかったです」
「うむ」
公王さまと公妃さまは満足そうな表情をしています。すると、公王さまが懐から封筒を取り出しました。
「ローザ嬢、これは余から貴国の王ミハイに宛てた手紙だ。ローザ嬢の手で直接、ミハイに届けてほしい」
う……責任重大ですね。
「わ、わかりました。任せてください」
あたしは封筒を直接受け取りました。
「旅の無事を祈っておるぞ」
「ありがとうございます」
「うむ。そこでな、ローザ嬢」
「はい」
「余はローザ嬢に馬車を贈ることにした」
「えっ?」
馬車、ですか? えっと、乗ってきた馬車があると思うんですけど……。
「カルリア公国の恩人にのみ乗ることが許される特別な馬車だ。この馬車に乗っていれば、カルリア公国内のほとんどの場所を自由に通行できる」
「あ、ありがとうございます」
「うむ」
公王さまは満足げな表情で頷いたのでした。
◆◇◆
あたしは公王さまにもらった馬車に乗り、プレシキンを出発しました。タルヴィア子爵とイヴァンナさんは乗ってきた馬車に乗っているので、同乗者はユキとピーちゃんとホーちゃんだけです。
どうせだからラダさんとメラニアさんに一緒に乗ってもらおうと思ったんですけど、マナー違反だって怒られちゃいました。
中も広いですし、一緒に乗ってもいいと思うんですけどね。
あ、それでですね。このもらった馬車なんですけど、クッションがふかふかでお尻が痛くないんです。それに、揺れもなんとなく少ないような気がします。あと内装も外装もものすごく豪華で、あちこちに金が使われているうえに、しかもカルリア公国の紋章まであしらわれているんです。
あたし、養女ではありますけど、一応マルダキア魔法王国のマレスティカ公爵家の娘じゃないですか。それなのに他の国の紋章のついている馬車に乗っていていいんでしょうか?
なんだか、ちょっと後ろめたいような……。
そんなことを考えつつ、あたしの膝の上で丸まっているユキをそっと撫でました。
ピーちゃんのおかげでユキの毛並みはいつもふわふわで、最高の撫で心地ですね。
えへへ、なんだかユキを撫でていたら細かいことはどうでもよくなってきました。帰ってお義父さまに相談すればいいですね。
あたしは考えるのをやめ、ユキを撫でるのに集中するのでした。
================
テイマー少女の逃亡日記の年内の更新はこれで最後となります。今年も一年間、お付き合いいただきありがとうございました。どうぞよいお年をお迎えください。
なお、次回更新は通常どおり、2024/01/06 (土) 20:00 を予定しております。
「ローザ、また遊びに来てね!」
「はい、もちろんです。カーチャさん」
あたしはそうしてカーチャさんと抱き合います。すると今度は公太后さまが話しかけてきます。
「ローザ、今回は本当にありがとう。おかげですっかり元気になりましたわ」
「そんな……公太后さまがお元気になってくれてよかったです」
「ローザったら、本当に謙虚ですわね。うちのカーチャにも見習って欲しいですわね」
「えっ? おばあさま!?」
「ほら、そういうところですわ」
「あっ……」
カーチャさんの顔が真っ赤になり、それを見た公太后さまたちはクスクスと笑いました。
「ローザがわたくしの孫娘になってくれたらいいのに……」
「公太后さま……」
「あ、そうですわ。うちのレフなんかどうかしら? 二人は魔法学園で仲良しなんですのよね?」
「えっ!?」
あ、あたしが公子さまと……?
「祖母上、いきなりそのようなことは……」
「あら、レフ。でもローザのことが素敵だって思っているんでしょう?」
「それは……そうですが……」
「レフは普段、エスコートなんてしませんものねぇ」
「祖母上! それは!」
「ええ、分かっていますわ。でもピョートルにも婚約者がいるのだし、そろそろ考えてもいいんじゃないかしら?」
「……」
いつも冷静な公子さまが言葉に詰まっています。あたしもいきなり言われてすごくビックリしましたけど、公子さまがこんな風になるのは初めて見ました。
「ほら、レフ。ローザに渡すものがあるのではなかったかしら?」
「ああ、はい。そうです。ローザ嬢」
「は、はい」
突然話を振られ、またビックリしちゃいました。
「これをどうぞ」
公子さまはそう言って小さな箱に入った首飾りを差し出してきました。綺麗な水色の大きな宝石があしらわれています。
「えっと、これは?」
「氷の守りが付与された魔道具です。ぜひお守り代わりに身に着けていてください」
「えっ? いいんですか? そんなすごいものを……」
「もちろんです。お掛けしても?」
「は、はい。ありがとうございます」
公子さまはあたしに首飾りを掛けてくれました。
な、なんだか、すごくドキドキします。
「ローザ嬢、新学期にお会いできることを楽しみにしています」
「は、はい。あたしもです」
公子さまはあたしの手の甲にキスをして、下がっていきました。続いて公王さまと公妃さまが前に出てきます。
「ローザ嬢、公太后の治療をしてくれたこと、そして誤った医療を正してくれたこと、カルリア公国を代表して心から礼を言おう。ありがとう」
「こ、こちらこそ……お役に立てて嬉しかったです」
「うむ」
公王さまと公妃さまは満足そうな表情をしています。すると、公王さまが懐から封筒を取り出しました。
「ローザ嬢、これは余から貴国の王ミハイに宛てた手紙だ。ローザ嬢の手で直接、ミハイに届けてほしい」
う……責任重大ですね。
「わ、わかりました。任せてください」
あたしは封筒を直接受け取りました。
「旅の無事を祈っておるぞ」
「ありがとうございます」
「うむ。そこでな、ローザ嬢」
「はい」
「余はローザ嬢に馬車を贈ることにした」
「えっ?」
馬車、ですか? えっと、乗ってきた馬車があると思うんですけど……。
「カルリア公国の恩人にのみ乗ることが許される特別な馬車だ。この馬車に乗っていれば、カルリア公国内のほとんどの場所を自由に通行できる」
「あ、ありがとうございます」
「うむ」
公王さまは満足げな表情で頷いたのでした。
◆◇◆
あたしは公王さまにもらった馬車に乗り、プレシキンを出発しました。タルヴィア子爵とイヴァンナさんは乗ってきた馬車に乗っているので、同乗者はユキとピーちゃんとホーちゃんだけです。
どうせだからラダさんとメラニアさんに一緒に乗ってもらおうと思ったんですけど、マナー違反だって怒られちゃいました。
中も広いですし、一緒に乗ってもいいと思うんですけどね。
あ、それでですね。このもらった馬車なんですけど、クッションがふかふかでお尻が痛くないんです。それに、揺れもなんとなく少ないような気がします。あと内装も外装もものすごく豪華で、あちこちに金が使われているうえに、しかもカルリア公国の紋章まであしらわれているんです。
あたし、養女ではありますけど、一応マルダキア魔法王国のマレスティカ公爵家の娘じゃないですか。それなのに他の国の紋章のついている馬車に乗っていていいんでしょうか?
なんだか、ちょっと後ろめたいような……。
そんなことを考えつつ、あたしの膝の上で丸まっているユキをそっと撫でました。
ピーちゃんのおかげでユキの毛並みはいつもふわふわで、最高の撫で心地ですね。
えへへ、なんだかユキを撫でていたら細かいことはどうでもよくなってきました。帰ってお義父さまに相談すればいいですね。
あたしは考えるのをやめ、ユキを撫でるのに集中するのでした。
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テイマー少女の逃亡日記の年内の更新はこれで最後となります。今年も一年間、お付き合いいただきありがとうございました。どうぞよいお年をお迎えください。
なお、次回更新は通常どおり、2024/01/06 (土) 20:00 を予定しております。
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