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第四章
第四章第49話 出発します
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いよいよカルリア公国に出発する日になりました。朝早くからメラニアさんに身支度を手伝ってもらって、ようやくおめかしが終わったところです。
「さあ、できましたよ。ローザお嬢様」
「ありがとうございます……」
「ローザお嬢様?」
「あ、いえ。なんでもないです」
そう答えたものの、あたしは小さくため息をついてしまいました。
あ、えっとですね。今回の訪問なんですけど、どうやら公子様のおばあさんを治療したら終わりってわけじゃないみたいなんですよ。というのも、なんとあたしはマルダキア魔法王国の公式訪問団の一員になっていて、向こうの王様にこの国の王様のお手紙を手渡すっていうものすごい役目を任されちゃったんです。
ううっ。考えただけで緊張します。あたし、大丈夫なんでしょうか?
「ローザお嬢様、よろしいですか?」
「はい」
「それでは参りましょう」
あたしはメラニアさんに手を引いてもらいながら、マレスティカ公爵邸の自室を出ます。すると外にはラダさんが待っていてくれました。
「ローザお嬢様」
「ラダさん、ありがとうございます」
ラダさんがエスコートしてくれます。
えへへ、今日みたいに裾を擦ってしまいそうなほど長いスカートを履いているときは助かりますよね。だって、裾を踏んだら転びそうになりますからね。
あ、でもお義姉さまは全然踏まないんですよね。あたしはよく踏んじゃうのに、やっぱりお義姉さまはすごいですよ。
そうしてラダさんにエスコートされ、玄関ホールにやってきました。するとそこには立派な服を着た中年の男女がいました。
「ローザお嬢様、はじめまして。私めはタルヴィア子爵のアルマンドと申します。この度のカルリア公国公式訪問団の総責任者を務めさせていただきます」
あ、この人が団長さんなんですね。
う……やっぱり緊張します。
「は、はじめまして。ローザ・マレスティカと申します」
「こちらは妻のイヴァンナでございます」
「ローザお嬢様、イヴァンナです。どうぞお見知りおきをください」
「ローザです。よろしくお願いします」
あ、子爵夫人はちょっと優しそうな人です。
あたしが挨拶をし終えると、お義父さまがタルヴィア子爵に近づいて行きました。
「タルヴィア子爵、娘をよろしく頼みましたぞ」
「ええ、お任せください。カルリア公国側とも調整は済んでおり、万全の警備態勢を布いております」
話している二人をぼんやりと眺めていると、お義母さまとお義姉さまがやってきました。
「ローザ、楽しんでらっしゃい」
「は、はい……」
「緊張していますわね。でもローザは親書を渡すだけですもの。安心なさい」
で、でも、それが不安なんです。もし失礼なことをしちゃったら……。
「ほら、貴女は私の妹ですもの。ね。しゃんとなさい」
「は、はいぃ」
あたしはなんとか頷きます。
「レジーナお嬢様、大丈夫ですわ。きちんとわたくしがついておりますから」
「ええ、タルヴィア子爵夫人。わたくしの可愛い妹をお願いしますわ」
「お任せください」
タルヴィア子爵夫人はお義姉さまの手を握って約束してくれています。
「ローザ、いってらっしゃい」
「は、はい。いってきます」
こうしてあたしは家族に見送られ、カルリア公国へと向けて出発したのでした。
◆◇◆
「ローザお嬢様、そんなに緊張しなくても大丈夫ですわ。カルリア公国の公都プレシキンまではまだまだですもの」
緊張したまま馬車に乗っていると、タルヴィア子爵夫人がそう声を掛けてくれました。
「あっ、はい。分かってるんですけど……」
「ローザお嬢様、わたくしたち、ローザ嬢のことを息子から聞いていますのよ」
「えっ? そうなんですか?」
えっと、誰でしょう?
「ほら、ローザお嬢様は生徒会に入っているでしょう? そこでうちの息子のレアンドルがお世話になっているって聞いたわ」
「え? レアンドルさんですか?」
あたし、あの人はちょっと苦手なんですよね。
「あらあら、やっぱりね。うちの息子ったら素直じゃないですもんね。あの子のことだからどうせ、『ルールではこうなってますよね』なんて言ってローザお嬢様に迷惑をかけてるんじゃなくて?」
タルヴィア子爵夫人が笑いながらレアンドルさんの口調を真似ました。
「えっと……似てると思います」
「まあ! 本当? 嬉しいですわ。ねぇ、あなた。わたくしのレアンドルの真似、似ているそうですわよ」
「良かったな」
タルヴィア子爵夫人が嬉しそうに隣に座っているタルヴィア子爵に報告しています。絶対聞こえているはずなのに、なんだか仲良し夫婦って感じでいいですね。
「それにしてもレアンドルは生徒会でもあの調子なのか……」
「本当に、どうしてあんなに生意気な子になっちゃったのかしらねぇ」
「えっと……」
「あっ! ごめんなさいね。わたくしったら」
タルヴィア子爵夫人はそう言ってクスクスと笑います。
「あの、そういえばツェツィーリエ先生は……」
「ツェツィーリエ様は一昨日、ご夫婦でご出発されたそうですわ。ご高齢ですもの。日程に余裕を持たせたいのでしょうね」
「あ……そうだったんですね」
あたし、もしかしてわがまま言っちゃったんでしょうか?
「あらあら、ローザお嬢様ったら。本当に可愛らしいですわね。ねぇ、もし良かったら、ローザちゃんって呼んでもよろしくて?」
「え? あ、はい。大丈夫です」
「まぁ、嬉しいですわ。ローザちゃん」
「はい。タルヴィア子爵夫人」
「もう! わたくしのことはイヴァンナって呼んでくださる?」
「えっと、イヴァンナさん?」
「ええ! イヴァンナですわ」
イヴァンナさんはそう言うと、嬉しそうにころころと笑ったのでした。
================
今回は諸事情により更新が遅れ、申し訳ございませんでした。次回更新は通常どおり、2023/11/11 (土) 20:00 を予定しております
「さあ、できましたよ。ローザお嬢様」
「ありがとうございます……」
「ローザお嬢様?」
「あ、いえ。なんでもないです」
そう答えたものの、あたしは小さくため息をついてしまいました。
あ、えっとですね。今回の訪問なんですけど、どうやら公子様のおばあさんを治療したら終わりってわけじゃないみたいなんですよ。というのも、なんとあたしはマルダキア魔法王国の公式訪問団の一員になっていて、向こうの王様にこの国の王様のお手紙を手渡すっていうものすごい役目を任されちゃったんです。
ううっ。考えただけで緊張します。あたし、大丈夫なんでしょうか?
「ローザお嬢様、よろしいですか?」
「はい」
「それでは参りましょう」
あたしはメラニアさんに手を引いてもらいながら、マレスティカ公爵邸の自室を出ます。すると外にはラダさんが待っていてくれました。
「ローザお嬢様」
「ラダさん、ありがとうございます」
ラダさんがエスコートしてくれます。
えへへ、今日みたいに裾を擦ってしまいそうなほど長いスカートを履いているときは助かりますよね。だって、裾を踏んだら転びそうになりますからね。
あ、でもお義姉さまは全然踏まないんですよね。あたしはよく踏んじゃうのに、やっぱりお義姉さまはすごいですよ。
そうしてラダさんにエスコートされ、玄関ホールにやってきました。するとそこには立派な服を着た中年の男女がいました。
「ローザお嬢様、はじめまして。私めはタルヴィア子爵のアルマンドと申します。この度のカルリア公国公式訪問団の総責任者を務めさせていただきます」
あ、この人が団長さんなんですね。
う……やっぱり緊張します。
「は、はじめまして。ローザ・マレスティカと申します」
「こちらは妻のイヴァンナでございます」
「ローザお嬢様、イヴァンナです。どうぞお見知りおきをください」
「ローザです。よろしくお願いします」
あ、子爵夫人はちょっと優しそうな人です。
あたしが挨拶をし終えると、お義父さまがタルヴィア子爵に近づいて行きました。
「タルヴィア子爵、娘をよろしく頼みましたぞ」
「ええ、お任せください。カルリア公国側とも調整は済んでおり、万全の警備態勢を布いております」
話している二人をぼんやりと眺めていると、お義母さまとお義姉さまがやってきました。
「ローザ、楽しんでらっしゃい」
「は、はい……」
「緊張していますわね。でもローザは親書を渡すだけですもの。安心なさい」
で、でも、それが不安なんです。もし失礼なことをしちゃったら……。
「ほら、貴女は私の妹ですもの。ね。しゃんとなさい」
「は、はいぃ」
あたしはなんとか頷きます。
「レジーナお嬢様、大丈夫ですわ。きちんとわたくしがついておりますから」
「ええ、タルヴィア子爵夫人。わたくしの可愛い妹をお願いしますわ」
「お任せください」
タルヴィア子爵夫人はお義姉さまの手を握って約束してくれています。
「ローザ、いってらっしゃい」
「は、はい。いってきます」
こうしてあたしは家族に見送られ、カルリア公国へと向けて出発したのでした。
◆◇◆
「ローザお嬢様、そんなに緊張しなくても大丈夫ですわ。カルリア公国の公都プレシキンまではまだまだですもの」
緊張したまま馬車に乗っていると、タルヴィア子爵夫人がそう声を掛けてくれました。
「あっ、はい。分かってるんですけど……」
「ローザお嬢様、わたくしたち、ローザ嬢のことを息子から聞いていますのよ」
「えっ? そうなんですか?」
えっと、誰でしょう?
「ほら、ローザお嬢様は生徒会に入っているでしょう? そこでうちの息子のレアンドルがお世話になっているって聞いたわ」
「え? レアンドルさんですか?」
あたし、あの人はちょっと苦手なんですよね。
「あらあら、やっぱりね。うちの息子ったら素直じゃないですもんね。あの子のことだからどうせ、『ルールではこうなってますよね』なんて言ってローザお嬢様に迷惑をかけてるんじゃなくて?」
タルヴィア子爵夫人が笑いながらレアンドルさんの口調を真似ました。
「えっと……似てると思います」
「まあ! 本当? 嬉しいですわ。ねぇ、あなた。わたくしのレアンドルの真似、似ているそうですわよ」
「良かったな」
タルヴィア子爵夫人が嬉しそうに隣に座っているタルヴィア子爵に報告しています。絶対聞こえているはずなのに、なんだか仲良し夫婦って感じでいいですね。
「それにしてもレアンドルは生徒会でもあの調子なのか……」
「本当に、どうしてあんなに生意気な子になっちゃったのかしらねぇ」
「えっと……」
「あっ! ごめんなさいね。わたくしったら」
タルヴィア子爵夫人はそう言ってクスクスと笑います。
「あの、そういえばツェツィーリエ先生は……」
「ツェツィーリエ様は一昨日、ご夫婦でご出発されたそうですわ。ご高齢ですもの。日程に余裕を持たせたいのでしょうね」
「あ……そうだったんですね」
あたし、もしかしてわがまま言っちゃったんでしょうか?
「あらあら、ローザお嬢様ったら。本当に可愛らしいですわね。ねぇ、もし良かったら、ローザちゃんって呼んでもよろしくて?」
「え? あ、はい。大丈夫です」
「まぁ、嬉しいですわ。ローザちゃん」
「はい。タルヴィア子爵夫人」
「もう! わたくしのことはイヴァンナって呼んでくださる?」
「えっと、イヴァンナさん?」
「ええ! イヴァンナですわ」
イヴァンナさんはそう言うと、嬉しそうにころころと笑ったのでした。
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今回は諸事情により更新が遅れ、申し訳ございませんでした。次回更新は通常どおり、2023/11/11 (土) 20:00 を予定しております
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