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第四章
第四章第47話 試験が終わりました
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オフェリアからの謎の手紙が届いてからおよそ二週間後、マルダキア魔法王国にレオシュの出した使者がやってきた。だが国王への謁見は許可されないどころか、城に滞在することすらも許可されなかった。
そのため使者は親書だけを担当官に手渡し、城下町のホテルで返事を待っている。
外国の使者に対する扱いとしてはこれ以上ないほどに冷遇していると言えるだろう。
だがマルダキア魔法王国はオーデルラーヴァ王国を承認しておらず、国境を封鎖して人の出入りを厳しく制限している。そのため当然といえば当然の扱いではあるし、むしろその場で首を刎ねられなかったのは寛大な対応とも言えるかもしれない。
そんなレオシュからの親書は一週間ほど放置され、ようやく国王の手に渡った。国王は手紙を受け取ると、それを持ってきた補佐官に怪訝そうな表情を浮かべる。
「ふむ。これは?」
「オーデルラーヴァ王国なるテロ組織の王子を自称するレオシュという者からの親書だそうです」
「内容は?」
「それが……」
「どうした?」
「はい。留学中のオーデルラーヴァ王国民であるローザを引き渡すように通告してきております」
「なんだと?」
国王はかなり不機嫌そうに手紙を運んできた補佐官を睨んだ。それから手紙の内容を確認し、小さく舌打ちをする。
「所詮はオーデルラーヴァを不法占拠している無法者どもだな。ここまで無礼な親書は初めて見たぞ。まさか戦争をちらつかせて要求を通そうとするとは。このような者が王子を名乗っているとなると、この反乱政府は長くはもつまい」
国王はそう言うとすぐに指示を出す。
「使者を名乗る不法侵入者の首を刎ね、その首を送り返せ」
「ははっ」
補佐官の表情はその指示を予想していたのか、国王の指示に短くそう返事をしたのだった。
◆◇◆
その後、レオシュの使者はすぐに捕縛され、処刑された。
その首は氷漬けにされてオーデルラーヴァ王国軍がフドネラとの間に構えた検問所に「要求を拒否する」と一文だけ書かれた手紙と共に夜中に投げ込まれた。
検問所は一時騒然としたものの、攻め込むだけの余力のないオーデルラーヴァ王国側は反撃せず、首と手紙はそのままレオシュのところへと届けられた。
「なんだと!? ふざけるな!」
それを受け取ったレオシュは癇癪を起こし、またもや自室の調度品を破壊する。
「クソッ! クソッ! クソッ! どいつもこいつも俺を馬鹿にしやがって!」
そう呟くと、ニヤリと下卑た笑みを浮かべる。
「ああ、そうだ。こういうときはオフェリアだな」
まだ昼間だというのにそんなことを呟くと、レオシュはそのまま入口とは別の扉へと向かって歩いていくのだった。
◆◇◆
やりました! ついに、ついに試験が終わりました! 夏休みです!
数学がほんっとうに大変でしたけど、でもお義姉さまと公子様が丁寧に教えてくれたおかげで今回は絶対大丈夫です。
え? どうしてそんなに自信満々なのかって?
えへへ、実はですね。なんと試験問題が、公子様が出してくれた問題とほとんど同じだったんです。いくらあたしが数学苦手でも、前の日にちょっと数字が変わっただけの問題の解き方を教わったらさすがに大丈夫です。
それにしても、公子様ってすごいですよね。問題は全部で八問あったんですけど、そのうち六問はばっちりでした。公子様、もしかして未来予知の能力でもあるんでしょうか?
え? 公子様の出してくれた問題がなかったらどうなっていたのか、ですか?
……えっと、はい。意地悪なこと聞かないでください。無理だったに決まってるじゃないですか。
そんなことは忘れましょう。とにかく今回は大丈夫なんですから。
あたしがそんな感傷に浸っていると、リリアちゃんが話しかけてきました。
「あ! ローザちゃん」
「リリアちゃん」
「どうだった?」
「えへへ、バッチリでした」
「え? 本当? すごいなぁ。数学も?」
「はい。今回は数学、自信あるんです」
「えっ? すごい。どんな勉強したの?」
「実はですね。公子様がほとんど同じ問題を昨日、出題してくれたんです。それで解き方も教えてもらって、おかげで全部解けたんですよ」
「へぇぇぇ。すごいなぁ。やっぱり公子様くらいになると過去問が手に入るのかなぁ」
「え? 過去問? ってなんですか?」
「ええっ? そこ? 過去問っていうのは、去年とか一昨年とかの同じ授業の問題のことだよ。ほら、同じことを教えてるんだから、問題も似た感じになるじゃない。ただ試験では問題用紙ごと回収されちゃうから、普通は過去問が手に入らないの」
「そうなんですね。それじゃあ公子様は一体どうやって……」
「そりゃあ、伝手で手に入るんじゃない? 何しろカルリア公国の公子様だもん」
そうですよね。公子様と王太子様はお友達ですし、なんとでもなりそうな気がします。
あれ? でもちょっと待ってください。
「あの、もしかしてあたし、ズルしちゃったんでしょうか……」
「え? そんなことないよ。事前に試験問題を手に入れたとかじゃないでしょ?」
「はい。ちょっとずつ違ってました」
「なら大丈夫だよ。料理研究会の先輩たちに教えてもらったんだけど、細かいことは覚えてないって言ってたからねぇ。うん、やっぱりちょっとローザちゃんがうらやましいな。ねぇねぇ、今度はあたしにも問題教えて?」
「はい。もちろんです。教えてもらえたらですけど」
「うん! それじゃあ、ご飯食べに行こ?」
「はい」
こうしてあたしはリリアちゃんと一緒に食堂へと向かうのでした。
そのため使者は親書だけを担当官に手渡し、城下町のホテルで返事を待っている。
外国の使者に対する扱いとしてはこれ以上ないほどに冷遇していると言えるだろう。
だがマルダキア魔法王国はオーデルラーヴァ王国を承認しておらず、国境を封鎖して人の出入りを厳しく制限している。そのため当然といえば当然の扱いではあるし、むしろその場で首を刎ねられなかったのは寛大な対応とも言えるかもしれない。
そんなレオシュからの親書は一週間ほど放置され、ようやく国王の手に渡った。国王は手紙を受け取ると、それを持ってきた補佐官に怪訝そうな表情を浮かべる。
「ふむ。これは?」
「オーデルラーヴァ王国なるテロ組織の王子を自称するレオシュという者からの親書だそうです」
「内容は?」
「それが……」
「どうした?」
「はい。留学中のオーデルラーヴァ王国民であるローザを引き渡すように通告してきております」
「なんだと?」
国王はかなり不機嫌そうに手紙を運んできた補佐官を睨んだ。それから手紙の内容を確認し、小さく舌打ちをする。
「所詮はオーデルラーヴァを不法占拠している無法者どもだな。ここまで無礼な親書は初めて見たぞ。まさか戦争をちらつかせて要求を通そうとするとは。このような者が王子を名乗っているとなると、この反乱政府は長くはもつまい」
国王はそう言うとすぐに指示を出す。
「使者を名乗る不法侵入者の首を刎ね、その首を送り返せ」
「ははっ」
補佐官の表情はその指示を予想していたのか、国王の指示に短くそう返事をしたのだった。
◆◇◆
その後、レオシュの使者はすぐに捕縛され、処刑された。
その首は氷漬けにされてオーデルラーヴァ王国軍がフドネラとの間に構えた検問所に「要求を拒否する」と一文だけ書かれた手紙と共に夜中に投げ込まれた。
検問所は一時騒然としたものの、攻め込むだけの余力のないオーデルラーヴァ王国側は反撃せず、首と手紙はそのままレオシュのところへと届けられた。
「なんだと!? ふざけるな!」
それを受け取ったレオシュは癇癪を起こし、またもや自室の調度品を破壊する。
「クソッ! クソッ! クソッ! どいつもこいつも俺を馬鹿にしやがって!」
そう呟くと、ニヤリと下卑た笑みを浮かべる。
「ああ、そうだ。こういうときはオフェリアだな」
まだ昼間だというのにそんなことを呟くと、レオシュはそのまま入口とは別の扉へと向かって歩いていくのだった。
◆◇◆
やりました! ついに、ついに試験が終わりました! 夏休みです!
数学がほんっとうに大変でしたけど、でもお義姉さまと公子様が丁寧に教えてくれたおかげで今回は絶対大丈夫です。
え? どうしてそんなに自信満々なのかって?
えへへ、実はですね。なんと試験問題が、公子様が出してくれた問題とほとんど同じだったんです。いくらあたしが数学苦手でも、前の日にちょっと数字が変わっただけの問題の解き方を教わったらさすがに大丈夫です。
それにしても、公子様ってすごいですよね。問題は全部で八問あったんですけど、そのうち六問はばっちりでした。公子様、もしかして未来予知の能力でもあるんでしょうか?
え? 公子様の出してくれた問題がなかったらどうなっていたのか、ですか?
……えっと、はい。意地悪なこと聞かないでください。無理だったに決まってるじゃないですか。
そんなことは忘れましょう。とにかく今回は大丈夫なんですから。
あたしがそんな感傷に浸っていると、リリアちゃんが話しかけてきました。
「あ! ローザちゃん」
「リリアちゃん」
「どうだった?」
「えへへ、バッチリでした」
「え? 本当? すごいなぁ。数学も?」
「はい。今回は数学、自信あるんです」
「えっ? すごい。どんな勉強したの?」
「実はですね。公子様がほとんど同じ問題を昨日、出題してくれたんです。それで解き方も教えてもらって、おかげで全部解けたんですよ」
「へぇぇぇ。すごいなぁ。やっぱり公子様くらいになると過去問が手に入るのかなぁ」
「え? 過去問? ってなんですか?」
「ええっ? そこ? 過去問っていうのは、去年とか一昨年とかの同じ授業の問題のことだよ。ほら、同じことを教えてるんだから、問題も似た感じになるじゃない。ただ試験では問題用紙ごと回収されちゃうから、普通は過去問が手に入らないの」
「そうなんですね。それじゃあ公子様は一体どうやって……」
「そりゃあ、伝手で手に入るんじゃない? 何しろカルリア公国の公子様だもん」
そうですよね。公子様と王太子様はお友達ですし、なんとでもなりそうな気がします。
あれ? でもちょっと待ってください。
「あの、もしかしてあたし、ズルしちゃったんでしょうか……」
「え? そんなことないよ。事前に試験問題を手に入れたとかじゃないでしょ?」
「はい。ちょっとずつ違ってました」
「なら大丈夫だよ。料理研究会の先輩たちに教えてもらったんだけど、細かいことは覚えてないって言ってたからねぇ。うん、やっぱりちょっとローザちゃんがうらやましいな。ねぇねぇ、今度はあたしにも問題教えて?」
「はい。もちろんです。教えてもらえたらですけど」
「うん! それじゃあ、ご飯食べに行こ?」
「はい」
こうしてあたしはリリアちゃんと一緒に食堂へと向かうのでした。
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