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第四章
第四章第30話 お披露目パーティーに出ました
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2023/06/20 ご指摘いただいた誤字を修正しました。ありがとうございました
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それから色々な人があたしたちのところにきて挨拶をしていきました。
どの人もあたしの全身をジロジロと見てきて、品定めをされているみたいでとても居心地が悪いです。
中にはですね。その……いやらしい視線を向けてくるおじさんやおじいさんもたくさんいました。すごく気持ち悪いです。
あ、もちろん一緒に来ている奥さんに小突かれてやめる人が多かったですけど、中にはずっとニコニコしながら見ているだけの奥さんもいたんです。一体どうして止めないんでしょうか?
そうして挨拶をしていると、ホールに大きな声が響きます。
「国王陛下、王妃陛下のお出ましです!」
その声に人々は降りてきた階段のほうを向いて一斉に礼を執りました。あたしも同じようにカーテシーをします。
王様の隣には綺麗な女性が寄り添っていますので、あの人が王妃様なんだと思います。
「皆の者、楽しんでいるようだな」
階段を降りてきた王様はあたしたちにそう声をかけると、あたしたちの前にやってきました。
「先ほどぶりだな」
「偉大なる国王陛下、並びに王妃陛下にアーロン・マレスティカがマレスティカ公爵家を代表してご挨拶申し上げます」
お義父さまが代表して挨拶しました。
「うむ。楽にするがいい。皆の者もだ」
許可が出たのでようやくカーテシーをやめることができました。
えっと、王様はあたしじゃなくて、他の人たちを観察しているみたいです。王妃様はあたしのことをジロジロと見てきています。
……あれ? 王妃様があたしの胸をじっと見ているような?
かと思ったら突然不機嫌そうになり、プイと視線を逸らされちゃいました。
え? あたし、何か失礼なことをしちゃったんでしょうか?
「マレスティカ卿、そろそろダンスを開始しても良いのではないかね?」
「はい。私もそのように思っていたところです」
「ふむ。ではそうしなさい」
「ははっ」
えっ? 最初から王様が来たらダンスを始める予定ですよね? えっと?
「ローザ」
「はい」
よくわかりませんが、あたしはお義父さまに言われてホールの中央に向かいました。するとゆったりしたテンポの音楽が演奏され、それに合わせて踊り始めます。
頑張ってなんとか踊り終えると、ホールの人たちがみんなで拍手をしてくれました。
え、えへへ。なんとかお義父さまの足を踏まずに踊れましたよ。あたしにしては上出来なんじゃないでしょうか?
「さあ、我々も踊ろうではないか」
王様の掛け声で再び音楽が再開され、集まった人たちも踊り始めるのでした。
◆◇◆
ローザがお披露目パーティーに参加していたころ、ルクシア大聖堂にある教皇の私室をアルノーが訪ねてきた。
「アルノー枢機卿、こんな夜中に何用じゃ?」
「はい。お耳に入れたいことがあるのです」
「ふむ……」
教皇は少し考えるそぶりを見せたが、すぐにアルノーを招き入れた。そして扉を閉め、ゆったりしたソファーに腰かけるとアルノーに鋭い視線を向ける。
「一体何があったのじゃ?」
「はい。オーデルラーヴァ王国出身で、今はマルダキアの魔法学園であのツェツィーリエ・イオネスクの指導を受けている年若い聖女がおります」
「ふむ。せっかくオーデルラーヴァを邪教徒どもから解放したというのに、哀れなことじゃ」
「はい。ですが、このまま放っておくわけには参りません。こちらに引き渡すように命じたいと考えております」
すると教皇はピクリと眉を動かし、怪訝そうな表情を浮かべた。
「その権限は与えておるはずじゃが?」
「はい。ですがそこから先が問題なのです」
「ふむ。どういうことじゃ?」
「その聖女はなんと、従魔を持っているのです」
「何ッ!? なぜ聖女が魔物のような汚らわしいモノを使役しておるのじゃ!」」
教皇は相当驚いたようで、まるでアルノーを責めるかのような態度で詰め寄る。
「落ち着いてください。経緯については不明です。ただ、そのような事情もあるため、無理やり連れて来ようとした場合、かなり激しい抵抗が予想されます。となるとマルダキア側からも激しい妨害を受ける可能性が高いです。しかしながら、今の情勢でマルダキアと事を構えるのは適切とは言えません」
「ふむ。それはそうじゃな」
「そこで、従魔についても特例で引き取ることをお認めいただきたいのです」
「それはならん。そのようなことを申すのであれば、そなたも異端審問に掛けねばならなくなる」
「そこを曲げて、お願いできませんでしょうか? この私めが直々に、責任をもって教育いたしますので」
「……なぜその聖女にこだわるのじゃ? 代わりなどいくらでもいるじゃろう」
「いえ、過去を含めても代わりとなる聖女はおりません」
「どういうことじゃ?」
「彼女は魔術ではなく、魔法を使うのです」
「何ッ!?」
教皇は目をカッと見開き、思わず大きな声を上げた。
「教皇猊下……」
「う、うむ。そうじゃったな」
アルノーにやんわりと窘められ、教皇はバツが悪そうにしている。
「いかがでしょう? 殺してしまうにはあまりに惜しい存在です。まだ十代前半だそうですし、今ならば矯正も可能な年齢のはずです。ここは神の特別な加護を授かったということにし、特例をお認めいただくわけにはいかないでしょうか?」
教皇は虚空をじっと見つめ、何かを考え込んでいる様子だ。
「……何を従魔としておるのじゃ?」
「はい。白猫、フクロウ、そしてスライムだそうです」
「何? そんなものを従魔としたのか?」
「はい。白猫とフクロウはただの動物ですし、スライム程度であればあとからいくらでも処分できるでしょう」
「……よかろう。事を荒立てず、従魔と一緒に保護せよ。ただし、スライムは時期を見極めて適当に処分するのじゃ。残りは動物に愛されておるということにすれば問題あるまい」
「かしこまりました。猊下の仰せのままに」
そう言ってアルノーは頭を下げ、ニヤリと笑ったのだった。
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次回更新は通常どおり、2023/06/24 (土) 20:00 を予定しております。
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それから色々な人があたしたちのところにきて挨拶をしていきました。
どの人もあたしの全身をジロジロと見てきて、品定めをされているみたいでとても居心地が悪いです。
中にはですね。その……いやらしい視線を向けてくるおじさんやおじいさんもたくさんいました。すごく気持ち悪いです。
あ、もちろん一緒に来ている奥さんに小突かれてやめる人が多かったですけど、中にはずっとニコニコしながら見ているだけの奥さんもいたんです。一体どうして止めないんでしょうか?
そうして挨拶をしていると、ホールに大きな声が響きます。
「国王陛下、王妃陛下のお出ましです!」
その声に人々は降りてきた階段のほうを向いて一斉に礼を執りました。あたしも同じようにカーテシーをします。
王様の隣には綺麗な女性が寄り添っていますので、あの人が王妃様なんだと思います。
「皆の者、楽しんでいるようだな」
階段を降りてきた王様はあたしたちにそう声をかけると、あたしたちの前にやってきました。
「先ほどぶりだな」
「偉大なる国王陛下、並びに王妃陛下にアーロン・マレスティカがマレスティカ公爵家を代表してご挨拶申し上げます」
お義父さまが代表して挨拶しました。
「うむ。楽にするがいい。皆の者もだ」
許可が出たのでようやくカーテシーをやめることができました。
えっと、王様はあたしじゃなくて、他の人たちを観察しているみたいです。王妃様はあたしのことをジロジロと見てきています。
……あれ? 王妃様があたしの胸をじっと見ているような?
かと思ったら突然不機嫌そうになり、プイと視線を逸らされちゃいました。
え? あたし、何か失礼なことをしちゃったんでしょうか?
「マレスティカ卿、そろそろダンスを開始しても良いのではないかね?」
「はい。私もそのように思っていたところです」
「ふむ。ではそうしなさい」
「ははっ」
えっ? 最初から王様が来たらダンスを始める予定ですよね? えっと?
「ローザ」
「はい」
よくわかりませんが、あたしはお義父さまに言われてホールの中央に向かいました。するとゆったりしたテンポの音楽が演奏され、それに合わせて踊り始めます。
頑張ってなんとか踊り終えると、ホールの人たちがみんなで拍手をしてくれました。
え、えへへ。なんとかお義父さまの足を踏まずに踊れましたよ。あたしにしては上出来なんじゃないでしょうか?
「さあ、我々も踊ろうではないか」
王様の掛け声で再び音楽が再開され、集まった人たちも踊り始めるのでした。
◆◇◆
ローザがお披露目パーティーに参加していたころ、ルクシア大聖堂にある教皇の私室をアルノーが訪ねてきた。
「アルノー枢機卿、こんな夜中に何用じゃ?」
「はい。お耳に入れたいことがあるのです」
「ふむ……」
教皇は少し考えるそぶりを見せたが、すぐにアルノーを招き入れた。そして扉を閉め、ゆったりしたソファーに腰かけるとアルノーに鋭い視線を向ける。
「一体何があったのじゃ?」
「はい。オーデルラーヴァ王国出身で、今はマルダキアの魔法学園であのツェツィーリエ・イオネスクの指導を受けている年若い聖女がおります」
「ふむ。せっかくオーデルラーヴァを邪教徒どもから解放したというのに、哀れなことじゃ」
「はい。ですが、このまま放っておくわけには参りません。こちらに引き渡すように命じたいと考えております」
すると教皇はピクリと眉を動かし、怪訝そうな表情を浮かべた。
「その権限は与えておるはずじゃが?」
「はい。ですがそこから先が問題なのです」
「ふむ。どういうことじゃ?」
「その聖女はなんと、従魔を持っているのです」
「何ッ!? なぜ聖女が魔物のような汚らわしいモノを使役しておるのじゃ!」」
教皇は相当驚いたようで、まるでアルノーを責めるかのような態度で詰め寄る。
「落ち着いてください。経緯については不明です。ただ、そのような事情もあるため、無理やり連れて来ようとした場合、かなり激しい抵抗が予想されます。となるとマルダキア側からも激しい妨害を受ける可能性が高いです。しかしながら、今の情勢でマルダキアと事を構えるのは適切とは言えません」
「ふむ。それはそうじゃな」
「そこで、従魔についても特例で引き取ることをお認めいただきたいのです」
「それはならん。そのようなことを申すのであれば、そなたも異端審問に掛けねばならなくなる」
「そこを曲げて、お願いできませんでしょうか? この私めが直々に、責任をもって教育いたしますので」
「……なぜその聖女にこだわるのじゃ? 代わりなどいくらでもいるじゃろう」
「いえ、過去を含めても代わりとなる聖女はおりません」
「どういうことじゃ?」
「彼女は魔術ではなく、魔法を使うのです」
「何ッ!?」
教皇は目をカッと見開き、思わず大きな声を上げた。
「教皇猊下……」
「う、うむ。そうじゃったな」
アルノーにやんわりと窘められ、教皇はバツが悪そうにしている。
「いかがでしょう? 殺してしまうにはあまりに惜しい存在です。まだ十代前半だそうですし、今ならば矯正も可能な年齢のはずです。ここは神の特別な加護を授かったということにし、特例をお認めいただくわけにはいかないでしょうか?」
教皇は虚空をじっと見つめ、何かを考え込んでいる様子だ。
「……何を従魔としておるのじゃ?」
「はい。白猫、フクロウ、そしてスライムだそうです」
「何? そんなものを従魔としたのか?」
「はい。白猫とフクロウはただの動物ですし、スライム程度であればあとからいくらでも処分できるでしょう」
「……よかろう。事を荒立てず、従魔と一緒に保護せよ。ただし、スライムは時期を見極めて適当に処分するのじゃ。残りは動物に愛されておるということにすれば問題あるまい」
「かしこまりました。猊下の仰せのままに」
そう言ってアルノーは頭を下げ、ニヤリと笑ったのだった。
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