179 / 244
第四章
第四章第29話 王様に会いました
しおりを挟む
「マレスティカ卿、よくぞ参った。一同、楽にして良いぞ」
王様に言われ、ようやくカーテシーをやめることができました。きつい姿勢をしなくてよくなったので、やっと王様の顔をちゃんと見ることができます。
……えっと、なんだか王太子様に似てますね。王太子様がおじさんになるとあんな感じになりそうです。
「そちらが新しい娘か?」
「はい。この者は新たに我が家の養女に迎えようと考えておりますローザと申す者でございます。さあローザ、国王陛下にご挨拶なさい」
「はい。マレスティカ公爵家の養女ローザが偉大なる国王陛下にご挨拶申し上げます」
あたしは一歩前に出て、習ったとおりの台詞を言うと再びカーテシーをします。
「ふむ」
そんなあたしを王様は無表情のままジロジロ見てきました。
う……なんだか背筋に悪寒が走ります。
しかも王太子様みたいに胸を凝視しているわけじゃなくて、無遠慮にあたしの全身を舐めまわすように見てくるんです。なんだかまるで値踏みでもされているみたいで、本当に居心地が悪いです。
でも王様ですからおかしなことはできません。
それからしばらく無言であたしを見ていた王様ですが、はやがて口を開きます。
「お前は魔法で病気を治したそうだそうだな?」
「は、はい……」
「しかも瀉血の問題も指摘し、マレスティカ小公爵夫人の産褥死を防いだそうだな」
「はい」
「ふむ」
ど、どうしてこんなところでそんな話を? それよりこの姿勢、ずっとしているのはものすごく辛いんですけど……。
それから王様はしばらく無言であたしの顔をじっと見てきました。
えっと、こういうときは微笑まないといけないんでしたよね。
あたしは頑張って笑顔を作ってみました。すると王様はまるで呆れたような目であたしを見てきます。
え? えっと……。
「ローザよ、楽にするがよい。マレスティカ卿、この者がマレスティカ公爵家の養女となることを認める」
「はっ」
「ありがとう存じます」
あたしたちがお礼を言うと、王様は鷹揚に頷いたのでした。
◆◇◆
お披露目パーティーが始まるのですが、あたしはレジーナさんと一緒にホールの二階の見えない場所で待機しています。
「皆さん、本日は私たちの新しい娘のお披露目パーティーにようこそお越しくださいました」
ホールのほうからお義父さまの声が聞こえてきます。
「娘の名はローザ・マレスティカ。まだ十三歳ではありますが、今回お披露目パーティーをすることなったのは、彼女が光属性に適性を持ち、特待生として魔法学園に通っている優秀な学生であるからです」
するとホールのほうが少しどよめいたみたいです。
えっと、なんで皆さんが驚いているんでしょう? 光属性の話って貴族の人たちはみんな知ってるんですよね?
あ! もしかして、あたしの算数の成績がひどくて、優秀じゃないってバレてるんでしょうか?
「さらに我が領地では、医療に対する改革を起こしてくれました。我が娘ローザは魔術ではなく、魔法で治療を行うことができ、皆さんが一般的に受けている瀉血が実はなんの意味もない危険な行為であることを証明してくれたのです」
「えっ!?」
「なんだと!?」
するとホールがものすごいざわめきに包まれました。それからしばらくざわめきが収まるのを待ち、お義父さまが再び話し始めます。
「その件についての論文は明日、マルダキア医学会誌にて公表されます。その中で言及されている魔法による治療というのが我が娘、ローザによるものです」
「ほほう」
「それは……」
「その際の魔法による治療を行った者が誰かということで混乱が生じる懸念がありました。そこで陛下の後押しをいただき、ローザのお披露目を早めることとなったのです」
「なるほど」
「そういうことか」
えっと、そんな風にハードルを上げなくても……。
あたしが困惑していると、レジーナさんが安心させるように優しく声を掛けてくれます。
「ローザ、お父さまは貴女が軽く見られないようにしているのですわ。ああ言っておけば貴族たちは勝手に牽制し合って、結果としてローザは手を出されにくくなりますわ」
「は、はい」
それでもやっぱりちょっと怖いです。
「ほら、堂々となさい。ローザはもうわたくしたちマレスティカ公爵家の一員ですのよ?」
「はい」
ホールのほうからお義父さまの声が聞こえてきます。
「それで皆さん、我が娘ローザの入場です」
「さあ、行きますわよ」
あたしはレジーナさんに連れられて、階段の前まで歩み出ます。すると招待客の人たちの視線が一斉にあたしに集まりました。
う……招待客の人たちも値踏みをするような目で見てきます。
「ほら、胸を張りなさい」
「は、はい」
注目の中、あたしは階段を降りてお義父さまの隣までやってきました。
「皆さん、彼女がローザです。ぜひ、仲良くしてやって下さい」
「ご紹介に与りましたローザ・マレスティカでございます。どうぞお見知りおきくださいませ」
あたしはなんとか用意していた台詞を言うと、頑張って笑顔を作ります。
「ほほぅ」
「これはこれは」
招待客の人たちは何かをひそひそと囁き合っていますが、どこからか拍手が聞こえてきました。
するとそれにつられたかのように他の人たちも拍手をし、やがてホールに割れんばかりの拍手が鳴り響いたのでした。
================
次回更新は通常どおり、2023/06/17 (土) 20:00 を予定しております。
王様に言われ、ようやくカーテシーをやめることができました。きつい姿勢をしなくてよくなったので、やっと王様の顔をちゃんと見ることができます。
……えっと、なんだか王太子様に似てますね。王太子様がおじさんになるとあんな感じになりそうです。
「そちらが新しい娘か?」
「はい。この者は新たに我が家の養女に迎えようと考えておりますローザと申す者でございます。さあローザ、国王陛下にご挨拶なさい」
「はい。マレスティカ公爵家の養女ローザが偉大なる国王陛下にご挨拶申し上げます」
あたしは一歩前に出て、習ったとおりの台詞を言うと再びカーテシーをします。
「ふむ」
そんなあたしを王様は無表情のままジロジロ見てきました。
う……なんだか背筋に悪寒が走ります。
しかも王太子様みたいに胸を凝視しているわけじゃなくて、無遠慮にあたしの全身を舐めまわすように見てくるんです。なんだかまるで値踏みでもされているみたいで、本当に居心地が悪いです。
でも王様ですからおかしなことはできません。
それからしばらく無言であたしを見ていた王様ですが、はやがて口を開きます。
「お前は魔法で病気を治したそうだそうだな?」
「は、はい……」
「しかも瀉血の問題も指摘し、マレスティカ小公爵夫人の産褥死を防いだそうだな」
「はい」
「ふむ」
ど、どうしてこんなところでそんな話を? それよりこの姿勢、ずっとしているのはものすごく辛いんですけど……。
それから王様はしばらく無言であたしの顔をじっと見てきました。
えっと、こういうときは微笑まないといけないんでしたよね。
あたしは頑張って笑顔を作ってみました。すると王様はまるで呆れたような目であたしを見てきます。
え? えっと……。
「ローザよ、楽にするがよい。マレスティカ卿、この者がマレスティカ公爵家の養女となることを認める」
「はっ」
「ありがとう存じます」
あたしたちがお礼を言うと、王様は鷹揚に頷いたのでした。
◆◇◆
お披露目パーティーが始まるのですが、あたしはレジーナさんと一緒にホールの二階の見えない場所で待機しています。
「皆さん、本日は私たちの新しい娘のお披露目パーティーにようこそお越しくださいました」
ホールのほうからお義父さまの声が聞こえてきます。
「娘の名はローザ・マレスティカ。まだ十三歳ではありますが、今回お披露目パーティーをすることなったのは、彼女が光属性に適性を持ち、特待生として魔法学園に通っている優秀な学生であるからです」
するとホールのほうが少しどよめいたみたいです。
えっと、なんで皆さんが驚いているんでしょう? 光属性の話って貴族の人たちはみんな知ってるんですよね?
あ! もしかして、あたしの算数の成績がひどくて、優秀じゃないってバレてるんでしょうか?
「さらに我が領地では、医療に対する改革を起こしてくれました。我が娘ローザは魔術ではなく、魔法で治療を行うことができ、皆さんが一般的に受けている瀉血が実はなんの意味もない危険な行為であることを証明してくれたのです」
「えっ!?」
「なんだと!?」
するとホールがものすごいざわめきに包まれました。それからしばらくざわめきが収まるのを待ち、お義父さまが再び話し始めます。
「その件についての論文は明日、マルダキア医学会誌にて公表されます。その中で言及されている魔法による治療というのが我が娘、ローザによるものです」
「ほほう」
「それは……」
「その際の魔法による治療を行った者が誰かということで混乱が生じる懸念がありました。そこで陛下の後押しをいただき、ローザのお披露目を早めることとなったのです」
「なるほど」
「そういうことか」
えっと、そんな風にハードルを上げなくても……。
あたしが困惑していると、レジーナさんが安心させるように優しく声を掛けてくれます。
「ローザ、お父さまは貴女が軽く見られないようにしているのですわ。ああ言っておけば貴族たちは勝手に牽制し合って、結果としてローザは手を出されにくくなりますわ」
「は、はい」
それでもやっぱりちょっと怖いです。
「ほら、堂々となさい。ローザはもうわたくしたちマレスティカ公爵家の一員ですのよ?」
「はい」
ホールのほうからお義父さまの声が聞こえてきます。
「それで皆さん、我が娘ローザの入場です」
「さあ、行きますわよ」
あたしはレジーナさんに連れられて、階段の前まで歩み出ます。すると招待客の人たちの視線が一斉にあたしに集まりました。
う……招待客の人たちも値踏みをするような目で見てきます。
「ほら、胸を張りなさい」
「は、はい」
注目の中、あたしは階段を降りてお義父さまの隣までやってきました。
「皆さん、彼女がローザです。ぜひ、仲良くしてやって下さい」
「ご紹介に与りましたローザ・マレスティカでございます。どうぞお見知りおきくださいませ」
あたしはなんとか用意していた台詞を言うと、頑張って笑顔を作ります。
「ほほぅ」
「これはこれは」
招待客の人たちは何かをひそひそと囁き合っていますが、どこからか拍手が聞こえてきました。
するとそれにつられたかのように他の人たちも拍手をし、やがてホールに割れんばかりの拍手が鳴り響いたのでした。
================
次回更新は通常どおり、2023/06/17 (土) 20:00 を予定しております。
25
お気に入りに追加
946
あなたにおすすめの小説
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
召喚されたけど要らないと言われたので旅に出ます。探さないでください。
udonlevel2
ファンタジー
修学旅行中に異世界召喚された教師、中園アツシと中園の生徒の姫島カナエと他3名の生徒達。
他の三人には国が欲しがる力があったようだが、中園と姫島のスキルは文字化けして読めなかった。
その為、城を追い出されるように金貨一人50枚を渡され外の世界に放り出されてしまう。
教え子であるカナエを守りながら異世界を生き抜かねばならないが、まずは見た目をこの世界の物に替えて二人は慎重に話し合いをし、冒険者を雇うか、奴隷を買うか悩む。
まずはこの世界を知らねばならないとして、奴隷市場に行き、明日殺処分だった虎獣人のシュウと、妹のナノを購入。
シュウとナノを購入した二人は、国を出て別の国へと移動する事となる。
★他サイトにも連載中です(カクヨム・なろう・ピクシブ)
中国でコピーされていたので自衛です。
「天安門事件」
聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。
そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来?
エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。
聖女だけど追放されました!~街で人々の為に商売始めたんだけど、王国の防衛は大丈夫ですよね?~
ルイス
ファンタジー
才能豊かな聖女ミシディアは、国家の防衛任務に就いていたが、代わりが出来たとして、彼女を以前から嫌っていた王子様に追放されてしまった。
彼女は仕方なく、城下街で聖女の能力を活かしたお店を始めることにする。
ミシディアの聖女の能力は底知れぬものであり、最強クラスの冒険者たちも訪れるお店として繁盛することになった。
王国の防衛ですか? 私みたいな非才の身は必要ないらしいので、大丈夫でしょう。
エロフに転生したので異世界を旅するVTuberとして天下を目指します
一色孝太郎
ファンタジー
女神見習いのミスによって三十を目前にして命を落とした茂手内猛夫は、エルフそっくりの外見を持つ淫魔族の一種エロフの女性リリスとして転生させられてしまった。リリスはエロフとして能力をフル活用して異世界で無双しつつも、年の離れた中高生の弟妹に仕送りをするため、異世界系VTuberとしてデビューを果たした。だが弟妹は世間体を気にした金にがめつい親戚に引き取られていた。果たしてリリスの仕送りは弟妹にきちんと届くのか? そしてリリスは異世界でどんな景色を見るのだろうか?
※本作品にはTS要素、百合要素が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※本作品は他サイトでも同時掲載しております。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
勇者パーティーを追い出された大魔法導士、辺境の地でスローライフを満喫します ~特Aランクの最強魔法使い~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
クロード・ディスタンスは最強の魔法使い。しかしある日勇者パーティーを追放されてしまう。
勇者パーティーの一員として魔王退治をしてくると大口叩いて故郷を出てきた手前帰ることも出来ない俺は自分のことを誰も知らない辺境の地でひっそりと生きていくことを決めたのだった。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる