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第三章

第三章第27話 お返事がきました

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 光属性のコツが分かってから、魔法がどんどん楽しくなってきました。

 特に魔法をイメージをするときに、何をイメージすればいいのかが分かったのがすごく大きかったんだと思います。

 MPが許す範囲であれば、どんな魔法でも使えそうな気がするくらいです。

 それでですね。あたしはツェツィーリエ先生の勧めで光属性だけじゃなくて火属性と風属性の授業を見学することになったんです。

 実際に使っている様子を見れば、どんな魔術かが分かるじゃないですか。

 それで質問したり、あとはもう一回見せてもらったりすれば、魔法ですぐに同じようなことができるようになるんです。

 そんなわけで、今日は火属性の実習の見学をさせてもらっています。

 なんでも、火の形を自在に変える魔術だそうですよ。

 これをするのは難易度がとても高いらしくって、一度魔術で展開した火にもう一度働きかけるのが大変らしいです。

 先生がお手本をした後、同級生のみんなが頑張って火を出していますね。

 えっと、なんだかみんな力んでいて大変そうです。

 あたしも試しにやってみましょう。

 まずは指先に炎を灯します。

 はい。ここまでは簡単ですね。ロウソクくらいの火が右手の人差し指の先で燃えています。

 えっと、ここから先生はまず大きくしていましたね。

 えっと、火はですね。ガスが燃えるイメージをすればいいんです。

 あ、ガスっていうのは夢で見たやつなので実際にあるのかはわからないんですけど、空気なのに火をつけると燃えるんです。

 だからそれをイメージして、ガスがたくさん燃えるイメージをすれば、えい!

 ほら、大きくなりました。

 大きくして、小さくして、また大きくして……。

 えい、二つに分けるのもできました。

 あとは光属性を応用してですね。火の色だって変えられるんですよ。

 ほら、青くして、ピンクにして、それから黄色にして……。

 そうして夢中で遊んでいると、気が付けば一人の男の子があたしの前に立っていました。

 あれれ? なんだか不機嫌そうな……?

「おい!」
「ひえっ!?」

 いきなり大声で怒鳴られ、あたしは思わず後ずさります。

「なんの嫌がらせだよ! そんなに出来んならわざわざ見学なんてする必要ないだろうが!」
「え? え?」
「ちょっと! マリウス君! 何をしているんですか!」

 どうやらあたしを怒鳴ってきた男の子はマリウスという名前のようですが、どうしてあたしは怒られているんでしょうか?

「ごめんね、ローザさん。マリウス君! 謝りなさい!」
「え? あ、う……」

 監督の先生はそう言ってマリウスという人を叱ってくれましたが、この人は顔を真っ赤にして口ごもっています。それに、なんだかものすごい表情であたしのことを睨んできます。

 ちょっと、いえ、すごく怖いです。

 やっぱりあたし、邪魔しちゃったんですよね。

「あ、えっと、授業の邪魔をしてすみません。あの、あたし、出ていきますね」
「あ……」
「ちょっと、ローザさん? マリウス君! 謝りなさい!」
「う、あ……」

 よく分からないですけど、ここにいないほうがいいですよね?

「し、失礼します!」

 あたしは急いでその場を立ち去ったのでした。

◆◇◆

 授業が終わって部屋に帰ると、お手紙が届いていました。オフェリアさんからです。

 早速、中身を読んでみますね。

────
 親愛なるローザへ

 元気にやっているようで何よりだ。私もシルヴィエたちも、皆元気でやっている。
 マレスティカ公爵家の養女という話には驚いたが、ローザにその気があるのであれば受けるといい。そうすれば平民としての不安定な立場からは解放されることになる。それにマレスティカ公爵家は篤志家としても名高い。きっと悪いようにはされないはずだ。
 だが、一点だけ注意すべきこともある。それは自由がなくなるということだ。
 もし公爵家の養女になるのであれば、ローザは平民ではなく貴族として生きていくことになる。平民から見て貴族は気楽な立場に見られがちだが、その実は大きな責任を背負って生きている。貴族には領民を守る義務があり、戦争にでもなれば戦場に出て戦うことが求められる。
 それは貴族家の守るべき矜持であり、また王から貴族と認められるのに必要なことだ。そのため貴族家の者は、その矜持に人生を捧げることになるだろう。
 それとは別に、町を自由に歩くことが出来なくなることは覚悟しておいたほうがいい。だから当然、冒険者として生活していくことも難しくなる。それに結婚だって自分の意思で行うことはできず、マレスティカ公爵閣下の決めた相手と政略結婚することになるだろう。
 これらのことの多くは、平民として今まで生きてきたローザには想像しづらいだろう。だがそういった覚悟があるのなら、マレスティカ公爵家の養女となるのはまたとないチャンスだ。
 そのうえでもし誘いを受けるのであれば、以前渡した推薦状を公爵閣下に手渡すといい。良いように計らってくれるだろう。
 いずれにせよ、ローザが後悔のない選択ができるように願っている。
 そうそう。当面の間、南へは行かないように。間違ってもオーデルラーヴァに戻ってこようなどと考えてはいけない。というのも、どうにも帝国の情勢がきな臭いのだ。予断を許さない状況と言っても過言ではない。身の安全を守るためにも、マレスティカ公爵家から指示があるまでは必ず魔法学園に残っているように。

 オフェリア・ピャスク
────

 帝国って、決闘のときに持ち込まれたゴーレムを作ったハプルッセン帝国のことですよね?

 バラサさんの実家の人と工作員が繋がっていて、色々と悪いことをしていた国ですけど、きな臭いってどういうことでしょうか?

 それにもともとレオシュがいるのでオーデルラーヴァに行く予定はありません。そのことを知っているはずのオフェリアさんがわざわざこんなことを言ってくるなんて、どれくらい危険な状況なんでしょうか?

 ……て、そうでした。養女になるかどうかの話でした。

 えっと、そうですね。あたしは別に自由に暮らせるかは気にしないんですが、ユキたちとはずっと一緒にいたいです。

 ただ、戦争に行って人を殺すのはやっぱり嫌です。盗賊に襲われて身を守るためなら仕方ないですけど……。

 えっと、どうしたら……?

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次回更新は通常どおり 2022/02/19 (土) 20:00 を予定しております。
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