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第二章
第76話 決闘が始まりました
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ツェツィーリエさんが学園長先生と何かお話をして、それから観客席の前のほうにやってきました。
もしかしてあたしとお話をしたいのかもって、思ったんですけど違いました。
ツェツィーリエさんは何かの魔法を発動させたみたいです。
するとすぐに闘技場の観客席とこちら側を隔てるように薄い光のドームが出現しました。
「時間だ」
王太子様がそう告げました。
あたしは、こんな卑怯な人に負けるわけにはいかないんです。絶対に勝ってみせます!
「それと、今日の結界はツェツィーリエ先生が張ってくださった。どれだけ強力な魔法をつかったところで観客に被害が及ぶことはないだろうから、安心して暴れるがいい」
え? え? 先生? 今まで一度も学園でツェツィーリエさんの姿、見てないですよ?
それにバラサさんはそんなに強い魔法を使えるんでしょうか?
そう不安になったんですけど、思ったんですけど王太子様の視線はこんなときでもあたしの胸で固定されています。
ううっ。気持ち悪い……。
「さて、条件を確認するぞ。バラサ男爵令嬢が勝利した場合、これまでに流れている不名誉な噂がすべて虚偽だと認める。ローザ嬢が勝った場合、バラサ男爵令嬢はローザ嬢によって申し立てが行われた嫌がらせについて自身の犯行だと認め、ローザ嬢に謝罪する。これで間違いないな?」
「ええ、間違いございませんわ。わたくしの名に懸けまして」
「はい」
いけしゃあしゃあと。あんな嫌がらせをしておいてよくも言えたものです。
「いいだろう。ローザ嬢は本人と従魔一匹にペットが二匹だな。武器は使用しないのだな?」
「はい」
「ペットが傷ついても自己責任だぞ?」
「わかっています」
ユキもホーちゃんもピーちゃんも、自分から志願してくれたんです。それに、みんな頼もしい友達なのできっと大丈夫なはずです。
「バラサ男爵令嬢は従魔を使わないのか?」
「ええ。武器はこのロッドを使いますわ」
「よかろう」
授業では金属製のロッドではなくてもっと長い木の杖を使っていたはずです。何かあるのでしょうか?
そうならば早めに炎弾で動けないようにしてしまう必要がありそうです。
「それではこれよりバラサ男爵令嬢とローザ嬢の決闘を行う。はじめ!」
あたしは炎を適当に放って距離を取るべく後退します。
それに対してバラサさんはロッドを一振りしました。
すると見上げるほど大きな機械人形が出現し、あたしの炎を受け止めました。
え? え? 何ですか! あれは!?
あんなの持ち込むの反則じゃないんですか!?
「おい。バラサ男爵令嬢。なんだそれは」
「ゴーレムですわ。決闘ではゴーレム魔術の使用を認めているはずですわ」
「これがゴーレムだと?」
「ええ。ゴーレムですわ。バラサ男爵家の名誉を懸けていますもの。バラサ男爵家に伝わる秘伝のゴーレム魔術くらい、使いますわ」
「……そうか」
えええっ!? 王太子様、そこで引き下がっちゃうんですか!?
「さあ、あの小娘を踏みつぶしなさい!」
バラサさんが命令すると、ゴーレムはズシンズシンとあたしのほうに向かって歩いてきます。
先ほどの炎では傷一つついていないので適当に炎を放ってもダメだと思います。
じゃあ、やっぱり炎弾で!
あたしが炎弾を放つために集中しようとすると、バラサさんは水球を撃ってきました。
「あっ!」
意表を突かれたあたしはその水球をまともに受けてしまいます。
急いで撃ったからかは分かりませんが、あまり威力がなかったためちょっと痛かったくらいで怪我はしていません。
ですが、またしても全身がびしょ濡れになってしまいました。服がぴったりと張り付いて、観客席にいる男子生徒たちと王太子様の視線があたしに突き刺さります。男性の先生がたは見ないように顔を背けてくれているようです。
「大したことありませんですわね」
バラサさんはそう言ってニヤリと笑いました。もう勝ったつもりなのでしょうか?
あたしにはユキたちがいるんです。
ユキたちが……って、あれ?
ユキとピーちゃんはゴーレムの足に纏わりついて止めようとしてくれていますが、まったく攻撃が効いていないようです。
それよりも気がかりなのはホーちゃんの姿が見当たらないことです。どこに行ったんでしょうか?
「猫とスライムごときがわたくしのゴーレムを止められるはずなどありませんわ。それにあの薄汚い鳥はどこかに飛んで逃げましてよ?」
バラサさんは勝ちを確信したかのように高笑いを始めました。
ああ、もう! 適当に炎弾!
あたしはあまり正確に狙いを付けずに炎弾を放ちます。
あれだけ的が大きいんだから狙わなくてもどこかに命中するはずです。
そう思って適当に撃った炎弾はゴーレムの肩口に命中しました。どうやらきっちりと貫通したようです。
そして貫通した炎弾はツェツィーリエさんが張ってくれた結界が受け止め、そこでようやく止まりました。
穴の開いた肩口からは何やら配線がのぞいて見えます。
……えっと。あれ、本当にゴーレムなんですか?
「あら、威力だけは本当に一人前なんですわね。でも、わたくしのゴーレムには効果がなくてよ?」
バラサさんがそう言うと、なんとゴーレムは自分で穴の空いたほうの腕を自分で引きちぎったではありませんか!
しかもそのまま引きちぎった腕を無造作に放り投げます。
するとすぐに腕が再生し、そしてなんと地面に転がった腕のほうからもゴーレムが再生しました。
え? ふ、増えた!?
そんなのありなんですか!?
============
次回「第77話 予想外の展開です」は 2021/06/19 (土) 20:00 の更新を予定しております。
新作「勇者召喚されたけど俺だけ村人だった件~ならば村で働けと辺境開拓村に送られたけど実は村人こそが最強でした~」の投稿を開始しております。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/954783106/925502039/episode/4341410
本来の意味でのチートを使って最強になっていくお話で、サクサク読み進められるようになっております。よろしければそちらもお読み頂けると幸いです。
上記URL、もしくは筆者の作品一覧から飛ぶことができます。
もしかしてあたしとお話をしたいのかもって、思ったんですけど違いました。
ツェツィーリエさんは何かの魔法を発動させたみたいです。
するとすぐに闘技場の観客席とこちら側を隔てるように薄い光のドームが出現しました。
「時間だ」
王太子様がそう告げました。
あたしは、こんな卑怯な人に負けるわけにはいかないんです。絶対に勝ってみせます!
「それと、今日の結界はツェツィーリエ先生が張ってくださった。どれだけ強力な魔法をつかったところで観客に被害が及ぶことはないだろうから、安心して暴れるがいい」
え? え? 先生? 今まで一度も学園でツェツィーリエさんの姿、見てないですよ?
それにバラサさんはそんなに強い魔法を使えるんでしょうか?
そう不安になったんですけど、思ったんですけど王太子様の視線はこんなときでもあたしの胸で固定されています。
ううっ。気持ち悪い……。
「さて、条件を確認するぞ。バラサ男爵令嬢が勝利した場合、これまでに流れている不名誉な噂がすべて虚偽だと認める。ローザ嬢が勝った場合、バラサ男爵令嬢はローザ嬢によって申し立てが行われた嫌がらせについて自身の犯行だと認め、ローザ嬢に謝罪する。これで間違いないな?」
「ええ、間違いございませんわ。わたくしの名に懸けまして」
「はい」
いけしゃあしゃあと。あんな嫌がらせをしておいてよくも言えたものです。
「いいだろう。ローザ嬢は本人と従魔一匹にペットが二匹だな。武器は使用しないのだな?」
「はい」
「ペットが傷ついても自己責任だぞ?」
「わかっています」
ユキもホーちゃんもピーちゃんも、自分から志願してくれたんです。それに、みんな頼もしい友達なのできっと大丈夫なはずです。
「バラサ男爵令嬢は従魔を使わないのか?」
「ええ。武器はこのロッドを使いますわ」
「よかろう」
授業では金属製のロッドではなくてもっと長い木の杖を使っていたはずです。何かあるのでしょうか?
そうならば早めに炎弾で動けないようにしてしまう必要がありそうです。
「それではこれよりバラサ男爵令嬢とローザ嬢の決闘を行う。はじめ!」
あたしは炎を適当に放って距離を取るべく後退します。
それに対してバラサさんはロッドを一振りしました。
すると見上げるほど大きな機械人形が出現し、あたしの炎を受け止めました。
え? え? 何ですか! あれは!?
あんなの持ち込むの反則じゃないんですか!?
「おい。バラサ男爵令嬢。なんだそれは」
「ゴーレムですわ。決闘ではゴーレム魔術の使用を認めているはずですわ」
「これがゴーレムだと?」
「ええ。ゴーレムですわ。バラサ男爵家の名誉を懸けていますもの。バラサ男爵家に伝わる秘伝のゴーレム魔術くらい、使いますわ」
「……そうか」
えええっ!? 王太子様、そこで引き下がっちゃうんですか!?
「さあ、あの小娘を踏みつぶしなさい!」
バラサさんが命令すると、ゴーレムはズシンズシンとあたしのほうに向かって歩いてきます。
先ほどの炎では傷一つついていないので適当に炎を放ってもダメだと思います。
じゃあ、やっぱり炎弾で!
あたしが炎弾を放つために集中しようとすると、バラサさんは水球を撃ってきました。
「あっ!」
意表を突かれたあたしはその水球をまともに受けてしまいます。
急いで撃ったからかは分かりませんが、あまり威力がなかったためちょっと痛かったくらいで怪我はしていません。
ですが、またしても全身がびしょ濡れになってしまいました。服がぴったりと張り付いて、観客席にいる男子生徒たちと王太子様の視線があたしに突き刺さります。男性の先生がたは見ないように顔を背けてくれているようです。
「大したことありませんですわね」
バラサさんはそう言ってニヤリと笑いました。もう勝ったつもりなのでしょうか?
あたしにはユキたちがいるんです。
ユキたちが……って、あれ?
ユキとピーちゃんはゴーレムの足に纏わりついて止めようとしてくれていますが、まったく攻撃が効いていないようです。
それよりも気がかりなのはホーちゃんの姿が見当たらないことです。どこに行ったんでしょうか?
「猫とスライムごときがわたくしのゴーレムを止められるはずなどありませんわ。それにあの薄汚い鳥はどこかに飛んで逃げましてよ?」
バラサさんは勝ちを確信したかのように高笑いを始めました。
ああ、もう! 適当に炎弾!
あたしはあまり正確に狙いを付けずに炎弾を放ちます。
あれだけ的が大きいんだから狙わなくてもどこかに命中するはずです。
そう思って適当に撃った炎弾はゴーレムの肩口に命中しました。どうやらきっちりと貫通したようです。
そして貫通した炎弾はツェツィーリエさんが張ってくれた結界が受け止め、そこでようやく止まりました。
穴の開いた肩口からは何やら配線がのぞいて見えます。
……えっと。あれ、本当にゴーレムなんですか?
「あら、威力だけは本当に一人前なんですわね。でも、わたくしのゴーレムには効果がなくてよ?」
バラサさんがそう言うと、なんとゴーレムは自分で穴の空いたほうの腕を自分で引きちぎったではありませんか!
しかもそのまま引きちぎった腕を無造作に放り投げます。
するとすぐに腕が再生し、そしてなんと地面に転がった腕のほうからもゴーレムが再生しました。
え? ふ、増えた!?
そんなのありなんですか!?
============
次回「第77話 予想外の展開です」は 2021/06/19 (土) 20:00 の更新を予定しております。
新作「勇者召喚されたけど俺だけ村人だった件~ならば村で働けと辺境開拓村に送られたけど実は村人こそが最強でした~」の投稿を開始しております。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/954783106/925502039/episode/4341410
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上記URL、もしくは筆者の作品一覧から飛ぶことができます。
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