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第二章

第46話 火属性です

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「倒した、んですか?」
「ああ。嬢ちゃんのお手柄だ。心臓を一撃とはいかなかったが大事な内臓を潰している。見事だ」
「いえ。グスタフさんや御者さん達のおかげです。あたしは撃っただけですから」
「いや。あんな威力の魔術を使えるだけでもすごいのに、あの速さで移動している奴に当てたんだ。大したもんだ」
「でもあたし一人じゃ……」
「本当は俺らであいつを立ち上がらせて隙を作るつもりだったんだ。だが思ったよりもあいつが強くてな。ジリ貧だったからあんな賭けに出たんだ。そいつを一発で決めてくれたんだから、嬢ちゃんが MVP だ」

 そう言われると何だか気恥ずかしくなり、あたしは「えへへ」と笑って誤魔化しました。

「ローザちゃん。すごかったねぇ」

 そんな会話をしていたあたし達のところにツェツィーリエさんがやってきました。

 ああ、良かった。無事だったようです。あ、ピーちゃんも!

「ピピー」

 ピーちゃんがすりすりと地面を這ってあたしのところにやってきました。

「ピーちゃん、怪我はないですか?」
「ピピー」
「え? あたし? あたしも無事ですよ。グスタフさんと御者さん達のおかげです」
「ピピー」

 あたしはピーちゃんを抱き上げると頬ずりします。

 ぷにぷにでひんやりしていてとっても気持ちいい!

「おい、嬢ちゃん。とりあえずこのでかいのを解体するぞ。こんだけの大物だ。冒険者ギルドに持って行けば良い金になる」
「ああ、待ってくれるかのう?」

 グスタフさんにツェツィーリエさんの旦那さんが割って入ってきました。ええと、名前何でしたっけ?

「ん? ラディスラフの旦那、まさか買い取るのか?」

 あ、そうそう。ラディスラフさんでした。って、あれ? この二人は知り合いなんですか?

「そのまさかじゃ。ガラの悪い連中は不慮の事故に遭ったし、儂の【収納】を使っても問題ないじゃろ」

 え? ラディスラフさんって【収納】持ちなんですか? 商人だとはテントで寝る前に聞いていましたけど。

「そうか。肉もか?」
「肉は必要な分だけ残して買い取るとするかのう」
「よし来た。じゃあ、嬢ちゃん。手伝ってくれ」
「え? でもこんなに大きな熊を解体したことなんて」
「大丈夫だ。嬢ちゃんは手伝ってくれればいい。それから、そこのスライムに地面に広がっている血とかを掃除させてくれ。できる限りでいいからな」
「わかりました。ピーちゃん。お願いできますか?」
「ピピッ」

 ピーちゃんは元気よく返事をしてくれました。

****

 それからあたしはグスタフさんの解体のお手伝い、さらに殺されてしまったお馬さんの解体も手伝いました。それからピーちゃんにお願いしてジャイアントマーダーベアとお馬さんの皮を処理してもらいました。

 そうしたらラディスラフさんはすごく驚いていて、ジャイアントマーダーベアの毛皮を相場の倍額だと言って買い取ってくれました。お肉と合わせると結構な金額になりました。

 あ、ちなみにお馬さんのお肉と皮は御者さんの物なので御者さんから加工の分の手間賃として 30 レウだけを貰いましたよ。

 それとですね。驚いたことにラディスラフさんはあんなに大きなジャイアントマーダーベアの毛皮とお肉を全部入れしまいました。しかもジャイアントマーダーベアに横転させられた馬車まで収納していましたので、きっとラディスラフさんの【収納】はあたしなんかとは比べ物にならないほどレベルが高いんだと思います。

 ただ、その運送料を御者さん達に請求していたのはさすが商人さんだと思いました。抜け目がないですよね。

 そうそう、それと解体している時に聞いたんですけど、グスタフさんさんはラディスラフさんに雇われた長年の護衛なんだそうです。

 最初からあの三人組を警戒していて、関係性がバレない様に他人を装っていたそうです。

 それで、盗賊が出てきた時も最初に立候補しなかったのはあの三人組が何かするかもしれないと警戒していたからで、あたしが立候補しちゃったのでやむを得ず立候補したんだとか。ラディスラフさんもツェツィーリエさんも、あたしのような小さな子供を見捨てるのは性に合わないらしくて、それで立候補した時に何言わずに許したんだそうですよ。

 何だか、以心伝心って感じですごいです。

 まあ、あたしはもう成人してますけどね!

 それと、サンドイッチを食べていたあたしに声を掛けてきたのは、白パンを食べていると狙われるから隠れて食べるように言おうとしただけだったみたいです。

 えっと、失礼な態度を取ってごめんなさい。

 さて、後始末を終えたあたし達は暗い中ですが松明の明かりを頼りに移動を始めました。あれだけ解体していてこんな事を言うのも変かもしれませんが、血の匂いに誘われた魔物がまた襲ってくるかもしれませんからね。

 ジャイアントマーダーベアは一頭で縄張りを持っているそうなのでまた襲われることはないらしいですが、狼とかが来たら面倒です。特に寝ている時に襲われたらやられちゃうかもしれませんし。

 え? あの三人組はどうしたかって?

 もちろん燃やしましたよ。街道に死体を放置するのはまずいですからね。

 ただ、冒険者カードは剥ぎ取って次の町でギルドに提出します。町の外で死んだ冒険者はこうやって誰かがギルドに冒険者カードを持って行くことで死亡扱いになるんだそうです。

 遺族がいればそのうちこの冒険者カードが届く、こともあるかもしれないそうです。

 ちなみに持ち物はあたし達で山分けしました。ルールとしてこれで良いそうなんですが、残念ながらあいつらあんまりお金持っていませんでした。

「ねえ、ローザちゃん?」
「なんですか?」

 松明の明かりの中夜道を歩いていると、隣を歩いているツェツィーリエさんが声をかけてきました。隊列は先頭に業者さんとグスタフさん、あたしとツェツィーリエさんとラディスラフさん、最後に御者さんです。

 ユキは抱っこでピーちゃんが頭の上、ホーちゃんは警戒してあたし達の頭上を飛んでいます。

「ローザちゃんのあの魔術、本当に火属性の魔術なのかしら?」
「え? ひ、火属性ですよ? 傷口が焦げてたじゃないですか」
「本当にそうかしら?」
「火属性です。はい。絶対火属性です」
「うーん、そうねぇ。まあ、そういう事にしておきましょう」

 ど、ど、ど、どうしてバレたんでしょうか?

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次回の更新は 1/30(土)20:00 となります。どうぞご了承ください。
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