35 / 244
第一章
第35話 目をつけられたようです
しおりを挟む
どうもこんにちは。ローザです。ゴブリン退治から二週間が経ちました。
レオシュ達を中心とする第一隊の奴らが第七隊のお姉さん達に嫌がらせをしていること以外は今まで通りの生活です。お姉さんたちはあたしを可愛がってくれますし、お勉強も教えてもらえるし、それに何より毎日ちゃんと食事が食べられるっていうのが本当に嬉しいんです。
もう、孤児院に戻れって言われても絶対無理な気がします。それなら森でのサバイバル生活に戻るほうが遥かにマシです。
さて、そんなこんなであたしは今日も図書室で一人で本を読んでお勉強をしています。やっぱり、知らないことを学べるのって本当に楽しいですよね!
今はお薬についての勉強をしているんです。薬草やお薬の調合について勉強をしてちょっとでもオフェリアさん達の役に立てたらいいなって思いまして。
もちろん魔法にも興味はあるんですよ? ただ魔法の使い方を解説した本って無かったんですよね。でもそれってよく考えたら当然で、みんな多かれ少なかれ必ず魔法は使っているんですよ。
あたしも森の中ではじめて魔法を使えた時は感動しましたけどね。でも今になってよく思い返してみると、あれって孤児院で火の魔道具を使うときに魔力を使っていたことの応用だったって気付いたんです。
だから魔力の扱い方なんて誰だって小さい時に自然に覚えるわけですからそういったレベルの入門書なんて誰も読まないと思うんです。
かといって攻撃魔法のレベルで魔力を扱える人はものすごく少ないですから本を書いても読む人がいないでしょうし、そもそも魔法はイメージが大切なので読むよりも習った方が多分簡単だと思うんですよね。
唯一見かけた魔法関係の本は魔道具の理論みたいな本なんですけど、あたしにはちんぷんかんぷんでした。何だかこう、読める文字で書いてあるはずなのに何が書いてあるかさっぱり分からなかったんです。もう、あっという間にギブアップしてしまいました。
魔道具は魔道具士っていうすごく勉強した頭の良い人が作っているそうです。魔道具士はすごく儲かるらしいですけどなるのが難しくて、マルダキア魔法王国の学園に通うのが一番らしいです。ただ、入試があるそうなのであたしには絶対無理ですけどね。
「ローザちゃん。そろそろ図書室を閉める時間だよ」
「え? はーい」
気付けばもう夕方になっていました。あたしは本を元の場所に戻すと女子寮へと戻ります。
「ユキ、行こう」
「ミャー」
図書室の出入り口にある司書さんの机の上で丸くなっていたユキが返事をするとすっと立ち上がり、あたしの足元までやってきました。
「ユキちゃんは本当に賢いねぇ。ローザちゃんの言う事を理解しているみたいだよ」
「自慢のうちの子ですから」
あたしが笑顔でそう言うと、司書さんは「そうだね」と穏やかな笑顔を浮かべます。
最初は司書さんも猫を連れてくるなんて、と嫌がっていましたが今ではユキのファンの一人になってくれています。最近はふわふわの毛並みを撫でるのを楽しみにしている節もあるくらいです。
「それじゃあまたね」
「はい」
司書さんに見送られて図書室を出たあたしはそのまままっすぐに女子寮を目指します。
「今日の夕食のメニューは何かな?」
「ミャー」
そんな他愛もない会話をしながら歩いていると後ろから声をかけられました。
「おい。そこのガキ」
げ、この声は。
「おい。無視するな。ガキ!」
「……なんでしょうか?」
あたしが振り返ると、何故かしかめっ面のレオシュが一人でこちらにやってきます。
そしてあたしの目の前まで来ると上から見下ろしてきました。
う、怖い。
「お前、魔術を使えるだろう?」
「え……?」
ど、どうしてバレたんでしょうか?
あたしは動揺してついユキを抱き上げると胸に抱えます。ユキの温もりが感じられて少しだけ気分を落ち着けることができました。
「やはりそうか」
「え? あ、あたしはそんな……」
「知っているぞ。ゴブリンの頭に小さな穴を開けたのはお前だな?」
そう言ってレオシュは顔を近づけると睨み付けてきました。
うええ、怖い。
あたしはどう言い訳をして逃れようか考えますが、頭が真っ白になって上手く反論できません。その時、司書さんの穏やかな声が聞こえてきました。
「おや? 何をしているんですか? レオシュ君」
「なっ?」
「おや? ローザちゃんじゃないか。レオシュ君、ダメですよ。ローザちゃんは未成年とはいえ女性なのですから、デートに誘うならマナーを守って優しく誘わないとダメですよ?」
司書さんはつかつかと歩いてくるとレオシュの肩にポンと手を置きました。
「分かりましたね?」
「う、は、はい……」
レオシュは苦々し気な表情を浮かべつつも、そのまま司書さんに一礼してから立ち去ったのでした。
あのレオシュをあんな風にやり込めるなんて! 司書さんすごい!
================
あけましておめでとうございます。
本作は一章完結までは隔日、それ以降は週に一、二回を目途に二章完結を目指して執筆を続けていく予定となっております。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
レオシュ達を中心とする第一隊の奴らが第七隊のお姉さん達に嫌がらせをしていること以外は今まで通りの生活です。お姉さんたちはあたしを可愛がってくれますし、お勉強も教えてもらえるし、それに何より毎日ちゃんと食事が食べられるっていうのが本当に嬉しいんです。
もう、孤児院に戻れって言われても絶対無理な気がします。それなら森でのサバイバル生活に戻るほうが遥かにマシです。
さて、そんなこんなであたしは今日も図書室で一人で本を読んでお勉強をしています。やっぱり、知らないことを学べるのって本当に楽しいですよね!
今はお薬についての勉強をしているんです。薬草やお薬の調合について勉強をしてちょっとでもオフェリアさん達の役に立てたらいいなって思いまして。
もちろん魔法にも興味はあるんですよ? ただ魔法の使い方を解説した本って無かったんですよね。でもそれってよく考えたら当然で、みんな多かれ少なかれ必ず魔法は使っているんですよ。
あたしも森の中ではじめて魔法を使えた時は感動しましたけどね。でも今になってよく思い返してみると、あれって孤児院で火の魔道具を使うときに魔力を使っていたことの応用だったって気付いたんです。
だから魔力の扱い方なんて誰だって小さい時に自然に覚えるわけですからそういったレベルの入門書なんて誰も読まないと思うんです。
かといって攻撃魔法のレベルで魔力を扱える人はものすごく少ないですから本を書いても読む人がいないでしょうし、そもそも魔法はイメージが大切なので読むよりも習った方が多分簡単だと思うんですよね。
唯一見かけた魔法関係の本は魔道具の理論みたいな本なんですけど、あたしにはちんぷんかんぷんでした。何だかこう、読める文字で書いてあるはずなのに何が書いてあるかさっぱり分からなかったんです。もう、あっという間にギブアップしてしまいました。
魔道具は魔道具士っていうすごく勉強した頭の良い人が作っているそうです。魔道具士はすごく儲かるらしいですけどなるのが難しくて、マルダキア魔法王国の学園に通うのが一番らしいです。ただ、入試があるそうなのであたしには絶対無理ですけどね。
「ローザちゃん。そろそろ図書室を閉める時間だよ」
「え? はーい」
気付けばもう夕方になっていました。あたしは本を元の場所に戻すと女子寮へと戻ります。
「ユキ、行こう」
「ミャー」
図書室の出入り口にある司書さんの机の上で丸くなっていたユキが返事をするとすっと立ち上がり、あたしの足元までやってきました。
「ユキちゃんは本当に賢いねぇ。ローザちゃんの言う事を理解しているみたいだよ」
「自慢のうちの子ですから」
あたしが笑顔でそう言うと、司書さんは「そうだね」と穏やかな笑顔を浮かべます。
最初は司書さんも猫を連れてくるなんて、と嫌がっていましたが今ではユキのファンの一人になってくれています。最近はふわふわの毛並みを撫でるのを楽しみにしている節もあるくらいです。
「それじゃあまたね」
「はい」
司書さんに見送られて図書室を出たあたしはそのまままっすぐに女子寮を目指します。
「今日の夕食のメニューは何かな?」
「ミャー」
そんな他愛もない会話をしながら歩いていると後ろから声をかけられました。
「おい。そこのガキ」
げ、この声は。
「おい。無視するな。ガキ!」
「……なんでしょうか?」
あたしが振り返ると、何故かしかめっ面のレオシュが一人でこちらにやってきます。
そしてあたしの目の前まで来ると上から見下ろしてきました。
う、怖い。
「お前、魔術を使えるだろう?」
「え……?」
ど、どうしてバレたんでしょうか?
あたしは動揺してついユキを抱き上げると胸に抱えます。ユキの温もりが感じられて少しだけ気分を落ち着けることができました。
「やはりそうか」
「え? あ、あたしはそんな……」
「知っているぞ。ゴブリンの頭に小さな穴を開けたのはお前だな?」
そう言ってレオシュは顔を近づけると睨み付けてきました。
うええ、怖い。
あたしはどう言い訳をして逃れようか考えますが、頭が真っ白になって上手く反論できません。その時、司書さんの穏やかな声が聞こえてきました。
「おや? 何をしているんですか? レオシュ君」
「なっ?」
「おや? ローザちゃんじゃないか。レオシュ君、ダメですよ。ローザちゃんは未成年とはいえ女性なのですから、デートに誘うならマナーを守って優しく誘わないとダメですよ?」
司書さんはつかつかと歩いてくるとレオシュの肩にポンと手を置きました。
「分かりましたね?」
「う、は、はい……」
レオシュは苦々し気な表情を浮かべつつも、そのまま司書さんに一礼してから立ち去ったのでした。
あのレオシュをあんな風にやり込めるなんて! 司書さんすごい!
================
あけましておめでとうございます。
本作は一章完結までは隔日、それ以降は週に一、二回を目途に二章完結を目指して執筆を続けていく予定となっております。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
45
お気に入りに追加
946
あなたにおすすめの小説
平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした
カレイ
恋愛
「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」
それが両親の口癖でした。
ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。
ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。
ですから私決めました!
王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。
【R18 】必ずイカせる! 異世界性活
飼猫タマ
ファンタジー
ネットサーフィン中に新しいオンラインゲームを見つけた俺ゴトウ・サイトが、ゲーム設定の途中寝落すると、目が覚めたら廃墟の中の魔方陣の中心に寝ていた。
偶然、奴隷商人が襲われている所に居合わせ、助けた奴隷の元漆黒の森の姫であるダークエルフの幼女ガブリエルと、その近衛騎士だった猫耳族のブリトニーを、助ける代わりに俺の性奴隷なる契約をする。
ダークエルフの美幼女と、エロい猫耳少女とSEXしたり、魔王を倒したり、ダンジョンを攻略したりするエロエロファンタジー。
いらないと言ったのはあなたの方なのに
水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。
セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。
エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。
ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。
しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。
◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬
◇いいね、エールありがとうございます!
ポンコツ女子は異世界で甘やかされる(R18ルート)
三ツ矢美咲
ファンタジー
投稿済み同タイトル小説の、ifルート・アナザーエンド・R18エピソード集。
各話タイトルの章を本編で読むと、より楽しめるかも。
第?章は前知識不要。
基本的にエロエロ。
本編がちょいちょい小難しい分、こっちはアホな話も書く予定。
一旦中断!詳細は近況を!
壁の花令嬢の最高の結婚
晴 菜葉
恋愛
壁の花とは、舞踏会で誰にも声を掛けてもらえず壁に立っている適齢期の女性を示す。
社交デビューして五年、一向に声を掛けられないヴィンセント伯爵の実妹であるアメリアは、兄ハリー・レノワーズの悪友であるブランシェット子爵エデュアルト・パウエルの心ない言葉に傷ついていた。
ある日、アメリアに縁談話がくる。相手は三十歳上の財産家で、妻に暴力を働いてこれまでに三回離縁を繰り返していると噂の男だった。
アメリアは自棄になって家出を決行する。
行く当てもなく彷徨いていると、たまたま賭博場に行く途中のエデュアルトに出会した。
そんなとき、彼が暴漢に襲われてしまう。
助けたアメリアは、背中に消えない傷を負ってしまった。
乙女に一生の傷を背負わせてしまったエデュアルトは、心底反省しているようだ。
「俺が出来ることなら何だってする」
そこでアメリアは考える。
暴力を振るう亭主より、女にだらしない放蕩者の方がずっとマシ。
「では、私と契約結婚してください」
R18には※をしています。
一体何のことですか?【意外なオチシリーズ第1弾】
結城芙由奈
恋愛
【あの……身に覚えが無いのですけど】
私は由緒正しい伯爵家の娘で、学園内ではクールビューティーと呼ばれている。基本的に群れるのは嫌いで、1人の時間をこよなく愛している。ある日、私は見慣れない女子生徒に「彼に手を出さないで!」と言いがかりをつけられる。その話、全く身に覚えが無いのですけど……?
*短編です。あっさり終わります
*他サイトでも投稿中
警察官数名を把握
すずりはさくらの本棚
現代文学
---
警察官数名を把握
朝方、私が道端に倒れていると、近所の人々が集まってくる様子が見受けられました。しかし、彼らは私の状態に驚くこともなく、ただその場に立ち尽くしているだけでした。私自身、倒れることに慣れているためか、誰一人として声をかけてくることもなく、その無関心さが心に響きました。その一方で、周囲の様子を観察することにしました。
その時、小さな子供を連れている親子らしき二人組が、私の視界に入りました。男性は舌打ちをしながら子供と共にその場にいたのですが、どこか違和感を覚えました。「この二人は本当に親子なのだろうか?」という疑問が頭をよぎりました。まるで芝居の一場面のように見えたその親子に、私は疑念を抱かざるを得ませんでした。
さらに、近くを通りかかった見知らぬ男性が私を起き上がらせてくれましたが、彼もまたこの地域では見かけたことのない顔でした。この付近では私が倒れていても、通常、誰も助けてくれることはありません。そんな状況の中で、二人の男性が「大丈夫ですか?」と声をかけてきたことは非常に珍しいことでした。この言葉に違和感を覚えながらも、私は彼らの行動を冷静に分析しました。
その結果、私には一つの推論が浮かびました。彼らは刑事であり、私を監視しているのではないかという考えです。私が倒れているこの状況を利用して、彼らの正体を見極めようと試みました。すると、私の予感は当たっていたようで、二人の男性が刑事であることが判明しました。
その後、私はお昼過ぎと夕方にも外に出ましたが、彼らの姿を再び確認することはできませんでした。それでも、私の中には確信が残りました。彼らは刑事であり、私を見張っているということです。
右肋骨に二、三本の損傷があり、さらに肉離れも起こしているため、しばらくは安静が必要です。しかし、このような状況に今後も警戒しながら、日常を送る覚悟を持つ必要があると感じています。
---
よくある婚約破棄なので
おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。
その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。
言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。
「よくある婚約破棄なので」
・すれ違う二人をめぐる短い話
・前編は各自の証言になります
・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド
・全25話完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる