上 下
13 / 244
第一章

第13話 いじめはいけないと思います

しおりを挟む
2020/12/10 誤字を修正しました
================

 どうもこんにちは。ローザです。今日も元気に森の中でサバイバルしています。

 ユキをお迎えしてから早いものでもう一か月が経ちました。最初はあたしの両手にすっぽりと収まるくらいに小さかったユキも今では体長 20 cm くらいまで大きくなりました。猫は、いえスノーリンクスの成長は早いんですね。

 それと、あたしもほんの少しですけど胸も膨らんできて、少しずつ大人の女性に成長していっているんだなって実感しています。

 ただ、その割にはオシャレよりもサバイバル能力ばかりが鍛えられているのが悩みどころです。何しろ、この間なんて鹿と猪を一日で仕留めちゃいましたからね。

 あたしもう、猟師としてやっていけるかもしれません。

 でもですね。あたしの夢は一番が毎日お腹いっぱい食べることで、二番目がお嫁さんになることなんですよ。

 だからこのままではまずいな、とは思うんです。思ってはいるんですけど、どうにも周りに他人の目が無いと思うと油断して適当になっちゃうんですよね。

 ほら、どうせ張り合う相手もいなければ見せたい相手もいないんですし。もう、なんだか最近は裸で走り回れるんじゃないかって気分です。

 ただですね。人間はあたし一人ですけど、あたしにはユキがいてくれるおかげで寂しくはないんです。しかも、最近はずっと一緒に寝てくれるんですよ?

 もう、至福です。

 ユキはあたしの天使ですよ。離れるなんてもう考えられません。

 あ、そうそう。それといくつかのスキルレベルが上がりました。【収納】と【火属性魔法】がレベル 2 になって、【無属性魔法】と【魔力操作】がレベル 3 になりました。それと、【狙撃】なんてスキルが生えてきました。

 きっと遠くから魔法弾で獲物を狙撃していたからでしょうね。

 あとはそうですね。【収納】スキルでも発見がありました。生肉を入れておくと腐ってしまうみたいなんですよ。それに気付かずにウサギの毛皮が何枚かダメになってしまいました。

 ただ、焼いたお肉は今のところ腐っていないんですよね。ちょっと油が悪くなったかなって感じにはなるんですけどそれだけで腐ったりはしないんです。だから最近はお肉を全部焼いて、それを冷ましてから収納に入れておく事にしています。

 あ、冷ますのは、熱々のまま収納に入れると取り出したときにすっごく硬くなっていたからです。取り出したときも熱いままだったので、焼き過ぎで硬くなった感じなんだと思います。多分。

 さて、それじゃあ今日の狩りと採集に行ってこようと思います。狙いはやっぱりヤマモモとかキイチゴ類ですね。甘酸っぱくてお肉にもよく合うんです。あとは虫除け草を追加で欲しいですね。

 マイホームがあるのでまだマシですが、それでも虫が湧いてきて夜とかはちょっと不快なんですよね。でも虫よけ草をいぶして煙を炊いていれば寄ってこなくなるので、森の中では必需品かもしれません。

 それからそろそろウサギも狩っておきたいところですね。

 やっぱり絨毯にしている毛皮はちゃんとした職人さんが処理していないからすぐに痛んじゃうので頻繁に取り替えないといけないんですよ。

 それじゃあ、いってきます。

****

 森の中を歩いていると、少し開けた場所に普段は見かけない青いグミのような生き物が五匹いるの見かけました。あれはブルースライムです。そしてそのうちの四匹が一番体の小さくて色の薄い一匹を取り囲んで体当たりをしたり体を変形させて触手で叩いたりしています。

「ねえユキ。あれって何だと思います?」
「ミャー」
「やっぱり、いじめですよねぇ?」
「ミャー」

 うん。やっぱりそうですよね。ユキの目にもいじめに見えるようです。これは助けてあげるべきでしょうか。

「ねえユキ。助けてあげた方が良いですかねぇ?」
「ミャー」

 そうですよね。やっぱりユキも助けてあげたい思っているようです。

 というわけで、あたしは歩いて近づくと声を掛けます。

「あの。みんなで寄ってたかっていじめるのは良くないと思いますよ?」
「ピピ?」
「キュイ?」

 あたしの声に反応したのかいじめていたブルースライムの動きが止まります。そしてすぐに威嚇してきました。

「キュキュキュキュー!」

 ブルースライムといえばとても弱い上にゴミや汚物なんかを食べてくれるのでそれなりに有益な魔物として有名ですが、それでも魔物です。あたしのような人間を見つけると襲ってくるんです。

「それなら!」

 あたしはブルースライムの弱点である火属性魔法で手元に炎を出して威嚇し返します。

「その子へのいじめをやめないなら、倒しますよ!」
「キュ、キュキュ」

 やっぱり炎は怖いようで、ブルースライムたちがたじろいでいます。あたしは炎を少し近づけてやります。

「ピ、キュキュー」

 いじめていたブルースライム達は観念したのか茂みの奥へと消えていきました。

「大丈夫ですか?」
「ピ……ピ……」

 あたしのかけた声にたいするいじめられっ子スライムの反応はとても弱々しいものでした。

「だいぶ弱っているみたいですね」
「ミャー」

 うん。やっぱりユキも心配みたいです。

「ミャー」

 あれ? ユキが草を指さして? あ、これは薬草じゃないですか。

「ユキ、ナイスです」

 あたしは薬草の葉っぱを一枚摘むとそのままいじめられっ子スライムに差し出します。

「ピ……」

 弱々しくそう言ったいじめられっ子スライムはあたしの差し出した葉っぱに触れるとすぐにその体内に薬草を取り込みました。

 青と言うよりも水色に近い色の体の中に取り込まれた葉っぱが少しずつ溶けて無くなっていくのはとても不思議な光景です。

 そしていじめられっ子スライムにはすぐに変化が現れました。

「ピ。ピピー!」

 すごい! もう元気になったみたいです。薬草の効果恐るべしです。

 ただあたしたちにはあんな即効性は無かったのでスライムにはよく効くのかもしれませんね。

「元気になって良かったです。もういじめられないように気を付けてね」

 あたしはそう言うと回れ右して獲物を探しに森を歩いて行くのでした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした

カレイ
恋愛
 「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」  それが両親の口癖でした。  ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。  ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。  ですから私決めました!  王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。  

【R18 】必ずイカせる! 異世界性活

飼猫タマ
ファンタジー
ネットサーフィン中に新しいオンラインゲームを見つけた俺ゴトウ・サイトが、ゲーム設定の途中寝落すると、目が覚めたら廃墟の中の魔方陣の中心に寝ていた。 偶然、奴隷商人が襲われている所に居合わせ、助けた奴隷の元漆黒の森の姫であるダークエルフの幼女ガブリエルと、その近衛騎士だった猫耳族のブリトニーを、助ける代わりに俺の性奴隷なる契約をする。 ダークエルフの美幼女と、エロい猫耳少女とSEXしたり、魔王を倒したり、ダンジョンを攻略したりするエロエロファンタジー。

いらないと言ったのはあなたの方なのに

水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。 セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。 エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。 ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。 しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。 ◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬 ◇いいね、エールありがとうございます!

ポンコツ女子は異世界で甘やかされる(R18ルート)

三ツ矢美咲
ファンタジー
投稿済み同タイトル小説の、ifルート・アナザーエンド・R18エピソード集。 各話タイトルの章を本編で読むと、より楽しめるかも。 第?章は前知識不要。 基本的にエロエロ。 本編がちょいちょい小難しい分、こっちはアホな話も書く予定。 一旦中断!詳細は近況を!

壁の花令嬢の最高の結婚

晴 菜葉
恋愛
 壁の花とは、舞踏会で誰にも声を掛けてもらえず壁に立っている適齢期の女性を示す。  社交デビューして五年、一向に声を掛けられないヴィンセント伯爵の実妹であるアメリアは、兄ハリー・レノワーズの悪友であるブランシェット子爵エデュアルト・パウエルの心ない言葉に傷ついていた。  ある日、アメリアに縁談話がくる。相手は三十歳上の財産家で、妻に暴力を働いてこれまでに三回離縁を繰り返していると噂の男だった。  アメリアは自棄になって家出を決行する。  行く当てもなく彷徨いていると、たまたま賭博場に行く途中のエデュアルトに出会した。  そんなとき、彼が暴漢に襲われてしまう。  助けたアメリアは、背中に消えない傷を負ってしまった。  乙女に一生の傷を背負わせてしまったエデュアルトは、心底反省しているようだ。 「俺が出来ることなら何だってする」  そこでアメリアは考える。  暴力を振るう亭主より、女にだらしない放蕩者の方がずっとマシ。 「では、私と契約結婚してください」 R18には※をしています。    

一体何のことですか?【意外なオチシリーズ第1弾】

結城芙由奈 
恋愛
【あの……身に覚えが無いのですけど】 私は由緒正しい伯爵家の娘で、学園内ではクールビューティーと呼ばれている。基本的に群れるのは嫌いで、1人の時間をこよなく愛している。ある日、私は見慣れない女子生徒に「彼に手を出さないで!」と言いがかりをつけられる。その話、全く身に覚えが無いのですけど……? *短編です。あっさり終わります *他サイトでも投稿中

警察官数名を把握

すずりはさくらの本棚
現代文学
--- 警察官数名を把握 朝方、私が道端に倒れていると、近所の人々が集まってくる様子が見受けられました。しかし、彼らは私の状態に驚くこともなく、ただその場に立ち尽くしているだけでした。私自身、倒れることに慣れているためか、誰一人として声をかけてくることもなく、その無関心さが心に響きました。その一方で、周囲の様子を観察することにしました。 その時、小さな子供を連れている親子らしき二人組が、私の視界に入りました。男性は舌打ちをしながら子供と共にその場にいたのですが、どこか違和感を覚えました。「この二人は本当に親子なのだろうか?」という疑問が頭をよぎりました。まるで芝居の一場面のように見えたその親子に、私は疑念を抱かざるを得ませんでした。 さらに、近くを通りかかった見知らぬ男性が私を起き上がらせてくれましたが、彼もまたこの地域では見かけたことのない顔でした。この付近では私が倒れていても、通常、誰も助けてくれることはありません。そんな状況の中で、二人の男性が「大丈夫ですか?」と声をかけてきたことは非常に珍しいことでした。この言葉に違和感を覚えながらも、私は彼らの行動を冷静に分析しました。 その結果、私には一つの推論が浮かびました。彼らは刑事であり、私を監視しているのではないかという考えです。私が倒れているこの状況を利用して、彼らの正体を見極めようと試みました。すると、私の予感は当たっていたようで、二人の男性が刑事であることが判明しました。 その後、私はお昼過ぎと夕方にも外に出ましたが、彼らの姿を再び確認することはできませんでした。それでも、私の中には確信が残りました。彼らは刑事であり、私を見張っているということです。 右肋骨に二、三本の損傷があり、さらに肉離れも起こしているため、しばらくは安静が必要です。しかし、このような状況に今後も警戒しながら、日常を送る覚悟を持つ必要があると感じています。 ---

よくある婚約破棄なので

おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。 その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。 言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。 「よくある婚約破棄なので」 ・すれ違う二人をめぐる短い話 ・前編は各自の証言になります ・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド ・全25話完結

処理中です...