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聖女の旅路
第十三章第37話 不思議な森の庵
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私たちは今、天空山脈の中腹の盆地にある小さな町チャーヴァの北西にある山の中にやってきている。
まずチャーヴァという町だが、小さいにもかかわらずグリーンクラウド王国になる前は一つの国だったそうだ。そんなチャーヴァの名物料理は豆と野菜のスープなのだが、残念ながら私の口にはあまり合わなかった。山ということで塩が貴重品なこともあってか、塩味がとにかく薄いのだ。もちろん豆と野菜のうま味は出ているのだが、このあたりの地域ではお肉もあまり食べないそうで、その点も物足りなさに拍車をかけていた。しかもそれを補うためか色々なスパイスが入っているのだが、やはり塩味とうま味がどうにも物足りない。
そうだね。イエロープラネット首長連邦でよく食べたスープと似た方向性のように感じたかな。でもこの地域の人たちはこれが普通の料理なわけで、私がとやかく言う話でもあるまい。
名物料理が口に合わず少しがっかりだったもののめげずにチャーヴァで聞き込みを行い、北西の山の中に天空老師の庵が北西の山の中にあるという情報を手に入れた。
さて、天空山脈といえば雲よりも高いと言われる山々が連なっているわけだが、このあたりはまだ森林限界に到達していない。だからここは木々が生い茂る普通の森なので、ルーちゃんがいる私たちはスムーズに歩くことができている。いる。
「あ! こっちみたいですっ!」
ルーちゃんが突然方向を変え、斜面を登り始めた。
「はい。ちょっと待ってください」
こうして私たちはなんの問題もなく日当たりのいい場所に建てられた質素な庵に到着した。
「ここみたいですっ!」
「ありがとうございます。ごめんくださーい」
扉を叩いてみるが、返事はない。
「留守、ですかね。仕方ないですね。出直しましょ……あれ? クリスさん? シズクさん?」
二人に呼びかけたところで私はようやく二人といつの間にかはぐれていることに気が付いた。
「えっ? いつの間に?」
「あれっ!? 本当ですっ! 二人がいないですっ! あの! 二人のところに案内してくださいっ!」
こうして私たちは大慌てで来た道を引き返す。するとしばらく下ったところで私たちを探している二人を見つけた。
「クリスさん! シズクさん!」
「フィーネ様!」
「ああ、よかったです」
「済まないでござる。いつの間にかはぐれていたでござるよ」
「でも無事でよかったです」
「申し訳ございません」
「でも、今は留守みたいなんですよね」
「留守でござるか。待たせてもらうでござるか?」
「そうですね。そこまで急ぐわけでもないですから」
「そうでござるな」
「じゃあ、ちゃんとついて来て下さいね」
「もちろんでござる」
こうして私たちは再び先ほどの庵を目指して歩きだしたのだが……。
「あれ?」
「また二人がいないですっ!」
今度は庵に向かう坂道を登っている途中で二人とはぐれたことに気付いたので、私たちは再び来た道を引き返す。すると一人で不安げに周囲を見回すクリスさんを発見した。
「フィーネ様! 申し訳ございません!」
「いえ。一体どうしたんですか?」
「それが、道を覚えるためにフィーネ様から視線を外したのですが、気付けばこの場に立っておりまして……」
そんなことってあるのだろうか? ここは精霊の島でもないというのに。
……あれ?
「ええと、クリスさん。シズクさんはどこでしょう?」
「えっ!?」
クリスさんもシズクさんがいないことに今気付いたようで、慌てて周囲をキョロキョロと見回す。
「あ! シズクさんはあっちみたいですっ!」
「ああ、よかった。早く迎えに行きましょう」
こうして私たちはシズクさんのいるほうへと向かい、すぐに合流することができた。
「かたじけないでござる」
「いえ。もしかしてシズクさんも私から視線を外したらここに?」
「いや、フィーネ殿とルミア殿の両方から視線を外したらでござるな。精霊の島を思い出すでござるが……」
「あ! ここ、よく見たら迷いの森ですっ!」
「え? 迷いの森? それって白銀の里とかシルツァの周りにある?」
「そうですっ! だからもしかしたら天空老師はエルフかも知れないですねっ!」
なんだって!? こんなところにエルフの里が? いや、でもエルフの里にあるはずの巨大な精霊樹は見当たらない。もしや、一人で住んでいるのだろうか?
「ということは、手を繋いでいれば大丈夫でござるか?」
「はいっ!」
「では、よろしく頼むでござるよ」
こうして私たちは手をつなぎ、三度目となる庵への登り坂を歩き始めるのだった。
◆◇◆
「ごめんくださーい」
庵の前で再び声を掛けるが、やはり返事はない。
「留守のようですね」
「そんなすぐには帰ってこないですね」
「では、待たせてもらうでござるよ」
こうして私たちは天空老師のものらしき庵の近くでキャンプをすることとなったのだった。
まずチャーヴァという町だが、小さいにもかかわらずグリーンクラウド王国になる前は一つの国だったそうだ。そんなチャーヴァの名物料理は豆と野菜のスープなのだが、残念ながら私の口にはあまり合わなかった。山ということで塩が貴重品なこともあってか、塩味がとにかく薄いのだ。もちろん豆と野菜のうま味は出ているのだが、このあたりの地域ではお肉もあまり食べないそうで、その点も物足りなさに拍車をかけていた。しかもそれを補うためか色々なスパイスが入っているのだが、やはり塩味とうま味がどうにも物足りない。
そうだね。イエロープラネット首長連邦でよく食べたスープと似た方向性のように感じたかな。でもこの地域の人たちはこれが普通の料理なわけで、私がとやかく言う話でもあるまい。
名物料理が口に合わず少しがっかりだったもののめげずにチャーヴァで聞き込みを行い、北西の山の中に天空老師の庵が北西の山の中にあるという情報を手に入れた。
さて、天空山脈といえば雲よりも高いと言われる山々が連なっているわけだが、このあたりはまだ森林限界に到達していない。だからここは木々が生い茂る普通の森なので、ルーちゃんがいる私たちはスムーズに歩くことができている。いる。
「あ! こっちみたいですっ!」
ルーちゃんが突然方向を変え、斜面を登り始めた。
「はい。ちょっと待ってください」
こうして私たちはなんの問題もなく日当たりのいい場所に建てられた質素な庵に到着した。
「ここみたいですっ!」
「ありがとうございます。ごめんくださーい」
扉を叩いてみるが、返事はない。
「留守、ですかね。仕方ないですね。出直しましょ……あれ? クリスさん? シズクさん?」
二人に呼びかけたところで私はようやく二人といつの間にかはぐれていることに気が付いた。
「えっ? いつの間に?」
「あれっ!? 本当ですっ! 二人がいないですっ! あの! 二人のところに案内してくださいっ!」
こうして私たちは大慌てで来た道を引き返す。するとしばらく下ったところで私たちを探している二人を見つけた。
「クリスさん! シズクさん!」
「フィーネ様!」
「ああ、よかったです」
「済まないでござる。いつの間にかはぐれていたでござるよ」
「でも無事でよかったです」
「申し訳ございません」
「でも、今は留守みたいなんですよね」
「留守でござるか。待たせてもらうでござるか?」
「そうですね。そこまで急ぐわけでもないですから」
「そうでござるな」
「じゃあ、ちゃんとついて来て下さいね」
「もちろんでござる」
こうして私たちは再び先ほどの庵を目指して歩きだしたのだが……。
「あれ?」
「また二人がいないですっ!」
今度は庵に向かう坂道を登っている途中で二人とはぐれたことに気付いたので、私たちは再び来た道を引き返す。すると一人で不安げに周囲を見回すクリスさんを発見した。
「フィーネ様! 申し訳ございません!」
「いえ。一体どうしたんですか?」
「それが、道を覚えるためにフィーネ様から視線を外したのですが、気付けばこの場に立っておりまして……」
そんなことってあるのだろうか? ここは精霊の島でもないというのに。
……あれ?
「ええと、クリスさん。シズクさんはどこでしょう?」
「えっ!?」
クリスさんもシズクさんがいないことに今気付いたようで、慌てて周囲をキョロキョロと見回す。
「あ! シズクさんはあっちみたいですっ!」
「ああ、よかった。早く迎えに行きましょう」
こうして私たちはシズクさんのいるほうへと向かい、すぐに合流することができた。
「かたじけないでござる」
「いえ。もしかしてシズクさんも私から視線を外したらここに?」
「いや、フィーネ殿とルミア殿の両方から視線を外したらでござるな。精霊の島を思い出すでござるが……」
「あ! ここ、よく見たら迷いの森ですっ!」
「え? 迷いの森? それって白銀の里とかシルツァの周りにある?」
「そうですっ! だからもしかしたら天空老師はエルフかも知れないですねっ!」
なんだって!? こんなところにエルフの里が? いや、でもエルフの里にあるはずの巨大な精霊樹は見当たらない。もしや、一人で住んでいるのだろうか?
「ということは、手を繋いでいれば大丈夫でござるか?」
「はいっ!」
「では、よろしく頼むでござるよ」
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「留守のようですね」
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