勇者殿の花嫁探し

ROKI

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11ターン目:顕る魔物と白い花

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  唾液の混ざりあった舌が互いに糸を引く。
何が起きたのか分からないままアグナジアルは体を抱き込まれ、難なく寝床に組伏せられる。

ギッチリと抱きすくめられて足を割られている。
その間には固さがのし掛かっていた。
リデルが興奮しているのは分かりやすく明らかだ。
落ち着きの無い呼吸のままアグナジアルの肩口や首元に顔を埋めて惑っている。


「勇者殿…私はエルメディウスではない」

「分かっている!…分かっている」


いつになく荒げているリデルをアグナジアルは若く年相応に思えて愛らしく感じてしまう。そしてその気持ちのままに後ろ髪を撫で下ろした。

その仕草がまるで合図だったかのように、リデルはアグナジアルの首にむしゃぶりついてきた。
口の中を蹂躙された時よりももっとはっきりとした疼きが全身に広がる。
アグナジアルは未知の感覚の逃し所が分からずリデルの背にしがみつく。

リデルは肌のあちこちを味わっているように口をつけては舌で辿る。何をしているのか分からないがそうされる度に疼きが強くなる。
唇の行方に気を取られている間に、背中に回されていたはずのリデルの手はアグナジアルの肩や腕や腹をつたい、衣を剥ぎ取っていった。
上半身が晒されると、待ち兼ねたようにリデルは胸元にもがっついてくる。
アグナジアルの小さな尖りにリデルの唇が触れた瞬間に、アグナジアルはこれまでとは違う強い感覚に見舞われた。
驚いてリデルの肩を掴み引き剥がす。
何をされたのかは分からないままだったが、何故か越えてはいけない、越えられてはいけない一線のような気がした。


「…勇者殿、」

「リデルだ」


言い掛けた言葉をすぐに上塗りされる。
そしてまた、アグナジアルがなにも言えぬよう唇で塞がれる。
自分に従わせようとしているのかまた舌が交わる。

その間にリデルの指が尖りを挟み込んだ
走る強い刺激にアグナジアルが「んん、」と声を漏らす。唇も突起も体の重みと力の圧力で逃れられないままリデルの感触にこねくり回されて、アグナジアルは否応なしに甘い感覚に侵け込まれていく。
意図しなくても鼻から上ずった喘ぎが漏れてしまう。指がくりくりと胸を刺激する度に腰が跳ねるように踊る。アグナジアルは味わったことの無いレベルの性感になすすべがないまま身悶えていた。

やっと唇が解放されて深く呼吸をする。
乱れて上気し始めたアグナジアルを間近で見つめていたリデルが満足そうに目を細めた。
リデルがまた身を屈め胸元を舌でねぶる。


「あっ」


塞ぐものがなくなったアグナジアルの口からはっきりと声が漏れ出た。
何故こんな声が出るのか、アグナジアルが恥じる隙も声を堪えるタイミングも与えずに尖りきったそこをリデルが吸い上げてまた断続的に捏ねられていく。


「ぁ、っ…あっ!」


どんどん刺激が強くなって声も大きくなっていく。
自分の胸がどうなってしまったのか不安になるほどアグナジアルは熱さとむず痒いような激しい疼きを感じていた。
疼きは下肢に下りてきて足の間の中心にズクンと響く。どんどん響きが重くなり痛いほどで、足を閉じて逃したくてもリデルの体が挟まっている。
腰の置き所が解らなくて何度も何度もくねらせてしまう。
不穏な感覚が堪えられずに手でその部分を押さえ込もうとアグナジアルがリデルの背から手を離した瞬間に、あろう事かリデルの手の方が先にそこに到達する。

他人に急所に触れられる感触にアグナジアルは心底驚いた。先程までの淡い感覚とは違う。怖いほどに鋭角に刺激が全身を駆け巡った。


「あ、あ、ダメだ……」


まとわりついていた衣を全て剥ぎ取られることにひどく不安になってしまう。こんなに体に熱を集めたことはない。するりと布が足を滑り落ちていくとアグナジアルは長い尾を巻いた。
陰部を隠すようにすっかり尾を丸めながら抵抗を見せる。


「勇者殿、」

「リデルだ」


さっきと同じやり取りを繰り返す。
リデルは巻き込んだ尾にも口付けをする。
くすぐったい感触に尾を震わせつつアグナジアルはリデルの所作を見つめている。
改めてリデルのする事を見下ろしてみれば、とても繊細に肌に、体に触れていることが分かる。
唇で挟まれて舌でなぞられて、手は温もりを刷り込むように撫でている。
この動きが甘い感覚を呼び起こしている。
アグナジアルは不思議でならなかったが、これが人間が施す営みで、これこそが魔族の精神を癒す程の行為なのだと思うととても尊いものだと感じていた。
尾の先でリデルの手のようにリデルの体に触れてみる。尾の次は、自らの手でも。

固く巻いた尾が解れて緩むと隠されていた箇所はすっかり熟れていた。
柔らかい毛並みに囲まれたアグナジアルの雄の部分はすっかり勃ちあがって幾重も滴が垂れている。
体の見た目は人間の男性とほぼ変わらない。
同性同士らしく、そこの扱いは熟知している。
リデルはゆっくりと芯を擦り始めた。


「あっ、あっ、あぁ」


強すぎる刺激を緩めようとアグナジアルの手が、リデルの手を押さえる。手のひらが男根を滑る度に滴が溢れてくる。もう限界が近いのだろう。
アグナジアルが焦るように頭を振る。
爆発しそうなのはリデルも同じだった。
自分が与える刺激に身を捩るアグナジアルの姿をこれほど至近距離で感じていて、充てられていないわけがない。
布を隔ててアグナジアルの体に押し付けていたリデル自身も、もっとアグナジアルの感触を感じてみたくて、涎を垂らしては引きちぎらんばかりに衣服を押し上げている。

匂いや触感だけじゃない。
もっと鋭く敏感な部分で全てを味わいたい。

リデルは完全に欲に堕ちた。
全ての理性を手放したわけではない。
未だどこかでブレーキをかけたがる自分もいる。
けれど、目の前にいるアグナジアル自身は決してリデルを拒絶してはくれないのだ。
服を脱ぎ払うリデルをアグナジアルの青い瞳が濡れているように揺らめきながら見守っている。
露にされたリデルの欲望を前にしてもアグナジアルは逃げることも嫌悪を滲ませることもない。
それどころか誘うようにリデルの体に尾を絡ませた。


「勇者殿が望むのは私ではないはず…」


再びアグナジアルの体に覆い被さりながら、リデルはアグナジアルの雄の更に下の辺りを指でまさぐる。寝床の敷物に染みを作るほどその部分はぬるぬると濡れそぼっていた。
滑らせるままに指がするりと埋まる。


「っ、く…」


アグナジアルが小さく呻く。
中はとても柔らかいが力が入っているのか狭くて熱い。早く入り込みたい熱情を堪えながらリデルがそこを指でならしていく。


「あ、ん、んん、…」


アグナジアルは苦しげに寝床の枕の方へ顔を逸らす。
勃起した部分への甘い刺激とは違って異物感が勝っていた。固い指に内部を押し広げられて擦られる苦しさと、鈍い微かな痛みと、えぐみを帯びた異物感に腰が引けてしまう。
腹の中を探られる感覚はなんとも言えぬ仄かな不快感だった。湿潤は十分でも、どうしても力んでしまって指すらうまく受け入れられない。

リデルが刺激を変えようとまた男根を愛撫する。
強い快感と異物感と、下半身が刺激で混乱していく。


「あ、あっ、…あ…!くる、……あっあああ!」


アグナジアルは目まぐるしい刺激に一気に爆ぜた。
びくびくと体を震わせて絶頂の快感に喘いでいる。
あまりの衝撃に驚いて自分の手で中心を探る。
その手をリデルの手が絡めとり、果てたばかりでまだピクピクと揺れるその狭間にリデルの滾った雄芯があてがわれる。
駆け巡った快感の余波でアグナジアルの全身は甘さに満ちている。
その最中に間髪入れること無くリデルは繋がろうとしていた。狭い内壁を割る痛みを紛らわそうというのだ。
アグナジアル自身も何をされるのかは流石に分かっていた。
それは人間も魔族も、同じ行為だ。


「本当に、私で…いいのか?」


この期に及んでまだアグナジアルはそんなことを問う。それにリデルは苛ついていた。

リデルが恋い焦がれていたのは、初めからアグナジアルだったのだ。
子供の頃、心に深く刻みこんだあの美しい笑顔はアグナジアルのものだった。
例え病んで多少姿が変わってしまっても、アグナジアル自身は何も変わっていない。
この数日間共に過ごして、リデルはそれを確信した。
優しく思慮深く寂しい魔物。
リデルはそんな魔王にずっと恋をしていた。
遠い日のアグナジアルの姿を、瓜二つであるエルメディウスに垣間見ただけだった。

そしてそんなエルメディウスに欲情したということは、リデルが恋慕を抱く本人であるアグナジアルに対しても湧かぬわけがない。
間違ってなどいない。
これこそが真だ。


「ちがう、俺は、初めから……」


ダメだ。
言葉で伝えられるほどの余裕はリデルには微塵も残っていない。
思っている気持ちを伝えきれない悔しさに満ちて、それをぶつけるようにリデルはアグナジアルの中に一気に入り込んだ。


「ーーー…!!」


快感の余韻から一変して張り裂かれる痛みがアグナジアルの下肢を駆け巡る。衝動に押し潰されて声が出ない。
ギッチリと中心に杭でも打ち付けられたようなそんな感覚だった。

アグナジアルの体内はとても熱く隙間無くリデルを包んでいる。
少しでも身動きをするとアグナジアルは怯えたようにビクビクと身動ぐ。今にも泣き出しそうな表情で開いた唇が戦慄いていた。
これほど固く繋がっていては互いに痛いだけだった。
それでもリデルはアグナジアルと結んだ満足感と幸福感に包まれていた。
アグナジアルの体を掻き抱いて沸いて溢れる気持ちに身をひたす。
暫くじっと抱き合っていれば、緊張して固まっていたアグナジアルの体が僅かに弛んだ。
リデルはゆっくりと律動を始める。

傷口を熱で炙られるような鮮やかな痛みにアグナジアルはきつく瞼を閉じる。
リデルが動く度に体内が固く太いもので奥に奥に押し上げられて、指よりも遥かに苦しく痛む。
体を重ねる事がこれほど苦痛を伴うとは…。
抉られて抉られて全て裂けてしまうのではないかと思うほど、自分では見ることの出来ない部分が犯されている。
激しくなっていくリデルの動きに共鳴するようにアグナジアルの息も上がっていく。
熱くて熱くて、感覚が集中した部分が麻痺してくる。
痛みに満ちているはずなのに、繋がって擦られている部分の境が曖昧で、奥まで貫かれる衝動が痺れに変わり始めた。


「…あぁっ!」


苦痛を堪えていたはずのアグナジアルは思わず声をあげる。
リデルが萎みきったアグナジアルの男性器をまた擦り始めていた。先程よりも強く激しく。

一気に性感を引き上げられていくアグナジアルは体を激しく波打たせる。
リデルを包み込むアグナジアルの内膜も連動してリデルを締め上げる。

ガクガクと体を揺さぶられ、体の中心を全てリデルの熱で埋め尽くされたアグナジアルは、自らの奥底から未曾有の感覚がせり上がってくるのを感じる。


「あ、もう、もう、…ああ、!勇者ど、の」


達したことの無い領域に体が向かおうとしていることに恐怖に近い感情がアグナジアルを襲う。


「リデル、だ」


リデルの声が耳元で聞こえる。
頬に口づけるリデルもまた、味わったことの無い強い波に呼吸を荒らしていた。


「リ、リデル、…あぁ、リデル!あ、あ、あ、ーー…!!!」


アグナジアルは夢中でリデルの名を呼ぶ。
絶頂の波に覆い尽くされて閉じた目の中が白く染まった。
果てたアグナジアルの体の痙攣に同調してリデルもビクビクと痙攣している。

どちらともなく快感の最も深い所に到達していた。


アグナジアルの緩やかな痙攣はなかなか治まらない。
リデルがそっと滑り出ると一度ビクリと肩が跳ねた。
気だるそうに身を投げ出してぼんやりとそっぽを見つめている。
敷いた敷物の染みと事後のリデルの男根に赤く血液が混じっていた。


「アグナジアル……」


顔を寄せてリデルは愛しい魔物の名を呼ぶ。


「アグナ、でいい…」


渇いて掠れた声でアグナが応える。





深い森の奥、魔王は彼の支配者を探して彷徨っていた。あれから何度も挑戦したが一度もパンは上手く焼けなかった。
やり方を真似て食材を煮炊きしてみたが、与えられたものとは全く違うものしか作れなかった。

もう何度夜を迎え朝が訪れたのか。
なぜ急に姿をくらましたのか…。
なぜ自分は諦めきれずにこうして探し歩いているのか…。
エルメディウスはモヤモヤとした心の曇りを抱えたまま歩いていた。


探し歩いて川沿いを進めば見覚えのある祠が見える。どれ程ぶりにここまで来たのか…。
アグナジアルの言いつけに従い、エルメディウスは神殿の側を離れることは殆どなかった。
しかし、居なくなってしまったリデルを探し、遂に神殿よりも遠くへ出るようになってしまっていた。


エルメディウスは祠に近付く。
奥からは微かに呻き声が聞こえてくる。
耳を済ませば吐息と耳慣れない嬌声が微かに籠って響いている。

その声の主には覚えがあった。
囁く声にも。


エルメディウスは祠の扉に触れること無く立ち尽くしていた。


続く
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