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ROKI

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「羽多野、帰ろ」

 今日も宍戸がホームルーム後すぐに俺を捕まえに来る。どんな心境の変化なのかみんな不思議に思った事だろう。あの夜から宍戸はずっと俺にベッタリだ。下衆な噂は更に酷くなった。宍戸が俺を金で買ったとあちこちで囁かれた。嫌がらせの手紙や黒板への悪質な書き込みもあった。宍戸も不穏な状況に気づいているはずなのに、微塵も気にする素振りは無い。

 結局あの日は一晩宍戸に付き合って、俺は死ぬタイミングを見失った。宍戸の住むアパートに連れられ、ずっと話をした。宍戸が俺と同じように一人暮らしをしている事にも驚いたし、聞かされた身の上話にもとても驚いた。
 宍戸の家はとにかく厳しく、子供でも多くを強いられる家庭だった。親や祖父母の言いなりに高みのレールに乗ったままやってきたが、一度の些細な失敗から家庭内での立場が急激に悪化し追い出されたのだと宍戸は言う。
その失敗というのも、体調不良で挑んだ試験の点数が普段より少々低かったというだけの事だった。これまで宍戸に課せられてきた重しは妹に移り、元々が優秀だった妹は上手くやりこなしているとの事で、宍戸は宍戸の息子とは名ばかりの厄介者に成り果て、金だけで飼われているのだと笑った。環境が満ち足りているのだとばかり思っていた宍戸の真実は、大して俺と変わらず過酷で息苦しかった。
 俺の身の上についても宍戸に全て話した。宍戸は静かに聞いてくれていた。
 宍戸の金や立場を利用するために近付いてきた悪い仲間を、そうと知りながら宍戸はあえて関係している。家への反発と復讐なのだろう。そうしてしまう宍戸の深い寂しさが俺には痛いほど分かる。俺も親に捨てられた。しかし俺は反発したくても、復讐したくても親の行方が分からなかった。それ故、死ぬ事でそれを遂げようとしていた。
 俺はあの夜、死のうとしていた事も正直に宍戸に告白した。
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