弟、異世界転移する。

ツキコ

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2章

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「アタシが護衛の振りをするわ」

「でもエディさんだってバレるのはよくないんじゃ…」

「うふふ、変装すればいいだけよ!」

「あ、ああ…なるほど……」

思い出されるはつい先日のこと。
エディが赤の騎士団に片っ端から様々な服を着せたあの日のこと。

カイは最初の被害者はシモンでふりっふりの服を着させられていた、と言っていたが実際会ってみたら違った。
どちらがマシかはわからないが、シモンはニンジンの着ぐるみを着ていた。
それも白い全身タイツを着て。
カイと2人揃って顔を背けたのは言うまでもない。

ちなみにさすがのエディであってもそんなにすぐ多くの服は作れない。
服を着させられるのを回避したいマヤが作った。
魔力はノアから借り、服のイメージはエディから。
材料さえあれば簡単に作れるのがマヤの魔法だ。

早着替えはエディの特技。
するのもさせるのも得意である。

「ケイの服も持ってくるわね!」

そう言い実にいい笑顔で部屋を出て行った。
悪い予感しかしない…

あの日エディに着せられたのはセーラー服。
正直周りの人に比べればマシだと思う。
カイはふりっふりのアイドル衣装(ピンク)だった。

どれもこれもどこかで見たような衣装…と思ったが作ったのはマヤであるのでそれも当然かもしれない。

「っ、けほ…」

ーヴィー、やめて。

ーっケイ、す、すまない。

ずっと静かだったヴィーだがあの異空間の中で魔力を放出していたようだ。
いきなり他人の魔力が襲ってくるというのは恐ろしい。

頭は痛いし身体中が熱い。
それらの症状が全て突然襲ってくるのだ。

ーここから出してくれないか。

ー駄目。死のうとする人なんか出してあげない。

ー死なないよ。君が、守ってくれるんだろう?

「…………ぁ」

どうして気づかなかったんだろう。
いや、気づいてはいた。

けれどどうしても可能性を消したかった。
もしもを考えると怖くて堪らない。
大好きな人がいなくなってしまうことはとても怖い。

母のように会えなくてなってしまうのは、絶対に嫌だ。

母は病室で穏やかに息を引き取った。
しかしヴィーはそうはいかないだろう。
少なくとも穏やかには死ねない、と思う。

「……?」

すん、と焦げたような臭いがした。
料理を焦がした時にする臭い。

誰か料理失敗したのかな。

いつでも完璧にできる人なんていないよね。
新人だとか、そういう人が練習で失敗したのもありえるかも。

「っケイ!!」

「エディさん」

「家事よ!!アイツら、アタシの服に火をつけやがったのよ!!!」

発火元、エディの服(隊員用)。
ケイが驚き瞬いている間にエディはケイを抱えて走り出す。

「作戦は中止、この家事で行方不明になったことにしましょう」

「は、はい…」

よほど服が焼かれたことに腹を立てているのかエディの顔はまさしく鬼のよう。
エディが本気で怒ることは滅多にない。
少なくともケイは見たことがなかった。

いつもの見た目にきを配るエディとは違い、完全に目が据わっている。
縮こまりエディの荷物に徹するしかないケイなのであった。
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