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2章
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「あ、あの、ヴィー」
「うん」
「退くから、は、離して…」
「うん?」
「っ、あう、ええと…うぅ…」
現在、ヴィーの執務室、お膝の上。
耳まで真っ赤なケイ。
ヴィーが話す度に耳元がくすぐったい。
好きなのかなー?と思った途端いろいろ気になるタイプ。
ここまで密着しているとさすがのケイでも気になる。
あうあうしていたケイはしばらく目を泳がせてそれから小さく固まった。
その間ヴィーは横目でケイを観察。
「…………大事な書類じゃないの…?」
「君は文字が読めないだろう?」
読めないのだから見られても問題ない。
その言葉は事実なのだが少し拗ねるケイ。
「読めるって言ったら?」
「ふぅん?じゃあ読んでみて?」
じとっと目で見ていたケイはヴィーににこりと笑顔で言われる。
「え、えーと…………………」
その間、たっっっっっぷりと。
読める文字がないか必死に探す。
ヴィーの妹、コーラに関しての書類なのだが。
「あ、これ読めるよ!カイさんの名前だよね?」
「当たり。知ってたの?」
ようやく見つけた知っている文字にぱっと顔を明るくする。
全く読めないわけではないのだ。
教えてもらったものならば大抵は覚えている。
「うん。カイさんが教えてくれたんだ。カイさんてね、いろんなこと知ってるんだよ」
「へえ」
「気になるなーって思ったらすぐに教えてくれてね、」
「例えば?」
「時計の見方でしょ、物の使い方でしょ、人の名前に物の場所、それにこの国のこととか種族のこととかーあ、あと…」
指折り数えながら途中でぴたりと止まる。
そういえばこんなことも言っていたなと思い出したものが原因なのだが。
「ん?どうしたの?」
「え、あ、いや…な、なんでも、ない…」
思い出したのは子どもの作り方うんぬんの会話である。
薄っすら戻っていた顔色がまた赤に戻る。
この世界にある程度慣れた今ならわかる。
あれってまさか、もしかして、そういう意味だったのでは。
「なんでもないって感じじゃないけど?」
「ないでもないの!ヴィーは仕事しなきゃでしょ?」
「そうだね。…でも今は君の方が気になるかな」
「……邪魔なら降ろせばいいのに」
「そういう意味じゃないんだけどな…君は降りたい?」
「お、降りたいよ?」
若干声が裏返っている。
びっくりするくらい嘘が下手である。
「ふふ、そう。降りてもいいよ?」
「………」
本当に?とヴィーを見上げる。
不安が入り混じったその瞳。
「私は君が降りない方が嬉しいけどね」
「…ふぅん」
「ふふ」
「な、なに」
「なんでもないよ」
素直じゃないところもまた可愛い。
そう思いながらケイを見つめるヴィーなのであった。
「うん」
「退くから、は、離して…」
「うん?」
「っ、あう、ええと…うぅ…」
現在、ヴィーの執務室、お膝の上。
耳まで真っ赤なケイ。
ヴィーが話す度に耳元がくすぐったい。
好きなのかなー?と思った途端いろいろ気になるタイプ。
ここまで密着しているとさすがのケイでも気になる。
あうあうしていたケイはしばらく目を泳がせてそれから小さく固まった。
その間ヴィーは横目でケイを観察。
「…………大事な書類じゃないの…?」
「君は文字が読めないだろう?」
読めないのだから見られても問題ない。
その言葉は事実なのだが少し拗ねるケイ。
「読めるって言ったら?」
「ふぅん?じゃあ読んでみて?」
じとっと目で見ていたケイはヴィーににこりと笑顔で言われる。
「え、えーと…………………」
その間、たっっっっっぷりと。
読める文字がないか必死に探す。
ヴィーの妹、コーラに関しての書類なのだが。
「あ、これ読めるよ!カイさんの名前だよね?」
「当たり。知ってたの?」
ようやく見つけた知っている文字にぱっと顔を明るくする。
全く読めないわけではないのだ。
教えてもらったものならば大抵は覚えている。
「うん。カイさんが教えてくれたんだ。カイさんてね、いろんなこと知ってるんだよ」
「へえ」
「気になるなーって思ったらすぐに教えてくれてね、」
「例えば?」
「時計の見方でしょ、物の使い方でしょ、人の名前に物の場所、それにこの国のこととか種族のこととかーあ、あと…」
指折り数えながら途中でぴたりと止まる。
そういえばこんなことも言っていたなと思い出したものが原因なのだが。
「ん?どうしたの?」
「え、あ、いや…な、なんでも、ない…」
思い出したのは子どもの作り方うんぬんの会話である。
薄っすら戻っていた顔色がまた赤に戻る。
この世界にある程度慣れた今ならわかる。
あれってまさか、もしかして、そういう意味だったのでは。
「なんでもないって感じじゃないけど?」
「ないでもないの!ヴィーは仕事しなきゃでしょ?」
「そうだね。…でも今は君の方が気になるかな」
「……邪魔なら降ろせばいいのに」
「そういう意味じゃないんだけどな…君は降りたい?」
「お、降りたいよ?」
若干声が裏返っている。
びっくりするくらい嘘が下手である。
「ふふ、そう。降りてもいいよ?」
「………」
本当に?とヴィーを見上げる。
不安が入り混じったその瞳。
「私は君が降りない方が嬉しいけどね」
「…ふぅん」
「ふふ」
「な、なに」
「なんでもないよ」
素直じゃないところもまた可愛い。
そう思いながらケイを見つめるヴィーなのであった。
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