弟、異世界転移する。

ツキコ

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2章

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「ねえ見てあっち…」

「…あれが噂の…」

「また……が…」

王城内は好きに散策していいと言われた。
隠すものもないしいっそ全て燃やそうとしているらしい。
歴史書の類は取っておくようだけど。

まあそれはそれ。
どこへ行っても視線が突き刺さる。

視線を感じる方を見てもさっと顔を逸らされる。
不自然過ぎるしそういう人は大抵悪口を言っているのである。

そもそも顔に出ている。
あ、やっべ見られた…みたいな表情だ。
これはアホでもわかる。

別に悪口がどうのと言うわけではない。
ただ見るのをやめてほしいだけで。

特に1人だけの時がひどい。
ヴィーとなら誰もこちらを見ている感じはなく、兄さんならばむしろ見ないようにしている感じだった。

ヴィーは仕事。
兄さんは教育。
騎士団は訓練。

つまりケイだけすることがないのだ。
兄さんの前でうっかり訓練に参加でもしようものなら結果は目に見えている。

そのため城内の散策をしていたわけなのだが。
魔法で姿を隠してしまえばよかった。

「おい待て」

ヴィーはいろいろ道具持ってそうだし何か借りようかな。
姿隠すのか変えるのがあればいいんだけど。

「待てと言っているだろう!」

「わっ、え」

鞘に入ったままの剣を喉元に突きつけられる。
それも斜め後ろから。

殺傷力が低いとはいえ剣は剣だ。
驚き固まることしかできない。

「貴様魔族だな?どこから入った?」

「え、え?」

魔族じゃないし。
どこから入ったって…どこからなんだろう…

「とぼけるなよ。俺にはわかるからな」

「魔族じゃありません。剣を降ろしてください」

「嘘をつくなっ!!貴様が魔族でなければなんだと言うのだ?」

「なんだって…人間?」

「貴様っ…!!」

あ、やばい。

剣を持っていない手が振り上げられる。
どうやら煽ってしまったらしい。
剣使わないんだと思ったのは胸に留めておいた方がよさそうだ。

「ケイ!!!」

「あ…」

その瞬間スローモーション。
風のように現れたオレンジは迷いなく突っ込んでくる。
その拳を硬く握り締めながら。

「がはっ!?」

「ケイ!大丈夫ですか!?」

「は、はい。シモンさんのおかげで…」

「きっ貴様…!よくも俺の顔を殴ったな!!?」

よろりと顔を押さえてこちらを向く。
ケイの姿が見えないようにその背中に隠すのはさすが騎士。

「ヴィルヘルム殿下の客人に手を上げておいてよく言えますね」

「兄上がなんだ!俺は王族だぞ!!」

「だからなんですか!同じ騎士である以上俺とあなたは同じ立場だ!それともあなたは武力ではなく権力で魔物を捩伏せられると思っているのか!!」

「なっ…!貴様っ貴様…!許さんぞ!覚えておけ!!」

あ、逃げた。
ってそうじゃなくて、今日のシモンさんはなんか変だ。

まず言葉遣い。
それから学力というか話す内容?
考えられる理由としては、シモンが怒っているのではないかということ。

え、どうしよう。
シモンさんが怒ってるのなんて見たことない…
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