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2章
33
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それから赤の騎士団の面々と感動の再会を果たした。
エディからは目一杯抱き締められた。
カイは頭を撫でてくれた。
アランは相変わらずの距離を守ってくれていた。
ユリウスは…聞いてよーから始まる愚痴がすごかった。
ウルフが、という話を聞いたが今はパトさんと一緒に東の森で待機しているそうだ。
そして後日。
問題の彼だ。
「ヴィー…」
「…目が覚めたんだね」
金色の、陽だまりの色。
やっぱりちょっと疲れた顔をしている。
ベッドサイドに座り、立つヴィーを見上げる。
「ねえ、ヴィー。ヴィーが王子様って本当?」
「そうだね」
さらりと答えられた。
別段隠すことでもないらしい。
でもそうか、王子様なのか。
王子様ということはヴィーは王族。
……ただの貴族じゃなかったんだ。
「じゃあ、あっえと、敬語使わないと…」
「そのままでいいよ。砕けた話し方のほうが好きだからね」
「そ、そう………あの、名前、なんていうの?」
ゆるりと微笑まれるとなぜかどきりとする。
そっと顔を逸らしたのはなんとなくだ。
そわそわして落ち着かなくなるからその表情はやめてほしい…かもしれない。
「ヴィルヘルム・クロンクヴィスト」
「ヴィルヘルム…」
忘れないよう、その名前を繰り返す。
ヴィはヴィルヘルムのヴィ。
ぱっと顔を上げる。
名前を教えてくれた今なら答えてくれるだろうか。
「今から、いっぱい質問してもいい?」
「どうぞ。全て答えよう」
ヴィーは長くなると判断したのかケイの隣に座る。
その距離にもなぜか落ち着かない。
でも秘密主義なヴィーが全て答えるだなんてなんでだろう。
「あの…どうして、俺だったの?」
「ふふ、前にもした質問だね。やっぱり運命だから、じゃ納得できなかった?」
「うん…よくわかんなかったし…」
その言葉を聞き、じっとケイを見つめるヴィー。
ケイは完全に目が泳いでいる。
そんな様子にふっと笑う。
「正直に言うとね、一目惚れだったんだ」
「え」
「私は闇持ちだ。しかし王族に闇持ちは生まれてはいけない。公にはできないことだが当然私はそのことを知っていた」
ケイが驚いている間にも説明は進む。
その時のことを思い出すかのように話す。
「あれほど美しい黒を見たことがなかった。疎ましく思っていた闇が突然特別なもののように感じられたんだ」
君のおかげだよ、と微笑む。
「それと同時に君が欲しいって思ったよ」
「さ、次の質問は?」
思考がフリーズしているのもお構いなし。
次を求められる。
いっぱい質問がしたいと言ったのは自分だ。
今はとりあえず答えなくちゃ。
「あ…え、えっと、その…お、俺の考えてること、わかるの?」
「そうだね。その時はそうだった。あれは足枷の効果なんだ。少しだけ特殊な術式を施すとそういうものも追加できる代物でね」
それからにこりと笑みを深める。
「実はあれ違法魔道具なんだ」
「え?」
「はい、次は?」
爆弾を落とした。
違法って聞くとドラッグしか思い浮かばない…
異論は認めないごとくはい、次である。
「え、えーと…なんで日本の料理知ってたの?」
「ああ…それは君の記憶を見たんだ。君も見ようと思えば見れるはずだよ。闇属性の最上級魔法だからね」
「なるほど…あの料理の味は本物だよね?」
幻視、幻聴のように幻味とかでは…
「もちろん。僕が君に食べてほしくて作ったんだから」
「よかったぁ…」
「よかった?」
「ヴィーのご飯の味、好きだから。嘘だったら悲しいなって…」
「そ、うなんだ」
「うん」
戸惑うヴィーと笑顔のケイ。
さっきまでと逆転している。
それを誤魔化すように咳払いをするヴィー。
「もう質問は終わり?」
「えっ待ってまだいっぱいある!」
「ふふ、そう。いいよ。聞いて?」
余裕を取り戻すヴィーと元通りのケイ。
この時間が続けばいいのにと願っているのはどちらなのだろう。
エディからは目一杯抱き締められた。
カイは頭を撫でてくれた。
アランは相変わらずの距離を守ってくれていた。
ユリウスは…聞いてよーから始まる愚痴がすごかった。
ウルフが、という話を聞いたが今はパトさんと一緒に東の森で待機しているそうだ。
そして後日。
問題の彼だ。
「ヴィー…」
「…目が覚めたんだね」
金色の、陽だまりの色。
やっぱりちょっと疲れた顔をしている。
ベッドサイドに座り、立つヴィーを見上げる。
「ねえ、ヴィー。ヴィーが王子様って本当?」
「そうだね」
さらりと答えられた。
別段隠すことでもないらしい。
でもそうか、王子様なのか。
王子様ということはヴィーは王族。
……ただの貴族じゃなかったんだ。
「じゃあ、あっえと、敬語使わないと…」
「そのままでいいよ。砕けた話し方のほうが好きだからね」
「そ、そう………あの、名前、なんていうの?」
ゆるりと微笑まれるとなぜかどきりとする。
そっと顔を逸らしたのはなんとなくだ。
そわそわして落ち着かなくなるからその表情はやめてほしい…かもしれない。
「ヴィルヘルム・クロンクヴィスト」
「ヴィルヘルム…」
忘れないよう、その名前を繰り返す。
ヴィはヴィルヘルムのヴィ。
ぱっと顔を上げる。
名前を教えてくれた今なら答えてくれるだろうか。
「今から、いっぱい質問してもいい?」
「どうぞ。全て答えよう」
ヴィーは長くなると判断したのかケイの隣に座る。
その距離にもなぜか落ち着かない。
でも秘密主義なヴィーが全て答えるだなんてなんでだろう。
「あの…どうして、俺だったの?」
「ふふ、前にもした質問だね。やっぱり運命だから、じゃ納得できなかった?」
「うん…よくわかんなかったし…」
その言葉を聞き、じっとケイを見つめるヴィー。
ケイは完全に目が泳いでいる。
そんな様子にふっと笑う。
「正直に言うとね、一目惚れだったんだ」
「え」
「私は闇持ちだ。しかし王族に闇持ちは生まれてはいけない。公にはできないことだが当然私はそのことを知っていた」
ケイが驚いている間にも説明は進む。
その時のことを思い出すかのように話す。
「あれほど美しい黒を見たことがなかった。疎ましく思っていた闇が突然特別なもののように感じられたんだ」
君のおかげだよ、と微笑む。
「それと同時に君が欲しいって思ったよ」
「さ、次の質問は?」
思考がフリーズしているのもお構いなし。
次を求められる。
いっぱい質問がしたいと言ったのは自分だ。
今はとりあえず答えなくちゃ。
「あ…え、えっと、その…お、俺の考えてること、わかるの?」
「そうだね。その時はそうだった。あれは足枷の効果なんだ。少しだけ特殊な術式を施すとそういうものも追加できる代物でね」
それからにこりと笑みを深める。
「実はあれ違法魔道具なんだ」
「え?」
「はい、次は?」
爆弾を落とした。
違法って聞くとドラッグしか思い浮かばない…
異論は認めないごとくはい、次である。
「え、えーと…なんで日本の料理知ってたの?」
「ああ…それは君の記憶を見たんだ。君も見ようと思えば見れるはずだよ。闇属性の最上級魔法だからね」
「なるほど…あの料理の味は本物だよね?」
幻視、幻聴のように幻味とかでは…
「もちろん。僕が君に食べてほしくて作ったんだから」
「よかったぁ…」
「よかった?」
「ヴィーのご飯の味、好きだから。嘘だったら悲しいなって…」
「そ、うなんだ」
「うん」
戸惑うヴィーと笑顔のケイ。
さっきまでと逆転している。
それを誤魔化すように咳払いをするヴィー。
「もう質問は終わり?」
「えっ待ってまだいっぱいある!」
「ふふ、そう。いいよ。聞いて?」
余裕を取り戻すヴィーと元通りのケイ。
この時間が続けばいいのにと願っているのはどちらなのだろう。
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