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2章
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マヤと魔王が殴り合っている間、ウルフはそそくさケイの下へ向かっていた。
契約者の場所はいつでもわかる。
そこまで辿り着くのに苦労はしなかった。
扉には鍵すらかかっていない。
最高のセキュリティは魔王そのものなのだからなんとも言えないが。
そんな先の部屋にケイはいた。
魔王のいう通りベッドの上で、静かに眠っていた。
それは異常すぎるほど静かだった。
呼吸はしている。
しているだけ、のようにも見えた。
『ケイ、ケイ。起きろ』
身体を揺すっても尻尾で叩いてみても、一向にその瞼が上がる様子はない。
身動ぎひとつさえしないのだから不安にもなってくる。
ベッドの上をぼすぼす歩きケイを観察してみる。
外傷、特になし。
強いて挙げるなら首回りがほんの少し赤い。
その他異常なし。
魔力形跡なし。
やはり異変は確認できない。
さてどうしたものかと悩んでいると部屋が明るくなった。
正確にはベッドのすぐ隣が。
「うおっ!?」
「きゃあ!」
「どわあ!?」
「…っあぶな…」
「ぐえ」
どんどんどんと積み重なるように人間が降ってくる。
それは随分と見覚えのある人物達だった。
『…まさか、召喚魔法か』
アラン、エディ、シモン、カイ、ユリウス。
そしてもう1人。
「なんだ、ここ…」
ヴィルヘルムもが召喚された。
召喚したのは当然ケイだろう。
1度見れば使える。
チート感があるがそれもまたケイである。
ただし制限があるのかこちらの世界の人にしか使えないようだ。
誰にでも使えるのならケイは真っ先にマヤを召喚していたことだろう。
「っケイ!!!」
すぐさまケイに気づいたのはシモン。
状況を把握するよりも先に飛びつく。
「ケイ、よかった…!」
「なあー俺いつでま下敷きなの!?」
「あ、わりぃ」
「あら、ごめんなさい」
「絶対謝る気ないよね!?」
ユリウスの上にアランとエディ。
シモンも乗っていたがすぐに起き上がったのでノーカウント。
カイは見事に着地。
ヴィルヘルムも安定した召喚であった。
「それよりも、ケイの様子おかしくありませんか?」
ユリウスのことなんか知ったこっちゃない、なカイ。
召喚位置からケイを観察していたようだがウルフ同様違和感を覚えたらしい。
「聖獣…」
部屋を見渡していたヴィルヘルムがベッドへ目を向ける。
ケイにひっつくシモンをじっと見る聖獣がいた。
「ここ、魔王城なの?」
「マヤはどうしたんだ?」
「いや、ねえまじでどいて?」
「ケイ~…あ、心臓の音聞こえる…」
「ちょっとシモン離れなよ」
各々が自由過ぎる。
そんな様子にため息をつくヴィルヘルム。
これが最も優秀な騎士団だというのだから無理もない。
「まずはケイの状態を…」
「たぶんあと1日2日は目が覚めないよぉ?」
確認してくれ、と続けようとした言葉は見事に遮られた。
この城の主人、魔王によって。
魔王は身体中傷だらけだが、マヤは一体どうしたのだろうか。
契約者の場所はいつでもわかる。
そこまで辿り着くのに苦労はしなかった。
扉には鍵すらかかっていない。
最高のセキュリティは魔王そのものなのだからなんとも言えないが。
そんな先の部屋にケイはいた。
魔王のいう通りベッドの上で、静かに眠っていた。
それは異常すぎるほど静かだった。
呼吸はしている。
しているだけ、のようにも見えた。
『ケイ、ケイ。起きろ』
身体を揺すっても尻尾で叩いてみても、一向にその瞼が上がる様子はない。
身動ぎひとつさえしないのだから不安にもなってくる。
ベッドの上をぼすぼす歩きケイを観察してみる。
外傷、特になし。
強いて挙げるなら首回りがほんの少し赤い。
その他異常なし。
魔力形跡なし。
やはり異変は確認できない。
さてどうしたものかと悩んでいると部屋が明るくなった。
正確にはベッドのすぐ隣が。
「うおっ!?」
「きゃあ!」
「どわあ!?」
「…っあぶな…」
「ぐえ」
どんどんどんと積み重なるように人間が降ってくる。
それは随分と見覚えのある人物達だった。
『…まさか、召喚魔法か』
アラン、エディ、シモン、カイ、ユリウス。
そしてもう1人。
「なんだ、ここ…」
ヴィルヘルムもが召喚された。
召喚したのは当然ケイだろう。
1度見れば使える。
チート感があるがそれもまたケイである。
ただし制限があるのかこちらの世界の人にしか使えないようだ。
誰にでも使えるのならケイは真っ先にマヤを召喚していたことだろう。
「っケイ!!!」
すぐさまケイに気づいたのはシモン。
状況を把握するよりも先に飛びつく。
「ケイ、よかった…!」
「なあー俺いつでま下敷きなの!?」
「あ、わりぃ」
「あら、ごめんなさい」
「絶対謝る気ないよね!?」
ユリウスの上にアランとエディ。
シモンも乗っていたがすぐに起き上がったのでノーカウント。
カイは見事に着地。
ヴィルヘルムも安定した召喚であった。
「それよりも、ケイの様子おかしくありませんか?」
ユリウスのことなんか知ったこっちゃない、なカイ。
召喚位置からケイを観察していたようだがウルフ同様違和感を覚えたらしい。
「聖獣…」
部屋を見渡していたヴィルヘルムがベッドへ目を向ける。
ケイにひっつくシモンをじっと見る聖獣がいた。
「ここ、魔王城なの?」
「マヤはどうしたんだ?」
「いや、ねえまじでどいて?」
「ケイ~…あ、心臓の音聞こえる…」
「ちょっとシモン離れなよ」
各々が自由過ぎる。
そんな様子にため息をつくヴィルヘルム。
これが最も優秀な騎士団だというのだから無理もない。
「まずはケイの状態を…」
「たぶんあと1日2日は目が覚めないよぉ?」
確認してくれ、と続けようとした言葉は見事に遮られた。
この城の主人、魔王によって。
魔王は身体中傷だらけだが、マヤは一体どうしたのだろうか。
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