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2章
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翌朝、目を覚ましたケイは身体が動かないことに気づく。
手足の拘束は緩くしてもらえたらしく、昨晩よりはゆとりがある。
それでも全く動けない。
原因は一目瞭然だった。
後ろから伸びている腕こそが正体だろう。
その人については何も思うことはない。
思わないし思えない。
どうしようもないと理解していた。
やけに冴えた頭をしていた。
あのぼんやりとした感覚は欠片も残っていない。
…それにしても重たい。
なんだかお腹も減ってきた気がする。
太陽はだいぶ昇っているようで、カーテンのかかった窓から薄っすらと日差しが入り込んでいた。
改めて部屋を見れる範囲で見渡す。
ベッドと同様に他の家具も異様に凝っている。
それでも素材が金とかではなく木なのは彼のセンスだろうか。
これで金色だったらびかびかで最悪な感じだ。
まさに成金チックだったと思う。
凝った彫りも職人技のようで見ていて楽しい。
とは言えどうやらこの部屋は少々生活感がないらしい。
広々としたベッド。
大きな棚。
残りのあり余ったスペース。
むしろその棚に何が入っているんだろうか。
家具が2つだけ…と驚きもするが、扉が2つあるのでその先には生活感があるのかもしれない。
「はあ…」
思わずため息が溢れる。
窓は全てカーテンで覆われている。
部屋は少し薄暗い。
まあそんなことはどうでもいい。
それよりなによりお腹が減った。
何か少しでもいいから食べたい。
そのためにはこの腕の持ち主に起きていただかなければいけないのだが。
果たして起きたところでご飯はもらえるのだろうか。
あまり得策でないような気がするが現状他に方法はない。
もぞもぞと動き、なんとか身体を反転させる。
気分はまさしく芋虫。
腕が乗っかっているということは近いんだろうくらいには思っていたが。
近いというかもはやくっついている。
「あのー…」
物理で起こすという選択肢はない。
声をかけつつじっと見つめる。
綺麗な金髪。
今は見えない瞳もたしか金だった。
…この世界って外人顔ばっかりだなー…
「…そんなに、見ないでほしい…」
あれ?またこのセリフ?
えっそんなに見てた!?
ぱちりと目を大きく瞬く。
驚く間に彼はのそりと起き上がる。
「…見てたかな」
「ん?」
今声に出したっけ?
ケイが不思議そうにじっと見つめるとその人は目元を和らげた。
「ふふ…」
「………」
なぜかこの人には触られても嫌悪感を感じない。
むしろどこか心地いいとさえ感じる。
頰を撫でるその手を遠ざけてほしくないほどに。
「いずれ教えてあげるよ」
名前さえも知らない。
ここがどこかも知らない。
それでも全ていつか教えてくれると言う。
その時まで待ってみてもいいかな、なんてそんなことを思ってしまうのはいけないことだろうか。
手足の拘束は緩くしてもらえたらしく、昨晩よりはゆとりがある。
それでも全く動けない。
原因は一目瞭然だった。
後ろから伸びている腕こそが正体だろう。
その人については何も思うことはない。
思わないし思えない。
どうしようもないと理解していた。
やけに冴えた頭をしていた。
あのぼんやりとした感覚は欠片も残っていない。
…それにしても重たい。
なんだかお腹も減ってきた気がする。
太陽はだいぶ昇っているようで、カーテンのかかった窓から薄っすらと日差しが入り込んでいた。
改めて部屋を見れる範囲で見渡す。
ベッドと同様に他の家具も異様に凝っている。
それでも素材が金とかではなく木なのは彼のセンスだろうか。
これで金色だったらびかびかで最悪な感じだ。
まさに成金チックだったと思う。
凝った彫りも職人技のようで見ていて楽しい。
とは言えどうやらこの部屋は少々生活感がないらしい。
広々としたベッド。
大きな棚。
残りのあり余ったスペース。
むしろその棚に何が入っているんだろうか。
家具が2つだけ…と驚きもするが、扉が2つあるのでその先には生活感があるのかもしれない。
「はあ…」
思わずため息が溢れる。
窓は全てカーテンで覆われている。
部屋は少し薄暗い。
まあそんなことはどうでもいい。
それよりなによりお腹が減った。
何か少しでもいいから食べたい。
そのためにはこの腕の持ち主に起きていただかなければいけないのだが。
果たして起きたところでご飯はもらえるのだろうか。
あまり得策でないような気がするが現状他に方法はない。
もぞもぞと動き、なんとか身体を反転させる。
気分はまさしく芋虫。
腕が乗っかっているということは近いんだろうくらいには思っていたが。
近いというかもはやくっついている。
「あのー…」
物理で起こすという選択肢はない。
声をかけつつじっと見つめる。
綺麗な金髪。
今は見えない瞳もたしか金だった。
…この世界って外人顔ばっかりだなー…
「…そんなに、見ないでほしい…」
あれ?またこのセリフ?
えっそんなに見てた!?
ぱちりと目を大きく瞬く。
驚く間に彼はのそりと起き上がる。
「…見てたかな」
「ん?」
今声に出したっけ?
ケイが不思議そうにじっと見つめるとその人は目元を和らげた。
「ふふ…」
「………」
なぜかこの人には触られても嫌悪感を感じない。
むしろどこか心地いいとさえ感じる。
頰を撫でるその手を遠ざけてほしくないほどに。
「いずれ教えてあげるよ」
名前さえも知らない。
ここがどこかも知らない。
それでも全ていつか教えてくれると言う。
その時まで待ってみてもいいかな、なんてそんなことを思ってしまうのはいけないことだろうか。
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