弟、異世界転移する。

ツキコ

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1章

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「ケイ!ここが町です!」

「見ればわかるでしょ」

町に来るにあたっていくつか約束をさせられた。

絶対にフードを取らないこと。
絶対に1人にならないこと。
絶対に手を離さないこと。

絶対に、と何度も念押しをされた。
特に手を離すなとしつこいくらいに言われた。
手の繋ぎ方は前回同様、宇宙人連行スタイルだ。

「用事があるのはギルドカードの加工と服だからまずは加工の方に行こう」

「いつもの所ですか?でかい所にします?」

「あそこの方が信頼できるよ。でかい所は人が多いってことだからね、僕は信用できない」

「了解です。ケイ、こっちですよ!」

「あ、はい」

シモンが先輩に忠実でよかったと密かに思う。
もしも2人が別々の道を行こうとしたらケイはどうなるだろうか。

どちらもそんなに力を入れていないように見えてしっかりと手を繋いでいる。
そう簡単に振りほどけるとは思えない。
そんな力で別方向へと引っ張られたらかなり痛いだろう。
もし行き先が別になりそうな時は気をつけなくてはいけなそうだ。

「……多いな」

「ですね。また増えた、というより多い所へ移動している感じがありますね」

「何がですか?」

2人の内ではわかっているらしい。
もう少し主語を話してくれればわかれそうなのに。

「獣人です。他種族と積極的な交流を好まない我が国ですからそろそろまずいような気がするんですよね」

「だね。また狩りが始まるんじゃない?」

「?」

またわからない。
狩りがわからないわけではない。
けれどこの流れでどうして狩りが出てくるのか。
獣人が増えることはそんなによくないのだろうか。

「えっと、あんまり大声じゃ言えないんですけど…他種族との交流が増えた地域の人間を片付ける仕組みがあるんです」

そう聞いてますます意味がわからなくなった。
どうしてそれだけのことで人を殺そうとするのだろう。
そこまでして他種族を嫌うのはなぜなのだろうか。

「言ったでしょ。選民思考だって」

つまり指示を出す立場にいる人が選民思考の持ち主。
自分達が選ばれた種族であると思い込んでいるが故の行動。
その意識があるのは貴族だけと言っていたから、その選民のなかに平民は含まれないのだろう。

だから簡単に排除できる。
自分達以外は不要なものだと思っているから。

「でもここはカイさん達が守っているんですよね?」

守らせているのにそれを壊そうとするのはなぜ。
最後まで守るのが責任ではないのだろうか。
騎士に守らせた場所を壊そうとする意味とは。

「うん、ここは僕達が守っている場所だよ。教会とギルド、その2つを守っているんだ。でも人を守っているわけじゃないんだよ」

「大丈夫ですよ!場所を守るのは人を守ることに繋がりますからね!」

「僕達は何かあっても人を守れない。人よりも場所を守らなくてはいけないから」

「そうなんですか…」

それほどまでにあの場所が大事なのだろうか。
場所の方が優先される命とはなんなのだろう。

「まあ上には逆らえないってことだよ」

「俺は平民ですからよくわからないですけど、カイさんは余計にそうだと思いますよ」

「カイさんは貴族なんですか?」

「一応ね。家名を持っているのは貴族だけなんだよ」

「大変なんですねぇ」

実感なさすぎてそうとしか言えない。
どこの世界も上が駄目なら全部駄目なのは一緒みたいだ。

「ケイ!ここがドワーフのやっている鍛冶屋ですよ!」
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