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第一章 リアルチーター
八本目 ぶっ壊れ性能な刀(の内の一本)
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エイフォルト到着!!なぜ僕がこんなに急いで戻ってきたか。それには理由がある。
この世界は、多分、現実の二倍の速度で時間が進む。
つまり、現実で一日経つ間に、この世界では、二日が経過する。
二日・・・それは、アルミリアさんが装備を取りに来てくれ、と言った期間だ。
これはテンションが上がるのもしょうがないと思う。
まぁ、少し早く来すぎた感は否めない。
そんなわけで、今、僕は[双竜の牙]に来ている。
来ているんだけど・・・
「やめてくださいっ!!」
「あ?NPCがプレイヤーに逆らおうってか?」
「ハハハハッ!!アルミリアさんよ!俺たちの装備を安く作れって言ってるだけだろぉ?なぁ?」
店内に二人の男が。
はぁ・・・こいつらプレイヤーか・・・
これは・・・少しイライラするのもしょうがないと思うなぁ。
「ねぇ、何してるの?」
「リューセイさんっ!?」
「お?何だお前?何だ、プレイヤーじゃねぇか」
「オイ、手ぇ出すなよ?初期装備野郎。俺たちはこのNPCに装備を作ってもらおうとしてるだけなんだからよ」
「何が装備を作ってもらおうとしてるだけですかっ!!無料で作れなんて無茶苦茶ですっ!!」
なるほどね・・・そういうことか。
こういう時の対処は・・・後でショートに聞いておくか。
アイツがこんな真似に賛同するはずはない。むしろアイツはこんなことは嫌いだ。
それなのにこのゲームをやっているということは、多分対処法があるんだろう。
「そこの二人組、今すぐここから出ていけ」
っと・・・しまったな。
つい口調が荒くなっちゃった。
「あぁ!?てめぇ、初期装備のくせに上から目線で言うじゃねぇか!!」
「てめぇは大人しく見逃せばよかったんだよ!!」
上から目線はどっちだよ・・・
店内を見回すと、一部の棚が壊れている。
「アルミリアさん、そこの棚はコイツらが壊したんですか?」
「へっ?えっと、はい」
「そうですか・・・」
今すぐ出て行ってもらわないとなぁ。
これ以上物を壊されるわけにはいかない。
ゲームだし直るかもしれないけど・・・
これはそういう問題じゃない。
「てめぇっ!何俺たちを無視してんだ!!」
「もう一度言おう。さっさとここから出ていけ」
「はぁっ!?ふざけんな!!てめぇこそ・・・!?」
腰に差していた鉄の剣を抜き放ち、男の首に突きつける。
「・・・最後だ。大人しく出ていけ」
「てっ、てめぇっ!!」
もう一人の男が剣を抜き、切りかかってくる。
「・・・鈍いな」
拳で打ち上げるように剣の腹を打ち、速度を落とす。
そして、速度の落ちた剣を上から掴む。
白刃取り、みたいなやり方が出来たら良かったんだけどね
残念ながら・・・ステータス的には大差ない。
切りかかってきた男はLv27。
鎧を着ているから、ほぼ間違いなく近接職、あるいは重戦士だろう。
「うおっ!?て、めぇっ!!」
男が剣に力を入れる。このままでは剣が床に当たる。
「動くな」
その一言で、僕の手から剣を取り戻そうとしていた男の動きが止まり、冷や汗が流れる。
僕がぶつけたのは、殺気。
「・・・分からないなら、強制的に追い出してやろうか?」
「わ・・・わかっ、た。出ていく。もう、絶対に何もしねぇ・・・だから・・・」
「ならさっさと出ていけ。この男は店の外で放す」
男の剣を放すと、特にダメージを受けていないはずなのにその男はまるで喘息を患っているようにヒューッ、ヒューッと音を立て呼吸をしている。
あれぐらいの殺気でここまでなるのか・・・
男が店の外に出たのを確認し、その後ろを歩き、同じように店を出る。
もう一人の男に剣を突きつけたまま。
「二度とここにくるな」
そう言って男を開放する。
剣を突きつけられていた男はしばらく歩けず、地面に手をついて蹲っていた。
二人の男が這うようにして去っていったのを一瞥し、店内に入る。
「すみません、お騒がせしました」
そう言って笑いかけると、アルミリアさんが膝から崩れおちた。
「っと・・・大丈夫ですか?」
「・・・ハッ!!す、すいません・・・!助かりました」
放心していたようだが、気が付いたみたいだ。
「ああいうことはよくあるんですか?」
「・・・いえ、そんな頻繁にはありません。冒険者さん達がやってきてからたまに、というぐらいなのですが・・・さっきの方たちは特に酷かったです。今まではしつこく値引きを要求するぐらいでした」
「なるほど・・・とりあえず、お店の中を片付けましょうか」
「えっ!!そんな!悪いですよ!」
「お気になさらず。武器が出来るのが楽しみで早めに来てしまっただけですから」
「そ、そうですか・・・すいません。お願いします」
「はい」
アルミリアさんと二人で散らかった店の中を片付ける。
片付けをしながら、アルミリアさんが話してくれた。
冒険者達の中には、かなり態度が悪く街を追い出された者もいるのだと。
「何とか改善できたらいんですけどね・・・」
「確かにそうですが・・・リューセイさんが気にすることじゃないですよ」
「そうですか・・・?」
同じ冒険者なのだから、全く関係のないことだとは思えない・・・
「ところで、リューセイさんは武器を取りに来たんですよね?」
「はい、やっぱりまだ出来てませんか?」
「いえ!もう出来てますよ!!少しだけ待っていてください」
そう言ってアルミリアさんがカウンターの奥に入っていく。
アルミリアさんが持ってきたのは・・・
コート、手袋、ブーツ・・・刀が二本?
それに戦闘用ではなさそうな服もあった。
「まず・・・少々謝らなければいけないことが・・・」
「え?何かあったんですか?」
そう聞くとアルミリアさんが申し訳なさそうな顔をする。
「刀が二本あるでしょう?」
「はい、ありますね」
「実は・・・刀に使ったナーガの魔石なのですが、様々な特性がありまして」
「??」
「えっと・・・簡単に言うと、魔石の力を一本の刀に納められなかったんです。それで、二本の刀に分けました」
つまり魔石の力が大きすぎて一本じゃ足りなかったと・・・ナーガの魔石凄いなぁ。
「それなら問題ないですよ?」
「え?でも、元々頼まれたのは一本だけでしたし・・・」
「僕は別に一本で指定はしてませんよ?刀を作ってくれ、と頼んだだけです。二本でも問題なく使えますから、気にしないでください」
「そ、そうなんですか!良かった・・・」
気にする必要がないことを伝えると、途端にアルミリアさんの顔が明るくなった。
どうやらかなり心配していたらしい。
作ること自体失敗したなら分かるけど、本数が増えるくらいなら別に問題ないと思うけどなぁ。
「ところで・・・様々な特性というのは?」
「あ、それは出来れば手に取って見てもらえると・・・正直説明するのが難しいです」
片方の刀を手に取る。
触れた瞬間、柄がわずかに光った。
普通の刀では起きえない出来事に身構えるが、その後は特に何も起きる様子はない。
鞘がついているが・・・鞘をつけたままですら、その刀は異様な雰囲気を放っていた。
鞘の色はどちらも黒。それは別に珍しいわけではない。
だが、鞘は金属のような光沢を放っていた。
問題は、手に持った時の感触。
明らかに鉄のようなそこらにある金属ではない。
いや、そもそも金属なのかも疑わしい。
さらに、この刀の柄の色は黒・・・いや、黒に近い青。
ふと思い出したのは、ナーガの鱗の色。あれの色もこんな感じだった。
刀に意識を向けると、アイテムのウィンドウが表示された。
そのウィンドウを見た時、一瞬頭が回らなくなった。
頭に自分の意識が戻ると、目を見開く。
黒い刀のアイテムウィンドウ、そこには――
――――――――
黒蛇の杖刀〈No name〉【契約者:リューセイ】(刀・鞘)
Damage+36
耐久:2700【完全破壊不可】
ステータス効果:MP+200
装備効果:・魔力使用率30%減
・武器の内包する魔力と契約者の魔力が同調する
核のMP容量:500
武器効果:・魔力を籠めて念じることで刃から毒が染み出す
・耐久が0になっても消えることはなく、契約者の魔力を吸収し自己修復
・契約者以外装備不可
――――――――
何これ・・・え?これで魔石の力の全部じゃないの?
っていうか契約者ってなってるんだけど。
色々と気になることはあるけど・・・まずは――
「杖刀ってなんですか?」
「その名の通り、杖の特性を内包した刀です。武器の中には魔導士や聖法士が使用するような杖と同じ能力があるものもあるんです。魔力使用率を下げる、というのがその効果ですね」
え?僕杖なんて使ってないんだけど・・・
っていうか、杖の効果ってそんな感じなんだね。
オシャレかと思ってた。
「MP+200っていうのは杖の能力ではないんですか?」
「そっちは魔石の効果ですね。自分で作っておいてなんですけど・・・この性能は異常ですね」
「そうなんですか?」
「はい。耐久とダメージの高さだけでもかなりのものなんですが・・・それ以外の能力がもう・・・何と言えばいいのやら」
「それほどですか・・・あれ?そういえば、何で杖の特性が混ざってるんですか?」
「えっとですね・・・もう一本の刀とも関係しているんですが、ナーガの物理的な力と魔法的な力、とでも言えばいいんですかね。この二つを一つの武器に纏めることが出来なかったんです」
「それでこっちの刀が魔法に特化したものだと・・・?」
「はい、その通りです。その結果杖の特性が混じりました。本来杖の特性が混ざっている武器は、魔法に特化した強力なモンスター、が落とす魔石を他の武器の素材にすることで出来るんです。私が今まで見たことあるものは最高でも魔力使用率20%減少でしたけど・・・」
だとしたらもう一方の刀も総合的にはこれと同じくらいの性能ってことになるような・・・
ていうことは、ナーガは魔法の方の力だけで魔法特化のモンスターより上だったと?
でも魔法何て使ってなかったはずだけど・・・
まぁまだまだ気になることはあるからね・・・
「このNo nameって言うのは?」
「あ、それはですね・・・黒蛇の杖刀って言うのは武器の種類のようなものなんです。なので、武器自体の名前は好きなように決められるんですが・・・」
「??」
「この武器の名前は契約者しか決められないようになってるみたいで」
「あ、そういえば契約者ってどういうことなんですか?特に身に覚えがないのですが・・・」
「えっと、強力なモンスターの核、つまり魔石を使って作った武器は、たまにこんな風に契約をしていないと使えないものがあるんです。契約者・・・というよりも、その武器に認められた者、という言い方が正しいですかね。魔石を持っていたモンスターが最も脅威に思った相手、がその魔石に触れると自動的に契約が交わされるようです」
うわぁ・・・ナーガの精神でも宿ってるの?これ。
「・・・ちなみにアルミリアさんは契約ありの武器を見たことは・・・」
「それが初めてですね」
武器屋のアルミリアさんが見たことなかったって、かなり珍しいんじゃないだろうか。まぁ、とにかくアルミリアさんには感謝だ。
ウィンドウを読み進め、ちょっと嫌な想像をしてしまった。
「えっと、アルミリアさん」
「はい?」
「契約者以外装備不可っていうのは?」
「他の誰かが使おうとしても使えません」
「具体的にはどんな風に?」
「・・・契約者が装備していない、またはインベントリの中にも入っていない場合、自動的に契約者の手元に戻ってきます。さらに、契約者以外が無理矢理使おうとすると持っているものを勝手に攻撃するみたいです」
「・・・」
アルミリアさんが目をそらす。
いや、これ・・・呪いの刀じゃなくて?
僕にはデメリットはないけれど・・・捨てても勝手に戻ってくるって、そんなホラー系都市伝説があったよな気がするなぁ・・・まぁ良い刀ではあるんだけどね。
「最後に一ついいですか?これがある意味一番気になってるんですが」
「・・・なんでしょう」
「刃から毒が染み出すってなんですか・・・」
「やっぱり気になりますよね・・・まぁ、勝手に毒が出るようなことはないので安心してください。これに関しては、恐らくナーガの能力が原因ですね」
「ナーガの?」
「魔石を調べると、その持ち主であるモンスターの能力や特性、生態等がある程度分かるんですが・・・」
「おおー!それはかなり便利ですね」
つまり魔石さえ手に入ればそのモンスターの対処法とか、かなり有用なことが分かるんじゃないか?
まぁ、そんなやり方をするつもりはないんだけどね。
相手の情報だけ先に得るなんて、不公平だからなぁ。
「はい、ナーガの情報が分かったのは非常に有難いです・・・まぁこれといって有用な情報は分かりませんでしたが」
アルミリアさんが最後に呟いたことを、僕はしっかりと聞いていた。
それ、意味ないんじゃないですか?
「まぁ、その結果ナーガのある能力が分かりまして」
「ある能力・・・?」
「はい・・・かなり特殊なものです。その能力というのが・・・魔力を毒液に変換するみたいです」
「あー・・・明らかに身体の中に納まりきらない量の毒液を吐いてきたのはそういうことですか」
「そうなりますね・・・まぁ、その能力のおかげでというか、せいでというか・・・この刀にも同じような能力がついたみたいです」
「なるほど・・・」
まぁ正直なところ、かなり有用な能力ではある。
ナーガの素材から作ったこの刀が、毒で耐久が減るということは恐らくない。
それに、僕自身に状態異常への耐性がある。
多少の毒では僕自身には効かないだろう。
ただ・・・この能力、パーティ組んでるときは使っちゃダメだね。
「それにしても・・・凄い性能ですね。凄まじいです」
「はい!!私もこんな武器が作れたのは嬉しいです!それでは、もう一本の刀の方も見てもらえませんか?」
あ・・・忘れてた。全部見終わったような気分だった。
この世界は、多分、現実の二倍の速度で時間が進む。
つまり、現実で一日経つ間に、この世界では、二日が経過する。
二日・・・それは、アルミリアさんが装備を取りに来てくれ、と言った期間だ。
これはテンションが上がるのもしょうがないと思う。
まぁ、少し早く来すぎた感は否めない。
そんなわけで、今、僕は[双竜の牙]に来ている。
来ているんだけど・・・
「やめてくださいっ!!」
「あ?NPCがプレイヤーに逆らおうってか?」
「ハハハハッ!!アルミリアさんよ!俺たちの装備を安く作れって言ってるだけだろぉ?なぁ?」
店内に二人の男が。
はぁ・・・こいつらプレイヤーか・・・
これは・・・少しイライラするのもしょうがないと思うなぁ。
「ねぇ、何してるの?」
「リューセイさんっ!?」
「お?何だお前?何だ、プレイヤーじゃねぇか」
「オイ、手ぇ出すなよ?初期装備野郎。俺たちはこのNPCに装備を作ってもらおうとしてるだけなんだからよ」
「何が装備を作ってもらおうとしてるだけですかっ!!無料で作れなんて無茶苦茶ですっ!!」
なるほどね・・・そういうことか。
こういう時の対処は・・・後でショートに聞いておくか。
アイツがこんな真似に賛同するはずはない。むしろアイツはこんなことは嫌いだ。
それなのにこのゲームをやっているということは、多分対処法があるんだろう。
「そこの二人組、今すぐここから出ていけ」
っと・・・しまったな。
つい口調が荒くなっちゃった。
「あぁ!?てめぇ、初期装備のくせに上から目線で言うじゃねぇか!!」
「てめぇは大人しく見逃せばよかったんだよ!!」
上から目線はどっちだよ・・・
店内を見回すと、一部の棚が壊れている。
「アルミリアさん、そこの棚はコイツらが壊したんですか?」
「へっ?えっと、はい」
「そうですか・・・」
今すぐ出て行ってもらわないとなぁ。
これ以上物を壊されるわけにはいかない。
ゲームだし直るかもしれないけど・・・
これはそういう問題じゃない。
「てめぇっ!何俺たちを無視してんだ!!」
「もう一度言おう。さっさとここから出ていけ」
「はぁっ!?ふざけんな!!てめぇこそ・・・!?」
腰に差していた鉄の剣を抜き放ち、男の首に突きつける。
「・・・最後だ。大人しく出ていけ」
「てっ、てめぇっ!!」
もう一人の男が剣を抜き、切りかかってくる。
「・・・鈍いな」
拳で打ち上げるように剣の腹を打ち、速度を落とす。
そして、速度の落ちた剣を上から掴む。
白刃取り、みたいなやり方が出来たら良かったんだけどね
残念ながら・・・ステータス的には大差ない。
切りかかってきた男はLv27。
鎧を着ているから、ほぼ間違いなく近接職、あるいは重戦士だろう。
「うおっ!?て、めぇっ!!」
男が剣に力を入れる。このままでは剣が床に当たる。
「動くな」
その一言で、僕の手から剣を取り戻そうとしていた男の動きが止まり、冷や汗が流れる。
僕がぶつけたのは、殺気。
「・・・分からないなら、強制的に追い出してやろうか?」
「わ・・・わかっ、た。出ていく。もう、絶対に何もしねぇ・・・だから・・・」
「ならさっさと出ていけ。この男は店の外で放す」
男の剣を放すと、特にダメージを受けていないはずなのにその男はまるで喘息を患っているようにヒューッ、ヒューッと音を立て呼吸をしている。
あれぐらいの殺気でここまでなるのか・・・
男が店の外に出たのを確認し、その後ろを歩き、同じように店を出る。
もう一人の男に剣を突きつけたまま。
「二度とここにくるな」
そう言って男を開放する。
剣を突きつけられていた男はしばらく歩けず、地面に手をついて蹲っていた。
二人の男が這うようにして去っていったのを一瞥し、店内に入る。
「すみません、お騒がせしました」
そう言って笑いかけると、アルミリアさんが膝から崩れおちた。
「っと・・・大丈夫ですか?」
「・・・ハッ!!す、すいません・・・!助かりました」
放心していたようだが、気が付いたみたいだ。
「ああいうことはよくあるんですか?」
「・・・いえ、そんな頻繁にはありません。冒険者さん達がやってきてからたまに、というぐらいなのですが・・・さっきの方たちは特に酷かったです。今まではしつこく値引きを要求するぐらいでした」
「なるほど・・・とりあえず、お店の中を片付けましょうか」
「えっ!!そんな!悪いですよ!」
「お気になさらず。武器が出来るのが楽しみで早めに来てしまっただけですから」
「そ、そうですか・・・すいません。お願いします」
「はい」
アルミリアさんと二人で散らかった店の中を片付ける。
片付けをしながら、アルミリアさんが話してくれた。
冒険者達の中には、かなり態度が悪く街を追い出された者もいるのだと。
「何とか改善できたらいんですけどね・・・」
「確かにそうですが・・・リューセイさんが気にすることじゃないですよ」
「そうですか・・・?」
同じ冒険者なのだから、全く関係のないことだとは思えない・・・
「ところで、リューセイさんは武器を取りに来たんですよね?」
「はい、やっぱりまだ出来てませんか?」
「いえ!もう出来てますよ!!少しだけ待っていてください」
そう言ってアルミリアさんがカウンターの奥に入っていく。
アルミリアさんが持ってきたのは・・・
コート、手袋、ブーツ・・・刀が二本?
それに戦闘用ではなさそうな服もあった。
「まず・・・少々謝らなければいけないことが・・・」
「え?何かあったんですか?」
そう聞くとアルミリアさんが申し訳なさそうな顔をする。
「刀が二本あるでしょう?」
「はい、ありますね」
「実は・・・刀に使ったナーガの魔石なのですが、様々な特性がありまして」
「??」
「えっと・・・簡単に言うと、魔石の力を一本の刀に納められなかったんです。それで、二本の刀に分けました」
つまり魔石の力が大きすぎて一本じゃ足りなかったと・・・ナーガの魔石凄いなぁ。
「それなら問題ないですよ?」
「え?でも、元々頼まれたのは一本だけでしたし・・・」
「僕は別に一本で指定はしてませんよ?刀を作ってくれ、と頼んだだけです。二本でも問題なく使えますから、気にしないでください」
「そ、そうなんですか!良かった・・・」
気にする必要がないことを伝えると、途端にアルミリアさんの顔が明るくなった。
どうやらかなり心配していたらしい。
作ること自体失敗したなら分かるけど、本数が増えるくらいなら別に問題ないと思うけどなぁ。
「ところで・・・様々な特性というのは?」
「あ、それは出来れば手に取って見てもらえると・・・正直説明するのが難しいです」
片方の刀を手に取る。
触れた瞬間、柄がわずかに光った。
普通の刀では起きえない出来事に身構えるが、その後は特に何も起きる様子はない。
鞘がついているが・・・鞘をつけたままですら、その刀は異様な雰囲気を放っていた。
鞘の色はどちらも黒。それは別に珍しいわけではない。
だが、鞘は金属のような光沢を放っていた。
問題は、手に持った時の感触。
明らかに鉄のようなそこらにある金属ではない。
いや、そもそも金属なのかも疑わしい。
さらに、この刀の柄の色は黒・・・いや、黒に近い青。
ふと思い出したのは、ナーガの鱗の色。あれの色もこんな感じだった。
刀に意識を向けると、アイテムのウィンドウが表示された。
そのウィンドウを見た時、一瞬頭が回らなくなった。
頭に自分の意識が戻ると、目を見開く。
黒い刀のアイテムウィンドウ、そこには――
――――――――
黒蛇の杖刀〈No name〉【契約者:リューセイ】(刀・鞘)
Damage+36
耐久:2700【完全破壊不可】
ステータス効果:MP+200
装備効果:・魔力使用率30%減
・武器の内包する魔力と契約者の魔力が同調する
核のMP容量:500
武器効果:・魔力を籠めて念じることで刃から毒が染み出す
・耐久が0になっても消えることはなく、契約者の魔力を吸収し自己修復
・契約者以外装備不可
――――――――
何これ・・・え?これで魔石の力の全部じゃないの?
っていうか契約者ってなってるんだけど。
色々と気になることはあるけど・・・まずは――
「杖刀ってなんですか?」
「その名の通り、杖の特性を内包した刀です。武器の中には魔導士や聖法士が使用するような杖と同じ能力があるものもあるんです。魔力使用率を下げる、というのがその効果ですね」
え?僕杖なんて使ってないんだけど・・・
っていうか、杖の効果ってそんな感じなんだね。
オシャレかと思ってた。
「MP+200っていうのは杖の能力ではないんですか?」
「そっちは魔石の効果ですね。自分で作っておいてなんですけど・・・この性能は異常ですね」
「そうなんですか?」
「はい。耐久とダメージの高さだけでもかなりのものなんですが・・・それ以外の能力がもう・・・何と言えばいいのやら」
「それほどですか・・・あれ?そういえば、何で杖の特性が混ざってるんですか?」
「えっとですね・・・もう一本の刀とも関係しているんですが、ナーガの物理的な力と魔法的な力、とでも言えばいいんですかね。この二つを一つの武器に纏めることが出来なかったんです」
「それでこっちの刀が魔法に特化したものだと・・・?」
「はい、その通りです。その結果杖の特性が混じりました。本来杖の特性が混ざっている武器は、魔法に特化した強力なモンスター、が落とす魔石を他の武器の素材にすることで出来るんです。私が今まで見たことあるものは最高でも魔力使用率20%減少でしたけど・・・」
だとしたらもう一方の刀も総合的にはこれと同じくらいの性能ってことになるような・・・
ていうことは、ナーガは魔法の方の力だけで魔法特化のモンスターより上だったと?
でも魔法何て使ってなかったはずだけど・・・
まぁまだまだ気になることはあるからね・・・
「このNo nameって言うのは?」
「あ、それはですね・・・黒蛇の杖刀って言うのは武器の種類のようなものなんです。なので、武器自体の名前は好きなように決められるんですが・・・」
「??」
「この武器の名前は契約者しか決められないようになってるみたいで」
「あ、そういえば契約者ってどういうことなんですか?特に身に覚えがないのですが・・・」
「えっと、強力なモンスターの核、つまり魔石を使って作った武器は、たまにこんな風に契約をしていないと使えないものがあるんです。契約者・・・というよりも、その武器に認められた者、という言い方が正しいですかね。魔石を持っていたモンスターが最も脅威に思った相手、がその魔石に触れると自動的に契約が交わされるようです」
うわぁ・・・ナーガの精神でも宿ってるの?これ。
「・・・ちなみにアルミリアさんは契約ありの武器を見たことは・・・」
「それが初めてですね」
武器屋のアルミリアさんが見たことなかったって、かなり珍しいんじゃないだろうか。まぁ、とにかくアルミリアさんには感謝だ。
ウィンドウを読み進め、ちょっと嫌な想像をしてしまった。
「えっと、アルミリアさん」
「はい?」
「契約者以外装備不可っていうのは?」
「他の誰かが使おうとしても使えません」
「具体的にはどんな風に?」
「・・・契約者が装備していない、またはインベントリの中にも入っていない場合、自動的に契約者の手元に戻ってきます。さらに、契約者以外が無理矢理使おうとすると持っているものを勝手に攻撃するみたいです」
「・・・」
アルミリアさんが目をそらす。
いや、これ・・・呪いの刀じゃなくて?
僕にはデメリットはないけれど・・・捨てても勝手に戻ってくるって、そんなホラー系都市伝説があったよな気がするなぁ・・・まぁ良い刀ではあるんだけどね。
「最後に一ついいですか?これがある意味一番気になってるんですが」
「・・・なんでしょう」
「刃から毒が染み出すってなんですか・・・」
「やっぱり気になりますよね・・・まぁ、勝手に毒が出るようなことはないので安心してください。これに関しては、恐らくナーガの能力が原因ですね」
「ナーガの?」
「魔石を調べると、その持ち主であるモンスターの能力や特性、生態等がある程度分かるんですが・・・」
「おおー!それはかなり便利ですね」
つまり魔石さえ手に入ればそのモンスターの対処法とか、かなり有用なことが分かるんじゃないか?
まぁ、そんなやり方をするつもりはないんだけどね。
相手の情報だけ先に得るなんて、不公平だからなぁ。
「はい、ナーガの情報が分かったのは非常に有難いです・・・まぁこれといって有用な情報は分かりませんでしたが」
アルミリアさんが最後に呟いたことを、僕はしっかりと聞いていた。
それ、意味ないんじゃないですか?
「まぁ、その結果ナーガのある能力が分かりまして」
「ある能力・・・?」
「はい・・・かなり特殊なものです。その能力というのが・・・魔力を毒液に変換するみたいです」
「あー・・・明らかに身体の中に納まりきらない量の毒液を吐いてきたのはそういうことですか」
「そうなりますね・・・まぁ、その能力のおかげでというか、せいでというか・・・この刀にも同じような能力がついたみたいです」
「なるほど・・・」
まぁ正直なところ、かなり有用な能力ではある。
ナーガの素材から作ったこの刀が、毒で耐久が減るということは恐らくない。
それに、僕自身に状態異常への耐性がある。
多少の毒では僕自身には効かないだろう。
ただ・・・この能力、パーティ組んでるときは使っちゃダメだね。
「それにしても・・・凄い性能ですね。凄まじいです」
「はい!!私もこんな武器が作れたのは嬉しいです!それでは、もう一本の刀の方も見てもらえませんか?」
あ・・・忘れてた。全部見終わったような気分だった。
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