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6.みんなの人気者
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「お待たせ~」
「ほんとに待った」
「セイヤお兄ちゃん、おかえり~」
「ごめんな~、思ったより説明が多くて、時間がかかっちゃたよ」
「パンフレットだけ受け取って、あとで読めばよかった」
「まあ、そう言うなよ。待たせて申し訳ないけど、換金もしなきゃいけないから、またちょっと行ってくる」
「わかった、じゃあ、コリンとあっちのパブで待ってる。あんたのおごりね」
「あ~わかった。すまないがよろしくな」
「セイヤお兄ちゃん、いってらっしゃ~い」
俺は、最初にエルに対応した、黒髪のイケメンの窓口へ行った。
「すいませ~ん、買取りお願いしたいんですけど」
「いらしゃいませ、それでは、カードのご提示をお願い致します」
「あ、はい」
俺が、ギルドカードを渡すと、黒髪イケメンはカードに魔力を流した。
「セイヤさまは、新規ご登録でございますね。今日はどういったものの買取りでございますか?」
カードの表示を確認した後、こちらを向いて聞いてきた。
新規だから、討伐情報などが何も表示されなかったのだろう。
「魔物を討伐したんですけど、解体する道具を持ち合わせていなくて、死体のままなんですが」
「大丈夫でございますよ。解体料を頂きますが、承っております。魔物によっては、素材として買取りできる部位もございますので、よろしければ、その買取り料と解体料を相殺することも可能です。」
「それでお願いします」
良かった、解体してから提出しろとか言われなくて。
「それで、ご提供いただける魔物はどちらに?」
黒髪イケメンが、俺のうしろを覗き込む。
俺が、鞄も何も持っていないので、戸惑っているようだ。
「あ、結構たくさんあるんで、仕舞ってあるんです。ここで出すのも、アレかと思うんですけど・・」
「え?もしかして、セイヤさまはアイテムボックス持ちですか?」
黒髪イケメンは、よほど驚いたのか、若干敬語がおかしくなっている。
「そうですけど」
「さ、左様ですか、これは失礼致しました!では、中庭へおまわりください。そちらで取り出して頂ければ、査定いたしますので」
「わかりました」
「では、どうぞこちらへ」
俺は、隣の窓口の人に何か言ったあと、カウンターのうしろの方の扉へ向かう、黒髪イケメンについって行った。
中庭は、石畳で出来ており、所々にベンチが置いてある程度のシンプルなものだった。
「ここは、簡単な模擬戦なども出来るスペースでもあるんです」
黒髪イケメンが、説明する。
「実は、アイテムボックス持ちの方は、非常に珍しいんですよ」
「そうなんですか?」
窓口じゃないせいか、少しくだけた口調になっている。
「ええ、私も長いことギルドに勤めていますが、セイヤさまで2人目ですね」
「まっ、マジですか?」
やべえ、またヤラカシタみたいだ。
でも、イナンナさまがくれた能力だし、使わにゃ損だよな。
「おそらく、このことが知れ渡ったら、パーティーに誘われまくりですよ」
「まあ、ぶっちゃけ荷物持ちに最適ですもんね」
「そういうことです。さア、ではここに、討伐した魔物を出してください」
そう言って、手のひらで石畳を指し示した。
「わかりました、じゃあ、出します」
俺は、最初に討伐したスライムから順番に、ゴブリン、ウルフと出して行った。
ウルフを出したとき、少し驚いていたようだったが、すぐに表情は元に戻った。
「えっ!し、シルバー・ウルフ?」
「どうかしましたか?」
常に営業スマイルを、顔に保ち続けていた黒髪イケメン・・いい加減名前聞いた方がいいかな?・・が、驚愕の表情に変わった。
「シルバー・ウルフは、Cランクの魔物ですよ?しかも、他にこれだけウルフがいるということは、群だったということですよね?」
「確かに、群でした」
「シルバー・ウルフが率いた群ということは、Cランク上位から下手したらBランク下位に相当します」
「はあ」
「それを、冒険者登録もしていないセイヤさまが、討伐したということは、大変なことなんです。普通はこれだけで、すぐにDランクに昇格してもいいくらいです」
なんか、喋りながら興奮してきているみたいだ。
「残念ながら、今回は反映されませんが」
「大丈夫です、つぎ頑張ります」
今度は、眉を下げている黒髪イケメンに、一応そう言っておいた。
「楽しみにしています。では、査定をいたします。スライムが6にゴブリンが10、ウルフが10でシルバー・ウルフが1と・・・そうですね、解体料を差し引いて、50万シケルお支払いいたします」
「ありがとうございます」
正直、それが日本円にしてどれ程の価値があるのかわからず、俺は素直にお礼を言った。
「カウンターの方で、お支払いしますので、そちらへお戻りいただいてよろしいですか?」
「わかりました」
俺たちは、中庭から建物内に戻った。
途中、黒髪イケメンが、誰かを呼び止めて、話しをしていた。
その人は、ヤケに背が低いのにガッチリした人だなと思っていたら、ドワーフだった。
「あの者は、ギルド職員で、解体担当です」
俺が、驚いて立ち止って見ていたら、そう教えてくれた。
「ではこれで、50万シケルになります」
二人でカウンターに戻ると、そう言って、お金が入った皮袋を渡してくれた。
「すごっ!おもっ!」
俺は、中身を確認して思わず叫んでしまった。
袋の中には、金ピカに輝く金貨が50枚。
本物の金貨をこんなに大量に見たことなかったし、こっちのお金の価値を知らない俺でも、これが大金であることは分かる。
「シルバー・ウルフの毛皮や牙は、高く売れるんです」
「そ、そうなんですか。ありがとうございます」
俺は、なぜかお礼を言ったあと、ちょっと恥ずかしくなって、すぐに窓口を後にすることにした。
「またのお越しを、お待ちお待ちしております」
黒髪イケメンが、カウンターの向こうで、深々と頭を下げていた。
カウンターから離れて、パブスペースの方へ向かうと、人だかりが出来ていた。
その中心のテーブルに座っているのは、エルとコリン。
「どうなってんだ?」
遠目から見ても、からまれている訳ではないようだ。
「エルちゃん、今日も可愛いね。奢ってあげようか?」
「エルさま、本日もお美しい!是非、今度お食事にでも」
「エルさん、僕とパーティーを組みませんか?」
「エルちゃん!」
「エルさま」
「エル閣下!」
いや、ある意味、からまれているようだ。
だが、エルはいっさい返事をせずに、ビールみたいな飲み物を飲んでいる・・って、お前未成年じゃなかったっけ?
そんなエルの隣で、コリンは黙々と何かを喰っている。
「コリンちゃんていうのかい?さ、これあげるからお食べ」
「コリンちゃんも可愛いね。牛肉は好きかい?」
「コリンちゃん、兎肉はいかがかな?」
こっちは、なんかやたらと食べ物を貰っているようだ。
あいつ、あんなに食べれたっけ?
「コリン、エル、お待たせ~」
俺が声をかけると、一斉にみんなの視線が突き刺さる。
「おかえり」
「おはえりなは~い!」
エルは、一瞬、俺の方を見て答えると、再び飲み続ける。
コリンは、口の中になんかの肉をいっぱいに頬張って、満面の笑みで、手を振ってきた。
すると、周りにいた男たち~いや、女もいた~が、舌打ちをした後、離れて行った。
「エルって人気者なんだな」
俺は、2人の向かいの席に座りながら、そう言った。
「別に、周りの連中が、勝手に寄ってくるだけ」
エルは、無表情で言った。
「ひんな、やはひいの、ほ肉いっぱいくれたの!」
「エルってほんとクールだな。・・コリンは、口の中のものを食べてから、喋ろうな」
俺の言葉に、エルは鼻先で笑い、コリンはコクコク頷いて、一生懸命に肉を飲み込もうとしていた。
「セイヤも、シカルを飲んだら?」
エルが、自分の飲んでいるものを、勧めてきた。
シカルっていうのか。
ビールみたいだけど、俺、正月に親戚のおじさんに飲まされて、すげー苦かった覚えしかないんだけど。
「そ、そうだな。飲んでみるか。すいませーん!シカルください」
この世界では、16歳で成人だというし、郷にいれば郷に従えだ。
「っていうか、エル、お前未成年だよな?酒なんか飲んでいいのか?」
「いいのよ、冒険者は」
「どんな理屈だよ!」
俺が突っ込んでも、涼しい顔だ。
「ところで、お金は手に入ったの?」
運ばれてきたシカルをひと口飲んだところで、エルが聞いてきた。
シカル、結構イケル。
ビールより、アルコールがきつくない感じだし、フルーティーで甘みもある。
ハマるかも・・じゃなかった、お金の件か。
「ああ、結構いい値段で買ってもらえたと思う。でも、シルバー・ウルフを出したら、すげー驚かれた。俺のランクじゃあり得ないって」
「え!あんた、シルバー・ウルフを狩ったの?そんなはずないわ!あたしでさえ、群の場合は、ちょっとは手こずるのに!」
エルが、突然興奮し出した。
ん?ちょっと待った、あたしでさえ?
どういうこと?
「エルって、何ランク?」
「Aランク」
「えーーー!(駄洒落じゃないよ)」
そんな高ランクなのかよ。
「ちなみに、このエア村にAランクは、何人くらいいるんだ?」
「1人」
「エーーーーー!」
それで、さっきの騒ぎだったのか。
そりゃあ、村唯一のAランク冒険者なら、他の冒険者の憧れだよなあ。
しかも、こんなにかわいいし。
中には、変な崇拝者もいそう・・・。
コリンの方は、単純にかわいいからだろうけど。
「よく分かんないけど、偶然?仕留めることができたんだ」
「偶然で、ヤレる相手でもないんだけど。まあいいわ、それよりあんたたち、今夜寝るとこどうするの?」
俺の適当ないい訳には納得いってないようだけど、エルは重要なことを言ってきた。
「そうだ!どうしよう・・・」
俺は、コリンの顔を見てそう言った。
コリンは、そんな俺の顔を、口のまわりを肉の脂だらけにして、キョトンと首をかしげ、見返してきた。
「ここにも宿泊施設はあるけど、必要最低限な部屋よ。その子と一緒ならキツイかもね。あたしの泊まっている宿屋でいいなら、紹介するけど?」
「そうだな、お願いしようかな」
「わかった」
最低限のところが、妙に強調されていた気がしたが、この世界のことをよく知らない俺は、エルに紹介してもらうことにした。
それにしても、相変わらず表情には乏しいが、親切だよな。
「そうと決まれば、早速行きましょ。支払いお願いね」
エルが椅子から立ち上がる。
「まっへ!」
コリンも、何かをつかんで、椅子からおりた。
・・・お前、まだ喰ってたのか。
「ああ、任せとけ。お金は手に入ったか--あ、エル、借りたお金返しておくよ。さっきの登録料と、夕飯代」
「ご飯代はいいわ。奢ったげる。お近づきのしるしよ」
「あ、ありがとう」
ほんと、クールなんだか、優しんだか・・。
「ほんとに待った」
「セイヤお兄ちゃん、おかえり~」
「ごめんな~、思ったより説明が多くて、時間がかかっちゃたよ」
「パンフレットだけ受け取って、あとで読めばよかった」
「まあ、そう言うなよ。待たせて申し訳ないけど、換金もしなきゃいけないから、またちょっと行ってくる」
「わかった、じゃあ、コリンとあっちのパブで待ってる。あんたのおごりね」
「あ~わかった。すまないがよろしくな」
「セイヤお兄ちゃん、いってらっしゃ~い」
俺は、最初にエルに対応した、黒髪のイケメンの窓口へ行った。
「すいませ~ん、買取りお願いしたいんですけど」
「いらしゃいませ、それでは、カードのご提示をお願い致します」
「あ、はい」
俺が、ギルドカードを渡すと、黒髪イケメンはカードに魔力を流した。
「セイヤさまは、新規ご登録でございますね。今日はどういったものの買取りでございますか?」
カードの表示を確認した後、こちらを向いて聞いてきた。
新規だから、討伐情報などが何も表示されなかったのだろう。
「魔物を討伐したんですけど、解体する道具を持ち合わせていなくて、死体のままなんですが」
「大丈夫でございますよ。解体料を頂きますが、承っております。魔物によっては、素材として買取りできる部位もございますので、よろしければ、その買取り料と解体料を相殺することも可能です。」
「それでお願いします」
良かった、解体してから提出しろとか言われなくて。
「それで、ご提供いただける魔物はどちらに?」
黒髪イケメンが、俺のうしろを覗き込む。
俺が、鞄も何も持っていないので、戸惑っているようだ。
「あ、結構たくさんあるんで、仕舞ってあるんです。ここで出すのも、アレかと思うんですけど・・」
「え?もしかして、セイヤさまはアイテムボックス持ちですか?」
黒髪イケメンは、よほど驚いたのか、若干敬語がおかしくなっている。
「そうですけど」
「さ、左様ですか、これは失礼致しました!では、中庭へおまわりください。そちらで取り出して頂ければ、査定いたしますので」
「わかりました」
「では、どうぞこちらへ」
俺は、隣の窓口の人に何か言ったあと、カウンターのうしろの方の扉へ向かう、黒髪イケメンについって行った。
中庭は、石畳で出来ており、所々にベンチが置いてある程度のシンプルなものだった。
「ここは、簡単な模擬戦なども出来るスペースでもあるんです」
黒髪イケメンが、説明する。
「実は、アイテムボックス持ちの方は、非常に珍しいんですよ」
「そうなんですか?」
窓口じゃないせいか、少しくだけた口調になっている。
「ええ、私も長いことギルドに勤めていますが、セイヤさまで2人目ですね」
「まっ、マジですか?」
やべえ、またヤラカシタみたいだ。
でも、イナンナさまがくれた能力だし、使わにゃ損だよな。
「おそらく、このことが知れ渡ったら、パーティーに誘われまくりですよ」
「まあ、ぶっちゃけ荷物持ちに最適ですもんね」
「そういうことです。さア、ではここに、討伐した魔物を出してください」
そう言って、手のひらで石畳を指し示した。
「わかりました、じゃあ、出します」
俺は、最初に討伐したスライムから順番に、ゴブリン、ウルフと出して行った。
ウルフを出したとき、少し驚いていたようだったが、すぐに表情は元に戻った。
「えっ!し、シルバー・ウルフ?」
「どうかしましたか?」
常に営業スマイルを、顔に保ち続けていた黒髪イケメン・・いい加減名前聞いた方がいいかな?・・が、驚愕の表情に変わった。
「シルバー・ウルフは、Cランクの魔物ですよ?しかも、他にこれだけウルフがいるということは、群だったということですよね?」
「確かに、群でした」
「シルバー・ウルフが率いた群ということは、Cランク上位から下手したらBランク下位に相当します」
「はあ」
「それを、冒険者登録もしていないセイヤさまが、討伐したということは、大変なことなんです。普通はこれだけで、すぐにDランクに昇格してもいいくらいです」
なんか、喋りながら興奮してきているみたいだ。
「残念ながら、今回は反映されませんが」
「大丈夫です、つぎ頑張ります」
今度は、眉を下げている黒髪イケメンに、一応そう言っておいた。
「楽しみにしています。では、査定をいたします。スライムが6にゴブリンが10、ウルフが10でシルバー・ウルフが1と・・・そうですね、解体料を差し引いて、50万シケルお支払いいたします」
「ありがとうございます」
正直、それが日本円にしてどれ程の価値があるのかわからず、俺は素直にお礼を言った。
「カウンターの方で、お支払いしますので、そちらへお戻りいただいてよろしいですか?」
「わかりました」
俺たちは、中庭から建物内に戻った。
途中、黒髪イケメンが、誰かを呼び止めて、話しをしていた。
その人は、ヤケに背が低いのにガッチリした人だなと思っていたら、ドワーフだった。
「あの者は、ギルド職員で、解体担当です」
俺が、驚いて立ち止って見ていたら、そう教えてくれた。
「ではこれで、50万シケルになります」
二人でカウンターに戻ると、そう言って、お金が入った皮袋を渡してくれた。
「すごっ!おもっ!」
俺は、中身を確認して思わず叫んでしまった。
袋の中には、金ピカに輝く金貨が50枚。
本物の金貨をこんなに大量に見たことなかったし、こっちのお金の価値を知らない俺でも、これが大金であることは分かる。
「シルバー・ウルフの毛皮や牙は、高く売れるんです」
「そ、そうなんですか。ありがとうございます」
俺は、なぜかお礼を言ったあと、ちょっと恥ずかしくなって、すぐに窓口を後にすることにした。
「またのお越しを、お待ちお待ちしております」
黒髪イケメンが、カウンターの向こうで、深々と頭を下げていた。
カウンターから離れて、パブスペースの方へ向かうと、人だかりが出来ていた。
その中心のテーブルに座っているのは、エルとコリン。
「どうなってんだ?」
遠目から見ても、からまれている訳ではないようだ。
「エルちゃん、今日も可愛いね。奢ってあげようか?」
「エルさま、本日もお美しい!是非、今度お食事にでも」
「エルさん、僕とパーティーを組みませんか?」
「エルちゃん!」
「エルさま」
「エル閣下!」
いや、ある意味、からまれているようだ。
だが、エルはいっさい返事をせずに、ビールみたいな飲み物を飲んでいる・・って、お前未成年じゃなかったっけ?
そんなエルの隣で、コリンは黙々と何かを喰っている。
「コリンちゃんていうのかい?さ、これあげるからお食べ」
「コリンちゃんも可愛いね。牛肉は好きかい?」
「コリンちゃん、兎肉はいかがかな?」
こっちは、なんかやたらと食べ物を貰っているようだ。
あいつ、あんなに食べれたっけ?
「コリン、エル、お待たせ~」
俺が声をかけると、一斉にみんなの視線が突き刺さる。
「おかえり」
「おはえりなは~い!」
エルは、一瞬、俺の方を見て答えると、再び飲み続ける。
コリンは、口の中になんかの肉をいっぱいに頬張って、満面の笑みで、手を振ってきた。
すると、周りにいた男たち~いや、女もいた~が、舌打ちをした後、離れて行った。
「エルって人気者なんだな」
俺は、2人の向かいの席に座りながら、そう言った。
「別に、周りの連中が、勝手に寄ってくるだけ」
エルは、無表情で言った。
「ひんな、やはひいの、ほ肉いっぱいくれたの!」
「エルってほんとクールだな。・・コリンは、口の中のものを食べてから、喋ろうな」
俺の言葉に、エルは鼻先で笑い、コリンはコクコク頷いて、一生懸命に肉を飲み込もうとしていた。
「セイヤも、シカルを飲んだら?」
エルが、自分の飲んでいるものを、勧めてきた。
シカルっていうのか。
ビールみたいだけど、俺、正月に親戚のおじさんに飲まされて、すげー苦かった覚えしかないんだけど。
「そ、そうだな。飲んでみるか。すいませーん!シカルください」
この世界では、16歳で成人だというし、郷にいれば郷に従えだ。
「っていうか、エル、お前未成年だよな?酒なんか飲んでいいのか?」
「いいのよ、冒険者は」
「どんな理屈だよ!」
俺が突っ込んでも、涼しい顔だ。
「ところで、お金は手に入ったの?」
運ばれてきたシカルをひと口飲んだところで、エルが聞いてきた。
シカル、結構イケル。
ビールより、アルコールがきつくない感じだし、フルーティーで甘みもある。
ハマるかも・・じゃなかった、お金の件か。
「ああ、結構いい値段で買ってもらえたと思う。でも、シルバー・ウルフを出したら、すげー驚かれた。俺のランクじゃあり得ないって」
「え!あんた、シルバー・ウルフを狩ったの?そんなはずないわ!あたしでさえ、群の場合は、ちょっとは手こずるのに!」
エルが、突然興奮し出した。
ん?ちょっと待った、あたしでさえ?
どういうこと?
「エルって、何ランク?」
「Aランク」
「えーーー!(駄洒落じゃないよ)」
そんな高ランクなのかよ。
「ちなみに、このエア村にAランクは、何人くらいいるんだ?」
「1人」
「エーーーーー!」
それで、さっきの騒ぎだったのか。
そりゃあ、村唯一のAランク冒険者なら、他の冒険者の憧れだよなあ。
しかも、こんなにかわいいし。
中には、変な崇拝者もいそう・・・。
コリンの方は、単純にかわいいからだろうけど。
「よく分かんないけど、偶然?仕留めることができたんだ」
「偶然で、ヤレる相手でもないんだけど。まあいいわ、それよりあんたたち、今夜寝るとこどうするの?」
俺の適当ないい訳には納得いってないようだけど、エルは重要なことを言ってきた。
「そうだ!どうしよう・・・」
俺は、コリンの顔を見てそう言った。
コリンは、そんな俺の顔を、口のまわりを肉の脂だらけにして、キョトンと首をかしげ、見返してきた。
「ここにも宿泊施設はあるけど、必要最低限な部屋よ。その子と一緒ならキツイかもね。あたしの泊まっている宿屋でいいなら、紹介するけど?」
「そうだな、お願いしようかな」
「わかった」
最低限のところが、妙に強調されていた気がしたが、この世界のことをよく知らない俺は、エルに紹介してもらうことにした。
それにしても、相変わらず表情には乏しいが、親切だよな。
「そうと決まれば、早速行きましょ。支払いお願いね」
エルが椅子から立ち上がる。
「まっへ!」
コリンも、何かをつかんで、椅子からおりた。
・・・お前、まだ喰ってたのか。
「ああ、任せとけ。お金は手に入ったか--あ、エル、借りたお金返しておくよ。さっきの登録料と、夕飯代」
「ご飯代はいいわ。奢ったげる。お近づきのしるしよ」
「あ、ありがとう」
ほんと、クールなんだか、優しんだか・・。
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