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91.商談の続き
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「それは大丈夫です。これだけのシステムであれば、領都なら貴族様や裕福な商家に売り込むだけでも十分に勝算がありますよ。もちろん、マモルさんたちの利益をちゃんと確保した上での話です」
イワンさんが、自信満々の表情で言った。
「私はともかく、ダンクさん達のところが損をしなければ良いんですけど・・」
俺はそう言って、ダンクさんの方を見た。
「そうだな。ワシらのところも、儲けるつもりは全く無いが・・ワシは領都へは行かんぞ」
「えっ?じゃあ誰が作るんですか?」
「あっちは、弟子に任せたと言ったろう」
「ああ~。そうでしたね」
俺は頭に手をやって、苦笑する。
「では、システムの売り込みと受注の窓口はイワン商会様で、施工はダンク&ドンク兄弟工房様の領都支店ということでよろしいでしょうか?」
話を聞いていたパースさんがまとめる。
「あ、それから仕様の件なんですけど。この村で商家に設置している、水だけのシステムで良かったですか?」
俺みたいに魔法で、ホイホイとお湯を出せる人がそういるとは思えないしな。
「その点については、施主によって対応を変えるつもりですよ」
イワンさんが、こともなげに言った。
「え?お湯はどうするんですか?」
「実は、周りの温度を変えられる魔道具があるんですよ・・・高いですけど」
「まあ、そんなに数は出回っていないし、ちょとずつしか変えられないから、坊主の魔法に比べれば時間がものすごくかかるがな」
イワンさんの答えに、ドンクさんが付け足す。
「そうなんですか、そういうものがあるんですね」
そんな希少なものなら、この村に普及しているはずもないか・・。
「それは、時間をかければ良いだけですので。一部の貴族様や商家であれば、すでに持っているか、魔道具込みで買ってくれると思います」
「コミでって、イワンさんところで売っているんですか?!」
「もちろん、取り扱っていますよ。ご購入なさいますか?お高いですが」
「いえ・・結構です」
自分の魔法で間に合っているし・・・あ、でも冷房に使えるかな?
後で聞いてみよう・・。
「それでは、お金の方の話に移らさせて頂きますが、通常のライセンス料と施工費、材料費、雑費等に加えて、今回のような場合、利益の分配金が発生して参りますが・・・」
パースさんが、脱線しかかった話を元に戻す。
「ちょっと待った。その前に、今後の普及についてなんだが・・」
そこで、ダンクさんから待ったがかかる。
「はい」
パースさんが進めた話を、一旦中止してダンクさんの方を見る。
「システムの技術仕様については、ギルドに登録しているから、ライセンス料さえ払えば誰でも作れるはずだな?」
「そうですね。ただ、あくまであれは標準的な仕様を、登録の様式に従って記載しているだけですから、そう簡単には真似できないとは思いますが」
「そうだ。だから、逆に言えば粗悪品が出回る可能性があるってことだ」
なるほど。
確かに、ダンクさん達があれほど苦労して作り上げたシステムを、そうそう簡単に模倣するのは難しいよな。
でも、このままイワンさんのところが大々的に売り込めば、真似をする人たちが出てくるのは時間の問題か。
そうなれば、ダンクさんのいう通り、似て非なるものが出回って・・・。
「ワシはそうなるのが気に食わねえ!かと言って、仕様を公開している以上、他の奴が作るのを止めることはできねえ」
中途半端なものが出回ってしまったら、こっちのシステムの悪評になる可能性もあるしな。
「だからせめてもの対策として、このシステムを施工する者はウチの本支店のどちらかで、1度研修を受ける義務があることを、ライセンス登録に追加してくれねえか?」
「なるほど。研修を受けずに施工した場合には、ライセンス規約の罰則を受けるということですね」
パースさんが、頷いて言った。
「ああ。完全には防止できんだろうが、しないよりはマシだ」
「承知いたしました。通常のライセンス登録とは異なりますので、ギルマスの承認が必要になります。少々お待ちいただけますか?」
パースさんはそう言って、ルシアちゃんの方を見た。
ルシアちゃんはうなずくと、席を立って一礼し部屋を出ていった。
程なくしてルシアちゃんが戻ってきて、何やら書類をパースさんに手渡して頷いた。
「承認が取れましたので、先ほど言われた通りにライセンス登録を変更いたします」
「分かった」
一礼するパースさんに、ダンクさんが頷いた。
「それでは、改めまして分配金についてですが・・・」
・・・こうして、話は更に細かい内容に入っていったのだった。
イワンさんが、自信満々の表情で言った。
「私はともかく、ダンクさん達のところが損をしなければ良いんですけど・・」
俺はそう言って、ダンクさんの方を見た。
「そうだな。ワシらのところも、儲けるつもりは全く無いが・・ワシは領都へは行かんぞ」
「えっ?じゃあ誰が作るんですか?」
「あっちは、弟子に任せたと言ったろう」
「ああ~。そうでしたね」
俺は頭に手をやって、苦笑する。
「では、システムの売り込みと受注の窓口はイワン商会様で、施工はダンク&ドンク兄弟工房様の領都支店ということでよろしいでしょうか?」
話を聞いていたパースさんがまとめる。
「あ、それから仕様の件なんですけど。この村で商家に設置している、水だけのシステムで良かったですか?」
俺みたいに魔法で、ホイホイとお湯を出せる人がそういるとは思えないしな。
「その点については、施主によって対応を変えるつもりですよ」
イワンさんが、こともなげに言った。
「え?お湯はどうするんですか?」
「実は、周りの温度を変えられる魔道具があるんですよ・・・高いですけど」
「まあ、そんなに数は出回っていないし、ちょとずつしか変えられないから、坊主の魔法に比べれば時間がものすごくかかるがな」
イワンさんの答えに、ドンクさんが付け足す。
「そうなんですか、そういうものがあるんですね」
そんな希少なものなら、この村に普及しているはずもないか・・。
「それは、時間をかければ良いだけですので。一部の貴族様や商家であれば、すでに持っているか、魔道具込みで買ってくれると思います」
「コミでって、イワンさんところで売っているんですか?!」
「もちろん、取り扱っていますよ。ご購入なさいますか?お高いですが」
「いえ・・結構です」
自分の魔法で間に合っているし・・・あ、でも冷房に使えるかな?
後で聞いてみよう・・。
「それでは、お金の方の話に移らさせて頂きますが、通常のライセンス料と施工費、材料費、雑費等に加えて、今回のような場合、利益の分配金が発生して参りますが・・・」
パースさんが、脱線しかかった話を元に戻す。
「ちょっと待った。その前に、今後の普及についてなんだが・・」
そこで、ダンクさんから待ったがかかる。
「はい」
パースさんが進めた話を、一旦中止してダンクさんの方を見る。
「システムの技術仕様については、ギルドに登録しているから、ライセンス料さえ払えば誰でも作れるはずだな?」
「そうですね。ただ、あくまであれは標準的な仕様を、登録の様式に従って記載しているだけですから、そう簡単には真似できないとは思いますが」
「そうだ。だから、逆に言えば粗悪品が出回る可能性があるってことだ」
なるほど。
確かに、ダンクさん達があれほど苦労して作り上げたシステムを、そうそう簡単に模倣するのは難しいよな。
でも、このままイワンさんのところが大々的に売り込めば、真似をする人たちが出てくるのは時間の問題か。
そうなれば、ダンクさんのいう通り、似て非なるものが出回って・・・。
「ワシはそうなるのが気に食わねえ!かと言って、仕様を公開している以上、他の奴が作るのを止めることはできねえ」
中途半端なものが出回ってしまったら、こっちのシステムの悪評になる可能性もあるしな。
「だからせめてもの対策として、このシステムを施工する者はウチの本支店のどちらかで、1度研修を受ける義務があることを、ライセンス登録に追加してくれねえか?」
「なるほど。研修を受けずに施工した場合には、ライセンス規約の罰則を受けるということですね」
パースさんが、頷いて言った。
「ああ。完全には防止できんだろうが、しないよりはマシだ」
「承知いたしました。通常のライセンス登録とは異なりますので、ギルマスの承認が必要になります。少々お待ちいただけますか?」
パースさんはそう言って、ルシアちゃんの方を見た。
ルシアちゃんはうなずくと、席を立って一礼し部屋を出ていった。
程なくしてルシアちゃんが戻ってきて、何やら書類をパースさんに手渡して頷いた。
「承認が取れましたので、先ほど言われた通りにライセンス登録を変更いたします」
「分かった」
一礼するパースさんに、ダンクさんが頷いた。
「それでは、改めまして分配金についてですが・・・」
・・・こうして、話は更に細かい内容に入っていったのだった。
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