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86.新メニュー

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それから、トマトソースパスタ作りの練習をしばらくやると、こちらもサルクさんはすぐにマスターしたのだった。

それだけじゃなく、このパスタソースに合うチーズについても、俺が色々と並べた中から最適なものを教えてくれた。

料理に関しては、さすがの知識とセンスである。

「トマテソースパスタの方は大丈夫そうだから、いよいよ新メニューの方に行こうか?」

俺は、練習で出来上がった麺とソースを収納に仕舞いながら言った。

「おう、やろうぜ!この間は途中までだったからな」

ネイサンが言った。

「楽しみです」

サルクさんもやる気満々だ。

ここまで試食で結構な量を食べてきている、他のメンバーたちも期待に目を輝かせている。

凄い食欲だな・・・。

「新メニューの名前は、ジェノベーゼパスタだ!」

「「「「ジェ、ジェノベーゼ?」」」」

またも、新メンバーたちが首を傾げる。

「そうだ。このパスタのソースは、さっき香つけと彩のために使った、ビジルの葉をメインにするソースなんだ」

「え?あの葉っぱをメインに?!」

サルクさんが驚いた表情で、調理台に置いてあったビジルを見る。

「薬草をメインに食べるなんて、ちょっとあんまり気分のいいものじゃないけど・・」

サリーさんがつぶやき、ミーナさんとニーナちゃんがコクリとうなずく。

「まあ見てなって!」

ネイサンが自信ありげに胸を張った。

まだ出来上がりを食べてないくせに・・・。

・・まあ、俺が作る新しい料理は全部美味しいって、信頼してくれているんだろうけど・・。

「実は、ソースって言ってもかなり簡単なんだ。体力は必要かもしれないけど」

「「体力はまかせろ!」」

ネイサンとサルクさんが、胸を張る。

「ハハハ。確かに2人だったら大丈夫そうだな。まずはこのすり鉢で、木の実をすり潰してくれ」

俺は、収納から薬屋で買っておいた『松の実』を取り出した。

「これはピンナッツ?」

パインナッツね・・なんでナッツはそのまま?

それに、ピーナッツみたいになってるし・・。

「そうだ。ピンナッツだ。」

「これって、発熱を抑える薬よね?」

サリーさんが、一粒つまんで小首を傾ける。


「こんな感じか?」

サルクさんが、すりこぎ棒を動かしながらネイサンに聞いている。

「そうそう。で、カーリックも入れて一緒にすり潰すんだ。あと塩と、シーズを入れるんだよね?」

そう言って、ネイサンが俺の方を見る。

「ああ。シーズはさっきトマテソースの時に、サルクさんに教えてもらったシーズを使うと良いんじゃないかな」

「分かった」

ネイサンとサルクさんが頷いて、すり鉢にそれらを追加していく。




「・・細かくなって来たね。じゃあそこに、ガドオイルを少しずつ足して続けてくれ」

俺は、すり鉢の中を確認して言った。

「うん。いい感じだな」





しばらくすると、固形物が細かくなってきた。

「フウ・・結構、疲れるな・・」

サルクさんが額の汗を拭って言った。

すり鉢も、すりこぎ棒も結構大きいからな・・。

「さすがのBランク冒険者も、疲れますか?」

「いや、まだまだ!」

「いいですねえ。じゃあ続けて、今度はビジルの葉をどんどん追加して、残りのガドオイルを加えてさらにペースト状になるまですり潰してもらっていいですか?」

そんなサルクさんに、俺は微笑いながらビジルの葉を大量に取り出して言った。

「わ、分かった・・」




「・・もうそろそろ、できそうだな。ネイサン、麺を茹で始めてくれ」

「了解!」

ネイサンが片手を上げて、鍋に麺を投入していく。




「「よし出来た!」」

2人が同時に声を上げる。

「それじゃあ、そのジェノベーゼソースに、麺をからめてくれ。それで完成だ」

「「完成って・・生のまま?!」」

サルクさんとネイサンが、驚いた顔で俺を見返す。

ここから先は、まだやってなかったからな・・ネイサンも初めてか・・。


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