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51.食材探し

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「らっしゃい、らっしゃ~い!おねえさん見てってー!」

「安いよ、安いよー!」

「朝採れの野菜はいかがですかー!」

次の日、俺は予定通り食材探しのために市場へ来ていた。

ちなみにリンたち4人組も一緒だ。

どうしてかというと、昨晩こんな会話をしていたのだ。

----------------------

「マモルさん、ずいぶんと熱心にお肉屋さんと話していましたね」

ドリンさんにごちそうになって戻ると、ポールにそんなことを言われた。

「え?ああ、お休み処ここでも飲み物だけじゃなくて、ツマミになるものを何か出せないかなと思ってさ」

「それって、料理を出すってことか?」

ポールの質問に答えていると、注文を受けてやって来たネイサンが、横から聞いてくる。

「そうだな、エールに合って簡単につまめるものをな」

「ふーん。マモルさんは、なんか考えている料理でもあるのか?」

いつになく真剣な顔で、さらに聞いてくる。

「まあね。ドリンさんにご馳走してもらったもので、思いついたものがあるんだ」

「へー。どんな料理なんですか?」

後から来たリンが聞いてきた。

「ピザっていう料理だ」

「「「「ピザ?」」」」

遅れて来たキースも含めて、4人が同時に首をかしげる。

「なんかよくわかんないけど、面白そうだな!」

そして、ネイサンが続けてニヤリと笑う。

「ネイサンは料理が好きだもんねー」

それを見たキースが笑って言った。

「へーそうなのか?見た目はそんなタイプじゃないと思ってた」

「タイプじゃないってどういうことだよ!」

「ネイサンのお料理はボクも大好き」

「確かに、リンより上手いかも」

「ちょっと、ポール!ひどい!!」

「ゴメン」

ネイサンは、どちらかというと体を動かすこと・・例えば、喧嘩とか戦闘とか・・そんなことが得意なのかと思っていた。

「なんだよ!もちろん、喧嘩とか戦闘とかも好きだけどよ。それよりもっと好きなのは料理なんだ。悪いか?!」

「いや、悪くないよ。じゃあ、よく料理はするんだ?」

「ええ。私たち登録はまだなんですけど、冒険者になってパーティーを組もうと思っているんで、時々予行練習で獣狩りに行くんです。その時のアタッカー兼料理番がネイサンです」

ポールが眼鏡の端を指先でくいっと上げて言った。

「そうか・・・じゃあ、お休み処ここで出すツマミの料理も、ネイサンに頼もうかなあ」

「え?いいのか?!ぜひやらせてくれ!!」

「まあでも、腕前を見てからだな」

「わかった!まかせとけ!!」

ネイサンが、目をキラキラさせて握りこぶしを作る。

「その前に、俺が考えている料理の材料が揃うか、明日市場へ買い出ししなきゃだけどな」

「おお!じゃあ俺も付いて行っていいか?」

「そうだな、料理が得意なら色々と食材のことも詳しいだろうし」

「よし!!」

----------------------

てなわけで、ネイサンにもれなく他の3人も、例のごとく付いてきたということだ。

「マモルさん、そのピザってやつに必要な食材って、どんなものだ?」

市場を歩きながら、ネイサンが言ってくる。

「そうだな、まず必要なのが小麦粉だ。これは、パンに使うものと同じでいいから、穀物屋で買えばいい」

「おう」

「それと、塩。これも調味料屋で手に入るよな?」

魔法で作れそうな気もするけど、今はやめておこう。

「高いけど」

「まあしょうがないな。それから一番大事なのはトマトなんだけど、あるかな?」

「トマト?なんだそれ?」

えー、トマトは無いのか!

それはまずいな・・。

「赤い野菜なんだけどな・・」

「赤い野菜かあ・・・もしかして、トマテのことか?ほら、これ!」

ネイサンが、八百屋の前で立ち止まり、店頭にうず高く積まれている野菜を手に取る。

「これか?なんかリンゴみたいだな・・」

俺はその野菜を受け取りながら、つぶやく。

う~んやっぱり、ぱっと見た目はリンゴだなー。

「味はどうなんだろう・・」

「試食してみるかい?」

俺が手にした野菜を見つめていると、八百屋の親父が言ってくれた。

「いいんですか?」

「ああいいよ。うちの野菜は新鮮だからね、旨いよ」

そう言って、切り分けたトマテという野菜を一切れ手渡してくれる。

トマトだ!

味は完全にトマトだ。

トマト特有の、あのプニュプニュした種の部分は無いが、酸味と甘みのバランスの良いトマトだった。

「これだ!」

「これでいいのか?」

ネイサンが聞いてくる。

「ああ、これで完璧だ!」

「じゃあこれで、食材は揃ったのか?」

「ん~・・あとはこれに、オイルとドリンさんところの、モッチリラシーズとソラミがあれば、何とかなるんだけど、できればあれも欲しいなあ・・・」

「あれ?」

「バジルっていうんだけどな、ちょっと癖のある香りの葉っぱでさ」

そう言いながら、俺は八百屋の商品棚を物色していく。




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