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46.グランドオープン!

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いよいよ銭湯の、オープンの日になった。


ちなみに当分の間は、オープン時間は夕方の4時からにしている。

そのうち、風呂に入る習慣が浸透してきたら、徐々に時間を早めていくつもりだ。

あ、それとクローズは夜の9時にした。

これでもこの世界では、かなり遅い時間だ。

とくに田舎の村の道には街灯の類は無いので、人々の活動時間は夜の8時くらいまでが普通だ。

夜に、集落や町などの人の生活圏内から一歩外へと踏み出せば、そこは完全に魔獣や獣の領域だし、『基本は暗くなったら寝る』だ。

もっとも、領都や王都に行けば魔道具の街灯があるらしいが、全ての道が明るく照らされているわけじゃない。

だから、領都や王都でも夜の10時くらいまでが、人々が活動している限界時間となる。

それと、俺の一日のルーティーンはこの銭湯のオープンに伴い、次のようになる。


朝起きて、身支度、朝食を終えると宿を出る。

診療室に出勤すると、急患がいなければ前日まで予約した人の治療、昼休みを挟んで午後も治療。

午後の2時には、基本的に診療室をクローズして、事務室に移動し治療室と銭湯の会計などの事務仕事。

午後3時から銭湯の貯水槽と浴槽に、お湯を溜める。

そして忘れずに、お休み処のエールの樽と、果実水の樽を用意する。

午後4時に銭湯をオープンして、状況を確認しつつ、個人宅へのお湯を溜めてまわる。

ちなみに、銭湯に入りに行くからもういらないという人と、自分の家でゆっくり入りたいという人がいたので、今は6軒ほどをまわっている(更にちなみに、村長のところは銭湯派だった。主にミミの要望だけど)

個人宅分のお湯張りが終わると、一旦宿に帰って夕食だ。

そして、9時のクローズに間に合うように銭湯へ戻って、ザイル婆さんから売り上げを受け取って、迎えに来たスージーさんに婆さんを引き渡す。

その後は、自分が風呂に入った上で最後に、残ったお湯と汚水を魔法で消して浴槽などの掃除をする。

あとかたずけ等をし、戸締りをして宿に戻るのが、だいたい夜の10時頃になるといった感じだ。


我ながら、結構ちゃんと仕事をしている感じだなあ・・。


・・とまあ、それはさておき。

いよいよオープンである。

俺は、とりあえず入り口でお客さんを出迎えることにした。



「「きたぞ!」」

「「「「ちわー!!!!」」」」

一番乗りは、ドンクさんたちである。

こんな早時間に来て、仕事はいいんだろうか?

「当然終わらせた!冷えたエールのために!!」

目的が変わってますから!


「おう!へえってもいいかい?」

「はいはい、どうぞどうぞ!」

なんか、早めの時間帯は職人系の人たちが多いぞ。


「あんちゃん、ここが傷が治るっていう評判の施設かい?」

革鎧を着た、めちゃくちゃガタイの良いおっさんがやって来た。

「傷は酷いんですか?」

「いや、かすり傷だけだが数が多い」

言われてみれば、出血は止まっているみたいだけど、肌の露出している部分は無数の切り傷や擦過傷があった。

「ちゃんとした治療なら、治療室の方でやりますけど?」

「そうなのか?しかし聞いた話では、入るだけで治るってことだったはずだが・・」

そういうことか。

「それだったら、銭湯の方ですね。入ればすぐに治るっていうわけでもないですが、直りはいいかも知れませんね」

「そうか!」

「でも、結構傷にしみて痛いかも知れませんが・・・」

「フン!冒険者をなめるんじゃねえ!それぐらい大丈夫だ!!」

「そうですか、ではこちらへどうぞ!」

「おうよ!」

う~ん、やっぱり肉体系に人気が出るのか?


・・と思ったら、そんなことは無く。

「あのお、セントウって・・ここでいいんですか?」

お母さんと娘の2人連れだ。

「そうですよ。チラシを見てきて頂いたんですか?」

「は、はい。それと、この子のお友達が誘ってくれたみたいで」

「あ!ミミちゃん!!」

「ナナちゃん!」

「なんだ、ミミの友達か」

「こんばんわ!マモルお兄さん。そうだよー、ミミのお友達のナナちゃん!」

「こんばんわ、マモルさん」

「ミーナさん、こんばんわ」

なるほどね。


といった感じで、夕方6時頃からは普通の人たちも続々と来るようになった。


「ザイル婆さんお疲れ様でした」

9時になり、最後のお客さんが帰ると表の入り口を閉めて、番台へと向かった。

「フン、なかなか楽しませてもらったよ」

疲れているかと思いきや、意外に機嫌がいい。

「それは良かったです!」

「すいません、こんばんわー」

スージーさんの声がした。

「はーい!お迎えが来たみたいですね」

俺は、ザイル婆さんが番台から降りるのを手伝って、入り口へと連れて行った。



「・・さてと、ちゃっちゃと片付けて帰るとするか」



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