39 / 98
39.出来上がり!
しおりを挟む
「完成だ!」
2日後の夕方、夕焼けで西の空が染まる頃、ドンクさんが俺の方を叩いて言った。
中央広場に面した入り口には、ザイル婆さんの雑貨屋に発注した暖簾が静かにたなびいている。
『ふじの湯』
いい感じじゃないか!
「ありがとうございます!」
俺が勢いよく頭を下げると、ドンクさんたちが笑顔でうなずく。
「さ、いつまでここにいるつもりだ?中を確認してみろ」
暖簾を眺めながら、感動して固まっている俺にドンクさんが声をかける。
「そ、そうですね!」
工事中に個々の箇所については、その都度確認したりはしていたが、全体を通して完成形を見るのは初めてだ。
滅茶苦茶ワクワクするなあ。
俺は、改めて建物を見あげた。
入り口は元々、建物の正面に対して真ん中にあったが、今はやや右に寄っている。
これは、左側に浴室を並べて配置したためだ。
目線を戻すと、ドキドキしながら暖簾をくぐった。
目の前には、幅3mほどの広めの廊下が奥へと伸びていて、突き当りに上階へと続く階段が見える。
廊下の右側は壁になっていて、上方に窓が連なり、オレンジ色の外の明かりが柔らかく差し込んでいる。
こちら側は東向きなので、今は反対側にある夕日の明かりが関節的に入ってきているのだ。
その窓の下には、数メートルおきにベンチが置かれてる。
そして、廊下の左側には引き戸の入り口が、2つ並んでいる。
引き戸はこの世界には無かったのだが、扉では銭湯のイメージに合わないので、ドンクさんにお願いして作ってもらった。
当然、入り口のところには、『男湯』と『女湯』の暖簾がかかっている。
ただ、これだけだとこの世界の人たちには分からないと思うので、戸の横っちょに、こっちの文字で同じように、男湯、女湯と書いた札を吊るしてある。
「ま、その内みんな慣れるだろ」
俺はとりあえず、『男湯』と書かれた暖簾の戸を開いて中に入った。
入ってすぐの右側に番台がある。
「うん、女湯は見えないな」
そして目の前が脱衣所。
壁には棚が作りつけられていて、脱衣カゴが置いてある。
部屋の真ん中には、ベンチが3つ。
ほぼ完ぺきだけど・・・足りないのもあるなあ。
体重計も無いし、扇風機もない・・マッサージチェアもあればなあ・・。
「あ!コーヒー牛乳も無い!!」
「なんだって?」
しまった、心の声が・・。
「い、いえ。なんでもありません!い、いい感じで仕上がってますね!」
「だろう!」
探せばあるのかなあ・・。
「よし、いよいよ・・」
俺は、浴室へと向かった。
ガラスをはめ込んだ引き戸(これも作ってもらった)を開けて、中へと入る。
すると、タイル張りの床の向こうに大きな浴槽がデーンと横たわり、目線の先には隣の女湯まで続く壁一面に、富士山の絵が大迫力で描かれていた。
「す、素晴らしい!」
思わず感嘆の声を漏らした。
何度も見ているはずなのに、この感動はちょっと来るものがあるな・・。
「ほれ、例の奴も見てくれ」
感動で固まっていると、ダンクさんに背中を叩かれる。
「え?ああ、そうでした」
言われて、浴室壁の方を確認する。
壁側には、ダンクさん渾身の蛇口が並んだ、洗い場がある。
それぞれの蛇口の前には、小さな木製の椅子と手桶が置いてある。
そして・・。
「あれが完成形ですか?!」
蛇口の上の方には、追加でお願いした例のものが設置されていた。
蛇口の途中から生えた、ホースの先に、無数の小さな穴が開いた持ち手のような物・・・。
「出してみていいですか?あ、でも上にお湯溜めてないか」
「だいじょうぶだ、試験用に水は溜めてある」
「そうですか!ありがとうございます!」
俺はダンクさんにお礼を言って、蛇口のハンドルを操作した。
『シャーー!』
すると、見事に無数の小さな穴から水が噴き出した。
そう、俺が追加でお願いしていたのは、シャワーだったのだ。
「凄いです!これはどうやって作ったんですか?」
俺はホースの部分を、クネクネ折り曲げながら聞いた。
「おう、そこか!坊主に言われた感じの管は、さすがに普通じゃ作れないんでな、ためしに魔獣の腸で作ってみたらうまくいった!」
「なるほど!」
これが、魔獣の腸ねえ・・・すげえな。
「よし、浴室も完璧ですね!」
「「あたりまえだ!」」
「じゃあ、女湯も一応確認してから、2階のお休み処を確認しますか!」
「「おう!」」
2日後の夕方、夕焼けで西の空が染まる頃、ドンクさんが俺の方を叩いて言った。
中央広場に面した入り口には、ザイル婆さんの雑貨屋に発注した暖簾が静かにたなびいている。
『ふじの湯』
いい感じじゃないか!
「ありがとうございます!」
俺が勢いよく頭を下げると、ドンクさんたちが笑顔でうなずく。
「さ、いつまでここにいるつもりだ?中を確認してみろ」
暖簾を眺めながら、感動して固まっている俺にドンクさんが声をかける。
「そ、そうですね!」
工事中に個々の箇所については、その都度確認したりはしていたが、全体を通して完成形を見るのは初めてだ。
滅茶苦茶ワクワクするなあ。
俺は、改めて建物を見あげた。
入り口は元々、建物の正面に対して真ん中にあったが、今はやや右に寄っている。
これは、左側に浴室を並べて配置したためだ。
目線を戻すと、ドキドキしながら暖簾をくぐった。
目の前には、幅3mほどの広めの廊下が奥へと伸びていて、突き当りに上階へと続く階段が見える。
廊下の右側は壁になっていて、上方に窓が連なり、オレンジ色の外の明かりが柔らかく差し込んでいる。
こちら側は東向きなので、今は反対側にある夕日の明かりが関節的に入ってきているのだ。
その窓の下には、数メートルおきにベンチが置かれてる。
そして、廊下の左側には引き戸の入り口が、2つ並んでいる。
引き戸はこの世界には無かったのだが、扉では銭湯のイメージに合わないので、ドンクさんにお願いして作ってもらった。
当然、入り口のところには、『男湯』と『女湯』の暖簾がかかっている。
ただ、これだけだとこの世界の人たちには分からないと思うので、戸の横っちょに、こっちの文字で同じように、男湯、女湯と書いた札を吊るしてある。
「ま、その内みんな慣れるだろ」
俺はとりあえず、『男湯』と書かれた暖簾の戸を開いて中に入った。
入ってすぐの右側に番台がある。
「うん、女湯は見えないな」
そして目の前が脱衣所。
壁には棚が作りつけられていて、脱衣カゴが置いてある。
部屋の真ん中には、ベンチが3つ。
ほぼ完ぺきだけど・・・足りないのもあるなあ。
体重計も無いし、扇風機もない・・マッサージチェアもあればなあ・・。
「あ!コーヒー牛乳も無い!!」
「なんだって?」
しまった、心の声が・・。
「い、いえ。なんでもありません!い、いい感じで仕上がってますね!」
「だろう!」
探せばあるのかなあ・・。
「よし、いよいよ・・」
俺は、浴室へと向かった。
ガラスをはめ込んだ引き戸(これも作ってもらった)を開けて、中へと入る。
すると、タイル張りの床の向こうに大きな浴槽がデーンと横たわり、目線の先には隣の女湯まで続く壁一面に、富士山の絵が大迫力で描かれていた。
「す、素晴らしい!」
思わず感嘆の声を漏らした。
何度も見ているはずなのに、この感動はちょっと来るものがあるな・・。
「ほれ、例の奴も見てくれ」
感動で固まっていると、ダンクさんに背中を叩かれる。
「え?ああ、そうでした」
言われて、浴室壁の方を確認する。
壁側には、ダンクさん渾身の蛇口が並んだ、洗い場がある。
それぞれの蛇口の前には、小さな木製の椅子と手桶が置いてある。
そして・・。
「あれが完成形ですか?!」
蛇口の上の方には、追加でお願いした例のものが設置されていた。
蛇口の途中から生えた、ホースの先に、無数の小さな穴が開いた持ち手のような物・・・。
「出してみていいですか?あ、でも上にお湯溜めてないか」
「だいじょうぶだ、試験用に水は溜めてある」
「そうですか!ありがとうございます!」
俺はダンクさんにお礼を言って、蛇口のハンドルを操作した。
『シャーー!』
すると、見事に無数の小さな穴から水が噴き出した。
そう、俺が追加でお願いしていたのは、シャワーだったのだ。
「凄いです!これはどうやって作ったんですか?」
俺はホースの部分を、クネクネ折り曲げながら聞いた。
「おう、そこか!坊主に言われた感じの管は、さすがに普通じゃ作れないんでな、ためしに魔獣の腸で作ってみたらうまくいった!」
「なるほど!」
これが、魔獣の腸ねえ・・・すげえな。
「よし、浴室も完璧ですね!」
「「あたりまえだ!」」
「じゃあ、女湯も一応確認してから、2階のお休み処を確認しますか!」
「「おう!」」
0
お気に入りに追加
194
あなたにおすすめの小説
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
家族全員異世界へ転移したが、その世界で父(魔王)母(勇者)だった…らしい~妹は聖女クラスの魔力持ち!?俺はどうなんですかね?遠い目~
厘/りん
ファンタジー
ある休日、家族でお昼ご飯を食べていたらいきなり異世界へ転移した。俺(長男)カケルは日本と全く違う異世界に動揺していたが、父と母の様子がおかしかった。なぜか、やけに落ち着いている。問い詰めると、もともと父は異世界人だった(らしい)。信じられない!
☆第4回次世代ファンタジーカップ
142位でした。ありがとう御座いました。
★Nolaノベルさん•なろうさんに編集して掲載中。
異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。
星の国のマジシャン
ファンタジー
引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。
そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。
本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。
この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!
間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜
舞桜
ファンタジー
初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎
って、何故こんなにハイテンションかと言うとただ今絶賛大パニック中だからです!
何故こうなった…
突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、
手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、
だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎
転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?
そして死亡する原因には不可解な点が…
様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、
目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“
そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪
*神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのかのんびりできるといいね!(希望的観測っw)
*投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい
*この作品は“小説家になろう“にも掲載しています
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?
N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、
生まれる世界が間違っていたって⁇
自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈
嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!!
そう意気込んで転生したものの、気がついたら………
大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い!
そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!!
ーーーーーーーーーーーーーー
※誤字・脱字多いかもしれません💦
(教えて頂けたらめっちゃ助かります…)
※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません
異世界で魔法使いとなった俺はネットでお買い物して世界を救う
馬宿
ファンタジー
30歳働き盛り、独身、そろそろ身を固めたいものだが相手もいない
そんな俺が電車の中で疲れすぎて死んじゃった!?
そしてらとある世界の守護者になる為に第2の人生を歩まなくてはいけなくなった!?
農家育ちの素人童貞の俺が世界を守る為に選ばれた!?
10個も願いがかなえられるらしい!
だったら異世界でもネットサーフィンして、お買い物して、農業やって、のんびり暮らしたいものだ
異世界なら何でもありでしょ?
ならのんびり生きたいな
小説家になろう!にも掲載しています
何分、書きなれていないので、ご指摘あれば是非ご意見お願いいたします
クラス転移で神様に?
空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。
異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。
そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。
異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。
龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。
現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる