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21.依頼

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「実はですね・・」

ハーブティーに、砂糖を何杯も入れて飲んでいたドリンさんが、カップをテーブルに置いて話し始めた。

「実はですね、見ての通り私の体型がこうじゃないですか」

そう言って、右の手のひらで自分の体を指し示す。

「はあ・・?」

「ですから最近、膝が痛くてですね、たまらんのですよ」

膝をさすりながら、顔をしかめる。

「そうなんですか?」

「ええ、おまけにエールを飲むのが三度の飯より好きときている」

「はあ・・?」

「で、このお腹ですよ」

今度は前に突き出たお腹をさすっている。

ん~・・それって、痛風じゃね?

「たぶん、余計に膝に負担がかかっていると思うんですよ」

分かってるんなら、節制すれば・・・。

「それで、聞くところによると、『ふろ』というのが関節の痛みにとても利くと言うじゃありませんか?」

出どころは村長か?

味方だと思っていたのに・・。

それとも、意外と抜けている(ボケているとは言ってません)ところがあるから、うっかり口を滑らせたのかも。

「その『ふろ』を作ったのが、回復魔法の達人のマモルさんだというのを聞いてですね」

やっぱり、そういうことですか。

「風呂にに入りたいと?」

「ええ!というか、是非とも我が家にも『ふろ』を作って頂けないかと」

「なるほど」

なんか面倒なことになってきたぞ。

「風呂を作ると言っても、難しいことは何も無いんです。お湯が溜められて、人がその中に入れさえすれば」

「そんなものでいいんですか?」

「ええ、でも大量のお湯が必要になるんですけど、それを毎回用意することはできますか?」

「大量のお湯・・・お湯はカマドで沸かせばできますが、大量のとなりますと一々井戸から汲むにしても簡単には・・」

「ですよね・・」

この世界に水道は無い。

毎朝、井戸から汲んできて水がめに溜めて、飲料水や料理、生活用水に使っている。

水汲みはやっぱり重労働で、水は貴重なのだ。

それに、井戸は共同だから、勝手に大量に使うことも良くない。

もしも井戸が枯れてしまったら、死活問題だ。

やっぱりこういう流れになるんだよな・・しかたない。

「じゃあ、わかりました。お湯は私が溜めてあげます」

「よろしいので?」

「ええ、水魔法でなんとかなりますから」

「水魔法で?でもそんなに大量の水を、大丈夫なんですか?普通せいぜい手桶に一杯くらいですよね?」

「え?」

そうなの?

水魔法って、そんなにショボいものなの?

「では、その水を沸かせばいいのですね。でも時間が・・」


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