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第3章 子猫の飼い主さん

第6話  旅立ちのご挨拶

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 女性たちは、明日からの休みについて話していた。

ラファエルは外の景色を見て、一軒の立派な宝石店を目した。
見習いでもいいから、本当の質のよい宝石を見たいなぁ。
しかし、家の者に相談することは無理だ。
誰も頼れる者もいない、当たって砕けろで店に直接に頼みに行ってみよう。

「ラル!着いたわよ!!」と、次女シモーヌはボーッと考えていたラファエルに声をかける。

「あ、すみません。姉上!」

返事をすると、居間に行って母に挨拶する。
ラファエルだけが、1人自室に向かった。

ノマイユ侯爵令嬢だけが、ラファエルの後ろ姿をじっと見続けていた。
 
「伯爵令嬢と、ザィールに年末に旅行に行くのですか。
素敵な方との、出会いがあると宜しいですね」

母アリシアは、わざわざ知らせに来てくれた侯爵令嬢に好意を持ち始めていた。

「はい、両親も賛成してくれました。
思いきって話し合って良かったです。
あんなにも、私の結婚について心配をかけていたなんて!」

「伯爵令嬢は、ご婚約者と、御一緒に行くのですね。
それは楽しい旅行になりますわね」

次女シモーヌは、侯爵令嬢の友人の伯爵令嬢に話をふった。

「ええ、初めての外国ですのでワクワクしますわ。
クロエ様とは領地が隣で、お互いに泊まりあっていましたの。
まさか、お相手探しを頼まれるなんて」

ロベール伯爵の姉妹は、話を聞きホッとした。
弟に言われた通りに、学園卒業後は結婚して奥様と呼ばれるのだ。
いつまでも人がいいばかりでは、確かにいけないと反省していたのだ。

「でも驚きましたわ。
噂では聞いておりましたが、弟君は優秀でとても美男子ですね。
無口なお方のようですが?」

伯爵令嬢の話を2人の姉たちは、吹き出し笑いだした。

「フフフ、弟は無口ではありませんことよ。
女性に囲まれて、慣れずに緊張したんですわ」

長女エミリーは、嘘を言って言い訳をした。

「ロベール伯爵令息に、お二人から御礼を伝えて下さい。
一歩踏み出す勇気を頂きました。
あのままでしたら、私は第2王子の妃になるところでした」

クロエは帰ってから独りでよく考えて、この答えを導き出した。

「クロエ様は王子の思い人のあの令嬢から、言われなき誹謗中傷ひぼうちゅうしょうを受けてましたのよ」

伯爵令嬢の暴露話に、ロベール伯爵家の女性達は驚きの声をあげそうになる。

「水をかけられている、あの令嬢ですよね。
私たちも、1度犯人扱いされましたのよ。
金髪の女性にされたと怒ってましたわ」

「あの時は弟のラファエルが、わざわざ許可を先生から貰って中等部から助けに来てくれましたのよ。
あの子は、私たちが小さい頃から助けてくれました。
私たちが素敵な婚約者に巡り会えたのも、弟のお陰と言ってもいいですわね」

ロベール伯爵の姉妹は、弟ラファエルに感謝しきれない様子で令嬢たちに話すのである。

「あの令嬢はなにかと言うと、金髪の人がしたと言います」

伯爵令嬢は、ノマイユ侯爵令嬢の髪を見て言う。

「侯爵令嬢はしてないんですよね?」

母アリシアは、侯爵令嬢の金髪の髪を見ていた。

「はい、ですが殿下も私を疑っておりますの。
1度殿下自ら、虐めをやめてくれと言われて驚きましたわ。
殿下は、彼女以外は信じてない様子でした」

クロエは思い出したのか、暗い表情を一瞬する。

「恋は盲目と申します。
だがそれは、いつかは人として駄目になりますわ。
まだ若いから許されますが、第2王子の立場を考えて行動して欲しいですわね。
私のような中流貴族の妻では、何を言っても無駄ですが」

ロベール伯爵夫人は、王族たちを思い苦言した。
ここにいる令嬢たちは、伯爵夫人の話に深く賛同していた。

「ザィールから戻りましたら、またお話を聞いて頂けますか?
ロベール伯爵家の方に、ご報告したいのです。
その身内には正直に話しづらい事も、何故か話せそうなのですわ。
御迷惑だと思いますが、相談にのって下さいませ!」

ノマイユ侯爵令嬢は、赤い顔をして恥ずかしげにお願いしてくる。
ロベール伯爵家の女性たちは、そんな侯爵令嬢を可愛らしく思うのであった。

「ええ、お待ちしてますよ。
旅行では、淑女らしくね。
殿方には悪い方もおりますから、お気をつけて下さい。
ごめんなさいね。口やかましくて、ホホホ」

伯爵夫人が優しく話しかけると、二人の令嬢たちはハイと返事を返した。

 メイドと一緒に末っ子セドリックが、子猫だったアジュールをつれてきた。

「こんにちは、セドリック様。
お邪魔してますわ。
アジュールも元気そうですわねぇ!」

「こんにちは、お姉様たち。
いらっしゃいませ!
お兄様が、お姉様にアジュールを見せてあげてと頼まれました。
あ、言っちゃった。
内緒だったんだ、エヘへ」

末っ子セドリックは、嘘をつけない純真な少年だったのだ。

「これがクロエ様が言われていた猫ちゃんなのね。
母は動物が苦手で、飼えなかったの。
凄く可愛らしい、猫ちゃんですわ!」

侯爵令嬢の友人が、アジュールを見て頭を撫でて言ってくる。

「ロベール伯爵令息は、お優しい方ですね。
わざわざ、アジュールを見せるようにしてくれるなんて!」

侯爵令嬢は、胸がドキドキしてきた。
もしかしたら、私はラファエル様に好意を持ってるの?!

でも、ラファエル様は私より2つ年下だわ。
彼は私を何とも思ってないみたいだし、嫌われている気がする。

あきらめて頑張って探しに行かなくては、ザィールに未来の旦那様がいるはずだわ。
クロエは自分自身に言い聞かせた。

ロベール伯爵家の訪問から、3日後に彼女は友達とザィールに向かう。
世間知らずの箱入り娘には、この時は刺激的な世界が待っていようとは想像できなかった。
    
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