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第3章 子猫の飼い主さん

第5話  お人好しのロベール姉妹

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 侯爵令嬢クロエは、ラファエルの出ていった方を見ながら動揺して話し出した。

「どうしましょう。
あんなに、怒らせてしまいましたわ。
私ったら、ご子息に失礼な事を申してしまいました」

ノマイユ侯爵令嬢は、下を向くとまた泣き出した。
必死に3人でなだめて、困り果てた時だった。

  ちょうど、父モーリスが帰って来たのだ。
居間の不穏な空気の中で話を一緒に聞くと、父は息を1度深く吐いた。

「息子のラファエルが、大変失礼を致しました。
女性を怒鳴って泣かせるとは、あとで厳しくしかります。ノマイユ侯爵令嬢、どうか愚息ぐそくをお許しください!」

ロベール伯爵が、令嬢にわびびるとクロエが伯爵に相談をしてくる。

「ロベール伯爵様。
やはり、私は第2王子に嫁ぐのが1番いいのでしょうか?!
父も周りの方々も喜びます。
もれなく側室も付いてきますが…」

ロベール家族はどう返事をするか、しばらくは悩んでしまう。

「父親というのは、娘に弱いのです。
ご令嬢が幸せなら、よほど変な方ではないなら納得します。
逃げないで、話し合った方がいい」

父は側にいる娘たちを含めて、自分の思いを伝えた。

「ええ、それは母親も同じですわ。
ノマイユ侯爵令嬢、帰って自分の気持ちをお伝え下さいませ。
まだ成人されたばかり、焦らないで自分を見つめて下さいな」

母アリシアも、優しく諭す言葉をかける。

「あっ、有り難うございます。
こんな優しい方々がいるなんて!私もこの家の娘になりたいですわ。
そうすれば、皆さんと家族になれますのに!」

何気に凄い内容を話し出す。
聞いていたロベール伯爵家の人たちは、まさかラファエルとは考えてないわよねと想像してしまった。

またしても嵐のような侯爵令嬢は、笑って泣きながら伯爵の屋敷から自宅に戻って行くのだった。


  その晩の夕食は、父が息子にご令嬢との付き合い方の苦言から始まった。

「父上の話はわかりますが、私は間違ってません。
誰かがハッキリ言わなくては、あの令嬢は気づきませんよ。
姉上たちも人が良すぎます。
人の幸せを考えるのは、良いことで素晴らしいです。
けれども、自分たち自身を見つめ直して下さい!」

ラファエルは、またしても正論を言って言い返すのである。
口では悔しいが、いつも勝てない家族一同。

食事が不味く感じる、どうして他人のせいで家族と気まずくなるのよ。
アジュールは可愛くて飼えて良かったけど、元飼い主が問題よ。
あれだけ厳しく言えば、もう寄って来ないでしょう。

食事が終わったら、宝石の事を詳しく書いた本でも読んで心を落ち着けよう。
うふっ、キラキラ輝く色とりどりの宝石たちはどんなモノよりも美しいわ。
私は伯爵家なんて、どうでもいいのよ。

伯爵には弟のセドリックがいるし、外国語も学んでるからいろいろな国で素敵な宝石に出会うのが夢。
学園を卒業したら、自由に飛び回るの。
た・の・し・み・よー!!
ラファエルは、家族の会話より自分の世界に酔いしれていた。

 
  一年の終わりに近づき学園は冬休みに入る。
ラファエルの成績は、学年2番になって安心した。
これでゆっくり休めると、最後に花壇を見てから帰ることにした。
ラファエルは花壇を見て、何処に薔薇を植えてどんな花を回りに植えるか考えていた。
全部少しずつ色を変えて薔薇だけでもいいかもね。
咲く時期を春夏、秋冬に分けたりもいいわね。

そろそろ馬車の場所に行かなくては、あれから侯爵令嬢は家に来ないし平和だわ。
学年も違うから接点ないし、ちょっとは言い過ぎたかしらと反省したけどね。

「姉上たち、お待たせしました!」

ん、何で4人も居るのよ!
きっと、馬車待ちで一緒になったのだろう。

「ラル!今日は馬車の中が狭くなるけど、悪いけど我慢してね?」

長女エミリーは、ラファエルの想像と違う言葉をかけた。
またなの、それも侯爵令嬢の他にも1人増えてるじゃないの!

彼女は、私に軽くカーテシーをしてくれた。
茶の入った波立つ長い金髪に、薄茶の瞳を持った人は、少し勝ち気な印象をラファエルは感じた。

仕方ないとラファエルは、彼女に無言で軽くお辞儀を返す。

お姉様たち、またまたお節介とお人好しの性格が出たの。
あれほど注意したのに、もう私は知らないんだからー!!

ラファエルはムッとして、何も言わずに先に馬車に乗り込んだ。
馬車は、ロベール伯爵邸へ静かに走り出した。
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