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第6章  黒い森の戦い

第3話 武士の情け

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 長年人の足を踏み入れてない森の中、前を歩きながら敵の気配けはいに注意を払う。
役割を決めて、それぞれ違う方向に神経をましていた。
祖父グレゴリーの見ていた方角から、敵らしい殺気さっきがしてきた。

しいたげられた者のうらみを、らす時!」

声を張り上げて戦の神にいどむ、勇者たちではなく馬鹿者たち。

祖父は悠然ゆうぜんと力強く剣で、相手の剣をね飛ばす。
私も相手1人に素早く近づくと、剣をかわすとお得意の肩の間接外かんせつはずしをする。

ニルスは倒れた者たちを、れた手つきでお縄にするのだった。

「お前たち、どんな世でもいじめや差別がある!
祖先のせいにして、恨み言を言うとは情けなくないか?
男として、お主らは女々めめしくないか?」

腰にてを当てて、剣を相手に指し示して諭す。

『お祖父様ったら、もういいことをおっしゃいますわ。
私も家族から虐めと言うか、無視されましたけど。
こんなにも良い子に育ってたわ』

自画自賛をどうして、ここまで言えるのだろうか。
口に出していないのだけは、空気を読んだからだ。

「マーシャルは、陛下の臣下だ。
お前たちも、陛下の臣下でもある」

幼い少年の言葉に、愕然がくぜんとしたのであろう。

捕まった3人は、縄にくくられた姿で下を向き項垂うなだれる。

「お前たちは、マーシャルの部下だ。
さからうことは、出来なかったのではないか?
何もせずに、投降とうこうした事にしてやろう。
罪は軽くなる、どうじゃな?!」

『親父様得意の人情パターン!
これでほぼ皆、子分にがるんだよ』

ニルスは縄を持ち黙って、グレゴリーの説得話を聞いていた。

「いいんですか?
助けてくれるんですか?
こんなことをした。
俺たちをー~!」

「まだ若いんじゃないか?
やり直せ、わしを親父と思っても良いぞ!
息子とは、親に心配かけて大きくなるもんだぞ!」

「お、親父!親父様~~!!」

何これ、アッサリとお祖父様を親父様扱いとは?!
これが、お祖父様の子分製造マニュアルですの?
スゴすぎますわ!
クラレンス領に一軍の軍隊の兵士たちがいるのが、今やっと分かりましたわ。

『理由はこれなんですね』

尊敬の眼差まなざしで、祖父を見る孫娘。

また舎弟しゃていが増えて、面倒を見る羽目はめになるニルス。

「では、親として子に命ずる!
マーシャルの所へ案内せい!
無駄な戦いは、早く終わらせるのじゃ。
仲間が互いにキズがつく前にのう。
分かるだろう?息子達よ」

「おっ、親父~!!うーぅ!」

泣きながら鼻水までだし、コチラですと案内を買って出ていた。
新規子分たちは、縄につながれたままである。
見方を安心させる為じゃあ、済まんのうと頭を下げるお祖父様。

祖父の演技力をキラキラお目めで見る、プリムローズ。

死んだ魚の目で見る、ニルス。

二人の両極端な態度を、天におわす神様はあきれて見てるかもしれない。

「これが、【武士のなさけ】だのう。
違った、騎士の情けじゃわい」

上機嫌な祖父、まさに自分より弱い者に与える恩情おんじょうだ。
あー、素敵ですこと!

私も、弱い者をあわれみ思いやる心を持たなくてはなりません。
お祖父様の孫ですものね!

横で独り言をブツクサ話す彼女を無視して歩くニルスは、お嬢にはそのような行いは無理ではと言いかけそうになり口を結んでいた。

  ルシアン王子が気絶きぜつから目を覚ますと、場所の荷台で何処どこかに運ばれている途中であった。

「ううっ、脇腹が痛い!
どうして、あんなに狂暴きょうぼうなのか!?
この馬車は、何処へ向かっておるのだぁー」

うるさいわよ。
だらしないわね!
あの小娘にやられて、男としてどうなの!?」

ブルネットの男のような短い髪に、紺色の瞳の目はつり上がった印象の女性であった。
ドレス姿を着ている、女性で合っているよな?

そんな目付きをしている男に、行く先を教えてあげるのであった。

「私たちはね、王宮に行くのよ。
あのくそ生意気なまいちな、あの小娘のせいでね!」

「私は、そんな場所には行きたくない。
とにかく、この縄を外して…」

外そうとして手首を、懸命に動かしている。

「あんた、顔がいいけど。
馬鹿でしょう!?
そんな事しても、手首を痛めるだけよ。
もうじき、食事の時間になるから待てば良いじゃない」

勉強は苦手だが、悪知恵わるぢえは働く令嬢であった。

「そ、そうだな。
私だって、そう思っていたところだったぞ!」

言い訳をする自分と年齢の近い男を見て、絶対に思ってなかったわよねと表情を顔に出していた。

 そうこうしていると、サンドラが話していた様に馬車は止まった。
近くの木の下には食事が運ばれいて、二人の縄は食べるために外されたのである。

「君にお願いがあるんだ!
私は彼女の居るところへ行きたいのだ!
どうか、力を貸して欲しい!」

サンドラは、もうどうでもよくなっていた。

「別に良いわよ。
どうして欲しいのよ」

ルシアンはサンドラがお花摘はなつみに行きたいが、怖いのでルシアンに付き添いを頼みたい。
そう見張りの兵士に、頼んでくれないかと相談してきた。

「そ、そんな恥ずかしいことを…。
この私に言えと言うの!?」

真っ赤になり彼女は、彼を怒鳴り散らした。

「頼むよ~!
君、良いって返事したよね」

「え~、もう分かったわよ!」

近くの兵士に赤い顔になりボソボソと耳打ちをすると、兵士も釣られて顔を赤くした。

二人は兵士たちが辛うじて見えそうで見えないぐらいの離れた場所に行くと、ルシアンは彼女に礼を言って繋がれた馬を目指して駆け出した。

兵士たちは令嬢が恥ずかしがっている気持ちが分かるので、あえてそっぽを向いていたのがあだになる。
彼は馬に飛び乗ると、兵士が気づかないうちにプリムローズの居る黒い森を目指す。

プリムローズの前に見た予知夢よちむは、まさに正夢になりそうな予感がしていた。

    
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