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第5章 常勝王の道
第18話 蝶よ花よ
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一人の兵士が、スクード将軍の元へ急ぎ報告に現れた。
「スクード将軍!
我々の方は、ほぼ制圧しました。
陛下のお側近くには、へーディン侯爵と王の軍しかおりません」
「お前の言うとおり、戦い慣れはしておらぬな。
ここは副官である、君に頼むとしよう!」
副官である男は、頭を下げると上司であるスクード将軍を見送った。
左翼を任されたチューダー将軍も、敵兵たちとそれを指示する指揮官を捕らえていた。
「スクード将軍が、陛下の元へ向かうそうだ。
森から出て戦っているマーシャルの軍は、戦の神クラレンス公爵でありハーヴモーネ侯が相手しておる」
面倒くさい言い回しに統一して欲しいと、チョーダーは胸中で愚痴る。
「将軍、失礼ながら申し上げます。
戦の神は他国の方です。
マーシャルは北の将軍である閣下が、捕らえた方が宜しいのではないでしょうか?!」
副官の進言に、彼は耳を傾けた。
「ウ~ムっ!
言われてみれば、君の言うとおりだ!
私がこの手で、裏切り者マーシャルを捕らえに行くぞ!
残党がおるかも知れぬから、けして気を抜くなよ!」
「畏まいりました!
チューダー将軍ー!!」
自分の意見が上官に通じて、嬉しさに明るい顔をしていた。
そんなやり取りは聞こえない場所で、プリムローズは双眼鏡で両軍の動向を探っていた。
「クラレンス公爵令嬢。
私たちは何もせずに座っていて、いいのですか?」
折り畳み椅子に座り、物騒な怒鳴り声や悲鳴を聞き不安げにルシアンが話しかける。
「チッ、いいところなのに!
お荷物の癖に、貴方は煩いわね。
お祖父様の勇姿を、この目と心に刻み込んでいるんだから!
あーっ、お祖父様の剣さばき最高ですわ。
ステキー、きゃあ~!
もう、鼻血でそう。
素敵すぎますわぁ~!!」
彼は彼女の言葉を聞くと目を凝らして見れば、クラレンス公爵は馬に乗りながら剣を振るとバタバタ投げ倒すように兵士たちが倒れている。
今まで見たこともない興奮状態の彼女の姿に、剣術が強い人が好みなんだと思い知らされた。
戦の神と比べられても、絶対に無理だとガッカリと肩を落とす。
興奮さめず双眼鏡を外して、彼女は後ろを振り向く。
キナ臭い事を、殿下と近くに控えるニルスに言う。
「もうじき、王弟の遺児と勘違いして殿下を狙いに来るわ。
あと、サンドラを救いにね。
この場所が、戦場になるのよ」
少し普通は狼狽えて話すのではないかと、二人は同時に思っていた。
そして、近くにいた子分にこう命じる。
「サンドラを、ここに連れてきて!
苦労してここまで連れて来たからには、あの女に少しは役立ってもらわないとね。
フフフッ、オーホホホ!」
意地悪く歪み口元と、冷たく光る紫の瞳が怪しく輝く。
お決まりの高笑いは、不気味で何をしでかすか。
周辺は、プリムローズの次の行動を不安がる。
「ちょっと、痛いわね!
この私を、誰だと思っているのよ!
サンドラ・ヴィエント侯爵令嬢なの。
お父様は西の将軍よ。
アンタたち分かっているの?」
怒鳴り声を出しながら、近づく薄汚れたドレスを着た娘が前に現れる。
「相変わらず、キーキーと喧しい!
貴女を助けに、誰か来るみたいよ」
両耳を塞ぎながらプリムローズは、騒ぐサンドラにイヤイヤ話しかける。
「礼儀知らずの生意気な小娘!
ドレスの新しい着替えと、湯浴みの支度をしなさい。
食べ物も、人が食べられるものを用意しなさい」
プリムローズがその言葉に怒り、隠し持っていたムチをサンドラの足元近くに叩きつけた。
「ビシッー、バチーン!!!」
「ひーぃい~、何するのよ!
この野蛮人」
「はぁ~、舐めたことを口に出すんじゃないわよ。
飯を食わせてやるだけ、土下座して感謝しろ!
早く泣き叫んで、助けを求めて呼びなさい!!」
ムチを叩きつけられ脅されて、絶叫する令嬢の声は辺り一面に響き渡る。
「これが…?
貴族の公爵令嬢がすることか?
今まで、そんな事をする女性を見たことがない…」
お茶会では、一度は垣間見た。
実際の迫力に、ルシアンは自分もムチで脅される気分になった。
「まだ挨拶程度です。
ルシアン殿下、これから酷くなります。
お嬢は、ギルとメリーを心配しております。
とっとと早く捜索したいので、一気に仕掛けると思いますよ」
ニルスはピーちゃんを呼び何やら指示するのを見て、殿下に今後の事態と覚悟するようにお願いした。
「仕掛けるって、戦いは参加せずに傍観する構えではないのか?
話が当初とは、まるっきり違うでないか」
状況がコロコロ変わるのを、不安と恐怖でおかしくなりかかる殿下。
「今いる場所はど真ん中にある小高い小さな丘。
敵や味方からも分かりやすい。
目立つこと、この上ないわ。
さぁーさぁー!
泣け喚け、叫べー!
オーホホホ、ビシッ!!」
サンドラに当たらない絶妙な距離、神業並みにムチを力強く打ち込んだ。
幼い頃に毎日1000回も打ち込んでいただけあり、素晴らしいムチの使い方である。
「お嬢のムチを捌きを久々に拝んだ。
流石だな~、衰えていない!」
「惚ぼれするな!
いい、いいよー!」
「一度、軽く叩かれてみたいな!
痛くてもいいから、へへへッ」
「お父様ー、サンドラは此処です!
お願い、早く助けて~!
お父様、お父様~~!!」
キモいことを言う子分らもいる中、父を呼び必死に助けを求める。
「どうせ、貴女は!
【蝶よ花よ】って、両親から育てられたんでしょう?
まさかだと思うけど、見捨てられたりしないわよね?
これだけ泣き叫んで、誰一人来ない。
ああ、興ざめだわ!」
サンドラに向かって聞くと、彼女は前を向き目から大粒の涙を流して叫んだ。
「おっ!お父様~~!!!」
「えっ、お父様って西の将軍!
自分で自ら、娘を取り返しに来たというの!?」
銀の甲冑が近づく度に、派手にキラキラと輝いて見映えはいい。
『あれが、エドアルド・ヴェント侯爵か?!』
鞭の手を止めて、格好良く参上するのを眺めていた。
「お嬢、後ろにも10名くらい付いて来てますね。
あれ、どうします?」
ニルスは全身の緊張と強張る顔をして、この部隊を取りまとめる彼女に指示を仰ぐ。
段々と紫の瞳が変化すると、娘に向かい駆けつける将軍を睨んで何かを考えているようだった。
「スクード将軍!
我々の方は、ほぼ制圧しました。
陛下のお側近くには、へーディン侯爵と王の軍しかおりません」
「お前の言うとおり、戦い慣れはしておらぬな。
ここは副官である、君に頼むとしよう!」
副官である男は、頭を下げると上司であるスクード将軍を見送った。
左翼を任されたチューダー将軍も、敵兵たちとそれを指示する指揮官を捕らえていた。
「スクード将軍が、陛下の元へ向かうそうだ。
森から出て戦っているマーシャルの軍は、戦の神クラレンス公爵でありハーヴモーネ侯が相手しておる」
面倒くさい言い回しに統一して欲しいと、チョーダーは胸中で愚痴る。
「将軍、失礼ながら申し上げます。
戦の神は他国の方です。
マーシャルは北の将軍である閣下が、捕らえた方が宜しいのではないでしょうか?!」
副官の進言に、彼は耳を傾けた。
「ウ~ムっ!
言われてみれば、君の言うとおりだ!
私がこの手で、裏切り者マーシャルを捕らえに行くぞ!
残党がおるかも知れぬから、けして気を抜くなよ!」
「畏まいりました!
チューダー将軍ー!!」
自分の意見が上官に通じて、嬉しさに明るい顔をしていた。
そんなやり取りは聞こえない場所で、プリムローズは双眼鏡で両軍の動向を探っていた。
「クラレンス公爵令嬢。
私たちは何もせずに座っていて、いいのですか?」
折り畳み椅子に座り、物騒な怒鳴り声や悲鳴を聞き不安げにルシアンが話しかける。
「チッ、いいところなのに!
お荷物の癖に、貴方は煩いわね。
お祖父様の勇姿を、この目と心に刻み込んでいるんだから!
あーっ、お祖父様の剣さばき最高ですわ。
ステキー、きゃあ~!
もう、鼻血でそう。
素敵すぎますわぁ~!!」
彼は彼女の言葉を聞くと目を凝らして見れば、クラレンス公爵は馬に乗りながら剣を振るとバタバタ投げ倒すように兵士たちが倒れている。
今まで見たこともない興奮状態の彼女の姿に、剣術が強い人が好みなんだと思い知らされた。
戦の神と比べられても、絶対に無理だとガッカリと肩を落とす。
興奮さめず双眼鏡を外して、彼女は後ろを振り向く。
キナ臭い事を、殿下と近くに控えるニルスに言う。
「もうじき、王弟の遺児と勘違いして殿下を狙いに来るわ。
あと、サンドラを救いにね。
この場所が、戦場になるのよ」
少し普通は狼狽えて話すのではないかと、二人は同時に思っていた。
そして、近くにいた子分にこう命じる。
「サンドラを、ここに連れてきて!
苦労してここまで連れて来たからには、あの女に少しは役立ってもらわないとね。
フフフッ、オーホホホ!」
意地悪く歪み口元と、冷たく光る紫の瞳が怪しく輝く。
お決まりの高笑いは、不気味で何をしでかすか。
周辺は、プリムローズの次の行動を不安がる。
「ちょっと、痛いわね!
この私を、誰だと思っているのよ!
サンドラ・ヴィエント侯爵令嬢なの。
お父様は西の将軍よ。
アンタたち分かっているの?」
怒鳴り声を出しながら、近づく薄汚れたドレスを着た娘が前に現れる。
「相変わらず、キーキーと喧しい!
貴女を助けに、誰か来るみたいよ」
両耳を塞ぎながらプリムローズは、騒ぐサンドラにイヤイヤ話しかける。
「礼儀知らずの生意気な小娘!
ドレスの新しい着替えと、湯浴みの支度をしなさい。
食べ物も、人が食べられるものを用意しなさい」
プリムローズがその言葉に怒り、隠し持っていたムチをサンドラの足元近くに叩きつけた。
「ビシッー、バチーン!!!」
「ひーぃい~、何するのよ!
この野蛮人」
「はぁ~、舐めたことを口に出すんじゃないわよ。
飯を食わせてやるだけ、土下座して感謝しろ!
早く泣き叫んで、助けを求めて呼びなさい!!」
ムチを叩きつけられ脅されて、絶叫する令嬢の声は辺り一面に響き渡る。
「これが…?
貴族の公爵令嬢がすることか?
今まで、そんな事をする女性を見たことがない…」
お茶会では、一度は垣間見た。
実際の迫力に、ルシアンは自分もムチで脅される気分になった。
「まだ挨拶程度です。
ルシアン殿下、これから酷くなります。
お嬢は、ギルとメリーを心配しております。
とっとと早く捜索したいので、一気に仕掛けると思いますよ」
ニルスはピーちゃんを呼び何やら指示するのを見て、殿下に今後の事態と覚悟するようにお願いした。
「仕掛けるって、戦いは参加せずに傍観する構えではないのか?
話が当初とは、まるっきり違うでないか」
状況がコロコロ変わるのを、不安と恐怖でおかしくなりかかる殿下。
「今いる場所はど真ん中にある小高い小さな丘。
敵や味方からも分かりやすい。
目立つこと、この上ないわ。
さぁーさぁー!
泣け喚け、叫べー!
オーホホホ、ビシッ!!」
サンドラに当たらない絶妙な距離、神業並みにムチを力強く打ち込んだ。
幼い頃に毎日1000回も打ち込んでいただけあり、素晴らしいムチの使い方である。
「お嬢のムチを捌きを久々に拝んだ。
流石だな~、衰えていない!」
「惚ぼれするな!
いい、いいよー!」
「一度、軽く叩かれてみたいな!
痛くてもいいから、へへへッ」
「お父様ー、サンドラは此処です!
お願い、早く助けて~!
お父様、お父様~~!!」
キモいことを言う子分らもいる中、父を呼び必死に助けを求める。
「どうせ、貴女は!
【蝶よ花よ】って、両親から育てられたんでしょう?
まさかだと思うけど、見捨てられたりしないわよね?
これだけ泣き叫んで、誰一人来ない。
ああ、興ざめだわ!」
サンドラに向かって聞くと、彼女は前を向き目から大粒の涙を流して叫んだ。
「おっ!お父様~~!!!」
「えっ、お父様って西の将軍!
自分で自ら、娘を取り返しに来たというの!?」
銀の甲冑が近づく度に、派手にキラキラと輝いて見映えはいい。
『あれが、エドアルド・ヴェント侯爵か?!』
鞭の手を止めて、格好良く参上するのを眺めていた。
「お嬢、後ろにも10名くらい付いて来てますね。
あれ、どうします?」
ニルスは全身の緊張と強張る顔をして、この部隊を取りまとめる彼女に指示を仰ぐ。
段々と紫の瞳が変化すると、娘に向かい駆けつける将軍を睨んで何かを考えているようだった。
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