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第5章 常勝王の道
第10話 危ない事は怪我のうち
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一方こちらは、帰りたいのに帰れない状況になってしまった3人。
「ギル師匠~、道には出ましたが方向はあっていますか?」
「私もさっきから、気になっていた。
道は、逆の方向ではないか?」
メリーとルシアン共に彼を信じてはいるが、何やら怪しい気配になってきていた。
「いや、確かにこっちで大丈夫だ。
それよりも、日が落ちたから野宿だな。
2人の飯は、何があるんだ。
俺は、干し肉にチーズに、出掛けにパンを貰っていたぜ!ワインもな!」
道の方向よりも晩飯大事なギルは、彼女が引いてくれた敷物の上に自分の持っている食料を並べている。
「食べ物よりも火をおこさないと、木の枝を探しましょう」
ルシアンは男より女の方が、イザとなると冷静で頼もしいと知った。
「周りは木ばかりですから、ほらすぐに拾えますよ」
3人は小枝を拾い、真っ暗になる前に焚き火ができた。
「さぁ~、メシを食おうぜ!
メリーや殿下も、なかなかヤルな。
旨そうな食料を持ってきてるじゃん!」
食い時の張ったこの男を、二人は横目で見て食事を始める。
「私は、何かこの先に不安を感じます。
日持ちできそうな食料を、少しは残しておいたほうがいいです」
バカ食いをしている人に忠告する、メリー。
「彼女とは珍しく、同じ意見だ。
戻ってきたと確信するまで、食料は大切にしたほうが良い」
彼も慎重派なので、彼女とは同じであった。
この考えは、後日功を奏した。
プリムローズの作戦で動物狩りをしてはいけないとし、ラベンダーの匂い袋を持っていない者は危険人物扱い。
つまり、黒い森に入ったら獣たちから襲われる確率が高かったのだ。
食事している彼らは、このことを知らずにいる。
「しかし、パンととろけたチーズは美味いが肉は塩ぽくって不味いな」
「贅沢言うな!
王族は、そりゃ口が肥えているだろうけどよ」
「殿下、下々の平民は黒く硬いパンですよ。
野菜ばかりで肉は、やっと月に何回かお祝い事で食べられるぐらいです」
この意見は、ギルとメリーの意見が一致。
「そうか。
ワガママで済まなかった。
私は王宮の中ばかりで、外の世界は知らないからな」
焚き火を眺める瞳には、農民の暮らしを想像しているのか。
殿下の表情が、曇っているように二人は感じた。
「これも、いい経験じゃん。
殿下も冒険しましょうや。
かなり、危険な冒険になってしまいましたけどよ」
ギルは、殿下を元気づける様に肩を軽く叩いてみせた。
殿下は初めての肩を叩かれて驚いたが、不愉快ではなく不思議に嬉しさが込み上げる。
ここではエテルネルの王子ではなく、ただの人になっている。
「おぉ、そうだな。
冒険か!子供の頃、本を読んで憧れていたよ。
その願いが、いまこうしてかなっているのかもしれないな」
ルシアンは夜空の星を見て、彼女プリムローズもこの星をみているのかもと思っていた。
そんなセンチメンタルな王子の気持ちを知らない彼女は、全兵士が食事中の場所をまわっている。
「お前たち~~!!
もし、暗い森で敵かもと思ったら合言葉を言って確認するのよ!
合言葉はー、ヒンメル!!」
「「「 ピーちゃん! 」」」
兵士たちのドスの効いた声で、可愛い名前は夜空に轟き渡るのだ。
後ろに控える両将軍に、もう一人は威圧感ある只者でない人物は満足げ。
「参謀に推しただけあるわい。
合言葉か、なるほどよく考えた。
さすがは、我が孫だけある」
まだ11歳にしかなっていない少女は、腕を組んで全軍に指令を出していた。
「いいこと!
南と西の将軍をお縄にしたら、お前たちには褒美が出そう。
この私が、約束しますわよ!」
その場で簡単に許可なく決める彼女を、黙って存在感なしで後ろで聞いていた。
王から指名された、今現在の総大将は周りの圧に屈する。
「おー、参謀殿~!!
殺さずに、生け捕るぜ~!!」
気合い満点な、野郎どもの雄叫びであった。
早朝から夕暮れまで黒い森の中では、ニルス率いるグレゴリーの子分らが暴れている。
正確に説明すると、敵自らが作った罠の落とし穴に落ちた敵を引き揚げてお縄にする作業していた。
日が落ちる時間帯になり、仲間たちが彼に慌てて声をかける。
「おい、ニルス!
どうやら相手は、動物に毒の付いた矢を放っているようだぞ!」
一人の男が彼に矢を持ってきて、見せながら説明してきた。
彼は矢を見て、苦虫をかみつぶしたような顔をした。
「朝日が昇ると同時に捕虜たちと動物たちと、一緒に連れてグレゴリー様の元へ戻るぞ。
ヒンメルは、ケガした動物を探してくれ!
もし、動けなかったら兵の仲間に運ばせるんだ」
近くにいた雪ヒョウは、理解したのか彼の足を顔で撫でてくれた。
「みんな悪いが、動物たちを避難させる。
彼らは協力してくれている仲間なんだ。
傷ついたら、お嬢が悲しむからな」
「お嬢を泣かせるなー!
みんな、お嬢に笑顔をー」
「おー!俺たちの天使のために」
「いやっ、妖精だよな~」
「うるさいー!
【危ない事は怪我のうち】って言葉がある。
お嬢から、俺は全権を任されている。
ここは、一旦は後退だ!
わかったか!」
「「「「 へ~えぇー! 」」」」
本当に理解しているのか、ニルスは不安になるのである。
本格的に戦う前に、ケガしてはいけない。
用心に越したことはない、自分に戒めた。
ましてや、関係ない動物もいる。
ニルスは、今日は寝られない一晩になりそうだと月を見上げるのだった。
「ギル師匠~、道には出ましたが方向はあっていますか?」
「私もさっきから、気になっていた。
道は、逆の方向ではないか?」
メリーとルシアン共に彼を信じてはいるが、何やら怪しい気配になってきていた。
「いや、確かにこっちで大丈夫だ。
それよりも、日が落ちたから野宿だな。
2人の飯は、何があるんだ。
俺は、干し肉にチーズに、出掛けにパンを貰っていたぜ!ワインもな!」
道の方向よりも晩飯大事なギルは、彼女が引いてくれた敷物の上に自分の持っている食料を並べている。
「食べ物よりも火をおこさないと、木の枝を探しましょう」
ルシアンは男より女の方が、イザとなると冷静で頼もしいと知った。
「周りは木ばかりですから、ほらすぐに拾えますよ」
3人は小枝を拾い、真っ暗になる前に焚き火ができた。
「さぁ~、メシを食おうぜ!
メリーや殿下も、なかなかヤルな。
旨そうな食料を持ってきてるじゃん!」
食い時の張ったこの男を、二人は横目で見て食事を始める。
「私は、何かこの先に不安を感じます。
日持ちできそうな食料を、少しは残しておいたほうがいいです」
バカ食いをしている人に忠告する、メリー。
「彼女とは珍しく、同じ意見だ。
戻ってきたと確信するまで、食料は大切にしたほうが良い」
彼も慎重派なので、彼女とは同じであった。
この考えは、後日功を奏した。
プリムローズの作戦で動物狩りをしてはいけないとし、ラベンダーの匂い袋を持っていない者は危険人物扱い。
つまり、黒い森に入ったら獣たちから襲われる確率が高かったのだ。
食事している彼らは、このことを知らずにいる。
「しかし、パンととろけたチーズは美味いが肉は塩ぽくって不味いな」
「贅沢言うな!
王族は、そりゃ口が肥えているだろうけどよ」
「殿下、下々の平民は黒く硬いパンですよ。
野菜ばかりで肉は、やっと月に何回かお祝い事で食べられるぐらいです」
この意見は、ギルとメリーの意見が一致。
「そうか。
ワガママで済まなかった。
私は王宮の中ばかりで、外の世界は知らないからな」
焚き火を眺める瞳には、農民の暮らしを想像しているのか。
殿下の表情が、曇っているように二人は感じた。
「これも、いい経験じゃん。
殿下も冒険しましょうや。
かなり、危険な冒険になってしまいましたけどよ」
ギルは、殿下を元気づける様に肩を軽く叩いてみせた。
殿下は初めての肩を叩かれて驚いたが、不愉快ではなく不思議に嬉しさが込み上げる。
ここではエテルネルの王子ではなく、ただの人になっている。
「おぉ、そうだな。
冒険か!子供の頃、本を読んで憧れていたよ。
その願いが、いまこうしてかなっているのかもしれないな」
ルシアンは夜空の星を見て、彼女プリムローズもこの星をみているのかもと思っていた。
そんなセンチメンタルな王子の気持ちを知らない彼女は、全兵士が食事中の場所をまわっている。
「お前たち~~!!
もし、暗い森で敵かもと思ったら合言葉を言って確認するのよ!
合言葉はー、ヒンメル!!」
「「「 ピーちゃん! 」」」
兵士たちのドスの効いた声で、可愛い名前は夜空に轟き渡るのだ。
後ろに控える両将軍に、もう一人は威圧感ある只者でない人物は満足げ。
「参謀に推しただけあるわい。
合言葉か、なるほどよく考えた。
さすがは、我が孫だけある」
まだ11歳にしかなっていない少女は、腕を組んで全軍に指令を出していた。
「いいこと!
南と西の将軍をお縄にしたら、お前たちには褒美が出そう。
この私が、約束しますわよ!」
その場で簡単に許可なく決める彼女を、黙って存在感なしで後ろで聞いていた。
王から指名された、今現在の総大将は周りの圧に屈する。
「おー、参謀殿~!!
殺さずに、生け捕るぜ~!!」
気合い満点な、野郎どもの雄叫びであった。
早朝から夕暮れまで黒い森の中では、ニルス率いるグレゴリーの子分らが暴れている。
正確に説明すると、敵自らが作った罠の落とし穴に落ちた敵を引き揚げてお縄にする作業していた。
日が落ちる時間帯になり、仲間たちが彼に慌てて声をかける。
「おい、ニルス!
どうやら相手は、動物に毒の付いた矢を放っているようだぞ!」
一人の男が彼に矢を持ってきて、見せながら説明してきた。
彼は矢を見て、苦虫をかみつぶしたような顔をした。
「朝日が昇ると同時に捕虜たちと動物たちと、一緒に連れてグレゴリー様の元へ戻るぞ。
ヒンメルは、ケガした動物を探してくれ!
もし、動けなかったら兵の仲間に運ばせるんだ」
近くにいた雪ヒョウは、理解したのか彼の足を顔で撫でてくれた。
「みんな悪いが、動物たちを避難させる。
彼らは協力してくれている仲間なんだ。
傷ついたら、お嬢が悲しむからな」
「お嬢を泣かせるなー!
みんな、お嬢に笑顔をー」
「おー!俺たちの天使のために」
「いやっ、妖精だよな~」
「うるさいー!
【危ない事は怪我のうち】って言葉がある。
お嬢から、俺は全権を任されている。
ここは、一旦は後退だ!
わかったか!」
「「「「 へ~えぇー! 」」」」
本当に理解しているのか、ニルスは不安になるのである。
本格的に戦う前に、ケガしてはいけない。
用心に越したことはない、自分に戒めた。
ましてや、関係ない動物もいる。
ニルスは、今日は寝られない一晩になりそうだと月を見上げるのだった。
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