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第5章  常勝王の道

第5話 神機妙算

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 4人と一羽いちわは、陣幕じんまくを張った王のはたの下で作戦会議を始めていた。
風変ふうがわりな会議に周りで護衛する兵士たちは、この戦いは勝てるのか不安になってしまう。

しかし、将軍たちの顔には笑顔がえなかった。
なにせ、コチラに国王の後ろ楯がある。
あちらは叛逆はんぎゃくした賊軍ぞくぐんなのだ。

「お祖父様~、私良いことを思いつきました。
タルモ殿に頼んで、食べ物に毒でも盛りましょうよ。
入れたら、ただちにコチラに来てもらえば宜しいのでは?!」

なんと残酷で、卑怯ひきょう手口てぐちじゃ。
わしはこの子の育て方を間違えたかと、戦の神グレゴリーは悩んだ。

「……、プリムよ。
それは余りにも騎士としては、騎士道に反するのではないか?!」

「私が4歳の時に、お祖父様はおっしゃって言いました。
勝つのが全てだと、簡単に兵力を減らすことが可能です。
戦わずに勝てるのですよ!
それに、私は別に騎士ではなくってよ」

聞いていた両将軍は、二人の会話にどう返答すれば良いのか困っていた。

「ご令嬢の案は、作戦としては良策りょうさくである。
毒ではなく、せめて腹をくだす程度にしたらどうであろうか?」

「おぉ、それで良いではないか!
どうじゃな!両名の方々」

チューダー、スクード両将軍は話の落とし所を提案してくれ。

「えーーっ、う~ん……。
しょうがありませんね。
殺生せっしょう事はいけませんわね。
私ったら、戦なので○すしかないと極端きょくたんなそんな考えをしてしまったわ」

殺害しか思考にないと決めつけるとは、なんときもわったご令嬢だと両将軍は感心と同時に恐怖心をえつけられた。

「すまんのう、ここまで残虐非道ざんぎゃくひどう平然へいぜんと話すとは思わんでな。
まぁ、あれだ!
命かけた戦いだし、これぐらいでないと勝利できん」

この孫にして祖父あり、両将軍は無言で沈黙を通していた。

「ピーちゃん、お願いがまたまたあるの。
こき使われすぎて申し訳ないけど、タルモ殿に手紙とラベンダーの匂袋を渡して欲しいのよ。
ピーちゃんだけでは無理よね~」

やはり賢いのか理解すると、一声鳴く。
そして、羽ばたき天高く飛び立つ白鷹。

「あらっ、どうしましょう?
子に捨てられたのかしら?
反抗期、それとも親離れ?!」

どちらも違うであろうと、見ていた3人は思うのであった。

  
   5分位戦略の打ち合わせをしていたら、空に鳥らしき黒い軍団がコチラに向かってくる。
異様な光景に、兵士たちは動揺し騒がしくなっている。

「あー、あれはピーちゃんとその舎弟しゃていたちよ!
集団行動だと怖く見えてしまう」

プリムの方が恐ろしいと、孫娘なのに言えないグレゴリー。
動物を手のひらで転がす様に従わす様子に、魔女みたいな子だと思う両将軍と兵士たち。

「ピーぃ!ピッピッピー!」

羽をバタつかせ仲間を紹介している素振りのピーちゃんを見て、自己紹介を始めたママ。

「初めましてピーちゃんのママ、プリムローズです!
いつも家のピーちゃんがお世話になっています。
力をお貸してくれるようで、お礼申します。
ありがとうございます」

ペコリとすると、近くの兵士に干しブドウとか胡桃くるみや肉を持ってきてと指示する。

彼女の大声で、あたふたして用意する兵士たち。
祖父と将軍たちは、ボーッとただ見守るのであった。

兵士たちが敷物の上に置く、気づかないうちに水をいれた皿も沢山用意されていた。

「有難うございます。
まぁ、お水まで助かりますわ!」

かわいい少女が、笑顔で礼を言われれば悪い気はしない。

「いえいえー、ごゆっくり!」

とても、戦時とは思えぬなごやかさであった。

「食べながら聞いて下さい。
皆さんには物資を運んで貰います。
ラベンダーです!
良い香りでしょう?
これを持つものは味方です。
匂いのしない者は、それ以外は敵です!
何しても構いませんからね!」

「ぴぃ!」と、鳥たちは力強く返事していた。

コソコソ何やら指示する姿を、聞き耳立てて様子をうかが伺う大人たち。

「凄い特殊能力をお持ちで、戦の神と名高いお方のお孫さんだけありますな」

スクード公爵は、何気なくめ言葉を伝えるが逆効果となる。

「イヤッ、なんと言うか。
あれが将来どうなるのか。
今回、見ていて気になってきたわい!」

変わっているとは感じていたが、このままで嫁ぐ相手はいるのか不安になる祖父。

「【神機妙算しんきみょうさん】とは、このような場合に使う言葉ですな。
いやはやなんとも……」

「人間の知恵では考えつかない。
はかりごとですからのう」

チューダー、スクードの両将軍はプリムローズを見てそうしょした。

「神機は神が考えたような。妙算は、たくみな優れたはかりごとか…。
我が孫娘は、神機妙算をあみだす達人たつじんになるやもしれんな」

戦の神は自分が考えつかないさくを思いつく孫を、目を細めて見て独り言をつぶいていた。
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