73 / 142
第4章 光と闇が混ざる時
第13話 人の口に戸は立てられぬ
しおりを挟む
学園に通う馬車の中、茶髪のエリアスが心配そうに私に話す。
内容は、偽りの兄ブライアンの事だった。
「お嬢様、兄上さまを私の身代わりにして大丈夫なのですか?!」
平気も何も、私たちクラレンスが決めた事だ。
「エリアス、お兄様は剣も体術も貴方よりできます。
べつに構わないわよ。
そのぐらいで根をあげるこの先は何かあったら、とても生き残ってはいけないわ」
彼はエテルネルの国王になりたければ、この難局を乗りきってくれなければならない!
教室の薔薇組に入ると、何故だか令嬢たちがキラキラ輝いて見えました。
「………?!
ライラ様、おはようございます。
皆さま、何だか見掛けや瞳も輝いてますね。
何か良いことや、楽しい学園行事のご予定でもこざいますの?!」
プリムローズは、何時もより念入りの御令嬢たちの格好や髪型見て想像をした。
「プリムローズ様は興味なしですわね、きっと!
何でも亡き王弟殿下のご子息が生きていたと、王都中に噂が流れていますのよ」
ライラがプリムローズに説明していたら、別の場所から御令嬢たちの悲鳴にも似た声が聞こえだした。
「ああー、どんなお方なのかしら?!
今まで何処で、どんなお暮らしをされてましたのでしょう?」
「ご苦労なさったはずですわ!
お可哀想に…、私がお慰め致したいですことよ」
「それは、私もですわ。
絶対に、気品溢れる素敵なお方に違いありません」
『あれから、3日しか経ってなくてこれですの?!』
プリムローズは御令嬢たちの会話を聞き、祖父グレゴリーによる作戦を思い浮かべていた。
スクード公爵は、祖父からの手紙をへーディン侯爵にそのまま送り自分の意見も書き添える。
途中敵に手紙を盗まれないように、両家が取引している卸業者に秘密裏に郵送を依頼した。
それは偶然だったが、プリムローズが助けたタルモの知り合いの商会であった。
両家は、祖父グレゴリーの作戦に乗ることした。
祖父は子分たちに軍資金を渡すと、酒場で飲みながら話を吹聴するように仕向ける。
「プリムローズ様ったら、どうなさいましたか。
ボーッとなさって?
貴女も話題の方を、気になっていますの?!」
ライラはスクード公爵の嫡男オスモ様と婚約を結んでいるから、恋のお相手として興味はなかった。
「あ、ごめんなさいね。
クラスの御令嬢たちの会話が、あまりに凄い熱気であてられてしまったわ。
長い間、行方不明でしたみたいですね」
「大きな声では話せませんが…。
10年も行方知れずの方が、突然現れる…。
少しおかしくありませんか!?
不敬ですが、その方は本物なのでしょうか」
ライラは扇で隠すように、プリムローズの耳元で囁く。
普通の人なら、まずそう思いますよね。
「えーえー!ライラ様!
それは本当の話なの?!
10年もでしたの?!
それは、よくご無事で生きて戻られましたわね。
これはまさしく奇跡です!
神様に選ばれたお方としか思えません」
プリムローズはわざとらしく驚き、大きい声でライラに伝えると聞こえてしまった者たちが便乗するように騒ぎだしてきた。
「プリムローズ様の仰ることは、一理あります。
まさしく、奇跡のお方でございますわ」
彼女も噂を聞くと真っ先に感じた事を、目の前にいる彼女に言われてしまった。
プリムローズは帰りの馬車には乗らず、学園の外で待つメリーを乗せた馬車で祖父母の屋敷に向かった。
「メリー、待ったかしら?」
「いいえ、お嬢様。
どうぞ、早くお乗りくださいませ」
プリムローズは馬車に乗り込むと、タルモ殿が笑顔で迎えてくれた。
「これはこれは、プリムローズ様お久しぶりです。
またまた何やら、問題が発生したみたいですな」
「タルモ殿、今回も手助けして頂き感謝致します。
祖父母の願いで、ご足労をお掛けしました」
久しぶりの再会であったが、メリーが主人に報告する。
「お嬢様、タルモ殿と一緒にカフェや市場に出向きました。
平民たちの間にも、王弟殿下の忘れ形見の子息が見つかった話はちゃんと知れ渡っておりましたよ」
メリーとタルモは、クラレンス公爵夫妻とエテルネルのルシアン王子に会う前に二人で調査していたのだった。
「人の噂は随分と早く伝わるようですね。
学園でも御令嬢たちが夢心地で、突如現れた王子様に夢中になってましてよ」
「ハハハ、【人の口に戸は立てられぬ】とは良く言ったものです。
人の噂が広まるのは、どうしょうも出来ませんからね」
笑いながらプリムローズに、茶化すように話すタルモである。
「それにしても、作戦決行から3日しか経っていない。
いくらなんでも、これは早すぎませんか?」
なぜ人は、そんなに他人に興味があるのか。
プリムローズには、サッパリ理解できないらしい。
「それだけ、王弟殿下は慕われていたのではないでしょうか?
エリアスを見て、私はそう感じますわ。
ヘイズ王にはまだ世継ぎが、誕生しておりませんから……」
メリーの言葉に、プリムローズとタルモは同意して同時に頷く。
お祖父様は、タルモ殿に挨拶をしたいだけではないと彼女は思った。
気の毒なこと…、多分タルモ殿も仲間に入れてこき使うおつもりよ。
わが祖父ながら困ったお人だと、孫娘は胸中で文句を言っていた。
そんな風に実の孫に思われているとは、まったく知らない祖父グレゴリー。
チェスの駒を動かしては、悪知恵を働かせていた。
戦の神は、意外に才知に富んだ方であったのだ。
内容は、偽りの兄ブライアンの事だった。
「お嬢様、兄上さまを私の身代わりにして大丈夫なのですか?!」
平気も何も、私たちクラレンスが決めた事だ。
「エリアス、お兄様は剣も体術も貴方よりできます。
べつに構わないわよ。
そのぐらいで根をあげるこの先は何かあったら、とても生き残ってはいけないわ」
彼はエテルネルの国王になりたければ、この難局を乗りきってくれなければならない!
教室の薔薇組に入ると、何故だか令嬢たちがキラキラ輝いて見えました。
「………?!
ライラ様、おはようございます。
皆さま、何だか見掛けや瞳も輝いてますね。
何か良いことや、楽しい学園行事のご予定でもこざいますの?!」
プリムローズは、何時もより念入りの御令嬢たちの格好や髪型見て想像をした。
「プリムローズ様は興味なしですわね、きっと!
何でも亡き王弟殿下のご子息が生きていたと、王都中に噂が流れていますのよ」
ライラがプリムローズに説明していたら、別の場所から御令嬢たちの悲鳴にも似た声が聞こえだした。
「ああー、どんなお方なのかしら?!
今まで何処で、どんなお暮らしをされてましたのでしょう?」
「ご苦労なさったはずですわ!
お可哀想に…、私がお慰め致したいですことよ」
「それは、私もですわ。
絶対に、気品溢れる素敵なお方に違いありません」
『あれから、3日しか経ってなくてこれですの?!』
プリムローズは御令嬢たちの会話を聞き、祖父グレゴリーによる作戦を思い浮かべていた。
スクード公爵は、祖父からの手紙をへーディン侯爵にそのまま送り自分の意見も書き添える。
途中敵に手紙を盗まれないように、両家が取引している卸業者に秘密裏に郵送を依頼した。
それは偶然だったが、プリムローズが助けたタルモの知り合いの商会であった。
両家は、祖父グレゴリーの作戦に乗ることした。
祖父は子分たちに軍資金を渡すと、酒場で飲みながら話を吹聴するように仕向ける。
「プリムローズ様ったら、どうなさいましたか。
ボーッとなさって?
貴女も話題の方を、気になっていますの?!」
ライラはスクード公爵の嫡男オスモ様と婚約を結んでいるから、恋のお相手として興味はなかった。
「あ、ごめんなさいね。
クラスの御令嬢たちの会話が、あまりに凄い熱気であてられてしまったわ。
長い間、行方不明でしたみたいですね」
「大きな声では話せませんが…。
10年も行方知れずの方が、突然現れる…。
少しおかしくありませんか!?
不敬ですが、その方は本物なのでしょうか」
ライラは扇で隠すように、プリムローズの耳元で囁く。
普通の人なら、まずそう思いますよね。
「えーえー!ライラ様!
それは本当の話なの?!
10年もでしたの?!
それは、よくご無事で生きて戻られましたわね。
これはまさしく奇跡です!
神様に選ばれたお方としか思えません」
プリムローズはわざとらしく驚き、大きい声でライラに伝えると聞こえてしまった者たちが便乗するように騒ぎだしてきた。
「プリムローズ様の仰ることは、一理あります。
まさしく、奇跡のお方でございますわ」
彼女も噂を聞くと真っ先に感じた事を、目の前にいる彼女に言われてしまった。
プリムローズは帰りの馬車には乗らず、学園の外で待つメリーを乗せた馬車で祖父母の屋敷に向かった。
「メリー、待ったかしら?」
「いいえ、お嬢様。
どうぞ、早くお乗りくださいませ」
プリムローズは馬車に乗り込むと、タルモ殿が笑顔で迎えてくれた。
「これはこれは、プリムローズ様お久しぶりです。
またまた何やら、問題が発生したみたいですな」
「タルモ殿、今回も手助けして頂き感謝致します。
祖父母の願いで、ご足労をお掛けしました」
久しぶりの再会であったが、メリーが主人に報告する。
「お嬢様、タルモ殿と一緒にカフェや市場に出向きました。
平民たちの間にも、王弟殿下の忘れ形見の子息が見つかった話はちゃんと知れ渡っておりましたよ」
メリーとタルモは、クラレンス公爵夫妻とエテルネルのルシアン王子に会う前に二人で調査していたのだった。
「人の噂は随分と早く伝わるようですね。
学園でも御令嬢たちが夢心地で、突如現れた王子様に夢中になってましてよ」
「ハハハ、【人の口に戸は立てられぬ】とは良く言ったものです。
人の噂が広まるのは、どうしょうも出来ませんからね」
笑いながらプリムローズに、茶化すように話すタルモである。
「それにしても、作戦決行から3日しか経っていない。
いくらなんでも、これは早すぎませんか?」
なぜ人は、そんなに他人に興味があるのか。
プリムローズには、サッパリ理解できないらしい。
「それだけ、王弟殿下は慕われていたのではないでしょうか?
エリアスを見て、私はそう感じますわ。
ヘイズ王にはまだ世継ぎが、誕生しておりませんから……」
メリーの言葉に、プリムローズとタルモは同意して同時に頷く。
お祖父様は、タルモ殿に挨拶をしたいだけではないと彼女は思った。
気の毒なこと…、多分タルモ殿も仲間に入れてこき使うおつもりよ。
わが祖父ながら困ったお人だと、孫娘は胸中で文句を言っていた。
そんな風に実の孫に思われているとは、まったく知らない祖父グレゴリー。
チェスの駒を動かしては、悪知恵を働かせていた。
戦の神は、意外に才知に富んだ方であったのだ。
20
お気に入りに追加
115
あなたにおすすめの小説
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
両親も義両親も婚約者も妹に奪われましたが、評判はわたしのものでした
朝山みどり
恋愛
婚約者のおじいさまの看病をやっている間に妹と婚約者が仲良くなった。子供ができたという妹を両親も義両親も大事にしてわたしを放り出した。
わたしはひとりで家を町を出た。すると彼らの生活は一変した。
10日後に婚約破棄される公爵令嬢
雨野六月(旧アカウント)
恋愛
公爵令嬢ミシェル・ローレンは、婚約者である第三王子が「卒業パーティでミシェルとの婚約を破棄するつもりだ」と話しているのを聞いてしまう。
「そんな目に遭わされてたまるもんですか。なんとかパーティまでに手を打って、婚約破棄を阻止してみせるわ!」「まあ頑張れよ。それはそれとして、課題はちゃんとやってきたんだろうな? ミシェル・ローレン」「先生ったら、今それどころじゃないって分からないの? どうしても提出してほしいなら先生も協力してちょうだい」
これは公爵令嬢ミシェル・ローレンが婚約破棄を阻止するために(なぜか学院教師エドガーを巻き込みながら)奮闘した10日間の備忘録である。
[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜
桐生桜月姫
恋愛
シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。
だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎
本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎
〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜
夕方6時に毎日予約更新です。
1話あたり超短いです。
毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。
いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と
鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。
令嬢から。子息から。婚約者の王子から。
それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。
そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。
「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」
その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。
「ああ、気持ち悪い」
「お黙りなさい! この泥棒猫が!」
「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」
飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。
謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。
――出てくる令嬢、全員悪人。
※小説家になろう様でも掲載しております。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる